1 本院が要求した改善の処置
厚生省では、児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)に基づき、児童を保育所に入所させ保育する市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対し、その保育に要する費用の一部を負担するため、児童保護費等負担金(保育所分)(以下「負担金」という。)を交付している。負担金の額は、市町村が支弁する費用の額から、児童の扶養義務者から徴収する徴収金の額を控除した額を対象として算定することとなっている。この徴収金は、法の定めるところにより、児童の属する世帯の負担能力に応じて徴収できることとなっている。このため、交付基準において、徴収金の額は児童の扶養義務者の前年度分の市町村民税の有無や前年分の所得税額等に応じた児童の属する世帯の階層区分ごとの徴収金基準額により算定することとしている。この階層区分において、前年の所得の多寡にかかわらず、徴収金基準額の低い階層に認定することとなっている前年度分の市町村民税(前々年の所得によって課税される。)の非課税世帯について調査したところ、前年分の所得税が課税されている世帯が見受けられた。これらの世帯と、前年分の所得税が課税されている世帯で前年度分の市町村民税が課税されていることから高い階層に認定されている世帯との間で、同程度の負担能力があると認められるのに、徴収金の額に開差を生じていて、このため、負担金が過大に交付される結果となっていた。
このような事態が生じているのは、世帯の負担能力に応じて費用を徴収するという法の趣旨が、交付基準に適切に反映されていないことによると認められた。
児童の属する世帯の階層区分については、世帯間の均衡を確保し、国庫負担の適正を期するため、前年度分の市町村民税の非課税世帯についても直近の所得に対する所得税の課税額を考慮した合理的なものとなるように交付基準を改めるよう、厚生大臣に対し平成6年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
2 当局が講じた改善の処置
厚生省では、本院指摘の趣旨に沿い、7年4月に交付基準を改正し、前年分の所得税の課税世帯については、前年度分の市町村民税の課税の有無にかかわらず、所得税の課税額に応じた階層に認定することとし、7年度以降に交付する負担金について適用する処置を講じた。