ページトップ
  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 国土交通省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

公共事業支援システムの最適化計画について、最適化の実施内容の再検証を行い、費用対効果に留意しつつ、最適化の実施に係る経費を有効かつ効率的に活用するために必要な見直し等を行うよう意見を表示したもの


(12) 公共事業支援システムの最適化計画について、最適化の実施内容の再検証を行い、費用対効果に留意しつつ、最適化の実施に係る経費を有効かつ効率的に活用するために必要な見直し等を行うよう意見を表示したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省 (項)国土交通本省共通費 等
社会資本整備事業特別会計 (治水勘定) (項)都市水環境整備事業費 等
(道路整備勘定)
(項)道路環境改善事業費 等
(港湾勘定)
(項)港湾事業費 等
(空港整備勘定)
(項)空港整備事業費 等
(業務勘定)
(項)業務取扱 費
平成19年度以前は
一般会計(組織)国土交通本省 (項)国土交通本省 等
治水特別会計(治水勘定) (項)河川事業費 等
道路整備特別会計 (項)道路事業費 等
港湾整備特別会計(港湾整備勘定)
(項)北海道港湾事業費
空港整備特別会計 (項)北海道空港整備事業費
部局等 国土交通本省
府省共通業務・システム最適化計画の概要 府省等の業務・システムについて、業務や制度の見直し、システムの共通化・一元化、業務の外部委託等を内容とし、併せてこれらによる経費や業務処理時間の削減効果を数値で明示した計画
システムを分散して運用しているなど、最適化が十分でない公共事業支援システムの最適化の実施等に係る経費 9億2918万円 (背景金額) (平成17年度〜21年度)

 本院は、府省共通業務・システムの最適化計画の策定や最適化の実施状況等について、平成22年10月28日に内閣総理大臣及び国土交通大臣に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
 これらの意見表示の内容は、内閣及び国土交通省それぞれの検査結果に応じたものとなっており、このうち、国土交通大臣に表示した意見は以下のとおりである。また、内閣総理大臣に表示した意見は内閣の項 に掲記している。

【意見を表示したものの全文】

 府省共通業務・システムである公共事業支援システムの最適化計画の実施状況等について

(平成22年10月28日付け 国土交通大臣あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 府省共通業務・システムの最適化計画等の概要

(1) 最適化計画の策定等の状況

 政府は、簡素で効率的な政府の実現を図るため、府省等の業務・システムについて、業務や制度の見直し、システムの共通化・一元化、業務の外部委託等を内容とし、併せてこれらによる経費や業務処理時間の削減効果の試算(以下「削減効果」という。)を数値で明示した最適化計画を策定し、最適化計画に定められた最適化の実施内容や最適化工程表等に基づき、業務・システムの最適化を着実に実施することとしている。
 そして、業務・システムの最適化について、政府全体として整合性を確保しつつ実施していくため、最適化に係る作業の統一的な実施手順を定めた「業務・システム最適化指針(ガイドライン)」(平成18年3月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定。以下「最適化ガイドライン」という。)等を策定している。
 最適化ガイドラインによると、業務・システムの最適化は、一過性のものではなく、最適化実施及びその評価を通じて不断の改善を行っていくことが重要であり、そのためには、PDCA(Plan(計画)—Do(実施)—Check(評価)—Act(改善))サイクルの確立が極めて重要となるとしている。
 最適化計画のうち、各府省等に共通する業務・システム(関係府省が一部のものを含む。以下「府省共通業務・システム」という。)の最適化計画は、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部に置かれている各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議で決定されている。そして、貴省が担当府省として最適化計画案の作成、システムの開発等を行っている公共事業支援システム(官庁営繕業務を含む。以下同じ。)について、平成17年度から21年度までの間に要した最適化の実施等に係る経費(注) は、計9億2918万余円となっている。

 最適化の実施等に係る経費  各府省共通業務・システムに関係するシステム開発費、保守・運用費、機器の賃借費等の支出金額で、貴省の公共事業支援システムのみに係る経費であり、他のシステムと共用している機器に係る経費等は除いている。

