1 本院が表示した改善の意見
国民年金の第3号被保険者は、民間サラリーマンや公務員等である第2号被保険者に生計を維持されている配偶者(以下「被扶養配偶者」という。)のうち20歳以上60歳未満の者であり、国民年金の保険料を納付する要がないとされている。この第3号被保険者に係る被扶養配偶者の認定基準によると、年間収入が130万円(以下、この額を「基準額」という。)未満であることなどを要件としている。この年間収入のうち事業所得等については、社会通念上明らかに当該所得を得るために必要と認められる経費(以下「必要経費」という。)をその総収入額から控除した後の金額を収入としている。そして、第3号被保険者の年間収入が基準額以上になるなどして認定基準を満たさなくなった場合には、第1号被保険者への種別変更の届出を行わなければならないこととなっている。
そこで、第3号被保険者の資格種別が認定基準に照らして適正なものとなっているかについて検査したところ、第3号被保険者の資格要件を欠いているのに種別変更の届出を行わず、納付すべき国民年金の保険料を納付していない者が多数見受けられた。
このような事態が生じているのは、第3号被保険者において、種別変更の届出の義務についての理解が十分でなかったことにもよるが、なお、次のことによると認められた。
(ア) 第3号被保険者に係る種別変更の届出の必要な者の把握が十分でなかったこと
(イ) 事業所得等の総収入額から控除する必要経費の範囲を明確にしていなかったこと
(ウ) 第3号被保険者に係る種別変更の届出の義務について、被保険者への周知が十分でなかったこと
第3号被保険者に係る種別変更の届出について、その適正化が図られるよう、次のとおり、社会保険庁長官に対し平成12年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示した。
(ア) 第3号被保険者に係る被扶養配偶者の認定基準と健康保険等の医療保険における被扶養者の認定の取扱いが、年間収入の要件に関しては同じであることにかんがみ、医療保険者との連携を十分に執るなどして第3号被保険者のうち種別変更の届出が必要な者を把握すること
(イ) 事業所得等の総収入額から控除する必要経費の範囲を明確にすること
(ウ) 市町村や事業所との連携を十分に執るなどして、第3号被保険者に対して種別変更の届出の義務について周知、徹底を図ること
2 当局の処置状況
社会保険庁では、本院指摘の趣旨に沿い、上記の(ウ)については、13年中に、第3号被保険者に対して種別変更の届出の義務について周知、徹底を図った。
(イ)については、事業所得等の総収入額から控除する必要経費の範囲は所得税法(昭和40年法律第33号)における取扱いに準ずることとしており、医療保険者と調整のうえ、今後、地方社会保険事務局に通知することとしている。
また、(ア)については、第3号被保険者のうち種別変更の届出が必要な者を把握する仕組みについて引き続き検討を行っていくこととしている。