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  • 東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関する国の支援等の実施状況に関する会計検査の結果について |
  • 第2 検査の結果

2 原子力損害賠償支援機構による資金援助業務の実施状況等


(1) 機構及び東京電力による特別事業計画の作成並びに支援業務の委託の状況

東京電力は、機構法第41条第1項に基づき、23年9月30日及び10月28日に機構に対して資金援助の申込みを行った。

機構は、同年10月28日に、資金援助に係る資金交付に要する費用に充てるために交付国債の交付を国から受ける必要があるとして、運営委員会の議決を経て、東京電力と共同して機構法第45条第1項に定める特別事業計画を作成し、主務大臣である内閣総理大臣及び経済産業大臣に対して認定を申請し、同年11月4日に認定を受けた(以下、同日に認定を受けた特別事業計画を「緊急特別事業計画」という。)。

緊急特別事業計画における資金交付額は、当初、要賠償額の見通し1兆0109億0800万円から補償契約に基づき支払われることとなる補償金1200億円を控除した8909億0800万円であったが、24年2月に計画が見直され、要賠償額の見通しが1兆7003億2200万円となったことから、当該金額から上記の1200億円を控除した1兆5803億2200万円となった。

その後、同年4月27日に、機構は、東京電力と共同して、損害賠償の本格化を見据え、緊急特別事業計画の内容を全面的に差し替えることとして特別事業計画の変更の認定を申請し、同年5月9日に主務大臣の認定を受けた(以下、同日に認定を受けた特別事業計画を「総合特別事業計画」という。)。

総合特別事業計画における資金交付額は、要賠償額の見通しが2兆5462億7100万円となったことから、当該金額から前記の1200億円を控除した2兆4262億7100万円となった。

その後、25年1月15日に、機構は、東京電力と共同して特別事業計画の変更の認定を申請し、同年2月4日に主務大臣の認定を受けた(以下、同日に変更の認定を受けた特別事業計画を「第2次総特」という。)。第2次総特における資金交付額は、要賠償額の見通しが3兆2430億7900万円となったことから、当該金額から前記の1200億円を控除した3兆1230億7900万円となった。

さらに、25年6月6日に、機構は、東京電力と共同して特別事業計画の変更の認定を申請し、同年6月25日に主務大臣の認定を受けた(以下、同日に変更の認定を受けた特別事業計画を「第3次総特」という。)。第3次総特における資金交付額は、要賠償額の見通しが3兆9093億3400万円となったことから、当該金額から前記の1200億円を控除した3兆7893億3400万円となった。

資金交付額を含めた緊急特別事業計画及び総合特別事業計画の主な内容は、図表2-1のとおりとなっている。

図表2-1 特別事業計画の主な内容

緊急特別事業計画(平成23年度~32年度)
<23年11月認定、24年2月変更認定
主要な項目 主な内容
①原子力損害の状況 ・福島第一原発における原子力損害の発生経緯
・原子力損害の態様として、中間指針に沿って損害項目ごとの賠償基
準を設定したほか、中間指針追補で追加された自主的避難等に係る
損害の賠償等も着実に実施
・原子力事故収束に向けたステップ1及びステップ2の達成、中長期ロ
ードマップに基づく研究開発の実施等
②要賠償額の見通し及び損害
賠償の迅速かつ適切な実施
のための方策
・1兆0109億円。計画改定で1兆7003億円
・福島原子力補償相談室の設置、賠償の業務運営改善(5つの約束)等
③事業及び収支に関する中期
的な計画
・事業運営は、賠償、原発の安定状態の維持及び福島第一原発1号機~
4号機の廃止、経営合理化等を主題とすること
・改革推進チーム、機構職員の派遣、ワーキンググループの設置等
・24年3月期の当期純損失5763億円、純資産7088億円。24年度以降の収
支について、原子力発電所の稼働(25年3月期に稼働、26年3月期に
稼働及び非稼働の3ケースを設定)と料金値上げ(なし、5%及び10
%の3ケースを設定)による25年3月期から33年3月期までの収支計画
④原子力事業者の経営の合理
化のための方策
・各種設備に係る設備投資計画等の見直し(抑制、効率化等)、資材
・役務調達費用、買電・燃料調達費用等コスト削減の徹底(23年度
で2374億円)、資産等の売却(原則3年以内に、不動産は時価ベース
で2472億円相当、有価証券は3301億円相当等)等
⑤原子力事業者による関係者
に対する協力の要請その他
の方策
・対金融機関:借換えなどのための融資等の随時実行による本計画認
定時の東京電力に対する与信維持
・対政投銀:3000億円の短期融資枠の設定(資金使途は被害者に対す
る賠償金支払等)
・対株主:無配継続
⑥原子力事業者の資産及び収
支の状況に係る評価に関す
る事項
・特別事業計画の前提となる政府の委員会報告の内容について、機構
による妥当性の確認
⑦原子力事業者の経営責任の
明確化のための方策
・役員報酬の減額(23年4月及び5月)
・社長等の退任(23年6月)
⑧原子力事業者に対する資金
援助の内容及び額
・要賠償額から国の補償金1200億円を控除した8909億円。計画改定で1
兆5803億円
⑨交付を希望する国債の額そ
の他資金援助に要する費用
の財源に関する事項
・23年度政府予算において計上されている2兆円の国債の交付を希望。
なお、当該国債の交付枠として3兆円を計上している23年度第3次補
正予算案が国会において可決された場合には、当該額を加えた5兆円
の国債の交付を希望
総合特別事業計画(平成24年度~33年度)
<24年5月認定、25年2月変更認定(第2次総特)及び6月変更認定(第3次総特)
主要な項目 主な内容
①原子力損害の状況 ・基本は緊急特別事業計画と同じ
・中間指針第二次追補による財物損害、避難費用、精神的損害等につ
いての賠償
・廃止措置関連費用として合理的な見積りが可能な範囲において9002
億円を計上(調査委員会は廃炉に係る負債総額を1兆1510億円と試
算)。高線量下での4基同時処理となり、新規の技術開発が必要。ま
た、プラント内部の実態把握が進んでおらず、廃棄物の処分方法等
により作業内容及び期間が変動するため、各工程の費用の積上げに
よる総額の見積は困難
②要賠償額の見通し及び損害
賠償の迅速かつ適切な実施
のための方策
・2兆5462億円。計画改定で3兆2430億円再改定で3兆9093億円
・財物、避難費用、精神的損害等について増額又は項目の追加
・農林漁業及び食品産業の風評被害に係る損害について賠償対象の拡

