要請を受諾した年月日
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平成17年6月8日
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検査の対象
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内閣府、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省
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検査の内容
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上記の府省が所管する特別会計についての検査要請事項
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平成17年度末現在の特別会計数
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31会計
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上記に係る平成16年度決算額
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収納済歳入額
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419兆3004億円
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支出済歳出額
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376兆0329億円
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報告を行った年月日
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平成18年10月18日
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会計検査院は、平成17年6月8日、参議院から、下記事項について会計検査を行い、その結果を報告することを求める要請を受けた。
一、会計検査及びその結果の報告を求める事項
(一) 検査の対象
内閣府、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省
(二) 検査の内容
各府省が所管する各特別会計についての次の各事項
1 情報公開等、透明性の状況
2 繰越額・不用額、決算剰余金、積立金等残高の推移
3 次の特別会計における予算の執行状況
・電源開発促進対策特別会計、特に予算積算との対比
・財政融資資金特別会計、特に予算積算との対比
・農業経営基盤強化措置特別会計、特に決算剰余金の処理状況
4 次の特別会計における政府出資法人への出資の状況
・産業投資特別会計産業投資勘定から研究開発法人への出資状況と出資先の財務状況
・電源開発促進対策特別会計から核燃料サイクル開発機構への出資状況と機構の財務状況
5 各特別会計の財政統制の状況
参議院決算委員会は、17年6月7日に検査を要請する旨の上記の決議を行っているが、同日に「平成15年度決算審査措置要求決議」を行っている。
このうち、上記検査の要請に関連する項目の内容は、以下のとおりである。
2 特別会計の事務事業等の見直しについて
現在31ある特別会計は、その歳出総額が17年度当初予算で411兆余円、純計額でも205兆余円に達しており、その規模は一般会計を大きく上回っているが、透明性の欠如、不要不急の事業の実施、多額の不用、剰余金、積立金の発生、政府出資法人等への支出等に係る問題等、多くの問題点が存在する。
とりわけ特別会計の不用、剰余金の抑制は喫緊の課題であり、政府は、各特別会計の性格に応じ、不用、剰余金を抑制するとともに、一般会計からの繰入れも抑制するなどの措置を講ずべきである。
また、産業投資特別会計においては、NTT株式売却収入を活用した無利子融資制度を原則廃止することとしたが、さらに、償還終了時の同特別会計社会資本整備勘定の廃止等の具体的措置について調査・検討する必要がある。さらに、産業投資特別会計から研究開発法人への出資状況とその有効性・効率性について調査・検討する必要がある。
農業経営基盤強化措置特別会計においては、歳入額に対する歳出額の比率が著しく低く、多額の決算剰余金が生じている。同特別会計における各事業の執行状況と決算剰余金の使途について調査・検討する必要がある。
空港整備特別会計においては、空港建設を始めとする空港整備事業等が行われている。関西国際空港二期事業の2007年限定供用決定の前提となった需要予測及び採算を確保するためには、関西国際空港株式会社の安定的な経営基盤の確立に向けた経営改善努力が不可欠になっている。政府は、同社の経営改善及び収益向上に取り組み、その有効性を検証すべきである。
3 特別会計における予算積算と執行の乖離について
(1)電源開発促進対策特別会計
電源開発促進対策特別会計電源立地勘定において、電源地域産業育成支援事業補助金における「電気のふるさとじまん市」に関する車内広告、パンフレットに係る経費、電源地域振興指導事業に関する一部の委員会等の経費及び原子力なんでも相談室の出張説明旅費等の経費が予算参考書には記載されていたものの、実際には執行されていなかった。
また、原子力の広報に関するホームページの作成に係る経費については、予算参考書における見積りと執行との間に乖離が生じていた。
政府は、これらの点について、予算執行の経緯や実態を調査するとともに、具体的改善策を講ずべきである。
(2)財政融資資金特別会計
財政融資資金特別会計においても、数年にわたり財政投融資問題調査研究経費において、執行実績と異なる研究会の名目で経費が計上されていた。政府は、このような事態が生じた経緯と同特別会計の予算執行の実態を調査するとともに、具体的改善策を講ずべきである。
(3)厚生保険特別会計、国民年金特別会計
