1 本院が要求した改善の処置
住宅金融公庫(以下「公庫」という。)及び住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)では、いずれも自ら居住するための住宅を必要とする者に対して一般住宅建設資金等の貸付け又は分譲住宅の譲渡等を行っている。そこで、同一人が公庫の一般住宅建設資金等の貸付けと公団の分譲住宅の譲渡等について重複して契約しているものを抽出して調査した。その結果、自ら居住するとして契約を締結したにもかかわらず、短期間に住居を移動し第三者に賃貸するなど、正当な理由がないのに貸付対象住宅又は分譲住宅等に自ら居住していないなどの不適切な事態が見受けられた。
このような事態が生じているのは、公庫の貸付けの借入者及び公団住宅の譲受人等の不誠実にもよるが、主として次の理由によると認められた。
(ア) 公庫と公団にまたがる重複契約により生ずる第三者賃貸等の事態を防止し、解消するための対策が十分検討されていないこと
(イ) 公庫の貸付案内、公団の募集案内書等において、「自ら居住しなければならない」としていることの意味は、一時的に住所を移すだけでなく継続して居住しなければならないものである旨の説明が十分でないこと
公庫と公団にまたがる重複契約の防止及び速やかな解消を図るため、建設省が、公庫及び公団を指導して、速やかに次の方策を講じさせるなどするよう、建設大臣に対し平成4年12月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
(ア) 公庫と公団において、貸付対象住宅及び分譲住宅等の管理に関する情報を相互に交換するなどして、住宅の利用状況を効率的に調査し、公庫と公団にまたがる重複契約を解消する体制を整備すること
(イ) 公庫の貸付案内、公団の募集案内書等を活用し、自ら居住しなければならないとしていることの意味について、借入者等に対する一層の周知徹底を図ること
2 当局が講じた改善の処置
建設省では、本院指摘の趣旨に沿い、5年3月に公庫及び公団に対し通達を発し、同年11月に公庫と公団にまたがる重複契約の解消等についての基本方針を策定させ、その着実な実施に向けて次のような措置を講ずるよう指導するなどして、この種事態の防止及び速やかな解消を図るための処置を講じた。
(ア) 公庫及び公団において、重複契約者照合のための電算システムの開発などを行ったうえ、貸付対象住宅及び分譲住宅等の管理に関する情報を相互に交換し、公庫と公団にまたがる重複契約を解消する体制の整備を図ることとする。
(イ) 借入者等に対する一層の周知徹底については、公庫の貸付案内、公団の募集案内書等において、継続して自ら居住することが必要である旨の記載を行うこととする。