会計名及び科目 | 一般会計(組織)厚生本省(項)国民健康保険助成費 |
部局等の名称 | 厚生本省(交付決定庁) |
北海道ほか15府県(支出庁) | |
交付の根拠 | 国民健康保険法(昭和33年法律第192号) |
交付先 | 18市、20町、2村(保険者) |
財政調整交付金の概要 | 市町村等の国民健康保険に係る財政力の不均衡を調整するために交付するもので、一定の基準により財政力を測定してその程度に応じて交付する普通調整交付金と、災害等特別の事情を考慮して交付する特別調整交付金がある。 |
上記に対する交付金交付額の合計 | 12,249,552,000円 | (平成4年度〜6年度) |
過大となっていた交付金交付額 | 48,697,000円 | (平成4年度〜6年度) |
<検査の結果>
上記の40市町村において、財政調整交付金の交付申請に当たり、保健施設事業の実施に際して徴収した個人負担分等の収入額があるのに、その収入額を控除しないで保健施設費を算定していたため、財政調整交付金48,697,000円が過大に交付されていた。
このような事態が生じていたのは、市町村において制度に対する認識等が十分でなかったことにもよるが、厚生省において個人負担分等の収入額の取扱いを明確にしていなかったことによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
本院の指摘に基づき、厚生省では、平成7年11月に、各都道府県に対し通知を発し、個人負担分等の収入額の具体的な取扱いを交付申請書の様式で示すなど明確にするとともに、これを市町村に対して周知徹底させる処置を講じた。
1 制度の概要
厚生省では、国民健康保険について各種の国庫助成を行っており、その一つとして、財政調整交付金(前掲「国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの」参照 )を交付している。財政調整交付金には、普通調整交付金と特別調整交付金がある。
普通調整交付金の交付額は、調整対象需要額が調整対象収入額を超える額に別に定める率を乗じて得た額となっている。そして、保険料又は保険税の収納割合が所定の率を下回る場合は、その下回る程度に応じて段階的に交付額を減額することとなっている。
調整対象需要額のうち保健施設費は、健康教育、健康相談、人間ドック等の健康診査その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業(以下「保健施設事業」という。)に係る費用である。その費用の額の算定は、〔1〕 1月から12月までの間の保健施設費支出額から保健施設事業に係る収入額等を控除した額(以下「保健施設費対象額」という。)と、〔2〕 当該市町村の全被保険者数に一定額を乗じて得た額(以下「保健施設費基準額」という。)のうちいずれか少ない方の額によることとなっている。
また、調整対象収入額は、本来保険料で賄うべきとされている額で、調整対象需要額、被保険者の所得等を基に算定されることとなっている。
特別調整交付金の一つとして、保健施設事業に積極的に取り組んでいる市町村に対して、保健施設費対象額が保健施設費基準額を超えている場合に交付する交付金(以下「保健施設費特別交付金」という。)がある。
保健施設費特別交付金の交付額は、保健施設費対象額から保健施設費基準額を控除した額を交付対象額とし、その額に4分の1(平成5年度以前は2分の1)を乗じて得た額となっている。
2 検査の結果
市町村では、人間ドック等の各種保健施設事業を実施しており、その受診費用について、〔1〕 受診者から個人負担分を徴収して国民健康保険特別会計に収納し、これに市町村の負担分を加えて医療機関に支払う場合、〔2〕 個人負担分は受診者が直接医療機関に支払い、市町村では市町村の負担分のみを医療機関に支払う場合などがある。そこで、上記〔1〕 の場合に、財政調整交付金の交付申請に当たって、これらの個人負担分等の収入額が保健施設費支出額から控除されて、保健施設費対象額の算定が適切に行われているかについて調査することとした。
人間ドック等の保健施設事業を実施した際に、受診者から個人負担分として受診費用の一部(人間ドックの場合は5,000円〜49,860円)を徴収するなどし、その収入額を国民健康保険特別会計に収納していた市町村が北海道ほか18府県(注1) において126市町村あり、このうち、121市町村でこの収入額を保健施設費支出額から控除しないで保健施設費対象額を算定していた。そこで、この中から、保健施設事業の規模が大きく、個人負担分等の収入額も多額であった北海道ほか15府県(注2) の北見市ほか39市町村を選定して、交付金の申請状況について調書を提出させ、保健施設事業の実態や、個人負担分等の徴収状況等について詳細に調査することとした。
調査したところ、上記の40市町村では、平成4年度から6年度までの間に、保健施設事業に係る個人負担分等を徴収してその収入額計126,714千円を国民健康保険特別会計に収納していたのに、この収入額を保健施設費支出額から控除しないで保健施設費対象額を算定していた。このため、表1のとおり、調整対象需要額に算入する保健施設費が計66,964千円、保健施設費特別交付金の交付対象額が計54,851千円それぞれ過大に算定されていると認められた。
表1
年度 | 調整対象需要額に算入した保健施設費 | 保健施設費特別交付金の交付対象額 | ||||
交付申請 | 本院修正 | 過大算定額 | 交付申請 | 本院修正 | 過大算定額 | |
|
千円 128,293 |
千円 106,539 |
千円 21,754 |
千円 52,028 |
千円 41,276 |
千円 10,752 |
5 |
159,534 | 139,740 | 19,794 | 51,720 | 31,711 | 20,009 |
6 |
160,763 | 135,347 | 25,416 | 98,570 | 74,480 | 24,090 |
計 |
448,590 | 381,626 | 66,964 | 202,318 | 147,467 | 54,851 |
上記の40市町村において、財政調整交付金の申請に当たり、調整対象需要額に算入する保健施設費及び保健施設費特別交付金の交付対象額を過大に算定していたため、表2のとおり、4年度から6年度までの間で、普通調整交付金計27,302千円、保健施設費特別交付金計21,395千円、合計48,697千円が過大に交付されていると認められた。
表2
年度 | 普通調整交付金 | 保健施設費特別交付金 | ||||
交付金交付額 | 適正な交付額 | 過大交付額 | 交付金交付額 | 適正な交付額 | 過大交付額 | |
4 |
千円 3,761,757 |
千円 3,752,842 |
千円 8,915 |
千円 26,007 |
千円 20,635 |
千円 5,372 |
5 | 4,087,099 | 4,078,519 | 8,580 | 25,856 | 15,853 | 10,003 |
6 | 4,324,196 | 4,314,389 | 9,807 | 24,637 | 18,617 | 6,020 |
計 | 12,173,052 | 12,145,750 | 27,302 | 76,500 | 55,105 | 21,395 |
このような事態が生じていたのは、市町村において制度に対する認識・理解が十分でなかったことにもよるが、厚生省において保健施設事業の実施に際して徴収した個人負担分等の収入額の具体的な取扱いを毎年市町村に通知する交付申請書の様式で示していないなど明確にしていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、厚生省では、7年11月に、各都道府県に対し通知を発し、個人負担分等の収入額の具体的な取扱いを交付申請書の様式で示すなど明確にするとともに、これを市町村に対して周知徹底させる処置を講じた。
(注1) 北海道ほか18府県 北海道、大阪府、青森、秋田、富山、福井、静岡、愛知、三重、岡山、広島、山口、香川、愛媛、高知、福岡、長崎、熊本、鹿児島各県
(注2) 北海道ほか15府県 北海道、大阪府、青森、秋田、富山、福井、静岡、愛知、三重、岡山、広島、山口、愛媛、福岡、熊本、鹿児島各県