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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第3節 不当事項に係る是正措置等の検査の結果

第1 検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況について


第1 検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況について

検査対象
54省庁等
是正措置の概要
本院が不当事項として検査報告に掲記したものについて、国損を回復するなどのために省庁等が債権等を管理して債務者等から返還させるなどの是正措置を行うもの
是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
29省庁等、465件
13,180,403,233円
上記のうち金銭を返還させる是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
28省庁等、462件
13,078,786,476円
 
(検査報告年度 昭和21年度〜平成18年度)

1 不当事項に係る是正措置の概要

 本院は、会計検査院法第29条第3号の規定に基づき、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を不当事項として検査報告に掲記している。
 省庁及び団体(以下「省庁等」という。)は検査報告に掲記された不当事項に対して、省庁等が行った又は行う予定の是正措置について説明する書類を作成しており、この書類は「検査報告に関し国会に対する説明書」として毎年国会に提出されている。
 検査報告に掲記された不当事項に係る是正措置には次の方法がある。
〔1〕  補助金、保険給付金等の過大交付、租税、保険料等の徴収不足、不正行為に係る不当事項に対して、省庁等が指摘金額相当額を債権として管理して、返還させたり徴収したりなどすることによる是正措置(以下「金銭を返還させる是正措置」という。)
〔2〕  租税及び保険料の徴収過大等に係る不当事項に対して、省庁等が指摘金額相当額を還付等することによる是正措置(以下「金銭を還付する是正措置」という。)
〔3〕  設計及び施工が不適切な構造物等に係る不当事項に対して、省庁等が手直し工事、体制整備等を行うことによる是正措置(以下「手直し工事等による是正措置」という。)
〔4〕  会計経理の手続が法令等に違反しているが省庁等に実質的な損害が生じているとは認められないなどの不当事項に対して、同様の事態が生じないよう指導の強化を図るなどの再発防止策を講ずる是正措置

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 検査報告に掲記した不当事項については、省庁等において速やかに不当な事態の是正が図られるべきであるが、特に金銭を返還させる是正措置を必要とするものについては、金銭債権としての性格上、管理が長期間にわたるものがあることも想定される。
 そこで、本院は、合規性等の観点から、是正措置が適切に執られているか、債権の管理が適切に行われているかなどに着眼して検査した。そして、昭和21年度から平成18年度までの決算検査報告に掲記した不当事項について、関連する54省庁等における20年7月末現在の是正措置の状況を対象として、38省庁等において会計実地検査を行うとともに、残りの16団体については、報告を求めて、報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(検査の結果)

 昭和21年度から平成18年度までの決算検査報告に掲記した不当事項についてみると、是正措置が未済となっているものは29省庁等における465件13,180,403,233円である。このうち金銭を返還させる是正措置を必要とするものは28省庁等における462件13,078,786,476円となっている。これを、平成18年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る状況と17年度以前の決算検査報告に掲記した不当事項に係る状況とに分けて記述すると、次のとおりである。

(1) 平成18年度決算検査報告に掲記した不当事項の是正措置の状況

 検査の結果、平成18年度決算検査報告に掲記した不当事項361件(指摘金額の合計10,162,477,361円)のうち、324件9,440,833,779円(注1) については20年7月末までに是正措置が執られている。
 一方、37件721,643,582円については是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが36件719,063,050円あり、その状況は表1のとおりとなっている。そして、手直し工事等による是正措置を必要とするもの(注2) が1件2,580,532円ある。
 金銭を返還させる是正措置を必要とするもののうち、日本郵政公社(注3) が管理していた不当事項に係る債権18件404,138,868円(注4) については、郵政民営化法(平成17年法律第97号)に基づき郵便事業株式会社、株式会社ゆうちょ銀行又は株式会社かんぽ生命保険(以下、これらの3会社を合わせて「郵政3社」という。)にそれぞれ承継されたこととなっている。このうち3件72,887,665円の債権の一部である50,655,518円については、20年9月末現在で、一部の書類の所在が確認できていないなどのために、郵政3社各社の債権額として確認するに至っていない。

