ページトップ
  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成10年9月

公的宿泊施設の運営に関する会計検査の結果について


[4]運営経費及び国の負担等

(1)運営経費及び国の負担等

 公的宿泊施設の設置・運営に係る支出(費用)の負担区分については、施設種別ごとに差異があるが、これを支出(費用)の性格(種類)とその負担者等により整理すると以下のとおりである。

〔1〕 簡易保険保養センター等については簡易保険福祉事業団、全国勤労青少年会館等10施設(注6) については雇用促進事業団、その他の施設については運営受託者(以下、施設の運営に係る損益が帰属するこれらの者を「損益帰属者」という。)が、運営に係る費用の全般(〔2〕の国の各特別会計が負担している支出を除く。以下「運営費用」という。)を負担している。

〔2〕 各社会保険の被保険者等が支払う保険料や郵便貯金の運用益を財源として国の各特別会計は、(雇用促進事業団、年金福祉事業団を通じて)以下の支出(費用)を直接又は間接に負担している。

(ア)大規模な維持修繕に要する費用や固定資産税、土地借料等の一部

(イ)損益帰属者に対して交付する委託費又は交付金。これにより、〔1〕の損益帰属者が負担した運営費用の一部を国の特別会計が実質的に負担していることとなる。

(ウ)施設の建設(既存施設では増改築)に係る支出

 以上を施設種別ごとにまとめると、表3-7(8年度)、表3-8(4〜8年度の計)のとおりである。
 今回検査の対象とした公的宿泊施設の設置・運営に伴う総支出(上記〔1〕と〔2〕の合計)に占める国の各特別会計の直接又は間接の負担額(上記〔2〕)の割合は、平均で28.3%(4〜8年度の計)となっていた。
 なお、4〜7年度の各年度については、付表10に示した。

 全国勤労青少年会館(1施設)、中小企業レクリエーションセンター(6施設)及び勤労総合福祉センターのうち3施設。

 

(表3-7)施設の運営に係る支出(費用)(8年度)
(単位:百万円)

施設種別 損益帰属者が実質的に負担した費用(運営費用から委託費を控除)
〔1〕
国の特別会計が直接、間接に負担した支出(費用) 〔3〕総支出
〔1〕+〔2〕
〔2〕/〔3〕
(ア)
維持修繕費等
(イ)
委託費・交付金
(ウ)
増改築費
〔2〕計
(ア)+(イ)+(ウ)
<厚生省(杜会保険庁)>
(健康保険保養所等)
 健康保険保養所
 健康保険保健福祉センター
81,202
3,289
1,800
1,489
15,392
145
54
90
823
267
74
192
9,246
1,128
973
154
25,463
1,540
1,102
437
106,665
4,830
2,902
1,927
23.8%
31.8%
37.9%
22.7%
(船員保険保養所等)
 船員保険保養所
 船員保険福祉センター
3,307
1,904
1,402
140
125
15
556
463
93
26
24
1
724
613
110
4,031
2,518
1,512
17.9%
24.3%
7.2%
(厚生年金会館等)
 厚生年金会館
 厚生年金休暇センター
 厚生年金健康福祉センター
58,335
29,646
13,943
14,746
11,793
3,847
5,865
2,080
0
0
0
0
4,689
993
1,232
2,463
16,483
4,841
7,098
4,543
74,819
34,487
21,042
19,289
22.0%
14.0%
33.7%
23.5%
(国民年金健康保養センター等)
 国民年金健康保養センター
 国民年金会館
 国民年金健康センター
16,269
11,158
2,957
2,153
3,312
1,893
1,340
79
0
0
0
0
3,402
3,359
0
42
6,714
5,252
1,340
122
22,984
16,411
4,297
2,275
29.2%
32.0%
31.1%
5.3%
<郵政省>
 郵便貯金会館
32,819
32,819
0
0
0
0
7,526
7,526
7,526
7,526
40,345
40,345
18.6%
18.6%
<雇用促進事業団>
 勤労者職業福祉センター
 勤労者福祉センター
 勤労者野外活動施設(B型)
 勤労総合福祉センター
 全国勤労青少年会館
 中小企業レクリェーションセンター
42,422
10,047
3,109
11,477
9,327
5,044
3,415
643
81
263
30
77
125
65
0
0
0
0
0
0
0
23,705
465
1,396
8,862
6,483
5,138
1,358
24,348
547
1,659
8,893
6,560
5,264
1,424
66,771
10,595
4,769
20,370
15,888
10,309
4,839
36.4%
5.1%
34.7%
43.6%
41.2%
51.0%
29.4%
<簡易保険福祉事業団>
    簡易保険保養センター
 簡易保険会館
 
