公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸等することを目的として整備されるものである。しかし、公営住宅を管理している事業主体において、明渡請求を猶予すべき特別の事情がない高額所得者に対して明渡請求を行っていなかったり、連続して認定を受けている収入超過者に対して公的資金により整備された住宅等のあっせんを行っていなかったりなどしている事態が見受けられた。
したがって、国土交通省において、事業主体に対して高額所得者等に対する明渡請求等の措置の実施状況やこれらの明渡しの促進等の措置を講じたことによる明渡実績等を定期的に報告させるとともに、その報告内容や措置が十分に実施されていないと認められる事業主体を公表したり、当該事業主体に対して適切に措置を実施するよう技術的な助言を行ったりするなどして、法令等に定める措置の確実な実施を促すよう、国土交通大臣に対して平成22年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、22年12月に都道府県等に通知を発するなどして、高額所得者等に対する明渡しの促進等の措置を適切に実施し、公営住宅の管理を適正に行うよう各事業主体に対して周知徹底するとともに、措置の実施状況等の調査を定期的に実施し報告させることとする処置を講じていた。また、23年3月に高額所得者等に対する明渡しの促進等の措置の実施状況について調査を実施するとともに、その報告内容により、同年6月に、都道府県等に事務連絡を発するなどして、措置が十分に実施されていないと認められる事業主体に対して、適切に措置を実施するよう措置に係る留意事項等について技術的な助言を行う処置を講じていた。
そして、高額所得者等に対する明渡しの促進等の措置が十分に実施されていないと認められる事業主体の公表については、次回の調査から行うこととしている。