 324件9,440,833,779円  金銭を返還させる是正措置を行ったものは296件7,673,310,810円、金銭を還付する是正措置を行ったものは111,401,082円、手直し工事等による是正措置を行ったものは23件1,196,135,043円、再発防止策を講ずる是正措置を行ったものは37件459,986,844円となっている。なお、1件について複数の方法により是正措置を行ったものもあるため、是正措置の方法別の件数を合計しても324件と一致しない。また、指摘金額の一部でも是正措置が執られた場合は、是正措置が執られた金額として計上しているが、是正措置が完了するまでは是正措置が執られた件数として計上していない。以下、件数及び金額の記載方法は、本文及び表において同じ。
 手直し工事等による是正措置を必要とするもの  「海岸保全施設整備事業の実施に当たり、被覆石の設計が適切でなかったため、護岸の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの」 について、手直し工事を実施中であるが完了に至っていないものである(平成18年度決算検査報告)。
 日本郵政公社  平成19年10月1日に解散して、その業務等は、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構、日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険に承継された。
 18件404,138,868円  平成18年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る債権であり、このうち、17件350,898,156円に係る債権については、償却を実施して資産計上から除外しているが、この債権の償却は当該債権の請求権を放棄するものではなく、平成20年7月末現在で349,861,102円を引き続き債権として管理している。
表1 平成18年度決算検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況
(平成20年7月31日現在 単位:件、円)
省庁又は団体名
金銭を返還させる是正措置を必要とするもの
是正措置が執られているもの
是正措置が未済となっているもの
 
〔1〕 返還させる必要があるもの
〔2〕 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為
左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
内閣府(金融庁)
1
3,735,160
1
3,735,160
0
0
総務省
7
38,170,391
7
38,170,391
0
0
法務省
1
1,502,442
1
1,502,442
0
0
外務省
1
2,381,078
1
2,381,078
0
0
財務省
3
1,039,695,490
2
1,001,262,291
1
38,433,199
1
38,433,199
文部科学省
16
274,222,764
16
274,222,764
0
0
厚生労働省
176
5,306,912,944
167
5,097,152,400
9
209,760,544
1
16,505,445
6
98,942,412
2
94,312,687
農林水産省
24
493,687,585
21
483,487,585
3
10,200,000
3
10,200,000
経済産業省
15
69,357,987
15
69,357,987
0
0
国土交通省
16
129,519,827
16
129,519,827
0
0
環境省
1
3,206,022
1
3,206,022
0
0
防衛省
1
9,866,832
1
9,866,832
0
0
省庁計
262
7,372,258,522
249
7,113,864,779
13
258,393,743
1
16,505,445
9
109,142,412
3
132,745,886
公営企業金融公庫
1
146,550,521
1
146,550,521
0
0
国際協力銀行
1
8,423,015
 
60,480
1
8,362,535
1
8,362,535
日本私立学校振興・共済事業団
4
10,341,000
4
10,341,000
0
0
日本郵政公社(是正措置完了分)
32
285,598,521
32
285,598,521
0
0
日本郵政公社(債権管理額未確認分)
3
50,655,518
3
50,655,518
3
50,655,518
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
1
3,790,219
1
3,790,219
0
0
独立行政法人科学技術振興機構
1
3,525,289
1
3,525,289
0
0
独立行政法人日本学術振興会
3
26,101,958
3
26,101,958
3
26,101,958
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
1
2,233,959
1
2,233,959
0
0
独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構
2
62,738,608
2
62,738,608
0
0
独立行政法人雇用・能力開発機構
1
44,085,380
 
20,922,380
1
23,163,000
1
23,163,000
独立行政法人都市再生機構
1
7,242,100
1
7,242,100
0
0
国立大学法人北海道大学
1
2,572,689
1
2,572,689
0
0
国立大学法人筑波大学
1
1,684,495
1
1,684,495
0
0
国立大学法人東京大学
1
9,834,939
1
9,834,939
0
0
国立大学法人静岡大学
1
1,253,777
1
1,253,777
0
0
郵便事業株式会社
2
7,135,194
 
