ページトップ
  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第35 独立行政法人雇用・能力開発機構|
  • 不当事項|
  • その他

(576) 中小企業基盤人材確保助成金の支給が適正でなかったもの


(576) 中小企業基盤人材確保助成金の支給が適正でなかったもの

科目
一般勘定
部局等
静岡センター
支給の相手方
2事業主
中小企業基盤人材確保助成金の支給額の合計
10,700,000円(平成17年度〜19年度)
不適正支給額
10,700,000円(平成17年度〜19年度)

1 助成金の概要

(1) 中小企業基盤人材確保助成金

 独立行政法人雇用・能力開発機構(以下「機構」という。)は、雇用保険(前掲の「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの 」参照)で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、中小企業における良好な雇用の機会の創出の促進を図るために、中小企業基盤人材確保助成金(以下「助成金」という。)の支給に係る業務を行っている。助成金は、新たな事業の分野への進出又は事業の開始(以下「新分野進出等」という。)に係る改善計画を都道府県知事に提出して、その認定を受け、新分野進出等に必要な労働者として中小企業者の経営基盤の強化に資する労働者(以下「基盤人材」という。)を雇用保険の一般被保険者として新たに雇い入れ、又は当該基盤人材の雇入れに伴い当該基盤人材以外の労働者(以下「一般労働者」という。また、以下、「基盤人材」及び「一般労働者」を合わせて「対象労働者」という。)を雇用保険の一般被保険者として新たに雇い入れた中小企業者(以下「事業主」という。)に対して、雇い入れた対象労働者の人数に応じて所定の額を助成するものである。

(2) 助成金の支給

 助成金の支給要件は、〔1〕 雇用保険の適用を受けた事業主が実施計画期間(注1) 内に対象労働者を雇い入れたこと、〔2〕 事業主が新分野進出等に伴う事業を開始した日から最初の中小企業基盤人材確保助成金支給申請書(以下「支給申請書」という。)の提出までの間に施設等の費用として300万円以上を負担すること、〔3〕 対象労働者がその雇入れ日の前日から起算して過去3年間に事業主の企業に勤務したことがない者であることなどとなっている。そして、支給額は、対象労働者の雇入れの日(注2) から最初の6か月を第1期、次の6か月を第2期とする各期(以下「支給対象期」という。)について、対象労働者1人につき、原則として、基盤人材は70万円、一般労働者は15万円となっている。
 助成金の支給を受けようとする事業主は、支給対象期の末日の翌日から起算して1か月以内に、機構の各都道府県センターに対して、施設等の内容及び費用の額、対象労働者の氏名等を記載した支給申請書及び所要の添付書類を提出することとなっている。そして、各都道府県センターは、支給申請書等の内容を審査した上、支給決定を行い、これに基づいて助成金の支給を行うこととなっている。

(注1)
 実施計画期間  改善計画の認定を受けた期間内であり、かつ、実施計画の提出日の翌日を始期とし、改善計画の認定日の翌日から起算して1年を限度として実施計画において定められた期間
(注2)
 対象労働者の雇入れの日  賃金締切日が定められている場合は、雇入れ日の直後の賃 金締切日の翌日

2 検査の結果

 本院は、合規性等の観点から、事業主に対する助成金の支給決定が支給要件に照らして適正に行われているかなどに着眼して、静岡センターにおいて、事業主から提出された支給申請書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に同センターに調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
 検査の結果、2事業主が施設等の費用として実際には300万円以上の負担をしていないのにこれを負担したこととしたり、過去3年間に事業主の企業に勤務したことがある者を対象労働者としたりして申請していて、これらに対する平成17年度から19年度までの助成金の支給額計10,700,000円全額が適正に支給されておらず、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったことにもよるが、静岡センターにおいて支給申請書等の記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。