・賠償組織体制の強化(賠償業務全体で社員3,400名含む10,800人体
制、法務部門との連携強化等)
・迅速な支払の強化(合意書返送後1週間めど、自主的避難に係る賠償
については請求受付後3週間以内等)、和解仲介案の尊重(ADRセ
ンター申立て事案での争点整理協力、和解結果の基準活用)等
・復興推進策の実行(地元経済の再生や雇用の拡大、早期帰還等の支
援及び生活再建の促進や避難生活の負担軽減)
・機構の専門家チームによる巡回相談の実施、賠償金支払の「モニタ
リング」の実施等
③事業及び収支に関する中期
的な計画
・事業運営は、賠償、廃止措置等の責任を全うすること、情報発信や
公平・透明性の確保、エネルギーサービスの変革等を主題とするこ

・25年3月期~27年3月期の収支計画を策定。原発の1年後稼働ケースを
前提(25年4月以降、柏崎刈羽原子力発電所の各号機が順次稼働)。
26年3月期には営業利益1715億円を計上見込み、27年3月期には営業
利益3478億円、純資産1兆7478億円を計上見込み
④原子力事業者の経営の合理
化のための方策
・外部専門家を活用したデュー・デリジェンスを実施済み
・第Ⅰフェーズ(経常的な合理化)、第Ⅱフェーズ(構造的な合理化)、
第Ⅲフェーズ(戦略的な合理化)と時期ごとに合理化のための検討
を実施。緊急特別事業計画から6565億円目標を上積みし、10年間で3
兆3650億円のコスト削減を実施
⑤原子力事業者による関係者
に対する協力の要請その他
の方策
・対金融機関:社債市場への復帰等自律的な資金調達力が回復するま
での間の借換えなどによる与信維持、新規融資等の実行や短期の融
資枠の設定等による約1兆円の追加与信
・対株主:無配継続
⑥原子力事業者の資産及び収
支の状況に係る評価に関す
る事項
・資産については、政府の委員会報告における評価結果を経営合理化
の基礎データとして使用。収支についても、同委員会の評価結果の
精査及び評価を行い計画に反映
⑦原子力事業者の経営責任の
明確化のための方策
・取締役及び監査役の全員退任(24年6月)
・役員退職慰労金の受取辞退等
⑧原子力事業者に対する資金
援助の内容及び額
・要賠償額から国の補償金1200億円を控除した2兆4262億円。計画改定
で3兆1230億円
再改定で3兆7893億円
・機構による東京電力株式の引受け(払込金額総額1兆円)
⑨交付を希望する国債の額そ
の他資金援助に要する費用
の財源に関する事項
・5兆円の交付国債を受領済み

機構は、23年度に、特別事業計画の作成に係る支援業務を委託しており、13件で計9億5195万余円を支出している。このうち1件当たりの支出額が1億円以上の契約の状況は、図表2-2のとおり、5件で6億1598万余円となっている。

図表2-2 特別事業計画の作成に係る支援業務の委託の状況

(単位:千円)

契約件名 支出額 左のうち
東京電力
負担分
契約
方式
契約の相手方
特別事業計画の作成に関する支援業務 141,843 有限責任監査法人トーマツ
特別事業計画の作成に関する支援業務 106,675 西村あさひ法律事務所
特別事業計画の作成に関する支援業務 157,500 78,750 株式会社ボストン・コンサルティング・グループ
特別事業計画の作成に関する支援業務 105,343 52,671 有限責任監査法人トーマツ
特別事業計画の作成に関する支援業務 104,622 52,221 西村あさひ法律事務所
615,986 183,643
(注)
契約方式の欄中、「随」は随意契約である。

また、機構は、24年度に、認定を受けた総合特別事業計画の履行状況の確認等に係る業務を委託するなどしており、19件で計9億0142万余円を支出している。このうち1件当たりの支出額が1億円以上の契約の状況は、図表2-3のとおり、2件で3億8194万余円となっている。

図表2-3 特別事業計画の履行状況の確認に係る業務の委託の状況

(単位:千円)

契約件名 契約件名 契約
方式
契約の相手方
特別事業計画の作成等に関する支援業務 224,444 西村あさひ法律事務所
特別事業計画の作成及び履行に関する支援業務 157,500 株式会社ボストン・コンサルティング・グループ
381,944
(注)
契約方式の欄中、「随」は随意契約である。

これらの委託に当たっては、前記の内閣官房に設置された調査委員会による東京電 力の経営・財務の調査に係る委託業務を受けた者との随意契約が大半を占めている。

機構は、その理由として、東京電力の経営・財務の調査を行った者が、特別事業計 画の作成に係る支援業務や履行状況の確認等に係る業務を行うに当たって、優れた知 見を有していることなどを挙げている。

(2) 資金援助業務の実施状況

ア 東京電力が発行する株式の引受け等の状況

(ア) 機構における株式の引受けに係る業務の状況

機構は、機構法に基づく東京電力に対する資金援助の一環として、24年7月31日に東京電力の発行する株式を1兆円で引き受けている(当該株式の発行の状況については、後掲3(2)ウ(イ)において記述する。)。

機構は、引受けに当たって、前記の政府保証の限度額4兆円の範囲内で、金融機関から金利競争による入札により2回に分けて計1兆円の資金を借り入れている。その状況は図表2-4のとおりとなっていて、落札平均金利は第1回の入札が0.157%、第2回の入札が0.142%となっており、支払利息はそれぞれ7億8942万円、7億1464万余円、計15億0406万余円となっている。

図表2-4 1兆円の借入れに係る入札の状況

項目 第1回 第2回
入札実施日 平成24年5月22日 2024年6月14日
借入実行日 6月5日 6月28日
借入期間 1年 1年
入札方式 金利競争 金利競争
応募総額(応募倍率) 1兆0830億円(2.16倍) 1兆6914億円(3.38倍)
調達額 5000億円 5000億円
落札平均金利 0.157% 0.142%
支払利息 7億8942万円 7億1464万2000円