60,000
2
7,075,194
2
7,075,194
株式会社ゆうちょ銀行
13
293,930,021
 
50,000
13
293,880,021
13
293,880,021
株式会社かんぽ生命保険
7
52,418,135
 
987,054
7
51,431,081
7
51,431,081
団体計
70
1,020,115,338
47
559,446,031
23
460,669,307
19
411,404,349
4
49,264,958
総合計
332
8,392,373,860
296
7,673,310,810
36
719,063,050
20
427,909,794
13
158,407,370
3
132,745,886
注(1)
 省庁又は団体名は、日本郵政公社以外は是正措置を行う省庁等の平成20年7月末現在の名称としている。
注(2)
 公営企業金融公庫は平成20年10月1日に解散して、その業務等は地方公営企業等金融機構に承継された。
注(3)
 国際協力銀行の国際金融等業務は平成20年10月1日に株式会社日本政策金融公庫に、同行の海外経済協力業務は同日に独立行政法人国際協力機構に、それぞれ承継された。
注(4)
 日本郵政公社の民営・分社化前の平成19年9月末までに是正措置が執られた32件285,598,521円及び20年9月末現在で郵政3社各社における債権額として確認するに至っていない3件50,655,518円については日本郵政公社の欄に記載している。
注(5)
 日本郵政公社及び郵政3社については、1件が複数の会社に承継されていることなどから、「金銭を返還させる是正措置を必要とするもの」欄の各団体の件数を合計しても、団体計には一致しない。
注(6)
 是正措置が未済となっているもののうち、国際協力銀行、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険の全件並びに郵便事業株式会社の1件4,550,000円に係る債権については、償却を実施して資産計上から除外しているが、この債権の償却は当該債権の請求権を放棄するものではなく、債権自体は引き続き管理している。

(2) 平成17年度以前の決算検査報告に掲記した不当事項の是正措置の状況

ア 是正措置の状況

 検査の結果、昭和21年度から平成17年度までの決算検査報告に掲記した不当事項において、19年9月末(注5) 現在で是正措置が未済となっていた464件13,523,569,365円のうち、36件1,064,809,714円(注6) については20年7月末までに是正措置が執られている。
 一方、428件12,458,759,651円については20年7月末までに是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが426件12,359,723,426円あり、その状況は表2のとおりとなっている。そして、金銭を還付する是正措置を必要とするもの(注7) が1件156,225円、手直し工事等による是正措置を必要とするもの(注8) が1件98,880,000円ある。
 金銭を返還させる是正措置を必要とするもののうち、日本郵政公社が管理していた不当事項に係る債権251件8,132,744,708円(注9) については、郵政民営化法に基づき郵政3社にそれぞれ承継されたこととなっている。このうち88件2,808,100,778円の債権の一部である442,181,643円については、20年9月末現在で、一部の書類の所在が確認できていないなどのために、郵政3社各社の債権額として確認するに至っていない。

 19年9月末  平成19年度に本院が省庁等に是正措置の状況の報告を求めた基準日である。
 36件1,064,809,714円  金銭を返還させる是正措置を必要としたものが35件1,035,894,909円あり、このうち、金銭を返還させる是正措置を行ったものは16件798,555,917円、金銭を返還させたり徴収したりできずに不納欠損等による是正措置を行ったものは24件237,338,992円となっている。このほか、金銭を還付する是正措置を行ったものは592,425円、手直し工事等による是正措置を行ったものは1件28,322,380円となっている。なお、1件について複数の方法により是正措置を行ったものもあるため、是正措置の方法別の件数を合計しても36件と一致しない。
 金銭を還付する是正措置を必要とするもの  「大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額に過不足があったもの」 について、過大請求額の一部が患者等に対し未払となっているものである(平成10年度決算検査報告)。
 手直し工事等による是正措置を必要とするもの  「農村総合整備モデル事業の実施に当たり、整備した農道が通行可能な道路に接続していないため、補助の目的を達していないもの」 について、手直し工事を実施中であるが完了に至っていないものである(平成17年度決算検査報告)。
 251件8,132,744,708円  平成17年度までの決算検査報告に掲記した不当事項に係る債権であり、このうち、234件7,686,313,065円に係る債権については、償却を実施して資産計上から除外しているが、この債権の償却は当該債権の請求権を放棄するものではなく、平成20年7月末現在で232件7,669,637,492円を引き続き債権として管理している。

