1 本院が要求した改善の処置
社会保険庁では、老齢厚生年金、遺族厚生年金等の各種の年金を受給権者に対し支払う業務を社会保険業務センター(以下「業務センター」という。)において実施している。
これら年金は、受給権者が死亡したにもかかわらず、届出義務者から社会保険事務所に死亡の届出がない場合には、最長2年程度は死亡者に対して引き続き支給されることになる。
このような場合、年金を受け取った者は、この過誤払による年金額を国に返還しなければならない。
死亡届未提出により発生した年金の過誤払に係る返納金債権について検査したところ、その債権の回収率は極めて低くなっていて、多額の返納金債権が回収されずに長期間累積されていた。
このため、今後返納金債権を極力発生させないためには、提出されない死亡届を待つことなく厚生省大臣官房に市町村から提出される死亡者情報を積極的に活用する方策を講じる要があると認められた。
そして、この死亡者情報の活用について、厚生省大臣官房と業務センターとの連携を図ることができれば、支払保留のための事務処理に要する日数を考慮しても死亡後2箇月を超える期間についての過誤払の発生を未然に防止することが可能であると認められた。
このような事態が生じているのは、過誤払による返納金債権を回収するのは極めて困難な状況にあることから、死亡届が提出されない場合でも返納金債権を極力発生させないための方策を講じなければならないのに、社会保険庁において、この方策を十分講じていないことによると認められた。
年金の過誤払の発生を防止し、年金支給の適正化を図るため、厚生省大臣官房に提出された死亡者情報を速やかに活用できる事務処理体制の整備を図るよう、社会保険庁長官に対し平成6年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
2 当局が講じた改善の処置
社会保険庁では、本院指摘の趣旨に沿い、厚生省大臣官房に提出された死亡者情報を活用する事務処理体制を整備して、7年12月以降に支払われる年金については、死亡届が提出されない場合でも死亡後2箇月を超える期間についての年金の過誤払の発生を防止する処置を講じた。