厚生保険特別会計、国民年金特別会計においても、「年金週間」と関連した予算計上において、数年にわたり実際には行われていないイベントの経費が計上されていた。政府は、このような事態が生じた経緯と両特別会計の予算執行の実態を調査するとともに、具体的改善策を講ずべきである。
特別会計は、財政法(昭和22年法律第34号)第13条において、〔1〕特定の事業を行う場合、〔2〕特定の資金を保有してその運用を行う場合、〔3〕その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律をもって設置できるとされており、17年度末現在で表1のとおり、31会計ある。
これらの特別会計全体の16年度における収納済歳入額は419兆円、支出済歳出額は376兆円となっている。
表1 特別会計の設置状況
分類
|
特別会計名(勘定数)
|
|
〔1〕事業特別会計
|
企業
|
国有林野事業(2)
|
保険事業
|
地震再保険、厚生保険(4)、船員保険、国民年金(4)、労働保険(3)、農業共済再保険(6)、森林保険、漁船再保険及漁業共済保険(5)、貿易再保険
|
|
公共事業
|
国営土地改良事業、道路整備、治水(2)、港湾整備(2)、空港整備
|
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行政的事業
|
登記、特定国有財産整備、国立高度専門医療センター、食糧管理(7)、農業経営基盤強化措置、特許、自動車損害賠償保障事業(3)、自動車検査登録
|
|
融資事業
|
産業投資(2)、都市開発資金融通
|
|
〔2〕資金運用特別会計
|
財政融資資金、外国為替資金
|
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〔3〕その他
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整理区分
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交付税及び譲与税配付金(2)、国債整理基金
|
その他(エネルギー対策関係)
|
電源開発促進対策(2)、石油及びエネルギー需給構造高度化対策(2)
|
今回の検査においては、合規性、経済性・効率性、有効性等の観点から、主として特別会計における財政統制の面に着眼し、各特別会計の予算決算関係書類等に基づき分析するとともに、各特別会計を所管している又は出資法人の主務省等である内閣府ほか9省(15省庁)及び特別会計の出資先又は補助金の交付先である独立行政法人日本原子力研究開発機構(旧核燃料サイクル開発機構)ほか7箇所について実地検査を実施した。
特別会計の財務等に関する財政情報は、予算決算関係書類が国会に提出されているほか、各種の媒体を通して国民がアクセス可能な状況となっているが、分量が膨大で内容も多岐にわたることから、必要な情報の有無等が把握しにくい場合がある。
そこで、各種の媒体のうち、予算決算関係書類等において、国の財政の透明性をみる上でポイントと考えられる項目につき具体的にどのような財政情報が提供されているかをみると、次のとおりである。
ア 財源面における透明性の状況
〔1〕 一般会計からの繰入額については、いずれも予算書・決算書の科目名称「一般会計より受入」から把握することができるが、各特別会計における歳入合計額に対する一般会計からの繰入額の割合については、率という形では、定期的に作成されている媒体では提供されていない。
〔2〕 特定財源の額については、予算書・決算書においては、直入分は特定財源の具体的名称が歳入科目の「目」の名称になっていることから把握できるが、一般会計経由分は、特定財源以外の一般会計からの繰入額と合わせて「一般会計より受入」として表示されているため、把握できない状況となっている。
イ 歳出面における透明性の状況
〔1〕 一般会計からの繰入金の使用状況については、歳出を一般会計からの繰入金、特定財源、固有財源等の財源別に区分して整理することとされておらず、一部の特別会計を除き、その情報は提供されていない。
〔2〕 特別会計が支出している人件費及び事務費の額については、それぞれに該当する「目」の額を合計するなどしないと把握することができないものが多い。
〔3〕 予算と決算の対比については、一般会計と同様、事項と「項」が同じ区分となっている場合を除き、予算書・決算書において事項別に対比することはできず、また、予算で示されている「目」の積算内訳に対応する執行実績は、決算では示されていない。
〔4〕 繰越額については、科目ごとの金額並びに勘定ごとの繰越種類別金額及び発生事由が、不用額については、科目ごとの金額及び「項」ごとの発生事由がそれぞれ決算書等において示されているが、繰越額・不用額の推移に関する情報は、一覧できる形では提供されていない。また、決算剰余金については、金額と処理状況は決算書において示されているが、発生事由を説明した情報はほとんど提供されておらず、積立金等については、年度末残高の額及び推移に関する情報が予算書又は決算書において示されているが、妥当な保有規模を表す基準を具体的な額又は率で示した情報を提供しているものはほとんどない。
〔5〕 一般会計と他の特別会計が同一の出資法人に出資し又は補助金等を交付している場合、それらを集計した形での一覧情報は提供されていない。
ウ 特別会計全体の財務等に関する透明性の状況
特別会計には、一般会計や各特別会計相互間、同一特別会計の勘定間の資金の繰入れ等の歳入歳出の重複以外にも、実質的に国内部の取引として捉えられるものとして、資金が年度を越えて移動したと捉えられる前年度剰余金等の受入れや歳入歳出外で経理されている積立金等との間の資金の受払いがある。しかし、このような取引区分別にみた財政収支の内訳を示しているものはない。
また、特別会計の歳出科目には、一般会計と同じような主要経費別分類(社会保障関係費、公共事業関係費等の重点施策の種類を示すもの)を示すコード番号が付されていないため、主要経費別分類によって、財政全体としての資源配分の状況を把握することはできない状況となっている。
ア 特別会計の繰越額・不用額の状況
(ア)特別会計全体の繰越額・不用額の動向
特別会計全体の14年度から16年度までの繰越額と繰越率(歳出予算現額に対する繰越額の割合)、不用額と不用率(歳出予算現額に対する不用額の割合)は、表2のとおりである。