機構の入札と同時期に行われた借入期間が1年の他の政府保証付等の借入れに係る入札の実施状況についてみると、図表2-5のとおり、4件の落札平均金利の平均値は0.1105%となっており、上記の機構における借入れの落札平均金利は、第1回及び第2回の入札で、それぞれ0.0465ポイント及び0.0315ポイント、支払利息額では、それぞれ2億3692万円及び1億6214万余円高い状況となっている。政府保証が付された借入れについては、通常、貸付側のリスクに大きな差異はなく、結果として同程度の金利となると考えられる。しかし、このように機構が行った入札の落札平均金利が同時期に行われた他の入札と比べて割高になった要因としては、調達が借換えではなく新規に行われたものであったこと、調達額が5000億円と巨額に上るものであったことなどが考えられる。

図表2-5 機構の借入れと同時期に行われた他の政府保証付等の借入れの状況

項目 エネルギー対策特別会計
借入金
エネルギー対策特別会計
借入金
株式会社産業革新機構
政府保証付借入金
預金保険機構
政府保証付借入金
入札実施日 平成24年5月11日 24年6月12日 24年6月 24年6月20日
借入実行日 5月21日 6月20日 6月25日 6月29日
借入期間 1年 1年 1年 1年
入札方式 金利競争 金利競争 金利競争 金利競争
応募総額 1兆1350億円 1兆3310億円 3335億円 4244億円
調達額 3000億円 3000億円 760億円 791億円
落札平均金利 0.12% 0.11% 0.11% 0.11%
4件の平均金利 0.1105%

なお、機構は、24年6月5日及び同月28日の2回に分けて借り入れた計1兆円の資金を、同年7月31日に東京電力が発行する株式を引き受けて払い込むまでの間、譲渡性預金により運用していて、その利息収入は計9856万余円となっている。

一方、機構は、前記の資金調達に係る支援業務を金融機関に委託しており、その支出額は1億5750万余円となっている。また、機構は、東京電力が発行する株式の引受けに当たって、事前の調査等に係る支援業務を証券会社等に委託しており、その支出額は3412万余円となっている。

また、機構は、25年6月末までに、前記の24年度に借り入れた1兆円の借換えを、25年度一般会計予算総則で規定する政府保証限度額4兆円の範囲内で、金利競争による入札により行っている。その状況は、図表2-6のとおりとなっていて、落札平均金利は0.110%及び0.108%となっており、支払予定利息は2億7735万余円及び5億3900万余円、計8億1636万余円となっていて、前年度の落札平均金利を下回るとともに、同時期に行われた他の政府保証付等の借入れに係る入札における落札平均金利と同程度となっている。

そして、機構は、24年度の借入れの際と同様に、借換えに係る支援業務を金融機関に委託しており、その支出額は9240万円となっている。

図表2-6 1兆円の借換えに係る入札の状況

項目 第1回 第2回
入札実施日 平成25年5月20日 2025年6月13日
借入実行日 6月5日 6月28日
借入期間 6か月 1年
入札方式 金利競争 金利競争
応募総額(応募倍率) 1兆3715億円(2.74倍) 1兆4040億円(2.80倍)
調達額 5000億円 5000億円
落札平均金利 0.110% 0.108%
支払予定利息 2億7735万2783円 5億3900万9195円

なお、機構は、上記の第1回の借換えについて、今後25年度中に、2000億円の借入れ(借入期間:1年)及び計3000億円の機構債(政府保証付き)の発行(2年債として1500億円、4年債として1500億円)により、更に借り換えることを予定している。

(イ) 機構が引き受けた株式の売却等について

総合特別事業計画は、機構が引き受けることになる東京電力の発行する株式について、「機構は、東電の集中的な経営改革に一定の目途がつくか、又は社債市場において自律的に資金調達を実施していると判断した段階で(中略)保有議決権を2分の1未満に低減させて一時的公的管理を終結させ、(中略)一時的公的管理終結後、(中略)東電の収益及び財務の状況、株式市場の動向等を考慮しながら、東電の経営改革に悪影響を与えない範囲で、適切な時期に東電による機構所有株式の取得、普通株式への転換による株式市場への売却等によって、早期の出資金回収を目指す」とした上で、社債市場への復帰については、「東電は、社債市場への早期復帰が可能となるよう、(中略)適切な内部留保による着実な資本増強を図る。(中略)なお、社債市場への復帰時期は、2010年代半ば以降のできるだけ早い時期を目標とする」などとしており、出資金の回収時期についてある程度の見通しを示すにとどまっている。

機構は、その理由として、未曽有の災害である23年原発事故による被災者への賠償や、長期になると見込まれる福島第一原発の廃止措置に向けた安定化等の事業は緒に就いたばかりであり、出資金の回収時期の目標を提示できる段階ではないことを挙げている。

また、機構が、東京電力の発行する株式を引き受けるに当たっては、前記のとおり、①24年度の借入れに係る支払利息の計15億0406万余円、②資金調達に係る支援業務費用1億5750万余円、③事前の調査に係る支援業務費用3412万余円、④25年度の借換えに係る支払予定利息計8億1636万余円、⑤25年度の借換えに係る支援業務委託費9240万円、合計26億0444万余円の費用が発生しており、今後も更なる借換えに係る支払利息や支援業務委託費用等の発生が見込まれる。

総合特別事業計画では、東京電力が発行する株式の処分について、東京電力による機構所有株式の取得等を想定しているが、東京電力における内部留保の蓄積が進捗しない限り、機構における資金調達額1兆円及び東京電力が発行した株式の引受けに要した費用に係る回収の範囲及び時期は見通せない状況にある。

会計検査院としては、今後、資金調達額1兆円のほか、上記①から⑤までなどの東京電力が発行した株式を引き受けるのに要した費用を、機構がどのように回収していくのか、引き続き検査していくこととする。