(2) 公共事業支援システムの最適化計画

ア 最適化の実施内容

 公共事業支援システムの最適化の実施内容の概要は、以下のとおりとなっている。

〔1〕  入札情報公表サイトの一元化

 既存の一元公表システムを活用して、各府省の入札情報を横断的に検索が可能なウェブサイトを設置し、国民及び入札参加希望者の情報収集の手間を軽減する。

〔2〕 入札関連情報の電子的配布による提供

 入札説明書及び図面等を入札参加希望者に電子的に配布するシステムを整備し、入札説明書等の配布窓口への訪問に要する手間を軽減する。また、貴省で構築する「入札説明書等ダウンロードシステム」を他府省に提供し、システム開発費用の重複を軽減する。

〔3〕 契約手続において共通化し得る業務の電子化

 各府省における契約に係る事務手続について、共通化し得る手続を電子化する一元的な「電子契約システム(工事・業務)」を構築・管理し、システム開発費用等の重複投資を排除する。また、総務省が開発する「電子契約システム(物品・役務)」の利用や調達関連システムとの連携によって、更なるシステム開発費用の軽減等を図る。

〔4〕 業務・工事に関する電子成果品の保管管理システムの改良・導入

 電子成果品の保管管理システムを導入していない省に対し、安価にシステム導入が図れるよう、既に構築されたシステムを無償公開し、重複して発生するシステム開発費用を軽減する。

イ 最適化の実施による効果

 入札情報公表サイトの一元化及び入札関連情報の電子的配布による提供によって、年間約1.3億円の運用経費及び約4.2億円の開発経費の削減が、また、契約手続において共通化し得る業務の電子化及び業務・工事に関する電子成果品の保管管理システムの改良・導入によって、年間約18.0億円の運用経費及び約23.4億円の開発経費の削減並びに年間延べ約510日の削減業務処理時間が見込まれるとしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、18年10月に、参議院からの検査要請に基づき、「各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について」 として検査結果を報告し、今後とも多角的な観点から検査を実施していくとしている。
 前記の検査要請に基づく検査結果の報告から3年以上が経過し、この間、運用を開始したり、最適化計画が改定されたり、削減効果等が見直されたりしている府省共通業務・システムがあることなどを踏まえて、本院は、経済性、効率性、有効性等の観点から、公共事業支援システムの最適化計画の策定や最適化の実施は適切に行われているかなどに着眼して検査を行った。
 検査に当たっては、担当府省である貴省及び高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部に関する事務を処理する内閣官房において、最適化計画の進ちょく状況、削減効果の算定等について関係資料により実地に検査を行うとともに、貴省から最適化の実施等に係る調書の提出を受けて検査を実施した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 公共事業支援システムの最適化の状況

 貴省が、入札情報公表サイトの一元化のために運用している公共調達検索ポータルサイト、入札関連情報の電子的配布による提供のために運用している入札説明書等ダウンロードシステム及び業務・工事に関する電子成果品の保管管理のために運用している電子納品・保管管理システムの3システムについて、貴省における利用の状況等を検査したところ、以下のような事態が見受けられた。

ア システムの運用について一元化による効率化を検討していないもの

 システムの運用についてみると、入札説明書等ダウンロードシステムは全国11か所に、また、電子納品・保管管理システムは全国12か所に、それぞれサーバ等の機器が分散して設置されており、各地方整備局等がそれぞれ独自に運用していた( 参照)。
 そして、貴省は、最適化に当たり、上記のようにサーバ等の機器を地方整備局等に分散して設置して運用する場合と、本省等に集約するなどして全国を一元化したシステムを運用する場合との経済性や効率性等の比較、検討を行っていなかった。