区分
\
年度
|
歳出予算現額
(A)
|
支出済歳出額
(B)
|
支出率
(B)/(A)
|
繰越額
(C)
|
繰越率
(C)/(A)
|
不用額
(D)
|
不用率
(D)/(A)
|
14
|
3,964,026
|
3,738,977
|
94.3%
|
81,811
|
2.1%
|
143,238
|
3.6%
|
15
|
3,766,585
|
3,576,913
|
95.0%
|
75,212
|
2.0%
|
114,459
|
3.0%
|
16
|
3,984,513
|
3,760,329
|
94.4%
|
118,188
|
3.0%
|
105,995
|
2.7%
|
(イ)多額の繰越額が継続している特別会計
14年度から16年度まで3年間連続して100億円以上の繰越額が発生している特別会計は、10会計(12勘定)である。このうち、3年間連続して繰越率が10%以上となっているのは、表3のとおり、4会計(5勘定)であり、いずれも公共事業特別会計である。これらに共通する繰越事由は、主として、事業計画の変更、用地交渉の遅延などとしている。
特別会計名(勘定名)
|
14年度
|
15年度
|
16年度
|
|||
繰越額
|
繰越率
|
繰越額
|
繰越率
|
繰越額
|
繰越率
|
|
国営土地改良事業
|
1,110
|
15.9%
|
692
|
10.9%
|
641
|
11.0%
|
道路整備
|
13,243
|
21.3%
|
10,849
|
19.8%
|
10,357
|
17.9%
|
治水(治水)
|
4,745
|
23.7%
|
2,111
|
13.2%
|
2,765
|
17.1%
|
同 (特定多目的ダム建設工事)
|
786
|
22.9%
|
324
|
11.5%
|
306
|
12.6%
|
港湾整備(港湾整備)
|
1,027
|
17.9%
|
604
|
12.5%
|
576
|
12.5%
|
これら4会計(5勘定)について、歳出予算現額に対する補正予算額の占める割合と繰越率の関係をみると、おおむね同様の動きを示しており、公共事業特別会計では、補正予算の規模が繰越率に影響する面があることがうかがえる。
また、多額の繰越額が継続している科目についてみると、14年度から16年度まで3年間連続して繰越率30%以上かつ繰越額1億円以上の「目」は、5会計(6勘定)の8目であるが、この中には、翌年度に補助金申請が見込まれる額を支出残額の繰越しとしたものの、翌年度における繰越額の執行状況をみると、全額を不用額としているものも見受けられた。
(ウ)多額の不用額が継続している特別会計
14年度から16年度までの3年間連続して100億円以上の不用額が発生している特別会計は、18会計(28勘定)である。このうち、3年間連続して不用率が10%以上となっているのは、表4のとおり、8会計(10勘定)である。
表4 3年間連続して不用額100億円以上かつ不用率10%以上の特別会計(勘定)
(単位:億円)
特別会計名(勘定名)
|
14年度
|
15年度
|
16年度
|
|||
不用額
|
不用率
|
不用額
|
不用率
|
不用額
|
不用率
|
|
地震再保険
|
512
|
99.8%
|
499
|
99.8%
|
497
|
99.8%
|
貿易再保険
|
643
|
45.0%
|
1,270
|
86.3%
|
1,332
|
84.5%
|
食糧管理(輸入食糧管理)
|
2,069
|
37.7%
|
654
|
15.3%
|
1,898
|
34.0%
|
同 (輸入飼料)
|
525
|
52.8%
|
215
|
38.5%
|
226
|
42.5%
|
農業経営基盤強化措置
|
594
|
66.0%
|
255
|
40.3%
|
375
|
46.5%
|
自動車損害賠償保障事業(保険料等充当交付金)
|
839
|
10.2%
|
946
|
12.7%
|
538
|
10.7%
|
外国為替資金
|
6,904
|
80.6%
|
7,654
|
97.1%
|
9,052
|
97.1%
|
電源開発促進対策(電源立地)
|
965
|
38.5%
|
568
|
22.4%
|
440
|
16.7%
|
同 (電源利用)
|
391
|
14.1%
|
420
|
14.9%
|
322
|
11.8%
|
石油及びエネルギー需給構造高度化対策(石油及びエネルギー需給構造高度化)
|
1,812
|
23.8%
|
4,398
|
26.3%
|
2,122
|
10.4%
|
これらに係る不用額の主な発生事由は、次のとおりである。
〔1〕 保険事業特別会計である地震再保険、貿易再保険両特別会計については、支払対象となる保険事故が発生していないため、又は少なかったためとしている。
〔2〕 食糧管理(輸入食糧管理、輸入飼料)、自動車損害賠償保障事業(保険料等充当交付金)、外国為替資金各特別会計については、それぞれ、輸入食糧及び輸入飼料の買入価格や買入数量が予定より低かったり、少なかったりしたこと、自動車損害賠償保障保険料等の一部に充当するための交付金の対象契約を多く見込んだこと、予見し難い将来の為替介入に対応して積算した外国為替資金証券の割引料が少なくて済んだことのほか、いずれの特別会計も、相当額を計上していた予備費を使用する事態が生じなかったためとしている。
〔3〕 農業経営基盤強化措置特別会計については、近年の農業を取り巻く環境下では、借入れをしてまで新規に投資しようとする農業者が少ないことなどから、農業改良資金等の資金需要が低下したことなどのためとしている。
〔4〕 電源開発促進対策特別会計(電源立地、電源利用)については、地元との調整が難航し事業の開始に至らなかったこと、予定より補助申請が少なかったこと、事業実施者数が予定を下回ったことなどのためとしている。
〔5〕 石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計(石油及びエネルギー需給構造高度化)については、借入金の償還が予定より少なかったこと、国家石油備蓄の緊急放出をせずに済んだこと、補助申請が予定を下回ったことなどのためとしている。
また、多額の不用額が継続している科目についてみると、14年度から16年度まで3年間連続して不用率30%以上かつ不用額1億円以上の「目」は、25会計(44勘定)の(目)予備費のほか、18会計(26勘定)の43目である。