イ 交付国債の償還請求及び賠償資金の交付の状況

前記のとおり、機構は、東京電力からの要望に応じて交付国債の償還請求を行い、東京電力が原子力損害の賠償に充てるための資金として交付している。その状況は、図表2-7のとおりとなっており、25年9月末までの交付額は、20回、計3兆0483億円となっている。

図表2-7 機構から東京電力への賠償資金の交付状況

東京電力から機構への
要望年月日
機構から東京電力への
資金交付年月日
資金交付額 資金交付
累計額
第1回 平成23年11月8日 23年11月15日 5587億円 5587億円
第2回 24年2月27日 24年 3月27日 1049億円 6636億円
第3回 3月30日 4月23日 2186億円 8822億円
第4回 4月25日 5月22日 466億円 9288億円
第5回 6月1日 6月29日 809億円 1兆0097億円
第6回 6月26日 7月26日 1071億円 1兆1168億円
第7回 7月31日 8月21日 1551億円 1兆2719億円
第8回 8月27日 9月24日 547億円 1兆3266億円
第9回 9月26日 10月24日 497億円 1兆3763億円
第10回 10月29日 11月27日 932億円 1兆4695億円
第11回 11月26日 12月18日 292億円 1兆4987億円
第12回 11月28日 12月27日 2503億円 1兆7490億円
第13回 12月21日 25年1月22日 2717億円 2兆0207億円
第14回 25年1月28日 2月22日 2106億円 2兆2313億円
第15回 3月21日 4月18日 2235億円 2兆4548億円
第16回 4月24日 5月21日 1549億円 2兆6097億円
第17回 5月24日 6月24日 1151億円 2兆7248億円
第18回 6月24日 7月24日 732億円 2兆7980億円
第19回 7月26日 8月21日 1762億円 2兆9742億円
第20回 8月27日 9月24日 741億円 3兆0483億円

(3) 機構への負担金の納付及び機構からの国庫納付の状況

ア 機構への負担金の納付の状況

(ア) 一般負担金年度総額の算定の状況

原子炉の運転等をしている原子力事業者は、前記のとおり、機構の事業年度ごとに、機構の業務に要する費用に充てるため、機構に対し、一般負担金を納付しなければならないこととされている。

そして、機構の事業年度ごとに原子力事業者から納付を受けるべき負担金の額として定められる一般負担金年度総額については、機構法第39条第2項において、①機構の業務に要する費用の長期的な見通しに照らし、当該業務を適正かつ確実に実施するために十分なものであること、②各原子力事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営に支障を来し、又は当該事業の利用者に著しい負担を及ぼすおそれのないものであることが要件とされている。

また、負担金率は、各原子力事業者の原子炉の運転等に係る事業の規模、内容その他の事情を勘案して定める基準に従って定められることとされている。

なお、機構が一般負担金年度総額及び負担金率を定めたり変更したりするときは、主務大臣の認可を受けなければならないこととされている。

一般負担金は、23年10月の一般電気事業供給約款料金算定規則(平成11年通商産業省令第105号。以下「算定規則」という。)の改正等により、電気料金の原価等を算定する基礎となる営業費に算入することが認められている。25年9月末までに、北海道電力株式会社、東北電力株式会社、東京電力、関西電力株式会社、四国電力株式会社及び九州電力株式会社の6原子力事業者が、電気料金の値上げの申請を行い、一般負担金を原価等を算定する基礎となる営業費に算入することが認められている。一方、中部電力株式会社、北陸電力株式会社及び中国電力株式会社の3原子力事業者は、同年9月末までに、電気料金の値上げの申請を行っていない。

23、24両年度における一般負担金年度総額、負担金率及び各原子力事業者の一般負担金の額の状況は図表2-8のとおりとなっており、一般負担金年度総額は、23年度に係る分が815億円(主務大臣の認可日24年3月30日)、24年度に係る分が1008億0465万円(同25年3月29日)となっている。

図表2-8 一般負担金年度総額等の状況

原子力事業者 平成23年度 24年度
負担金率(%) 一般負担金の額(千円) 負担金率(%) 一般負担金の額(千円)
北海道電力 4.00 3,260,000 3.77 3,803,330
東北電力 6.57 5,354,550 6.20 6,246,980
東京電力 34.81 28,370,150 38.51 38,819,820
中部電力 7.62 6,210,300 7.19 7,245,350
北陸電力 3.72 3,031,800 3.51 3,537,100
関西電力 19.34 15,762,100 18.24 18,389,120
中国電力 2.57 2,094,550 2.42 2,443,640
四国電力 4.00 3,260,000 3.77 3,803,330
九州電力 10.38 8,459,700 9.79 9,869,650
日本原子力発電 5.23 4,262,450 4.93 4,972,860
日本原燃 1.76 1,434,400 1.66 1,673,470
一般負担金年度総額 81,500,000 100,804,650
(注)
原子力事業者の名称中、「株式会社」は省略した。

機構によれば、23、24両年度における一般負担金年度総額を定めるに当たっては、東京電力に対する資金交付を行っている状況下では、収納した負担金が機構の損益計算を通じた利益として国庫に納付される状況が今後もしばらく続くため、前記①の要件は事実上機能しないとしている。

そして、前記②の要件により、23年度の一般負担金年度総額については、次のように定めたとしている。すなわち、各原子力事業者の過去10期分(13年度から22年度まで)の経常利益の平均額を参考に、各原子力事業者(非上場の日本原子力発電株式会社及び日本原燃株式会社を除く。)が、保有する原子炉の熱出力等を勘案して設定された負担金率に応じて一般負担金を賦課されたとしても、過去10期の平均配当総額と同等の額の配当ができるだけの利益を確保できる額を1630億円と算出した上で、機構の設立が23年9月であり、年度の残期間が約6か月であったことから、これに2分の1を乗じた815億円を23年度の一般負担金年度総額としている(一般負担金年度総額の算定についての詳細は巻末別表4を、負担金率の設定の詳細については巻末別表5をそれぞれ参照)。

これは、過去10期の平均配当総額と同等の配当ができるだけの利益を留保することとすれば、原子力事業者の円滑な事業運営にも支障を来さず、かつ、電気事業の利用者にも著しい負担を及ぼすことにはならないとの考えによるものである。