表2 平成17年度以前の決算検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況
(平成20年7月31日現在 単位:件、円)
省庁又は団体名
金銭を返還させる是正措置を必要とするもの
是正措置が執られているもの
是正措置が未済となっているもの
 
〔1〕 返還させる必要があるもの
〔2〕 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為
左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
金額
裁判所
1
22,100,000
1
22,100,000
1
22,100,000
内閣府(警察庁)
1
2,261,856
1
2,261,856
1
2,261,856
法務省
8
260,360,737
8
260,360,737
7
260,033,737
1
327,000
外務省
2
18,965,374
1
6,478,099
1
12,487,275
1
12,487,275
財務省
22
199,594,329
2
12,023,863
20
187,570,466
3
88,130,131
17
99,440,335
厚生労働省
100
2,804,181,279
15
632,869,079
85
2,171,312,200
12
118,588,142
57
971,730,680
16
1,080,993,378
農林水産省
11
978,520,637
 
285,579,325
11
692,941,312
1
47,313,172
8
639,052,267
2
6,575,873
経済産業省
11
86,392,904
1
12,786,041
10
73,606,863
1
29,601,833
8
42,548,239
1
1,456,791
国土交通省
4
58,930,481
 
400,000
4
58,530,481
3
54,618,171
1
3,912,310
防衛省
7
50,742,044
 
2,177,112
7
48,564,932
6
44,849,257
1
3,715,675
省庁計
167
4,482,049,641
19
952,313,519
148
3,529,736,122
35
667,496,299
76
1,673,446,446
37
1,188,793,377
農林漁業金融公庫
1
11,272,431
 
5,490,614
1
5,781,817
1
5,781,817
中小企業金融公庫
1
47,507,571
 
20,000
1
47,487,571
1
47,487,571
日本郵政公社(債権管理額未確認分)
88
442,181,643
88
442,181,643
87
442,161,643
1
20,000
独立行政法人情報通信研究機構
1
23,672,520
1
23,672,520
0
0
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
4
16,344,366
 
360,000
4
15,984,366
3
9,112,834
1
6,871,532
独立行政法人雇用・能力開発機構
4
219,913,569
 
6,485,871
4
213,427,698
4
213,427,698
独立行政法人国立病院機構
1
865,726
1
865,726
1
865,726
独立行政法人中小企業基盤整備機構
3
175,629,297
 
76,384
3
175,552,913
3
175,552,913
国立大学法人旭川医科大学
2
2,806,308
2
2,806,308
0
0
国立大学法人千葉大学
5
3,864,366
5
3,864,366
0
0
国立大学法人東京医科歯科大学
5
22,068,969
5
22,068,969
0
0
国立大学法人京都大学
1
24,008,650
 
450,000
1
23,558,650
1
23,558,650
国立大学法人大阪大学
5
26,217,376
 
170,000
5
26,047,376
1
15,984,431
4
10,062,945
国立大学法人奈良教育大学
1
15,000,000
 
112,000
1
14,888,000
1
14,888,000
国立大学法人広島大学
1
176,948
1
176,948
0
0
国立大学法人九州大学
1
30,140
1
30,140
0
0
日本放送協会
2
132,208,140
2
132,208,140
2
132,208,140
阪神高速道路株式会社
1
17,934,120
1
17,934,120
1
17,934,120
東日本電信電話株式会社
1
35,553,995
 
35,000
1
35,518,995
1
35,518,995
郵便事業株式会社
9
893,528,440
9
893,528,440
6
761,884,261
3
131,644,179
株式会社ゆうちょ銀行
157
4,761,152,360
1
11,541,822
156
4,749,610,538
156
4,749,610,538
株式会社かんぽ生命保険
111
2,035,882,265
1
5,633,751
110
2,030,248,514
110
2,030,248,514
独立行政法人農業者年金基金
3
5,749,494
 