イ 特別会計の決算剰余金の推移
(ア)特別会計全体の決算剰余金の動向
特別会計全体の14年度から16年度までの決算剰余金と剰余金率(収納済歳入額に対する決算剰余金の割合)は、表5のとおりである。
表5 特別会計全体の決算剰余金
(単位:億円)
区分
\
年度
|
収納済歳入額
(A)
|
支出済歳出額
|
決算剰余金
(B)
|
剰余金率
(B)/(A)
|
14
|
3,997,456
|
3,738,977
|
263,913
|
6.6%
|
15
|
3,857,548
|
3,576,913
|
284,519
|
7.4%
|
16
|
4,193,004
|
3,760,329
|
434,388
|
10.4%
|
(イ)多額の決算剰余金の発生が継続している特別会計
14年度から16年度まで3年間連続して500億円以上の決算剰余金が発生している特別会計は、14会計(16勘定)である。このうち、剰余金率30%以上のものは、表6のとおり、6会計(7勘定)である。
表6 3年間連続して決算剰余金500億円以上かつ剰余金率30%以上の特別会計(勘定)
(単位:億円)
特別会計名(勘定名)
|
14年度
|
15年度
|
16年度
|
|||
決算剰余金
|
剰余金率
|
決算剰余金
|
剰余金率
|
決算剰余金
|
剰余金率
|
|
貿易再保険
|
1,639
|
67.6%
|
2,484
|
92.5%
|
3,403
|
93.3%
|
農業経営基盤強化措置
|
1,169
|
79.2%
|
1,003
|
72.5%
|
807
|
65.1%
|
特許
|
933
|
48.2%
|
934
|
47.3%
|
826
|
38.8%
|
自動車損害賠償保障事業(保障)
|
677
|
90.2%
|
717
|
90.8%
|
689
|
89.8%
|
外国為替資金
|
17,353
|
91.3%
|
36,456
|
99.4%
|
22,255
|
98.8%
|
電源開発促進対策(電源立地)
|
1,901
|
55.8%
|
1,599
|
45.6%
|
1,030
|
32.4%
|
同 (電源利用)
|
1,139
|
37.2%
|
1,193
|
36.0%
|
1,197
|
36.3%
|
これらに係る決算剰余金の発生事由等は、保険事業特別会計である貿易再保険特別会計については、対象となる保険事故が少なかったことなどであり、それ以外については、次のとおりである。
〔1〕 農業経営基盤強化措置特別会計については、各年度とも不用額の発生要因と同様、貸付金の繰上償還等の影響によるほか、近年の農業を取り巻く環境下では借入れをしてまで新規に投資しようとする農業者が少ないことなどから、農業改良資金等の資金需要が低下したことなどのためとしている。
〔2〕 特許特別会計については、収支相償の原則の下、中長期的に収支がバランスする仕組みにより運営してきているが、実際の審査等が特許料等収入を受け入れる年度より後になるため一時的に前受金的な決算剰余金が生じること、特に、特許法(昭和34年法律第121号)改正により、13年10月から審査請求期間が短縮化されたことに伴い、審査請求及び特許料等収入が急増し、審査未着手件数が増加していることなどによるとしている。同会計の決算剰余金は、将来発生する費用に充当するため、特許特別会計法(昭和59年法律第24号)では、翌年度の歳入に繰り入れることとしている。なお、同法では、政令で定める金額を除いた額は一般会計に繰り入れることができると規定しているが、この政令は制定されていない。
〔3〕 自動車損害賠償保障事業特別会計(保障)については、歳入に未経過賦課金が含まれていること、また、各年度とも政府保障事業対象となる事故の発生が少なく、保障金等の支払額が少なかったことなどのためとしている。
〔4〕 外国為替資金特別会計については、各年度とも外貨資産運用による運用収入に比べて外国為替資金証券の発行コストが低水準にとどまったこと、また、為替介入の結果売買差益が発生したことなどのためとしている。
〔5〕 電源開発促進対策特別会計(電源立地、電源利用)については、各年度とも原子力発電施設の立地の遅れ、新技術エネルギー導入に当たっての問題点の存在等から歳出予算の執行が予定より下回る一方、特定財源である電源開発促進税は歳出規模に連動せず直入されることなどが発生要因である。
(ウ)決算剰余金の処理
16年度の決算剰余金の43.4兆円の処理状況は、表7のとおりとなっている。
表7 決算剰余金の処理状況(16年度)
(単位:億円)
決算剰余金
|
処理方法
|
||||
翌年度歳入に繰入
|
他勘定に繰入
|
翌年度の一般会計に繰入
|
積立金等に積立(▲補足)
|
持越現金
|
|
434,388
△1,713
|
360,996
|
9
|
14,190
|
59,204
▲1,741
|
15
|
決算剰余金が上記の各方法で処理された後、翌年度以降においてそれぞれどのような性質の財源に充てられているかを、翌年度歳入への繰入額のうち整理区分特別会計等を除いた4.8兆円についてみたところ、表8のとおり、翌年度以降の見合い財源として確保しておくべき額が自動的に確定している財源部分(確定分)と未定の財源部分(未定分)とに大別できる。決算剰余金はその種類を問わず適正かつ効率的に利活用することは当然であるが、未定分2.4兆円のうち各特別会計やその財源の性格、事業に対する需要の動向等からみて可能なものについては、財政資金の有効活用を図る観点から、一般会計への繰入れも含めてその活用を図るなどの検討を行うことが特に重要になってくると考えられる。
表8 決算剰余金のうち翌年度歳入繰入額の見合い財源の内容(16年度)
(単位:億円)
決算剰余金のうち翌年度歳入繰入額
|
左のうち整理区分特別会計等分を除いた分
|
見合い財源の内容
|
||||
確定分
|
未定分
|
|||||
歳出の翌年度繰越額
|
未経過再保険料等
|
支払備金
|
超過受入額
|
その他歳出額
|
||
360,996
|
48,894
|
17,295
(▲4,365)
|
1,765
|
2,046
|
7,185
|
24,967
|
ウ 特別会計の積立金等残高の推移