また、24年度の一般負担金年度総額については、23年度と同様の算定によれば通年分として1630億円となるが、一般負担金を電気料金の原価等を算定する基礎となる営業費に算入することが可能となったものの、電気料金の値上げを申請した場合の審査及び認可に要する期間を考慮する必要があることなどから、24年度分を通年分として納付させることは合理的でないとして、実際には1008億0465万円とされた。

これは、原子力発電所の再稼働が困難となることで原子力事業者の経営環境が厳しくなり、23年度と同程度の負担を求めることが厳しいものの、一般負担金を営業費に算入することで電気料金に転嫁できる状況となった以降については、これを電気事業者に負担させる取扱いとしても原子力事業者の円滑な事業運営に支障を来すことはなく、同時に、この程度の金額であれば、一般負担金が電気料金に転嫁されたとしても、電気事業の利用者に著しい負担を及ぼすことにはならないとの考えによるものである。

このように、これまでの一般負担金年度総額の決定においては、前記の機構法の定める要件のうち、原子力事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営に支障を来し、又は当該事業の利用者に著しい負担を及ぼすおそれのないものであることとの要件については考慮されているものの、機構の業務に要する費用の長期的な見通しに照らし、当該業務を適正かつ確実に実施するために十分なものであることとの要件については、事実上機能していない。

会計検査院としては、25年度以降の一般負担金年度総額の算出状況について引き続き検査していくこととする。

(イ) 一般負担金の納付状況

各原子力事業者は、機構法第38条第2項の規定により、機構の事業年度終了後3か月以内に一般負担金及び特別負担金を機構に納付しなければならないこととされている。ただし、当該負担金の額の2分の1に相当する金額については、機構の事業年度終了の日の翌日以降6か月を経過した日から3か月以内に納付することができることとなっている。

23年度の一般負担金について、各原子力事業者は、図表2-9のとおり、2分の1に相当する額を24年6月29日までに、残りの2分の1に相当する額を同年12月28日までにそれぞれ機構に納付している。また、24年度の一般負担金について、各原子力事業者は、2分の1に相当する額を25年6月28日までに納付しており、残りの2分の1に相当する額は同年12月末までに機構に納付することとなっている。

図表2-9 各原子力事業者の機構への一般負担金の納付の状況

(単位:千円)

納付年月日
原子力事業者
平成23年度分 24年度分
24年6月29日
まで
24年12月28日
まで
25年6月28日
まで
25年12月末
まで(予定)
北海道電力 1,630,000 1,630,000 3,260,000 1,901,665 1,901,665 3,803,330
東北電力 2,677,275 2,677,275 5,354,550 3,123,490 3,123,490 6,246,980
東京電力 14,185,075 14,185,075 28,370,150 19,409,910 19,409,910 38,819,820
中部電力 3,105,150 3,105,150 6,210,300 3,622,675 3,622,675 7,245,350
北陸電力 1,515,900 1,515,900 3,031,800 1,768,550 1,768,550 3,537,100
関西電力 7,881,050 7,881,050 15,762,100 9,194,560 9,194,560 18,389,120
中国電力 1,047,275 1,047,275 2,094,550 1,221,820 1,221,820 2,443,640
四国電力 1,630,000 1,630,000 3,260,000 1,901,665 1,901,665 3,803,330
九州電力 4,229,850 4,229,850 8,459,700 4,934,825 4,934,825 9,869,650
日本原子力発電 2,131,225 2,131,225 4,262,450 2,486,430 2,486,430 4,972,860
日本原燃 717,200 717,200 1,434,400 836,735 836,735 1,673,470
40,750,000 40,750,000 81,500,000 50,402,325 50,402,325 100,804,650
(注)
原子力事業者の名称中、「株式会社」は省略した。

(ウ) 特別負担金の納付状況

機構法第52条の規定により、特別事業計画について主務大臣の認定を受けた原子力事業者には、一般負担金の額に追加的に負担させることが相当な額として機構が事業年度ごとに運営委員会の議決を経て定める特別負担金額が加算されることとされている。

その額は、当該原子力事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に支障を生じない限度において、当該原子力事業者に対し、経理的基礎を毀損しない範囲でできるだけ高額の負担を求めるものとされている。ただし、特別負担金については、一般負担金と異なり、算定規則等において、原価等を算定する基礎となる営業費に算入することは認められていない。

東京電力は、特別事業計画について主務大臣の認定を受けていることから特別負担金を納付すべき原子力事業者に該当するが、機構は、23、24両年度については、東京電力が当期純損失を計上すると見込まれたことから特別負担金を加算しないこととし、主務大臣もこれを承認している。

この点について、総合特別事業計画における東京電力の24年度から26年度までの収支計画では、24年度までは当期純損失を計上するものの、25年度には1067億円、26年度には2651億円の当期純利益をそれぞれ計上する見通しが示されている。

会計検査院としては、東京電力による特別負担金の納付が、上記の収支計画どおり当期純利益の計上が見込まれる25年度から始まるのか、また、一般負担金と異なり算定規則等において原価等を算定する基礎となる営業費に算入することが認められていない特別負担金が、どのような財源により、どの程度納付されるのかについて、引き続き検査していくこととする。

イ 機構からの国庫納付の状況

機構は、機構法第59条の規定により、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失を埋め、なお残余があるときは、その残余の額は積立金として整理しなければならないこととされている。

しかし、主務大臣の認定を受けた特別事業計画に基づく資金交付を行った場合には、当該残余の額を積立金として整理するのではなく、当該資金交付を行うために交付国債の償還を受けた額の合計額に至るまで国庫に納付しなければならないこととされている。

そして、機構は、機構法施行令第2条の規定により、当該事業年度の損益計算の結果納付しなければならない額の2分の1に相当する金額を翌事業年度の7月31日までに、残りの2分の1に相当する金額を1月31日までにそれぞれ納付しなければならないこととされており、納付された資金は、機構法施行令第3条の規定により、原賠勘定に帰属することとされている。

納付を受けた原賠勘定では、当該資金を交付国債の償還請求に応じるための借入金等に係る元本の返済に充てるなどしている(借入れに係る利息については、前記のとおり、一般会計からの繰入金により造成された原賠資金の取崩しなどにより支払われている。)。

