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  • 平成9年度|
  • 第3章 国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況

<参考:報告書はこちら>

国会からの検査要請事項に関する検査状況


公的宿泊施設の運営に関する会計検査の結果について

要請を受諾した年月日 平成10年4月22日
検査の対象 厚生省(社会保険庁)、郵政省、雇用促進事業団、簡易保険福祉事業団及び年金福祉事業団の各機関が設置運営する宿泊施設(運営を委託しているものを含む。)
検査の内容 施設の設置状況、施設の運営状況及び運営のあり方についての調査検討
検査期間 平成10年4月〜9月
報告を行った年月日 平成10年9月28日

1 要請の概要

 衆議院決算行政監視委員会において、平成10年4月22日、歳入歳出の実況に関する件及び行政監視に関する件の調査に関し、会計検査院に対し、会計検査を行いその報告を求めることが協議決定され、同日衆議院議長から会計検査院長に対しその要請がなされた。

 要請を受けた内容は次のとおりである。

(1) 検査の対象

 次に掲げる機関が設置運営する宿泊施設(運営を委託しているものを含む。)

〔1〕  厚生省(社会保険庁)

〔2〕  郵政省

〔3〕  雇用促進事業団

〔4〕  簡易保険福祉事業団

〔5〕  年金福祉事業団

(2) 検査の内容

〔1〕  施設の設置状況

〔2〕  施設の運営状況

〔3〕  運営のあり方についての調査検討

 会計検査院は、同日検査官会議において上記の要請を受諾することを決定し、要請に係る検査を実施して、9月28日、その結果について会計検査院長から衆議院議長に対して報告した。

2 検査の実施状況

(1) 検査対象とした公的宿泊施設

 厚生省(社会保険庁)、郵政省、雇用促進事業団、簡易保険福祉事業団及び年金福祉事業団(以下、これらを「設置者」という。)が設置した次表に示す宿泊設備を備える370施設(以下「公的宿泊施設」という。)を対象として検査を実施した。

設置者 施設種別 検査対象箇所数
厚生省(社会保険庁) 健康保険保養所 25
健康保険保健福祉センター 11
船員保険保養所 31
船員保険福祉センター 4
厚生年金会館 21
厚生年金休暇センター 16
厚生年金健康福祉センター 23
国民年金健康保養センター 48
国民年金会館 2
国民年金健康センター 7
 小計 188
郵政省 郵便貯金会館 15
郵便貯金総合保養施設 2
 小計 17
雇用促進事業団 勤労者職業福祉センター 4
勤労者福祉センター 2
勤労者野外活動施設(B型) 32
勤労総合福祉センター 25
全国勤労青少年会館 1
中小企業レクリエーションセンター 6
勤労者リフレッシュセンター 1
 小計 71
簡易保険福祉事業団 簡易保険保養センター 79
簡易保険会館 2
 小計 81
年金福祉事業団 大規模年金保養基地 13
合計 370

(2) 検査の方法

 検査に当たっては、検査の対象とした公的宿泊施設について、その設置者及び施設の運営を受託している公益法人から各種資料の提出を受け、説明の聴取等を行うとともに、検査の対象とした370施設の17.5%に当たる65施設については、現地に職員を派遣して実地検査を行った。また、官公庁、各種団体等から説明を受けたほか、関連する資料や文献を参考とするなどした。

3 検査の結果

(1) 総論

ア 公的宿泊施設の設置・運営の目的

 公的宿泊施設は、社会保険の被保険者等の福祉の増進、郵便貯金の普及等、施設種別ごとに法律上定められた目的のもとに設置・運営されている。

イ 公的宿泊施設に関する閣議決定等の状況

 臨時行政調査会(第2次)の最終答申(昭和58年3月14日)を受けて、昭和58年から59年にかけ数次にわたり、郵政省、雇用促進事業団、簡易保険郵便年金福祉事業団(当時)及び年金福祉事業団の設置する会館、宿泊施設等の新設は原則として行わないことなどの閣議決定が行われている。
 また、厚生省が設置する施設については、上記の各閣議決定の対象とはされていないものの、行政管理庁(当時)の行政監察(58年報告)を受け、その後は新設されていない(行政監察の対象とならなかった施設種別や当時既に計画決定済であった施設を除く。)。

(2) 設置状況

ア 公的宿泊施設の概要

(施設の規模等)

 平成8年度末における366施設(8年度末で未開業の4施設を除く。)の規模は、客室数計12,694室、宿泊定員計41,187人である。
 昭和61年度(年度末施設数334施設)以降の10年間では、施設数は32施設(9%)の増加となっており、客室数と定員数はそれぞれ2,897室(29%)、9,135人(28%)増加している。

(健康増進機能への重点化)

 61年度以降に建設された公的宿泊施設では、厚生省所管の施設を中心にテニスコート、プール等のスポーツ施設を併設した多機能型の施設が多く、従来の宿泊保養を中心とした単機能型の施設と機能面で差異が認められる。

