1 本院が表示した改善の意見
文部省では、勤労青少年が高等学校の定時制課程又は通信制課程へ修学することを促進し、教育の機会均等を保障するため、これらの課程に在学する生徒を対象として都道府県が行う教科書等の給与事業及び夜食費の補助事業などを国の補助対象事業として、高等学校定時制及通信教育振興奨励費補助金(以下「定時制補助金」という。)を交付している。
定時制補助金は、勤労青少年の修学を促進することを主眼とするものであるが、教科書の給与事業及び夜食費の補助事業の対象となる者は、定時制課程に在学する生徒であればよいこととされており、勤労青少年であることなどの特段の限定はされていない。一方、近年、高等学校の定時制課程に在学する生徒は、経済的な理由により働きながら学ぶ者のほか、全日制課程に入学を希望したが果たせなかった者などが増大し、多様化している。そこで、上記両事業の対象となっている生徒の実態について調査した。
その結果、両事業の対象とした生徒の大部分が「勤労青少年」(本院では、その範囲を仮に「経常的収入を得る職業に就いている者」とした。)に該当しない者となっており、定時制補助金の交付の目的からみて適切でないと認められた。
定時制補助金の交付の目的にかんがみ、定時制課程に在学する生徒の多様化の実態に対応して、補助制度の見直しを行うよう、文部大臣に対し平成2年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示した。
2 当局の処置状況
文部省では、3年7月に学識経験者等から成る「高等学校定時制・通信制教育検討会議」を設け、同会議において5年10月にワーキンググループを設置して詳細な調査を行うこととするなどして、本院の指摘の趣旨に沿った制度の改善を図るため検討を重ねてきているが、結論を得るに至っていない。