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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第14 九州旅客鉄道株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

光ファイバケープル新設工事における敷設費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


光ファイバケーブル新設工事における敷設費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)建設仮勘定 (項)直接工事費(鉄道事業)
(款)その他の流動資産 (項)その他の流動資産
部局等の名称 九州旅客鉄道株式会社本社
工事名 吉塚・博多間通信ケーブル新設工事ほか5工事
工事の概要 通信回線の整備の一環として、鉄道線路に沿って光ファイバケーブルを新設する工事
工事費 7億5677万余円
請負人 九州電気システム株式会社ほか1会社
契約 平成8年10月〜10年1月 指名競争契約、随意契約
光ファイバケーブルの敷設費の積算額 1億9855万余円
敷設費の過大積算額 5880万円

1 工事の概要

(工事の内容)

 九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」という。)では、平成8、9両年度に、自社の通信回線の整備、及び電気通信事業を営む日本テレコム株式会社から委託を受けた同社の通信回線の整備の一環として、鉄道線路に沿って光ファイバケーブル(以下「光ケーブル」という。)を新設する工事を6工事(工事費総額7億5677万余円)施行している。
 これらの工事は、光ケーブルを収容するためのトラフ(注) や踏切下等を横断する管路等を設置し、光ケーブルの敷設及び接続などを行うものである。このうち、光ケーブルの敷設作業は、ドラムに巻かれた長さ1km程度の光ケーブルを、人力によりトラフ内や管路内等に引き込むなどして敷設するものである。

(敷設費の積算)

 JR九州では、光ケーブルの敷設費について、昭和62年4月に制定した「電気関係工事標準歩掛積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づいて積算することとしている。
 これによれば、トラフ内等の敷設作業については、敷設場所、敷設方法等に応じて、その1km当たりの所要人工数(以下「敷設歩掛かり」という。)が定められている。この歩掛かりは、日本国有鉄道が60年に定めたものをそのまま用いたもので、被覆を施した1本の光ファイバの心線(径0.9mm)を、円形状に配置したものにチューブ状の緩衝材をかぶせるなどして束ね、外被で覆った構造の光ケーブル(以下「単心形」という。前掲参考図1参照 )を敷設する歩掛かりとして定められているものである。
 また、踏切下等の管路部の敷設作業については、積算要領に別途定められている、通信ケーブルを屋内の電線管に配線する場合の1m当たりの所要人工数(以下「屋内配線歩掛かり」という。)を準用することとしている。
 そして、前記の6工事においては、積算要領に基づき、敷設歩掛かり及び屋内配線歩掛かりに労務単価及び光ケーブルの施工延長(計210.9km)を乗ずるなどして、敷設費を総額1億9855万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 光ケーブルは、大量の情報を伝送する手段として、その需要は急速に増大している。そして、複数の光ファイバを横一列に並べてテープ状に束ね、共通の被覆を施した心線を、堅い円筒状の部材の外周に設けた溝に収納するなどして外被で覆った構造の光ケーブル(以下「テープ形」という。前掲参考図2参照 )が開発され、近年は、この光ケーブルが単心形に代わり一般に広く使用されるようになっている。
 このような状況を踏まえ、光ケーブルの敷設費の積算は、使用する光ケーブルの施工の実態に適合しているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、本件工事は、いずれも単心形ではなく、4本の光ファイバを束ねた構造のテープ形の光ケーブルを使用するものであった。そして、そのテープ形の敷設作業の実態をみると、テープ形は、心線を堅い円筒状の部材の外周に設けた溝に収納する構造となっていることから、心線を緩衝材でチューブ状に覆うなどして束ねた単心形と異なり、心線が外力の影響を受けて移動し光ファイバに歪みが加わるおそれがなく、作業時の取扱いが容易となっていることなどから作業能率が向上していた。
 また、踏切下等の管路部の敷設作業については、狭あいな屋内の壁面等に複雑にケーブルを敷設する作業と異なり、直線状に埋設された管路の中にあらかじめ入れておいたロープに、光ケーブルを結びつけ、反対側からこのロープを引っ張ることにより能率的に敷設していた。
 このように、本件光ケーブルの敷設作業は能率的になっていて、実際の人工数は積算上の所要人工数を相当程度下回っていた。
 したがって、本件各工事の敷設費の積算は施工の実態を反映したものとなっておらず、積算要領を改める要があると認められた。

(低減できた積算額)

 本件各工事における敷設費の積算について、施工の実態に適合する歩掛かりにより修正計算すると、積算額を約5880万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、使用する光ケーブルはテープ形となっており、敷設作業が能率的になっているにもかかわらず、その実態を十分把握していなかったこと、及び管路部の敷設作業の実態を十分把握していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、JR九州では、平成10年9月に、光ケーブルの敷設費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう積算要領を改正し、同年9月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(注)  トラフ 地中に敷設する各種ケーブルを保護するための鉄筋コンクリート製の函きょ