科目 | (款)鉄道事業固定資産 | (項)工具器具及び備品 |
(款)鉄道事業営業収益 | (項)運輸雑収 | |
部局等の名称 | 日本貨物鉄道株式会社 | |
物件の概要 | 鉄道貨物輸送に使用される積載重量5t鋼製のコンテナ | |
コンテナの登録個数 | 68,411個(昭和63年10月14日現在) | |
コンテナ使用料収受額 | 60,931,400円(昭和62年度) |
上記コンテナの管理が適切でなかったため、8,522個(取得価額約38億9800万円)が所在不明となっていて現物の確認ができず、ひいてはその回収が不能となるおそれが生じていたり、コンテナが通運事業者により使用されているのにその使用料78,207,800円を収受できないままとなっていたりしている。
このような事態を生じているのは、日本貨物鉄道株式会社において、実際に管理、運用しているコンテナの個数を、本院の注意を受けて行った調査を終えるまで正確に把握していなかったこと、通運事業者によるコンテナの搬出入を確実に把握していないことなどによると認められる。
したがって、所在不明のコンテナの回収及びコンテナ使用料の収受に努めるとともに、コンテナの所在把握、所在不明のコンテナの発生防止及び解消等の体制を整備し、もってコンテナの適切な管理及び効率的な運用を図る要がある。
上記に関し、昭和63年12月9日に日本貨物鉄道株式会社代表取締役社長に対して是正改善の処置を要求したが、その全文は以下のとおりである。
貴会社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)等に基づき、昭和62年4月1日に日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)から貨物鉄道事業等を引き継いで発足し、コンテナによる貨物の輸送を行っている。
これらコンテナの全国138の取扱駅における管理、運用については、国鉄が開発したコンテナ専用の電子計算機システム(以下「エポックス」という。)を使用していて、このエポックスで管理、運用しているすべてのコンテナは形式別に個々に一連番号を付されてコンテナ形式番号テーブル一覧表(以下「形式テーブル」という。)に登録されており、その個数は63年10月14日現在で68,411個となっている。
そして、貴会社では、これらのコンテナによる貨物の集貨、発送、到着、配達などの移動の際には、その都度、その情報をコンテナの形式及び番号とともに駅の端末からエポックスに入力し、個々のコンテナの所在地、貨物の積載の有無等の現況を把握することとしている。さらに、コンテナの移動の記録として、各駅において、通運事業者が集貨又は配達のためコンテナを駅構内から持ち出したり駅構内に持ち込んだりする際にコンテナ特出持込票を作成、提出させ、コンテナの発送又は到着の場合には端末から各種帳票類を出力して保存することとしている。また、貴会社の承認を得て通運事業者が集貨又は配達以外の目的でコンテナを駅から持ち出す場合には、貨物運送約款(昭和62年日本貨物鉄道株式会社公告第1号)に基づくコンテナ使用料(以下「使用料」という。)を通運事業者から収受することとしている。
上記のコンテナの移動については、エポックスに入力された情報とコンテナの現況との間に不整合を生じ、エポックスでは駅に所在することとされていながら各駅において所在を把握できないコンテナが相当数に上ったことから、貴会社では、所在不明のコンテナを一元的に把握するため62年9月から毎月1回程度所在を把握できないコンテナ(以下「不在コンテナ」という。)を全駅において調査し、毎月末に不在コンテナについてコンテナ管理台帳(以下「不在台帳」という。)を作成しており、これによると、前記138の取扱駅において発生した不在コンテナの63年3月末現在の個数は4,484個で、長期間所在不明となっているものも多く、なかには1年以上も所在不明となっているものもある状況であった。
しかして、貴会社では、上記のとおり不在台帳で多数の不在コンテナを管理している状況にあることから、本院の注意により、実際に保有しているコンテナの個数を把握するため、全駅で一斉にコンテナの現物を確認する「コンテナ現在個数調査」(以下「個数調査」という。)を63年5月から7月までの間に実施し、この調査に当たっては、駅構内や通運事業者の取扱箇所で現物を確認したコンテナを写真撮影し、そのコンテナの形式及び番号を駅又は本社の端末からエポックスに入力して、63年10月14日に確認コンテナ一覧を作成している。これによると、現物を確認したコンテナは59,889個となっていて、同日現在、前記の形式テーブルに登録されているコンテナ68,411個との差は前記の不在コンテナの個数4,484個を大きく上回る8,522個(取得価額約38億9800万円)となっていた。