図表2-10のとおり、機構の23年度の損益計算においては、当期純利益が799億9280万余円となっており、当該年度が機構設立初年度であることから前事業年度からの繰越損失はなく、残余の額は当期純利益と同額となっている。

また、24年度の損益計算においては、当期純利益が973億2209万余円となっており、前年度からの繰越欠損はなく、残余の額は当期純利益と同額となっている。

そして、機構は東京電力に対して交付国債を財源とする資金交付を行っており、その額は両年度の当期純利益の額をはるかに上回っている。このため、機構は23年度の当期純利益の全額に相当する額799億9280万余円について、24年7月31日に399億9640万余円、25年1月31日に399億9640万余円をそれぞれ国庫に納付しており、また、24年度の当期純利益973億2209万余円については、25年7月31日に、その2分の1に相当する額である486億6104万余円を国庫に納付している。なお、24年度分の残りの2分の1に相当する額である486億6104万余円については、26年1月末までに納付する予定となっている。

なお、機構は、各原子力事業者から納付された一般負担金を、国庫納付までの約1か月の間に国債の購入により運用している。その受取利息収入は、24年6月29日までに納付のあった407億5000万円については289万余円、同年12月28日までに納付のあった407億5000万円については206万余円となっており、25年6月28日までに納付のあった504億0232万余円については277万余円となっている。

図表2-10 国庫納付の状況

平成23年度分

国庫納付の状況平成23年度分

平成24年度分

国庫納付の状況平成24年度分

このように、交付国債の償還により国から機構を通じて東京電力に交付した資金については、機構の損益計算の結果生じた利益が国庫に納付されるという仕組みで、消費者からの電気料金を原資として各原子力事業者から納付される負担金により実質的に回収されることになっている。

ウ 交付した資金の回収に係る試算

原子力損害の賠償のための交付国債の償還額は、25年9月末現在で、3兆0483億円と多額に上っている。そして、第3次総特では、資金交付額が3兆7893億3400万円になるとされている。

前記のとおり、国は、原賠勘定において借入れを行うなどして資金を調達し、これを機構を通じて東京電力に交付している。そして、機構は、損益計算の結果生じた利益を交付国債の償還を受けた額の合計額に至るまで国庫に納付することとされている。このため、国が機構を通じて東京電力に交付した資金は、東京電力を含む各原子力事業者が機構に納付することとなる一般負担金及び東京電力が納付することとなる特別負担金によって実質的に回収されることになっている。

しかし、23、24両年度の一般負担金年度総額の決定においては、機構法上定められている前記の要件のうち、「各原子力事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営に支障を来し、又は当該事業の利用者に著しい負担を及ぼすおそれのないものであること」との要件については、原子力事業者の過去の配当水準を維持するという形で考慮されているものの、「機構の業務に要する費用の長期的な見通しに照らし、当該業務を適正かつ確実に実施するために十分なものであること」との要件については、事実上機能していない。また、東京電力に交付した資金を早期に回収した上で、原子力事業者から納付される一般負担金により機構に積立てを行い、原子力事故が発生した場合の資金援助の財源にするという機構法の本来の仕組みを早期に機能させるための要件は特に定められていない。

このため、各年度の負担金の水準によっては、交付した資金の回収が長期化することにより、交付資金の原資である原賠勘定における借入金等に係る支払利息等の国の負担が増こうするとともに、機構法の本来の仕組みが機能する時期が遅延する可能性がある。

そこで、会計検査院において、国が機構を通じて東京電力に交付した資金が、今後、どのように実質的に国に回収されるかなどについて、図表2-11に示す一定の条件を仮定して、資金交付額を(ア)第3次総特における見込額である3兆7893億3400万円とした場合、及び、(イ)機構が交付を受けた交付国債の額である5兆円とした場合に分けて、機械的に試算した。なお、国による資金交付の原資は原賠勘定の借入金等により調達され、一方、機構を通じて国に納付される一般負担金及び特別負担金を基礎とした利益の額は原賠勘定の歳入となって原賠勘定の借入金等の償還に充てられることから、以降の試算においては、国が交付した資金の回収を、便宜上、原賠勘定の借入金等残高の償還(減少)という形で示すことなどにより計算している。

図表2-11 試算に当たって仮定した条件

ア 固定条件

・各期の国庫納付額=1600億円

各期の一般負担金年度総額を1630億円、各期の機構の業務運営に要する費用を30億円とした上で、機構が毎期に国庫に納付する額を1600億円(7月末までに800億円、1月末までに800億円)と仮定

・借入利率=0.1%

完済までの間、1年ごと(借換えの償還期限日が土曜日、日曜日、国民の祝日等のいかんを問わず単純に1年ごと)に借り換えると仮定

・各期の東京電力の一般負担金=567億4030万円

前記で設定した条件である一般負担金年度総額1630億円に対して、負担金率34.81%(平成23年度の実績値)を乗じた金額である567億4030万円(6月末までに283億7015万円、12月末までに283億7015万円)を機構に納付すると仮定

(ただし、国庫納付に係る東京電力の負担分は、同額に1630分の1600を乗じた556億9600万円(7月末までに278億4800万円、1月末までに278億4800万円)と仮定)

イ 変動条件

各期の東京電力に対する特別負担金の加算額を下表のとおりとした上で、機構が同額を国庫に納付すると仮定

条件 各期の東京電力に対する特別負担金の加算

なし

総合特別事業計画に記載の25年3月期から27年3月期までの収支計画及び28年3月期から34年3月期までの収支見通し(参考)で仮置きしている税引前当期純利益(特別負担金控除前)の2分の1(注)に相当する額

(ただし、35年3月期以降は、26年3月期から34年3月期までの9期に係る税引前当期純利益(特別負担金控除前)の平均額の2分の1に相当する額である1381億4700万円を特別負担金額と仮定)


(ただし、35年3月期以降は、26年3月期から34年3月期までの9期に係る税引前当期純
利益(特別負担金控除前)の平均額の2分の1に相当する額である1381億4700万円を
特別負担金額と仮定)

