1 本院が要求した是正改善の処置
厚生省では、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)等の社会福祉各法に基づき、身体障害者療護施設等(以下「施設」という。)の入所者の福祉を図るための費用の一部を負担している。そして、この費用には、入所者の健康管理、生活指導等に必要な医薬品費、材料費及 び施設に配置されている医師の人件費が含まれている。
また、医療機関が健康保険法(大正11年法律第70号)等の医療保険各法等に基づく医療給付を行った場合、その費用を診療報酬として保険者等に請求できることとなっており、初診、再診の場合はそれぞれ初診料、再診料を、療養上必要な指導を行った場合は慢性疾患指導料等を月1回算定できることとされている。そして、厚生省では、この医療給付に要する費用の一部を負担している。
そこで、施設に配置された医師が入所者に対して行った健康管理、生活指導等について、診療報酬請求の有無を調査したところ、197施設に係る225医療機関において、重ねて初診料、再診料等を診療報酬として請求している不適切な事態が見受けられた。
このような事態が生じているのは、施設に配置されている医師が入所者に対して行う健康管理、生活指導等は施設本来の基本的な業務である旨が周知徹底されていないこと及びこれらの業務については初診料、再診料等を診療報酬として請求できないことを明確に示していないことによると認められた。
施設に配置されている医師が入所者に対して行う健康管理、生活指導等に係る初診料、再診料等の診療報酬の請求の適正化を図るため、次のとおり、厚生大臣に対し平成4年12月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した。
(ア) 都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村(以下「市等」という。)及び施設に対し、施設に配置されている医師が入所者に行う健康管理、生活指導等は施設本来の基本的な業務である旨の周知徹底を図ること
(イ) 施設に配置されている医師が入所者に行う健康管理、生活指導等については、初診料、 再診料等を診療報酬として請求することはできない旨を定め、保険者等及び医療機関に対しその周知徹底を図ること
2 当局が講じた是正改善の処置
厚生省では、本院指摘の趣旨に沿い、施設の入所者に係る診療報酬の請求の適正化を図るため、5年6月に都道府県等に対して通知を発するなどして、次のような処置を講じた。
(ア) 市等及び施設に対し、施設に配置されている医師が入所者に行う健康管理、生活指導等については、施設本来の基本的な業務である旨の周知徹底を図った。
(イ) 保険者等及び医療機関に対し、施設に配置されている医師が当該施設に赴き行った診療については初診料、再診料等を診療報酬として請求できない旨を定め、その周知徹底を図った。