(ア)特別会計に設置されている積立金の状況
特別会計に設置されている積立金等は、16年度末現在で18会計(30勘定)に33資金あり、現在又は将来における事業の財源に充て、あるいは決算上の不足に備えることなどを目的として設置されている。これらの積立金等の主たる財源は、決算剰余金の全部又は一部、一般会計からの繰入金等である。
16年度末現在における積立金等のうち、資金運用特別会計の「財政融資資金」及び「外国為替資金」を除く31資金の残高をみると、全体では201.4兆円ある。
(イ)積立金等に係る積立額の基準及び規模
31資金については、保有規模に関する具体的な基準を定めているものはほとんどなく、積立金等の資金規模の適正水準について、判断できない状況となっている。そこで、仮の目安として、各積立金等の残高が、どの程度の水準となっているかを表す資金保有倍率(過去10年間又は7年度以降に設置された積立金等は資金設置以降の期間における積立金等の使用実績のうちピークとなった年度の額で積立金等の16年度末残高を除したもの)という指標を用いて31資金を統一的に比較した。
31資金のうち16年度末現在で残高のある27資金についてみると、上記の期間使用実績のないものは10資金あり、また、使用実績のある17資金のうち、資金保有倍率が100以上となっているものが3資金ある。これらの資金には、将来の保険料等の引上げを抑制して次世代の負担を軽減したり、異常災害等保険事故の発生に備えたりするための積立金等のほか、各年度の決算上の不足に充てることを目的としているが、結果的にそのような事態が発生しなかったものもある。
エ 政府の対応状況
18年度予算では、財政融資資金特別会計の積立金のうち12兆円を国債整理基金特別会計に繰り入れ、さらに、外国為替資金、産業投資、電源開発促進対策、農業経営基盤強化措置各特別会計の剰余金の活用を図るため計1兆8312億円を一般会計に繰り入れることとし、合計13兆8312億円を財政健全化に活用することとしている。また、現在、全額直入となっている電源開発促進税(特定財源)は、19年度には、一般会計の歳入に組み入れた上で必要な金額を特別会計に繰入れとすることが予定されている。
ア 電源開発促進対策特別会計における予算の執行状況、特に予算積算との対比
電源開発促進対策特別会計(以下、アにおいて「電源特会」という。)の歳出については、予算の執行に当たって、予算成立後の状況変化に応じて執行を見合わせる必要が生じたり、より効率的な執行が可能となったりして、予算積算額と実績額との間に開差が生ずることは考えられるが、予算積算をしているものの執行実績がない状況や、予算積算がないまま執行されている状況が継続しているなどの事態が見受けられた。一方、電源特会を所管する文部科学省、経済産業省(資源エネルギー庁)等では、国会等における特別会計の見直しの議論なども踏まえ、政策・歳出構造の見直しを行い、原子力などの長期固定電源に支援を重点化するなどとともに、広報関連予算を圧縮したり、過去の予算執行の実績等を踏まえて、予算の積算見積りと執行実態とのかい離を是正したりなどするとしている。そこで、抽出した電源立地勘定の7つの目の内訳及び電源利用勘定の5つの目又は目の内訳計12の目又は目の内訳の歳出予算額について分析したところ、前記の予算積算をしているものの執行実績がないなどの事態が見受けられた各項目などについて精査するなどした結果、18年度歳出予算額が16年度予算額に比べ減少している。
また、同特会の歳入については、電源立地勘定において、周辺地域整備資金への繰入れが開始されたことなどにより、18年度の「前年度剰余金受入」の歳入予算額は、結果として対16年度比49.8%に減少しているが、電源利用勘定の「前年度剰余金受入」の18年度歳入予算額は、前々年度である16年度の純剰余金の額が引き続き多額であったため、対16年度比112.2%に増加している。両勘定の「前年度剰余金受入」の収納率(歳入予算額に対する収納済歳入額の割合)が150%以上であるような状況を継続させないだけでなく、これを可能な限り低減させるためには、過去の実績を勘案するなどして歳出予算額の見積りを行うことにより、歳出予算額に多額の不用額を発生させ、ひいては多額の剰余金を発生させることのないよう努力を続けることが必要である。
本院は、平成16年度決算検査報告において電源特会の剰余金の状況について掲記したところであるが、電源特会全体についてみると、今後、同特会において一般会計への繰入れなどの新たな施策が見込まれている状況の中で、歳入及び歳出予算の積算において過去の実績等を勘案するなど一層精査することなどにより、予算積算と執行との間の開差を小さくするよう改善を図っていくことが望まれる。
イ 財政融資資金特別会計における予算の執行状況、特に予算積算との対比
財政融資資金特別会計における歳出科目(項)のうち「事務費」を対象として、14年度から16年度までの予算額と決算額を科目(目)別に対比するなどして予算の執行状況について検査した(16年度予算額64億5962万円、決算額58億0381万円)。
「事務費」の執行状況をみたところ、一部の科目(目)において、継続して支出率が0%ないし50%未満の低率となっていた。また、予算科目の目的に沿わない執行は見受けられなかったが、執行実績と予算積算を対比したところ、表9のとおり、予算積算がないまま執行が継続している経費や、表10のとおり、予算積算をしているものの未執行が継続している経費が一部見受けられた。さらに、複数の事項内訳のものを一体として執行しているなどのため、決算額を事項内訳に区分できず、その対応関係が明確になっていない経費が見受けられた。
予算の執行に当たって、予算成立後の状況の変化に応じて執行を見合わせたり、効率的な執行が行われたりしたことなどの結果として、年度によっては、支出率が低率となったり、想定した予算積算に沿って執行が行われなかったりする場合もある。しかし、予め立目しておく必要性があるものなど特段の事情がある場合を除き、執行実績と予算積算がかい離している状態が継続すること、また、予算の科目及び事項内訳別に積算された内容と決算額との関連が的確に把握できない状態にあることは、予算による執行に対する統制や執行結果に基づく歳出の合理化が困難となるおそれがある。
