柔道整復師の施術に係る療養費(以下「療養費」という。)の支給対象となる負傷は、急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれないとされており、また、単なる肩こり及び筋肉疲労に対する施術は療養費の支給対象外であるとされている。そして、施術は、療養上必要な範囲及び限度で行うものとされ、とりわけ「長期又は濃厚な施術」とならないよう努めることとされている。しかし、頻度が高い施術、長期にわたる施術等の事例が多数見受けられたり、また、患者からの聞き取りによる負傷原因が外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫ではない患者に施術が行われていたりなどして請求内容に疑義があるのに、これらの施術に対して十分な点検及び審査が行われないまま療養費が支給されている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」等がより明確になるよう検討を行うとともに、保険者等と柔道整復療養費審査委員会及び国民健康保険等柔道整復療養費審査委員会(以下、両者を合わせて「柔整審査会」という。)に対して、施術が療養上必要な範囲及び限度で行われているかに重点を置いた点検及び審査を行うよう指導するなどして体制を強化し、内科的原因による疾患並びに単なる肩こり及び筋肉疲労に対する施術は療養費の支給対象外であることを被保険者等に周知徹底するよう、厚生労働大臣に対して平成22年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、前記の算定基準等のうち一部の項目の算定の考え方等については、23年3月に地方厚生(支)局、都道府県等に対してその疑義解釈に関する事務連絡を発して、算定基準等がより明確になるよう周知を図っている。
また、22年11月に地方厚生(支)局及び都道府県に対して通知を発して、保険者等及び柔整審査会が行う点検及び審査の迅速化等を図るため、23年1月から申請書の様式を統一し、点検及び審査に関する指針の作成や審査体制の在り方等については、引き続き検討することとしている。
そして、内科的原因による疾患並びに単なる肩こり及び筋肉疲労に対する施術が療養費の支給の対象外であることを被保険者等に周知徹底することについては、適正な受診に向けて被保険者等の理解が進むよう、今後、保険者を通じた周知を実施していくこととしている。