会計名及び科目 | 厚生保険特別会計(年金勘定) (項)保険給付費 |
部局等の名称 | 社会保険庁 |
支給の相手方 | 33人 |
老齢厚生年金等の支給額の合計 | 53,173,070円 |
上記の33人に老齢厚生年金等53,173,070円を支給しているが、審査に当たる都道県の社会保険事務所及び社会保険庁において、年金の受給権者が被保険者資格を取得した場合の届出等に対する調査確認及び指導が十分でなかったり、事務処理が適切でなかったりしたため、28,901,293円(老齢厚生年金16,319,835円、老齢年金9,280,347円、通算老齢年金3,301,111円)が不適正に支給されていた。これらについては、本院の注意により、すべて返還の処置が執られた。
これは、社会保険庁及び北海道ほか19都府県の48社会保険事務所において被保険者1,029人について本院が調査した結果である。
(説明)
厚生年金保険(前掲の「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」の説明参照 )において行う給付のうち、老齢厚生年金及び老齢年金は、所定の被保険者期間を満たしている者が一定の年齢に達したときに受給権者となるもので、その給付額は、受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と配偶者等について加算される額(以下「加給年金額」という。)との合計額となっており、また、通算老齢年金は、老齢年金を受けるのに必要な被保険者期間を満たしていない者で、他の公的年金制度の被保険者期間又は組合員期間と通算することにより所定の被保険者期間を満たすことになる者等が一定の年齢に達したときに受給権者となるもので、その給付額は、上記の基本年金額に相当する額となっている。
しかして、これらの年金の受給権者が厚生年金保険の適用事業所に使用され、被保険者となっている間は、〔1〕 受給権者が60歳未満である場合は全額(加給年金額を含む。)、〔2〕 受給権者が60歳以上65歳未満である場合は、その者が現に受けている報酬月額の標準報酬等級(注1)
の区分に応じ、基本年金額の100分の20,100分の50若しくは100分の80に相当する部分又は全額(加給年金額を含む。)について支給を停止することとなっている。
そして、その停止の手続についてみると、厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに使用した者が受給権者であるときは、その者の生年月日、資格取得年月日、報酬月額等のほか、受給権を有することを記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳及び年金証書を添えて所轄の社会保険事務所に提出し、さらに、同事務所では、これを調査確認のうえ、老齢厚生年金等受給権者の被保険者資格取得報告書を作成して社会保険庁に報告することとなっており、同庁では、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定のうえ、支給額を決定することとなっている。
しかして、厚生年金保険の年金受給権者で被保険者となっている者に対する老齢厚生年金、老齢年金及び通算老齢年金の支給の適否について検査したところ、北海道ほか10都県の15社会保険事務所(注2)
及び社会保険庁において、
(1) 受給権者又は事業主が制度の理解が十分でなかったり、誠実でなかったりして、事業主が被保険者資格取得届の提出を怠っていたり、同届の提出に当たって受給権の有無を表示していなかったりしていたものなどがあったのに、これに対する社会保険事務所の調査確認及び指導が十分でなかったこと、
(2) 事業主から適正な被保険者資格取得届が提出されているのに、社会保険事務所が被保険者資格取得報告書の作成、報告をしていなかったことなどのため、社会保険庁では、受給権者33人について年金の全部又は一部の支給を停止すべき期間について停止することなく53,173,070円を支給し、このうち28,901,293円
(老齢厚生年金16,319,835円、老齢年金9,280,347円、通算老齢年金3,301,111円)が不適正に支給されていた。
(注1) 標準報酬等級 第1級68,000円から第31級470,000円までの等級に区分されているもので、被保険者に実際に支給される報酬月額はこの等級のいずれかに当てはめられる。
(注2) 北海道ほか10都県の15社会保険事務所 (北海道)札幌東社会保険事務所、(宮城県)古川社会保険事務所、(福島県)郡山社会保険事務所、(栃木県)宇都宮、今市両社会保険事務所、(東京都)新宿、八王子両社会保険事務所、(神奈川県)平塚、横須賀両社会保険事務所、(岐阜県)高山社会保険事務所、(兵庫県)須磨社会保険事務所、(奈良県)奈良、大和高田両社会保険事務所、(高知県)高知東社会保険事務所、(沖縄県)那覇社会保険事務所