法人税法では、期末における資本金等の額が1億円以下の普通法人(以下「中小企業者」という。)については、当該事業年度の所得金額のうち800万円以下の部分の金額に対する法人税率は、中小企業者のぜい弱な資金調達能力や零細な事業規模を踏まえ、中小企業者は担税力が弱いという理由から特例が適用されている。しかし、多額の所得があり、担税力が弱いとは必ずしも認められない中小企業者に対しても、一律に法人税率の特例が適用されている事態が見受けられた。一方、財務省及び経済産業省において、法人税率の特例が有効に機能しているかについて、法人の所得金額の状況から検証することは行われていなかった。
したがって、財務省及び経済産業省において、中小企業者に対する法人税率の特例の適用範囲について検討を行うなどの措置を講ずるよう、財務大臣及び経済産業大臣に対して平成22年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、財務本省及び経済産業本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、財務省は、本院指摘の趣旨に沿い、中小企業者に対する法人税率の特例の適用範囲について検討するため、本院が表示した意見を税制調査会に示し、税制調査会はこれを検討事項としていた。そして、税制調査会で検討が行われた結果、平成23年度税制改正大綱(平成22年12月16日閣議決定)において、経済産業省が中小企業者に対する法人税率の特例の適用実態を精査した上で、24年度税制改正において更に検討することとされている。
また、経済産業省は、当該大綱を受けて、本院指摘の趣旨に沿い、中小企業者に対する法人税率の特例の効果の検証を行うため、23年7月に所得の状況からみた中小企業者の実態等の調査を行っていた。そして、経済産業省は、この調査結果を踏まえて、法人税率の特例の適用実態を精査し、中小企業者に対する法人税率の特例について検討した後、財務省の確認等を受けるとともに、調査結果を税制調査会に報告する予定としている。