この8,522個のコンテナのなかには、通運事業者により駅構内から持ち出されそのまま使用されていると推定されるものが多数あり、これらのコンテナは、貴会社が積極的に探し出さない限り、回収不能となるおそれがあるものと認められる。
他方、前記の個数調査と並行して、本院が、貴会社の札幌貨物ターミナル駅ほか31駅(注) において62年度に不在台帳に記載された不在コンテナ3,829個などについて調査したところ、保存されていた帳票類等からみて当該駅において62年度中に所在不明となったと認められるものが772個あった。これらのコンテナは、所在不明の期間中は、通運事業者により使用されていたものと認められ、62年度中のこの期間を到着及び発送等の事実を示す帳票類により算出すると、延べ71,098日・個となる。これに貨物運賃料金表(62年日本貨物鉄道株式会社公告第2号)のコンテナ貨物料金表に定めるコンテナの使用料1日1個当たり1,100円を乗じて使用料を算定すると78,207,800円となる。また、帳票類の保存等が適切でないため事実の確認ができず、所在不明の期間を明らかにできなかった他の不在コンテナのなかにも、通運事業者により使用されているものが多数あると思料される。
以上のように、貴会社では、多数のコンテナが所在不明となっていて、現物の確認ができず、ひいてはその回収が不能となるおそれが生じていたり、通運事業者により使用されているのに使用料を収受できないままとなっていたりしていて、コンテナの管理、運用が適切とは認められない。
このような事態を生じているのは、
(1) 貴会社が、承継したコンテナの財産管理上の責任体制を明確にせず、会社発足後に早急にコンテナの棚卸しを行わなかったため、実際に管理、運用しているコンテナの個数を正確に把握していなかったこと、
(2) 貴会社では、各駅において、通運事業者が集貨、配達等のためコンテナを駅構内から持ち出したり駅構内に持ち込んだりする際にコンテナ持出持込票を作成、提出させることとしているのに、これが必ずしも守られておらず、結果としてエポックスヘの入力が適正に行われていない場合が多いこと、
(3) 駅では、自駅に到着したコンテナの管理が十分でなく、不在コンテナの調査も必ずしも適切に実施していないこと
など、コンテナの管理、運用のための基本的な体制が不備であることによるものと認められる。
ついては、貴会社では、今後一層コンテナ輸送を増強して経営基盤の強化を図るため、新型のコンテナを逐年多数取得していく計画であることにかんがみ、〔1〕 コンテナの財産管理上の責任体制を組織上明確にして、棚卸し等によりコンテナの個数を確認する体制を整備し、〔2〕 実際に駅構内から搬出され、また駅構内に搬入されるコンテナを確実に把握し、その形式、番号等を正確にエポックスに入力させる方策をたて、〔3〕 個数調査で現物の確認ができないコンテナについて最終の取扱いに係る年月日、駅及び通運事業者を特定して、これらのコンテナを探し出し、回収することに努め、〔4〕 前記の通運事業者により使用されているコンテナ772個の使用料のほか全国138の取扱駅において発生した不在コンチナのうち通運事業者により使用されていたものについて通運事業者からその使用料を収受することに努め、〔5〕 駅員及び通運事業者に対しコンテナの取扱いについての指導を徹底するなどの措置を講じ、コンテナの所在把握、不在コンテナの発生防止及び解消等の体制を整備し、もってコンテナの適切な管理及び効率的な運用を図る要があると認められる。
よって、会計検査院法第34条の規定により、上記の処置を要求する。
(注) 札幌貨物ターミナル駅ほか31駅 札幌貨物ターミナル、五稜郭、北旭川、浜釧路、帯広、盛岡貨物ターミナル、宮城野、秋田操、宇都宮貨物ターミナル、越谷貨物ターミナル、新座貨物ターミナル、小名木川、東京貨物ターミナル、隅田川、横浜羽沢、塩浜操、相模貨物、沼垂、南長岡、黒井、岐阜貨物ターミナル、名古屋貨物ターミナル、名古屋南港、梅田、米子、西岡山、浜小倉、福岡貨物ターミナル、有田、長崎、熊本、鹿児島各駅