1 本院が表示した改善の意見
公立の小学校中学校の校舎、屋内運動場の整備事業における補助対象面積は、事業実施年度の翌年度以降学級数が減少することが見込まれる場合でも、事業実施年度の5月1日の学級数に応ずる必要面積により算定することになっている。
一方、近年、児童及び生徒の数は、出生数の低下に伴い減少傾向にあり、これにより学級数も減少する方向にある。そして、一般に校舎等の整備事業が完了し、新しい校舎等の供用が開始されるのは、事業実施年度の年度末又は翌年度となっている。
したがって、事業実施年度の学級数に応ずる必要面積により算定した補助対象面積を基にそのまま事業を実施したときは、新しい校舎等の供用開始時には既に、あるいは開始して間もないうちに、学級数が減少して、必要面積が過大となり、それを用いて算定した補助対象面積も過大になるという結果を来す場合がある。
そこで、事業実施年度の翌年度以降学級数が減少すると事業主体において見込んでいる学校に係る校舎等の整備事業について調査したところ、実際にも翌年度に学級数が減少し、補助対象面積が過大となっている事態が見受けられ、補助金の効率的かつ有効な使用の観点から適切でないと認められた。
このような事態が生じているのは、文部省において、児童又は生徒の数の減少により学級数が減少する学校が相当数見受けられているのに、補助制度がこれに対応していないこと、補助事業の認定申請書に記載された予定学級数を校舎等の補助対象面積の算定に活用しないまま補助事業の認定を行ってきたことによると認められた。
補助金の効率的な使用を図るため、文部大臣に対し平成4年12月に、会計検査院法第36条の規定により次のような改善の意見を表示した。
(ア) 児童及び生徒の数が減少する状況に対応できるように現行の補助制度を見直すこと
(イ) 児童又は生徒の数が減少する場合の予定学級数の推計方法について検討し、事業主体において予定学級数の推計を的確に行うようにさせること
(ウ) 事業主体から提出させる認定申請書に予定学級数の推計の根拠を明らかにした資料を添付させるなどして、明らかに学級数が減少すると見込まれる場合には、減少後の学級数に応ずる必要面積及び補助対象面積により補助事業の認定を行うように審査体制を整備すること
2 当局が講じた改善の処置
文部省では、本院指摘の趣旨に沿い、5年4月に、各都道府県に対して通知を発するなどして、5年度から次のような処置を講じた。
(ア) 事業実施年度の翌年度以降の学級数が減少することが明らかに見込まれる場合には、原則として、事業実施年度の翌年度の5月1日において見込まれる学級数に応ずる必要面積を基として補助対象面積を認定することとした。
(イ) 予定学級数の推計方法を明示し、これに基づいて推計した予定学級数を認定申請書に記載して提出させることにより、上記(ア)の取扱いが適正に行われるように審査体制の整備を図った。