586,697
3
5,162,797
3
5,162,797
団体計
294
8,913,568,694
16
83,581,390
278
8,829,987,304
259
8,281,463,423
12
406,796,757
7
141,727,124
総合計
461
13,395,618,335
35
1,035,894,909
426
12,359,723,426
294
8,948,959,722
88
2,080,243,203
44
1,330,520,501
注(1)
 省庁又は団体名は、日本郵政公社以外は是正措置を行う省庁等の平成20年7月末現在の名称としている。
注(2)
 農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫は平成20年10月1日に解散して、その業務等は株式会社日本政策金融公庫に承継された。
注(3)
 日本郵政公社の88件442,181,643円は、平成20年9月末現在で郵政3社各社における債権額として確認するに至っていないものである。
注(4)
 日本郵政公社及び郵政3社については、1件が複数の会社に承継されていることなどから、「金銭を返還させる是正措置を必要とするもの」欄の各団体の件数を合計しても、団体計には一致しない。
注(5)
 是正措置が未済となっているもののうち、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、阪神高速道路株式会社、東日本電信電話株式会社、郵便事業株式会社及び株式会社かんぽ生命保険の全件並びに独立行政法人中小企業基盤整備機構の2件(174,929,056円)及び株式会社ゆうちょ銀行の155件(4,745,860,538円)に係る債権については、償却を実施して資産計上から除外しているが、この債権の償却は当該債権の請求権を放棄するものではなく、債権自体は引き続き管理している。

イ 金銭を返還させる是正措置が未済となっているものの現状

 昭和21年度から平成17年度までの決算検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするもので20年7月末現在で是正措置が未済となっているものは409件11,917,541,783円(注10) である。これに対する直近1年間(19年8月1日〜20年7月31日)の是正措置の進ちょく状況及び債務者等の状況を態様別に示すと、次のとおりである(注11)

 409件11,917,541,783円  金銭を返還させる是正措置を必要とするもので平成20年7月末現在で是正措置が未済となっている426件12,359,723,426円から20年9月末現在で郵政3社各社における債権額として確認するに至っていない88件442,181,643円を控除したものである。なお、88件に係る債権のうち、管理すべき団体の一部が確認できている71件に係る未済額2,354,349,962円は409件11,917,541,783円に含めている。
 債務者等が複数いるために1件に複数の態様がある場合は、それぞれの態様に件数を計上しており、また、郵政3社については各社ごとに件数を計上しているため態様別の件数の計は409件と一致しない。

(ア)
債務者等が分割納付等を実施中であるもの
 
省庁
91件
2,135,238,613円
 
団体
109件
2,538,567,451円
 これらは、分割納付等が行われているが、債務者等の資力により是正措置の進ちょくの度合いは区々となっている。また、これらに係る直近1年間の返還額(注12) は、省庁567,746,840円、団体26,555,486円となっている。
 直近1年間の返還額  元本に充当された額のみを含めており、延滞金等に充当された額は含めていない。

(イ)
債務者等に対する督促、資産調査等が行われているものの是正措置が進ちょくしていないもの
 
省庁
88件
875,518,612円
 
団体
196件
5,686,420,881円
 これらは、是正措置の完了に向け督促、資産調査等が行われているものの、是正措置が進ちょくしていないものである。
 このうち、団体における185件5,531,343,470円に係る債権については、償却を実施して資産計上から除外しているが、この債権の償却は当該債権の請求権を放棄するものではなく、債権自体は引き続き管理している。
(ウ)
債務者等が行方不明であるなどのため納付等の是正措置が進ちょくしていないもの
 
省庁
23件
518,978,897円
 
団体
4件
162,817,329円
 これらは、債務者等が行方不明、収監中であるなどの理由により、是正措置が進ちょくしていないものである。

3 本院の所見

 上記2(2)イのとおり、是正措置が未済となっているものの中には、債務者等の資力が十分でなかったり、債務者等が行方不明であったりしていることなどのために、その回収が困難となっているものも存在するが、省庁等において、適切な債権管理を行うことなどにより、是正措置が適正かつ円滑に行われることが肝要である。
 また、郵政3社において、是正措置が未済となっている債権額を確認するに至っていない事態が見受けられたが、郵政3社各社が管理すべき債権額を早急に把握した上で適切な管理体制を執るなどの措置を講ずる必要がある。
 本院としては、是正措置が未済となっているものの状況について今後とも引き続き検査していくこととする。