上記②の条件より更に高額の加算をすることにした場合について試算するため、総合特別事業計画に記載の25年3月期から27年3月期までの収支計画及び28年3月期から34年3月期までの収支見通し(参考)を基に、税引前当期純利益(特別負担金控除前)の4分の3(税引前当期純利益(特別負担金控除前)の全額と上記条件②(2分の1)との中間値)に相当する額

(ただし、35年3月期以降は、26年3月期から34年3月期までの9期に係る税引前当期純利益(特別負担金控除前)の平均額の4分の3に相当する額である2072億2100万円を特別負担金額と仮定)

(注)
総合特別事業計画に添付の参考資料では、平成25年3月期から34年3月期までの「収支の見通し」として、「各期の税引前当期純利益(特別負担金控除前)の2分の1の額を特別負担金として仮置きしている。」としている。

(ア) 資金交付額を3兆7893億3400万円とした場合(試算の詳細は、巻末別表6(ア)を参 照)

機構から国庫に納付された資金は、原賠勘定の借入金等の償還に充てられることから、上記の変動条件①、②、③の各条件の下で、原賠勘定の借入金等残高がどのように推移するかを試算したところ、図表2-12のとおり、①、②、③の各条件において回収が終わるまでの期間及びその時期は、それぞれ23年後の平成48年度、13年後の38年度、11年後の36年度となった。

図表2-12 原賠勘定の借入金等残高の推移(試算)

原賠勘定の借入金等残高の推移(試算)

そして、機構を通じて交付された資金の回収額のうち東京電力の負担は、図表2-13のとおり、条件①の場合は約1兆3226億円(資金交付額3兆7893億3400万円に対する割合34.9%)、条件②の場合は約2兆4256億円(一般負担金分約7336億円、特別負担金分約1兆6920億円、資金交付額に対する割合64.0%)、条件③の場合は約2兆5630億円(一般負担金分約5944億円、特別負担金分約1兆9686億円、資金交付額に対する割合67.6%)となった。

図表2-13 交付された資金の回収額のうち東京電力の負担(試算)

交付された資金の回収額のうち東京電力の負担(試算)

また、回収を終えるまでに国が負担することとなる借入れ(借換え)等に係る支払利息については、前記のとおり原賠勘定に設置された原賠資金から支払われることとされているが、その総額は、条件①の場合で約474億円、条件②の場合で約279億円、条件③の場合で約235億円になる試算結果となった。

そして、図表2-14のとおり、条件①、②、③のいずれの場合も、原賠資金は28年度中にその全額が取り崩され、条件①の場合は約362億円、条件②の場合は約167億円、条件③の場合は約123億円の原賠資金への追加的な資金投入等が必要になる試算結果となった。

図表2-14 原賠資金の残高の推移(試算)

原賠資金の残高の推移(試算)

注(1)
残高のマイナスは、原賠資金への追加的な資金投入等が必要なことを示す。
注(2)
借入れなどに係る支払利息については、原賠資金のほか平成23年度に一般会計から繰り入れられた資金や余裕金等の運用により生じた受取利息収入が充てられているため、原賠資金の残高(追加的な資金投入等を含む。)と支払利息の総額は一致しない。

(イ) 資金交付額を5兆円とした場合(試算の詳細は、巻末別表6(イ)を参照)

機構及び東京電力が所定の手続を経て、資金交付額が5兆円になるとした場合について、(ア)と同様に試算したところ、図表2-15のとおり、①、②、③の各条件において回収が終わるまでの期間及びその時期は、それぞれ31年後の平成56年度、17年後の42年度、14年後の39年度となった。

図表2-15 原賠勘定の借入金等残高の推移(試算)

原賠勘定の借入金等残高の推移(試算)

そして、機構を通じて交付された資金の回収額のうち東京電力の負担は、図表2-16のとおり、条件①の場合は約1兆7441億円(資金交付額5兆円に対する割合34.8%)、条件②の場合は約3兆2191億円(一般負担金分約9564億円、特別負担金分約2兆2626億円、資金交付額に対する割合64.3%)、条件③の場合は約3兆5320億円(一般負担金分約7893億円、特別負担金分約2兆7426億円、資金交付額に対する割合70.6%)となった。

図表2-16 交付された資金の回収額のうち東京電力の負担(試算)

交付された資金の回収額のうち東京電力の負担(試算)

また、回収を終えるまでに国が負担することとなる借入れ(借換え)等に係る支払利息については、前記のとおり原賠資金から支払われることとされているが、その総額は、条件①の場合で約794億円、条件②の場合で約450億円、条件③の場合で約374億円になる試算結果となった。

そして、図表2-17のとおり、条件①、②、③のいずれの場合も、原賠資金は27年度中にその全額が取り崩され、条件①の場合は約682億円、条件②の場合は約338億円、条件③の場合は約262億円の原賠資金への追加的な資金投入等が必要になる試算結果となった。

図表2-17 原賠資金の残高の推移(試算)

原賠資金の残高の推移(試算)

注(1)
残高のマイナスは、原賠資金への追加的な資金投入等が必要なことを示す。
注(2)
借入れなどに係る支払利息については、原賠資金のほか平成23年度に一般会計から繰り入れられた資金や余裕金等の運用により生じた受取利息収入が充てられているため、原賠資金の残高(追加的な資金投入等を含む。)と支払利息の総額は一致しない。

原子力損害の賠償金の総額がどの程度の規模となるのかは、現時点において明らかとなっておらず、機構から東京電力に対する資金交付の総額を確定できる段階にはない。

そして、上記の試算のとおり、資金交付額の多寡及び負担金の水準(とりわけ特別負担金の水準)により、資金回収に要する年数には大きな差異が生ずることになり、回収期間が長期に及べば支払利息等の国の負担も大きく変動することになる。

また、上記の試算では、借入れ(借換え)に係る金利を0.1%と仮定しているが、今後、長期間に及ぶ回収の中で、金利が上昇した場合には支払利息が増加し、上記の試算結果を超える原賠資金への追加的な資金投入等の新たな財政負担が必要となる。