財政融資資金特別会計については、18年度予算で、過去の実績を踏まえて予算額を減額するなどの見直しを行うなどしたところであるが、今後とも、歳出の合理化に向けた予算執行管理の徹底を図るとともに、決算の内容を次年度以降の予算へ適切に反映させていくことが重要である。
表9 予算積算がないまま執行が継続している経費
(単位:千円)
科目
|
執行実績の内容
|
決算額
|
|||
(目)
|
(目の内訳)
|
14年度
|
15年度
|
16年度
|
|
庁費
|
借料及損料
|
ネットワーク管理システム賃借料
|
771
|
1,490
|
3,046
|
雑役務費
|
合同庁舎保安警備業務ほか
|
5,767
|
5,849
|
4,425
|
|
その他(16年度決算額が1科目(目の内訳)当たり100万円未満のもの)
|
734
|
614
|
317
|
||
計
|
7,273
|
7,954
|
7,789
|
表10 予算積算をしているものの未執行が継続している経費
(単位:千円)
科目
|
予算積算の内容
|
予算額
|
|||
(目)
|
(目の内訳)
|
14年度
|
15年度
|
16年度
|
|
庁費
|
消耗品費
|
地方公営企業年鑑ほか
|
3,520
|
3,853
|
3,876
|
借料及損料
|
パーソナルコンピュータ
|
63,829
|
63,829
|
18,819
|
|
雑役務費
|
財政投融資問題研究会調査事項等説明資料作成
|
6,514
|
6,514
|
6,514
|
|
その他(16年度における「予算積算の内容」の予算額が1件当たり100万円未満のもの)<諸謝金、庁費>
|
1,981
|
1,773
|
1,728
|
||
計
|
75,844
|
75,969
|
30,937
|
ウ 農業経営基盤強化措置特別会計における予算の執行状況、特に決算剰余金の処理状況
(ア)平成16年度決算検査報告に掲記した事項の概要
本院では、「農業経営基盤強化措置特別会計における決算剰余金等の状況について」の検査の状況を、平成16年度決算検査報告に「特定検査対象に関する検査状況」として掲記していて(平成16年度決算検査報告参照 )、その概要は以下のとおりである。
(イ)平成16年度決算検査報告を踏まえた農林水産省の方策
a 農業経営基盤強化措置特別会計法第8条ただし書における政令の制定
農林水産省では、18年1月に農業経営基盤強化措置特別会計法施行令(昭和21年勅令第623号)を改正し、決算剰余金を一般会計の歳入に繰り入れる際に控除する金額を定めるための規定を整備した。
b 17年度決算における決算剰余金の一般会計への繰入れ
農林水産省では、従来、決算剰余金を翌年度の歳入に全額繰り入れていたが、17年度決算における決算剰余金については、18年度予算編成時において基盤特会における資金需要を精査し、財政資金の有効活用を図る観点から、295億円を18年度一般会計の歳入へ繰り入れることとし、18年8月に繰入れを行った。
c 全国協会に対する補助金交付額の変更及び全国協会からの返還
全国協会に対しては、17年度当初予算において130億1234万円の補助金交付を予定していたが、全国協会における事業の執行状況を勘案し、64億4100万円の交付を見合わせるなどして、交付額を63億4754万円とした。また、基金における資金需要を精査し、使用見込みのない資金として、計32億4278万円を基盤特会に17年度に返還させた。さらに、農地保有合理化事業資金供給事業に係る基金を廃止することにより、当該基金の17年度末残高54億8794万円のうち、全国協会が預金として保有している46億2751万円を国庫へ18年8月に返還させた。
d 18年度予算における措置
基盤特会の歳入歳出予算は従来均衡していたが、18年度においては歳入予算額を505億4942万円(前年度505億5622万円)、歳出予算額を396億4992万円(前年度505億5622万円、対前年度比78.4%)とした。
基盤特会については、19年度において食糧管理特別会計との統合が予定されているところでもあり、本院としては、基盤特会における事業の運営状況等について、引き続き注視していくこととする。
ア 産業投資特別会計産業投資勘定から研究開発法人への出資状況と出資先の財務状況
13年度から17年度までの間における産業投資特別会計産業投資勘定(以下、アにおいて「産投勘定」という。)から7の研究開発法人への出資状況については、出資先の12年度末出資残高(11勘定)5114億円、13年度から17年度までの18勘定の合計で、新規出資額1228億円、出資回収額39億円、出資償却額2879億円、7研究開発法人以外からの承継額5億円となっており、17年度末出資残高は6法人14勘定で3428億円(省庁別財務書類算定方法による評価額1104億円)である。
13年12月の特殊法人等整理合理化計画等により、研究開発法人が委託又は出資により行う研究開発業務等は、収益改善策を検討しつつ、外部有識者による評価に基づき、収益可能性のある場合等に限定することとなった。このことなどから、廃止された基盤技術研究促進センターを除く6研究開発法人への産投勘定からの新規出資額は、13年度から17年度まで順次346億円、258億円、243億円、213億円、166億円となっており、減少傾向にある。
本院において、上記の18勘定を17年度までの業務状況等から態様別に区分すると、表11のとおり、〔1〕引き続き事業を実施していく勘定(事業型勘定)は5勘定、〔2〕既に実施した出資金等の管理、回収業務のみを行うなどしていく勘定(管理型勘定)は9勘定、〔3〕事業の終了により廃止した勘定(廃止勘定)は4勘定である。
表11 7研究開発法人の名称、18勘定の態様別状況
研究開発法人名
|
事業型勘定
|
管理型勘定
|
廃止勘定
|
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
|
基盤技術研究促進勘定
|
鉱工業承継勘定
|
\
|
研究基盤出資経過勘定
|
|||
特定事業活動等促進経過勘定
|
|||
(独)情報通信研究機構
|
基盤技術研究促進勘定
|
通信・放送承継勘定
|
衛星所有勘定
|
出資勘定
|
|||
(独)医薬基盤研究所
|
研究振興勘定
|
承継勘定
|
\
|
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構