イ 設置手続と建設費等

 公的宿泊施設の設置手続は、設置箇所の選定から基本構想、施設の設計、建設工事等の段階を経て行われることになっており、この設置手続には地方公共団体からの設置要望等及び地元の旅館組合等との調整が含まれている。
 土地取得費及び当初建設費の累計は、それぞれ2126億69百万円、5756億78百万円に上っている。また、平成8年度の増改築費は、555億23百万円となっている。そして、これらは、基本的に社会保険の保険料等を財源としている国の特別会計から支出されている。

(3) 運営状況

ア 運営の仕組み

 多くの公的宿泊施設では、設置者が公益法人等に施設運営業務の全般を委託している。そして、施設運営の損益は、運営受託者に帰属している(簡易保険福祉事業団の全施設(直営)と雇用促進事業団の一部の施設を除く。)。

イ 利用状況

 公的宿泊施設の8年度における総宿泊者数は約850万人で、近年その数は横ばいである。また、国内旅行の延べ宿泊者数に対する公的宿泊施設の総宿泊者数の割合は、1.4%程度である。
 公的宿泊施設の定員稼働率は、郵便貯金会館、簡易保険保養センター及び簡易保険会館が70%台から80%台と高稼働率となっているのに対し、他の施設種別ではおおむね40%台から60%台となっており、近年は公的宿泊施設全体でわずかながら低下傾向にある。なお、民間の旅館及びホテルの定員稼働率は、それぞれ40%程度、60%程度である。

ウ 利用者

(被保険者等の優先利用と利用者の確認)

 公的宿泊施設では、被保険者等に対して、その他の一般利用者に比べて安い料金を適用するなど、被保険者等の優先利用を図ることとしている施設が多い。
 しかし、被保険者等であることの確認状況について調査したところ、その確認方法等が十分でない施設が見受けられた。
 なお、郵便貯金会館等は、郵便貯金の普及のための施設とされているため、利用者の区分を設けていない。

(被保険者等の利用割合)

 平成8年度における実際の総宿泊者数に占める被保険者等の割合を、利用者の区分を行っている施設についてみると、全体では83%となっているが、設置者、施設種別ごとにはかなりの差異が見られ、船員保険保養所等のようにその割合の低い施設種別も見受けられた。

(利用料金)

 利用料金は、当該施設の運営経費、経営状況、地域の同種施設の料金との均衡などを考慮して設定されている。また、利用者の区分を設けている施設では、一般利用者には割増料金を設定している。
 公的宿泊施設と民間の旅館・ホテルの料金水準については、設置者又は運営受託者が実施した周辺類似施設との料金比較に関する調査結果によると顕著な傾向は見いだせなかった。

エ 運営経費及び国の負担等

(運営経費及び国の負担)

 1施設当たりの年間運営費用は8年度で平均5億97百万円で、近年はわずかに減少する傾向にある。
 また、別途、大規模な維持修繕費、固定資産税、土地借料の一部の費用について、国の各特別会計が直接又は間接に負担しているものがあり、その合計は8年度で169億08百万円に上っている。
 その他、施設の運営者に対して、設置者から施設の備品が無償で貸し付けられていたり、国の特別会計から委託費等が交付されていたりしているものがある。
 なお、前記の増改築費を含めると、施設の毎年の総支出に占める国の特別会計の直接又は間接の負担額の割合は、本院の試算によれば過去5年間の平均で28.3%となる。

(税制上の取扱い)

 公的宿泊施設については、その土地や建物が国有財産であるため固定資産税が非課税となっていたり、施設を運営している法人が特殊法人又は社団、財団等公益法人であるため法人税が株式会社等である民間の旅館・ホテルと異なって非課税又は低税率となっていたりなどの取扱いを受けている。

オ 運営の収支

 8年度の1施設当たりの収支は、収入が5億81百万円、支出が5億97百万円となっている。
 運営に係る収支率(支出/収入又は費用/収益)が100%を超え、いわゆる赤字となっている施設は180施設あり、このうち81施設が110%を、更に39施設が120%を超える状況となっていて、なかには150%を超える施設も5施設見受けられた。

(4) 運営のあり方についての調査検討

(行政改革との関連)

(ア) 各省庁等では、前記の各閣議決定の対象施設については、閣議決定当時既に着工していたり、計画が進行中であったなどの理由により建設を続行した施設を除き、新設は行っていないとしている。

(イ) 最近新設された郵便貯金総合保養施設(9年4月に1施設が開業。更に11年度に1施設が開業予定)及び勤労者リフレッシュセンター(10年3月に1施設が開業)について、各施設を設置する郵政省及び雇用促進事業団では、施設の内容や性格から、前記の各閣議決定に反しているものではないとしている。

(ウ) 厚生省では、前記の行政監察を受け、当時計画決定済のものを除き、新設は行っていない。ただし、行政監察の対象とならなかった施設種別についてはその後も新設されてきた。