したがって、東京電力においては、回収期間の長期化による国の財政負担状態の長期化や財政負担の増こうを少しでも軽減させるとともに、機構法の本来の仕組みをできる限り早期に機能させるために、早急に特別負担金の納付が可能となるような財務状況を実現することが求められる。

一方、東京電力に対する特別負担金の加算が過度となった場合は、内部留保の蓄積が進捗せず、結果として、総合特別事業計画で機構の出資金の回収時期の目安としている社債市場への復帰等が遅延する可能性もある。

したがって、機構においては、この点にも十分に留意しつつ、特別負担金を加算することが求められる。

(4) 機構による情報提供業務その他の業務等の状況

ア 相談等業務

機構は、23、24両年度に、相談等業務として、弁護士等の専門家を福島県内外の避難先等に派遣して、損害賠償の請求及び和解の仲介の申立てに関する対面による個別相談を行ったり、電話による無料の情報提供を行ったりなどしている。機構は、上記の相談等業務を行うために、23、24両年度に、「原子力損害の被害者による損害賠償の請求・申立てに対する支援業務」を委託しているほか、24年度からは、23年原発事故による被害者が避難している39都道府県において、被害者が無料で受けられる法律相談に係る業務を委託している。

(ア) 支援業務の委託

損害賠償の請求及び和解の仲介の申立てに対する支援業務の具体的な内容は、主に福島県内の仮設住宅の集会場等で開催する相談会の事前周知、当該相談会における説明者である弁護士等との事前の調整、相談会開催当日の会場の設営等となっている。各会場では、弁護士等との対面による個別相談会が行われているほか、一部の会場では、全体説明会として、当該住民に対してその時々の状況に応じた全般的な説明等が行われている。

相談会は、業務委託先が毎月機構に提出している業務報告書によると、図表2-18のとおり、計1,083回実施されており、個別説明会への参加組数は6,512組に上っている。そして、相談会に係る委託費の支払額は、23年度計9466万余円(23年11月分から24年3月分までの5か月分)、24年度計1億5327万余円となっている。

図表2-18 相談会の開催実績(平成23、24両年度)

開催年月 相談会の
実施回数
(回)
全体説明会への
参加者数(名)
個別相談会への
参加組数(組)
平成23年11月 5 112 93
12月 33 502 435
1月 49 610 592
2月 62 681 669
3月 79 567 693
228 2,472 2,482
24年4月 76 333 456
5月 73 332 399
6月 81 179 375
7月 79 131 386
8月 68 182 326
9月 80 319 367
10月 60 284 281
11月 65 343 311
12月 66 107 260
25年1月 52 290 238
2月 71 241 341
3月 84 151 290
855 2,892 4,030
合計 1,083 5,364 6,512

(イ) 弁護士会への業務委託

前記の39都道府県のうち20都道府県では、機構から委託を受けた24弁護士会が、 国内各地に避難した被害者を対象とした法律相談を実施している。機構から24弁 護士会への支払額は、図表2-19のとおり、計706万余円となっている。法律相談1 件(1回1時間)当たりの委託料は10,500円とされていて、相談件数に換算すると 計673件分となる。

図表2-19 法律相談の実施状況(平成24年度)

都道府県名 弁護士会名 委託料支払額(円) 件数換算(件)
北海道 旭川弁護士会 10,500 1
札幌弁護士会 483,000 46
函館弁護士会 84,000 8
岩手県 岩手弁護士会 10,500 1
宮城県 仙台弁護士会 1,113,000 106
秋田県 秋田弁護士会 115,500 11
茨城県 茨城県弁護士会 588,000 56
栃木県 栃木県弁護士会 157,500 15
群馬県 群馬弁護士会 336,000 32
東京都 東京弁護士会 588,000 56
第一東京弁護士会 294,000 28
第二東京弁護士会 504,000 48
神奈川県 横浜弁護士会 934,500 89
新潟県 新潟県弁護士会 546,000 52
石川県 金沢弁護士会 10,500 1
山梨県 山梨県弁護士会 63,000 6
長野県 長野県弁護士会 115,500 11
静岡県 静岡県弁護士会 136,500 13
大阪府 大阪弁護士会 777,000 74
兵庫県 兵庫県弁護士会 10,500 1
奈良県 奈良弁護士会 73,500 7
岡山県 岡山弁護士会 73,500 7
山口県 山口県弁護士会 21,000 2
鹿児島県 鹿児島県弁護士会 21,000 2
7,066,500 673

イ 国の仮払金の支払に関する事務の受託

前記1(1)ウ(ア)(参照)のとおり、文部科学省は、23年9月から64件の仮払金支払の請求を受け付けて、24年3月までに50件、計17億3326万余円の仮払金を支払っている。この仮払金の支払に当たって、機構は、文部科学省から、23年10月に仮払金支払請求の受付の事務(仮払金の支払請求があった場合に行うこととされている原子力損害の賠償の責任を負う原子力事業者への意見の聴取に係る事務等を含む。)を、同年11月に仮払金の請求者への払渡し(支払)に係る事務を受託している。なお、都道府県知事が自ら仮払金の支払に関する事務を行った実績はなく、結果として、機構が都道府県知事から当該事務を受託することはなかった。

機構が受託した事務の主な実績は、図表2-20のとおりとなっており、仮払金支払請求の受付の事務が56件等となっている。

図表2-20 機構が受託した事務の主な実績

(単位:件)

仮払金支払請求の受付の事務 意見の聴取に係る事務
機構の請求書受領年月 件数 機構が東京電力に行った意見聴取の結果(東京電力の回答内容) 件数
平成23年10月 29 国から求償があった場合の応諾 50
11月 7 仮払金の支払対象外 4
12月 3 その他 1
24年1月 12 請求者からの請求取下げ 5
2月 3 60
3月 2
56
注(1)
図表1-11のとおり、機構が受託する前の平成23年9月に、文部科学省が請求を受け付けたものは8件、うち文部科学省が直接東京電力に照会したものが4件あり、請求書の受付総数としては64件となる。また、「国から求償があった場合の応諾」の件数(50件)と、図表1-11の仮払金の支払件数(50件)が一致する。
注(2)
「その他」は、請求金額が東京電力の賠償基準に基づく額を超過していて、東京電力としての支払可能額を超えているとされたものである。