|
\
|
民間研究促進業務勘定
|
\
|
(独)情報処理推進機構
|
事業化勘定
|
地域事業出資業務勘定
|
技術事業勘定
|
特定プログラム開発承継勘定
|
地域ソフトウェア教材開発承継勘定
|
||
(独)科学技術振興機構
|
文献情報提供勘定
|
\
|
\
|
基盤技術研究促進センター
|
\
|
\
|
1勘定(勘定区分なし)
|
17年度末の出資先(研究開発法人)の財務状況を勘定の態様別にみると次のとおりとなっている。
〔1〕 事業型勘定5勘定への産投勘定出資残高は1753億円であり、その財務状況は5勘定で繰越欠損金1596億円(産投勘定出資相当分1428億円)を抱えている。しかし、収益改善措置の効果の発現の状況が見えてくるまでにはなお時間を要することなどから、現段階において、将来の状況を見極めるのは困難である。事業型勘定の財務状況等及び新規事業の採択の適正性については、引き続き、注視していくことが必要である。
〔2〕 管理型勘定9勘定への産投勘定出資残高は1675億円であり、その財務状況は8勘定で繰越欠損金1044億円(産投勘定出資相当分987億円)を抱えている。9勘定の17年度末の資産総額は816億円、負債総額は85億円、差引き純資産額は731億円(産投勘定出資相当分689億円)である。管理型勘定に対する産投勘定出資額の回収については、この純資産が基礎になる。管理型勘定へ産投勘定から出資した額については、各勘定の財務諸表等によりその債券等及び株式等の資産状況に留意し、産投勘定への回収状況等を注視していくことが必要である。
〔3〕 廃止勘定4勘定は、勘定廃止の際に産投勘定出資償却額が生じており、その合計額は2879億円となっていた。このように多額の出資償却額を生じた事態については、今後の産投勘定の出資に当たり十分に留意する要がある。
イ 電源開発促進対策特別会計から核燃料サイクル開発機構への出資状況と機構の財務状況
(ア)核燃料サイクル開発機構の概要
核燃料サイクル開発機構(以下「サイクル機構」という。)は、10年10月1日に動力炉・核燃料開発事業団が移行したものであり、17年10月1日に解散し、同日、サイクル機構及び日本原子力研究所の権利及び義務を承継した独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「新機構」という。)が設立されている。
(イ)国の出資状況
サイクル機構の収入支出は、国の一般会計からの出資金、補助金等に係る収入支出を経理する法人一般会計と、電源開発促進対策特別会計からの出資金、補助金等に係る収入支出を経理する法人特別会計の各会計に区分して整理することとなっている。
サイクル機構(動力炉・核燃料開発事業団の期間も含む。)の昭和42年度から平成17年度(17年度は9月30日)までの収入決定済額は累計5兆2488億円(うち法人特別会計分3兆2435億円)である。収入決定済額累計のうち政府出資金は2兆9070億円(うち法人特別会計分1兆4690億円)で、国の出資金が収入の過半を占めている。なお、政府出資金の総額は、上記の2兆9070億円に昭和42年10月の設立時に引き継いだ原子燃料公社に対する政府出資155億円を加えた2兆9225億円である。
(ウ)サイクル機構の財務状況
サイクル機構における損益構造をみると、補助金部門においては、平成13年度以前は国の補助金及び事業外収入を収入として、役職員給与等を支出しており、いずれも損益計算書の収益及び費用に計上されるため、損益は基本的に均衡することとなる。出資金部門においては、13年度以前は出資金並びに事業収入、事業外収入、借入金及び繰越金を収入として、研究開発に係る運営費や施設整備費等を支出している。収入については、事業収入及び事業外収入は収益に計上されるが、サイクル機構の主な財源となっている出資金は資本の増加となり収益には計上されない。一方、支出については、借入金返済を除き、すべて当年度の費用又は減価償却費等として後年度にわたる費用として費用化されることから、毎年度多額の損失金が発生し、13年度末現在の欠損金は2兆3739億円となっている。
14年度以降は出資金に代わり、研究費補助金や施設整備費補助金が交付されることとなり、これらは収益に計上されるため、これらの補助金に係る収入支出に関しては、基本的に損益は均衡することとなった。そして、主として13年度以前に取得した固定資産の減価償却費により毎年度損失金が発生しているが、その額は減少してきていて、17年9月30日現在の欠損金は2兆5657億円となっている。
(エ)新機構への資産及び負債の承継
サイクル機構の最終貸借対照表の資産合計5507億円のうち、17年9月30日現在の一定額以上の資産を時価評価して、土地等が47億円の評価増となり、時価評価したすべての資産5543億円と、資産見返補助金等624億円を除くすべての負債378億円を新機構の資産及び負債として承継した。そして、表12のとおり、開始貸借対照表のうちサイクル機構から承継した資産、負債及びその差額については、新機構の電源利用勘定及び一般勘定として整理したが、資本金は最終貸借対照表の3兆0161億円(うち政府出資金2兆9225億円)から5164億円(同5004億円)と大幅に減少した。
表12 サイクル機構の最終貸借対照表及び新機構の開始貸借対照表(サイクル機構分)
(単位:億円)
\
|
最終貸借対照表(一般、特別各会計別)
|
開始貸借対照表(サイクル機構分)
|
|||||
法人一般会計
|
法人特別会計
|
計
|
電源利用勘定
|
一般勘定
|
計
|
||
(資産)
|
流動資産
|
234
|
543
|
778
|
564
|
28
|
592
|
固定資産
|
807
|
3,921
|
4,728
|
4,910
|
40
|
4,950
|
|
資産合計
|
1,041
|
4,465
|
5,507
|
5,475
|
68
|
5,543
|
|
(負債)
|
流動負債
|
17
|
237
|
255
|
305
|
17
|
322
|
固定負債
|
50
|
697
|
747
|
56
|
—
|
56
|
|
負債合計
|
68
|
934
|
1,003
|
361
|
17
|
378
|
|
(資本)
|
資本金
|
14,762
|
15,399
|
30,161
|
5,114
|
50
|