 同省は、現在、公的宿泊施設関係予算の大幅な縮減、新規設置の抑制、既存施設の一層の運営の効率化等を進めている。

(エ) 雇用促進事業団及び年金福祉事業団については、行政改革の一環として廃止の方針が9年6月に閣議決定されている。両事業団廃止後の施設の取扱方針の検討状況を見ると、雇用促進事業団の施設については、労働省が今後の取扱いについて検討しているところであり、年金福祉事業団の施設については、地元道県に対して施設の利用方策及び資産の取得について検討を依頼しているが、10年8月現在、合意が得られた施設はまだ見受けられない。

(収支の状況)

 公的宿泊施設の運営における損益(収支)は、基本的には運営受託者にとっての損益(収支)であり、運営上の損失が国の特別会計や各事業団の負担に直結する仕組みとはなっていない。
 しかし、運営上の損失が著しく大きく、その状態が継続している施設については、運営受託者の財政面の制約から運営の継続に支障を来し、ひいては事業の目的を達成できなくなるおそれもある。したがって、このような施設については、収益に及ぼす要因と費用に及ぼす要因を十分把握し、収支の改善見込みなどを適切に予測することが重要である。

(利用状況と利用料金)

公的宿泊施設の稼働率は、全般的に見れば平均的な民間の旅館の水準を上回っているが、一部において稼働率の低い施設も見受けられる。
 郵便貯金会館等を除く公的宿泊施設においては、事業の目的を踏まえて、被保険者等を施設本来の利用者と位置付けて、それ以外の一般利用者と取扱いを区別しており、特に利用料金では、一般利用者には被保険者等より高い料金を適用している。
 一般利用者の料金の設定に当たっては、運営収支への影響、周辺類似施設との料金比較と並んで、国の特別会計の負担状況を考慮することが必要と考えられる。

(事業の評価システム)

 公的宿泊施設の設置・運営に係る国の特別会計の負担は、最終的には社会保険等各制度の被保険者等や事業主の負担に帰着している。
 したがって、これらの施設事業に対して保険給付等に充てることもできる貴重な保険料等の財源を使用していることを考慮し、施設事業の運営、とりわけ国の特別会計からの負担に関しては、最終的な負担者の十分な合意を得ることが重要と思われる。
 この点について、各省庁等は、運営等に関する会合を開き最終負担者等から意見を聞くなどしている。
 また、公的宿泊施設の事業の評価に当たっては、事業全体の費用と便益を把握する見地から、被保険者等の福祉の増進など事業の本来的な目的の達成度の測定基準や、国の特別会計の負担状況等に関する評価指標についても開発を検討する意義が大きい。

(まとめ)

 公的宿泊施設については、民間同種施設の充実などを背景として、臨時行政調査会の答申や閣議決定において新設の抑制方針が示され、以降の新設施設は、従来の宿泊保養といった単機能型から健康増進機能等を併せ備えた多機能型へと変化してきた。
 一方、各種社会保険の給付と負担を巡っては、制度のあり方を含めて様々な議論がなされており、資金運用面では、簡易生命保険を含めて、金利の低下や収益率の低迷など厳しい環境下にある。
 このような状況の下で、被保険者等の支払保険料などの限られた財源を用いて、被保険者等の福祉の増進などの目的を、有効かつ効率的に達成するためには、今後の公的宿泊施設の設置・運営の課題として次のような事項が考えられる。

〔1〕  施設の稼働率や収支の状況は、それぞれの施設の設置・運営の有効性又は健全性を示す重要な指標であるので、設置者においてこれらを十分把握し、稼働率が著しく低かったり、収支が著しく悪い施設については、その原因を十分究明した上、今後の事態の改善や事業継続の可能性あるいは統廃合の要否等を検討する必要がある。

〔2〕  被保険者等は設置目的上施設の本来的な利用者であり、また、その多くは費用の最終的な負担者であることから、このことを十分念頭に置いた上で施設の運営を行う必要がある。

〔3〕  事業運営に最終負担者の意見を反映させるためには、まず、現在の仕組みを積極的に活用することが重要である。

〔4〕  事業の評価を適切に行うためには、設置者において業績評価制度の確立や内容の充実が望まれる。その際、国の特別会計の負担状況と、事業の便益が誰にどれだけ及んでいるかなどについて把握する努力も必要である。

〔5〕  今後とも閣議決定等に沿った措置を採ることはもとより、閣議決定等の対象とされていない施設についても、民間同種施設の充実、利用者のニーズ等公的宿泊施設を取り巻く状況や、国の特別会計の財政見通しなどを十分考慮した上で設置・運営する必要がある。

 なお、雇用促進事業団については、新法人への移管に合わせて設置施設の今後の取扱いについて速やかに処理方針が決定されることが望まれる。また、年金福祉事業団については、大規模年金保養基地業務から撤退方針が決定しているので、速やかに関係者と合意の上、設置施設について適切な処理がなされることが望まれる。

 いずれの公的宿泊施設においても、施設の設置・運営に関わる者、施設利用者及び財源の最終負担者だけでなく、地方公共団体、地域住民、さらには民間の同種事業者など多くの人々も様々な利害関係を持ち、相互に影響を及ぼしていること、公的宿泊施設の中には、宿泊機能のみならずその他の機能を併せ持つものが少なくないことから、公的宿泊施設のあり方について幅広く議論がなされることが肝要である。

 

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