表 国土交通省における公共事業支援システムの利用状況
システム名
国土交通省の部局
公共調達検索ポータルサイト(一元的な入札情報公表サイト) 入札説明書等ダウンロードシステム 電子納品・保管管理システム
本省 大臣官房官庁営繕部 入札情報サービス 電子入札施設管理センター(1か所) <利用せず>
航空局 <利用せず> <利用せず> <利用せず>
地方整備局
(全国8か所)
港湾空港部 港湾空港関連入札・契約情報 国土技術政策総合研究所(1か所) 国土技術政策総合研究所(1か所)注(1)
営繕部 入札情報サービス 各地方整備局(8か所) <利用せず>
上記以外の部局 各地方整備局
(8か所)
北海道開発局 港湾空港部 入札情報サービス 北海道開発局(1か所) 国土技術政策総合研究所
(1か所)注(2)
営繕部 <利用せず>
上記以外の部局 北海道開発局
(1か所)
地方航空局(全国2か所) <利用せず> <利用せず> 各地方航空局
(2か所)注(3)
海上保安庁 <利用せず> <利用せず> <利用せず>
備考 入札情報公表サイトは2種類 内はサーバの設置箇所数
計11か所
( )内はサーバの設置箇所数
計12か所

注(1)注(2) は同一サーバ
注(3) 地方整備局及び北海道開発局の港湾空港部が行った空港関係分も各地方航空局で保管管理している。

イ システムの利用について一元化の検討を十分に行っていないもの

 前記3システムの利用実態について検査したところ、次のように、システムの利用が区々となっていて、最適化に当たって、システムの利用について一元化の検討を十分に行っていない状況となっていた( 参照)。
〔1〕  入札情報公表サイトは、全国の8地方整備局の港湾空港部が発注する港湾空港関係の公共事業に関するサイトとそれ以外の公共事業に関するサイトとに分かれていて、二つの異なるシステムが運用されており、相互に検索ができないシステムとなってい る。また、本省航空局、地方航空局及び海上保安庁が発注する公共事業は、上記いずれのサイトにおいても検索することができない状況となっている。
〔2〕  入札説明書等ダウンロードシステムは、本省航空局、地方航空局及び海上保安庁が利用していない。ただし、このうち本省航空局及び地方航空局については同システムの導入を検討中であるとしている。
〔3〕  電子納品・保管管理システムは、本省大臣官房官庁営繕部、本省航空局、各地方整備局営繕部、北海道開発局営繕部及び海上保安庁が利用していない。ただし、このうち、海上保安庁を除く各部局は今後の対応について検討中であるとしている。

(2) 公共事業支援システムの最適化計画についての見直しの必要性

 最適化ガイドラインによれば、複数の府省、部局、課室等で同様の処理が行われている業務については、当該業務の全部又は一部について情報システムを活用し、同一の業務処理方法を適用する場合は、情報システムの一元化・集中化を図り、汎用的な一つの情報システムを関係する複数の府省、部局、課室等で共同利用することとされている。
 しかし、現状の公共事業支援システムの最適化は、前記のように、システムを各地域ごとに分散して運用していて、それらのシステムを一元化することによって効率化を図るための検討を行っていなかったり、システムの利用の一元化の検討を十分に行っていなかったりしていて、事務処理の電子化・共通化等による簡素で効率的な政府の実現という最適化計画本来の目的を十分に達成していない状況にあり、最適化の実施内容についての再検証とともに最適化計画の見直しが必要であると認められる。

(改善を必要とする事態)

 公共事業支援システム(17年度から21年度までの最適化の実施等に係る経費計9億2918万余円)において、各システムを分散して運用しているなどの事態は、最適化が十分でなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、PDCAサイクルによる管理の中で、貴省において、公共事業支援システムにおける最適化の実施内容の検討を十分行っていないことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

 政府は、今後とも府省共通業務・システムの最適化の取組を進めていくとしており、最適化の実施等に必要な経費も多額に上ることが見込まれている。そして、最適化の取組において、PDCAサイクルを適切に確立し、最適化計画の策定や最適化の実施を適切に行うことが求められる。
 ついては、貴省において、公共事業支援システムの最適化計画について、最適化の実施内容の再検証を行い、費用対効果に留意しつつ、最適化の実施に係る経費を有効かつ効率的に活用するために必要な見直し等を行うよう意見を表示する。