ページトップ
  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 労働省|
  • 不当事項|
  • 保険給付

雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正でなかったもの


(140) 雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定)(項)雇用安定等事業費
部局等の名称 岩手県ほか11県(支給庁)
釜石公共職業安定所ほか15公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 17事業主
雇用調整助成金の支給額の合計 1,248,231,909円

 上記の17事業主に雇用調整助成金1,248,231,909円を支給しているが、支給決定に当たって申請に対する調査確認が十分でなかったため、31,843,475円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の注意により、すべて返還の処置が執られた。これを県ごとに集計して掲げると別表 のとおりである。
 これは、北海道ほか23都府県(支給決定庁函館公共職業安定所ほか91公共職業安定所)において116事業主に対して支給した2,122,476,719円について本院が調査した結果である。

(説明)
 雇用調整助成金は、雇用保険(前掲の「雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの」の説明参照 )で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、失業の予防その他雇用の安定を図るため、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用する労働者について休業、教育訓練又は出向を実施した事業主に対して、休業手当、教育訓練受講日について支払った賃金又は出向労働者に係や賃金負担額(以下「手当等」という。)の一部を助成するもので、労働大臣が指定する業種の事業主等が、所定の期間内に、労使間の協定により、一定規模以上の休業を行うこと、同一受講者について1箇月に2日以上の教育訓練を行うことなどが支給要件となっており、その支給額は事業主が支払った手当等に所定の支給率(注) を乗じて得た額(教育訓練については、このほか定額の訓練費が支給される。)となっている。
 そして、その支給に当たっては、事業主から各公共職業安定所に、事前に休業、教育訓練又は出向の実施に関する労使間の協定書を添付した実施計画届を提出させるとともに、実施後に資本の額、事業の種類、対象被保険者数、休業延日数、対象手当額、教育訓練延日数、対象賃金額等を記載した支給申請書を提出させて、これらの書類により各公共職業安定所で支給要件等に適合しているかどうかを審査して支給の決定を行い、これに基づいて各都道府県が支給することになっている。
 しかして、雇用調整助成金の支給決定の適否について検査したところ、前記の92公共職業安定所のうち釜石公共職業安定所ほか15公共職業安定所において、21事業主のうち17事業主について、事業主が制度の理解が十分でなく、労働日に休業又は教育訓練を行う一方で振替休日を与えずに休日出勤させていた日数分を支給対象としたり、雇用保険の被保険者とならない役員を支給対象としたりなどして申請していたものがあったのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行ったため、これに基づいて岩手県ほか11県が上記の17事業主に対して支給した1,248,231,909円のうち、31,843,475円が不適正に支給されていた。

(注)  所定の支給率 雇用保険法施行規則(昭和50年労働省令第3号)において定められており、原則として支給率は1/2(中小企業事業主の場合は2/3)とされているが、昭和61年10月20日から平成元年3月31日までの間は全部又は一部の業種の事業主等について暫定措置が採られており、その支給率は2/3(中小企業事業主の場合は3/4)となっている。

(別表)

県名 公共職業安定所 本院が調査した事業主数 不適正受給事業主数 左の事業主に支給した雇用調整助成金 左のうち不適正雇用調整助成金
千円 千円
岩手県 釜石 2 1 39,439 507
宮城県 仙台ほか1 3 3 9,260 867
福島県 1 1 17,655 3,408
埼玉県 浦和 1 1 15,211 4,666
千葉県 千葉ほか1 2 2 511,946 5,603
神奈川県 横浜南ほか1 2 2 108,974 4,866
富山県 富山 2 1 96,104 1,857
三重県 四日市 1 1 12,852 546
兵庫県 明石 2 1 36,856 5,265
山口県 下関ほか1 3 2 343,516 2,091
徳島県 阿南 1 1 50,379 1,146
沖縄県 八重山 1 1 6,036 1,015
 計 16箇所 21 17 1,248,231 31,843