45,671
  38,963
6,708
 
0
  0
0
 
26,633
  26,633
 
10,328
  10,328
0
 
36,961
  36,961
 
82,633
  82,633
 
44.7%
  48.6%
 
<年金福祉事業団>
 大規模年金保養基地
12,092
12,092
871
871
0
0
4,717
4,717
5,588
5,588
17,681
17,681
31.6%
31.6%
【全施設計】 214,208 16,907 27,457 55,522 99,888 314,096 31.8%
(備考)1. 設置者提出資料により作成。
2. 増改築費には、移転新築に係るものや、国有財産又は各事業団の資産の取得に当たるものが含まれる。
3. 船員保険保養所の委託費は、(財)船員保険会に対し、本部経費を含めて一括交付された額である。
4. 簡易保険福祉事業団の交付金は、事業団本部及びすべての施設(加入者ホーム、保養センター、会館、診療所等、レクリエーションセンター)の合計である。
5. 健康保険保養所等、船員保険保養所等及び簡易保険保養センター等の運営費用の中には国の特別会計から交付される委託費・交付金を財源の一部としているものがあり、損益帰属者の実質的な負担は、委託費・交付金相当額を控除した額となる。

 

(表3-8)施設の運営に係る支出(費用)(4〜8年度の計)
(単位:百万円)

施設種別 損益帰属者が実質的に負担した費用(運営費用から委託費を控除)
〔1〕
国の特別会計が直接、間接に負担した支出(費用) 〔3〕総支出
〔1〕+〔2〕
〔2〕/〔3〕
(ア)
維持修繕費等
(イ)
委託費・交付金
(ウ)
増改築費
〔2〕計
(ア)+(イ)+(ウ)
<厚生省(杜会保険庁)>
(健康保険保養所等)
 健康保険保養所
 健康保険保健福祉センター
400,467
13,856
8,127
5,728
51,591
1,021
757
264
3,905
1,120
361
758
44,049
4,502
4,106
395
99,546
6,643
5,225
1,418
500,013
20,500
13,353
7,147
19.9%
32.4%
39.1%
19.8%
(船員保険保養所等)
 船員保険保養所
 船員保険福祉センター
16,247
10,429
5,817
1,072
663
409
2,785
2,501
283
798
83
714
4,656
3,248
1,407
20,903
13,678
7,224
22.2%
23.7%
19.4%
(厚生年金会館等)
 厚生年金会館
 厚生年金休暇センター
 厚生年金健康福祉センター
293,244
159,088
70,552
63,603
41,130
19,316
15,745
6,068
0
0
0
0
25,881
6,896
10,956
8,028
67,011
26,212
26,702
14,096
360,256
185,300
97,255
77,700
18.6%
14.1%
27.4%
18.1%
(国民年金健康保養センター等)
 国民年金健康保養センター
 国民年金会館
 国民年金健康センター
77,119
56,971
14,903
5,243
8,366
4,646
3,610
109
0
0
0
0
12,867
11,827
0
1,039
21,234
16,473
3,061
1,149
98,353
73,445
18,514
6,393
21.5%
22.4%
19.4%
17.9%
<郵政省>
 郵便貯金会館
179,621
179,621
0
0
0
0
31,312
31,312
31,312
31,312
210,933
210,933
14.8%
14.8%
<雇用促進事業団>
 勤労者職業福祉センター
 勤労者福祉センター
 勤労者野外活動施設(B型)
 勤労総合福祉センター
 全国勤労青少年会館
 中小企業レクリェーションセンター
215,823
50,649
17,581
56,358
46,101
29,121
16,011
2,032
217
603
95
302
577
235
0
0
0
0
0
0
0
88,275
3,449
4,211
33,853
26,703
10,528
9,528
90,307
3,667
4,814
33,949
27,005
11,105
9,764
306,130
54,317
22,396
90,307
73,106
40,226
25,775
29.4%
6.7%
21.4%
37.5%
36.9%
27.6%
37.8%
<簡易保険福祉事業団>
    簡易保険保養センター
 簡易保険会館
 