5,164
|
(政府出資金)
|
(14,535)
|
(14,690)
|
(29,225)
|
(4,953)
|
(50)
|
(5,004)
|
|
(民間出資金)
|
(226)
|
(709)
|
(935)
|
(160)
|
(—)
|
(160)
|
|
欠損金
|
△13,788
|
△11,868
|
△25,657
|
—
|
—
|
—
|
|
資本合計
|
973
|
3,530
|
4,503
|
5,114
|
50
|
5,164
|
|
負債・資本合計
|
1,041
|
4,465
|
5,507
|
5,475
|
68
|
5,543
|
上記の(1)から(4)までの検査結果からみた各特別会計における財政統制上の課題は、次のとおりである。
ア 特別会計における透明性について
国の会計の財務等に関し、その情報を積極的に国民に提供し、財政の透明性を高めていくことは、国の会計に対する財政統制を有効に機能させるための前提となるものである。しかし、前記(1)のとおり、透明性の確保は必ずしも十分には図られていない状況となっている。
イ 繰越額・不用額について
繰越額・不用額の発生は、予算の執行上、当然その発生は想定されるものではあるが、その額が多額かつ継続的に発生していながら見直しがなされていない特別会計については、当該特別会計の事業の性格上やむを得ないものを除き、繰越しを例外的に認めている制度の趣旨及び決算の予算への的確な反映という要請からみて財政統制が十分に機能しているとは必ずしもいえない状況にあると認められる。
ウ 決算剰余金について
特別会計の中には、各年度とも同種の事由により、多額の決算剰余金が継続して発生しているものが見受けられ、また、決算剰余金の処理として翌年度の歳入に繰り入れられる金額の中には、その有効活用を図るなど決算剰余金を縮減する措置の検討対象とすることが特に重要と考えられる部分も少なからずある。
多額の決算剰余金が継続して発生する背景については、上記の繰越額・不用額の継続的な発生のほか、特別会計によっては、歳出規模に連動せず直入される特定財源があることがその要因の一つになっているものもあり、財政資金の効率的活用を図る上で、財政統制が機能しにくい状況となっている。
エ 積立金等について
積立金等の保有量については、設置目的、使途、特別会計の事業規模等に応じ、それぞれ適正規模があると考えられるが、ほとんどの資金においては、そのような基準を具体的に定めていない。このため、積立金等の残高が適正な水準であるかどうかを判断できず、資金の有効活用を図る上での財政統制が機能しにくい状況となっている。
オ 予算積算と執行状況の対比について
予算の執行に当たっては、予算成立後の状況変化に応じ、執行を見合わせる必要が生じたり、より効率的な執行が可能となったりして、予算積算とかい離が生じる場合があることは考えられる。しかし、特段の事情がない限り、執行実績と予算積算とがかい離している状態が継続すること、また、予算積算と執行実績とが対比できない事態が継続することは、財政統制が働きにくくなるおそれがある。
カ 出資法人への出資の状況について
産業投資特別会計産業投資勘定の出資法人の財務状況をみると、17年度末において、ほとんどの勘定は繰越欠損金を抱えており、その合計額は2641億円(産業投資勘定出資相当分2416億円)に上っている。また、電源開発促進対策特別会計の出資先であるサイクル機構における解散時の財務状況をみると、欠損金は2兆5657億円(特別会計からの出資金等に関する会計に係る分は1兆1868億円)に上っている。
科学技術の研究開発に係る法人に対する国からの出資に関して、国は、出資法人に対し、新規事業の採択の適正性、財務状況等について常に注視し、適切な管理を行う要がある。
各府省が所管する特別会計について、参議院からの検査要請に基づき、財務等の情報に関する透明性、多額な繰越額・不用額、決算剰余金の状況、積立金等の残高の状況、予算の執行状況、特に予算積算との対比及び出資法人への出資の状況に関し、財政統制の面に着眼して検査した。
これらの検査結果は、上記2の各項に記述したとおりであるが、本報告で特別会計の課題として示した事項については、政府においても、現在、特別会計に係る事務事業の合理化及び効率化を図り、国民への説明責任を十分に果たせるようにするとともに、財政の健全化に向けた特別会計改革への取組を行っている。
特別会計は、一般会計とともにその財政活動を通して国民生活に大きな影響を及ぼしており、今後に予定されている統合等を経て特別会計が一新されたとしても、その財政活動に期待される基本的な役割は変わらないと考えられる。
したがって、一般会計の厳しい財政の現状にかんがみ、各特別会計の今後の財政運営に当たっては、特別会計を所管している各府省において、次のような点に留意して見直しを進めるとともに、政府一体として、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律第47号)等の趣旨に沿い、財政状況の一覧性の確保、剰余金及び積立金の縮減等現在行っている特別会計の改革を着実に実施し、各特別会計における財政統制をより実効あるものにしていくことが重要である。
ア 一般会計からの繰入金や特定財源、繰越額・不用額、決算剰余金や積立金等、出資法人に対する出資等について、更に分かりやすい情報提供に努め、各特別会計の透明性の向上を図ること
イ 予算の執行状況や決算の精査、分析を一層徹底し、その結果を的確に予算に反映させること
ウ 決算剰余金及び積立金等の内容や残高に留意し、各特別会計やその財源の性格、事業に対する需要の動向等からみて可能な場合は、下記の方策等を講ずることにより、一般会計への繰入れも含めてその有効活用を図るなどの検討を行うこと
(ア)決算剰余金の一般会計への繰入れ等に必要な規定の整備を図ること
(イ)積立金等の適正な保有規模について検討すること
エ 事務事業の適切な管理を図り、歳出の合理化に向けた予算執行管理を徹底すること
オ 出資法人に対して、新規事業の採択の適正性、財務状況等について常に注視するなど出資者として適切な管理を行うこと
本院としては、上記の各項を含む特別会計全体の見直しに関する進展を注視するとともに、各特別会計における財政統制の状況について、今後とも多角的な観点から検査を実施していくこととする。