林野庁は、林業の健全な発展と林業労働者の雇用の安定に寄与することを目的として、都道府県に国庫補助金等により資金を造成させて、林業就業促進資金貸付事業を実施している。しかし、資金を造成している29都道府県のうち26都府県において、資金を造成してから一度も貸付実績がなかったり、貸付実績があっても計画実施率が低かったりなどしているため、毎年度多額の年度末資金残高が発生して資金が滞留し有効活用されていない事態が見受けられた。
したがって、林野庁において、本件事業の実施状況の把握に努め、都道府県が貸付事業の存続の必要性や適切な資金規模を検討するための基準等を策定して都道府県に示し、事業存続の必要性や貸付需要に対応した適切な資金規模を検討させて、適切な資金規模を超える資金については、その国庫補助金相当額を国に納付させることとするなどして、資金の有効活用を図る処置を講ずるよう、林野庁長官に対して平成22年9月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、林野庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、林野庁は、本院指摘の趣旨に沿い、22年10月に通知を発出して、資金の在り方を検討するための基準等を策定し都道府県に示して、都道府県に将来の貸付けを見通した上で貸付需要に見合った資金規模や貸付事業存続の妥当性について検討させ、将来にわたり貸付けに活用されないと見込まれる額のうち国庫補助金相当額については国庫に納付させることとする処置を講じていた。