231,411
  192,780
38,630
 
0
  0
0
 
126,135
  126,135
 
44,956
  44,956
0
 
171,091
  171,091
 
402,503
  363,872
 
42.5%
  47.0%
 
<年金福祉事業団>
 大規模年金保養基地
58,454
58,454
4,298
4,298
0
0
31,087
31,087
35,386
35,386
93,840
93,840
37.7%
37.7%
【全施設計】 1,085,777 57,922 130,041 239,680 427,644 1,513,421 28.2%
(備考)1. 設置者提出資料により作成。
2. 増改築費には、移転新築に係るものや、国有財産又は各事業団の資産の取得に当たるものが含まれる。
3. 船員保険保養所の委託費は、(財)船員保険会に対し、本部経費を含めて一括交付された額である。
4. 簡易保険福祉事業団の交付金は、事業団本部及びすべての施設(加入者ホーム、保養センター、会館、診療所等、レクリエーションセンター)の合計である。
5. 健康保険保養所等、船員保険保養所等及び簡易保険保養センター等の運営費用の中には国の特別会計から交付される委託費・交付金を財源の一部としているものがあり、損益帰属者の実質的な負担は、委託費・交付金相当額を控除した額となる。

〔1〕 損益帰属者が負担する運営費用

 前記のとおり、各施設の運営費用は、それぞれの損益帰属者が負担している。すなわち、簡易保険保養センター等及び全国勤労青少年会館等10施設の運営費用は、それぞれ簡易保険福祉事業団、雇用促進事業団が負担しており、その他の施設の運営費用は、運営受託者である公益法人等が負担している。
 1施設当たりの運営費用は平均597百万円(8年度)(表3-9) であり、最近はわずかに減少する傾向にある。

(表3-9)施設種別ごとの運営費用(1施設当たり)(8年度)
(単位:百万円)

施設種別 運営費用
<厚生省(社会保険庁)> 443
 (健康保険保養所等)
  健康保険保養所
  健康保険福祉センター
 (船員保険保養所等)
  船員保険保養所
  船員保険福祉センター
 (厚生年金会館等)
  厚生年金会館
  厚生年金休暇センター
  厚生年金健康福祉センター
 (国民年金健康保養センター等)
  国民年金健康保養センター
  国民年金会館
  国民年金健康センター
104
81
152
110
76
373
988
1,411
871
670
285
232
1,478
307
<郵政省>  
  郵便貯金会館 2,187
<雇用促進事業団> 606
  勤労者職業福祉センター
  勤労者福祉センター
  勤労者野外活動施設(B型)
  勤労総合福祉センター
  全国勤労青少年会館
  中小企業レクリェーションセンター
2,511
1,554
358
373
5,044
569
<簡易保険福祉事業団> 582
  簡易保険保養センター
  簡易保険会館
509
3,354
<年金福祉事業団>
  大規模年金保養基地

930
<全施設平均> 597
(備考)
設置者提出資料により作成。

〔2〕 国の各特別会計が直接又は間接に負担している費用

 国の各特別会計が直接又は間接に負担している費用は次のとおりである。

(ア)運営に係る費用の一部を負担しているもの(維持修繕費等)

 国の各特別会計は、大規模な維持修繕に係る経費、土地建物に係る固定資産税、土地借上料等の運営に係る費用の一部を負担しているものがあり、その合計は16,908百万円である(表3-10)

(表3-10)国の特別会計が負担した維持修繕費等(8年度)
(単位:百万円)

施設種別 維持修繕費 固定資産税 土地借上料
<厚生省(社会保険庁)> 15,332 - 60 15,393
 (健康保険保養所等)
  健康保険保養所
  健康保険保健福祉センター
132
43
89
-
-
-
12
11
0
145
54
90
 (船員保険保養所等)
  船員保険保養所
  船員保険福祉センター
110
95
15
-
-
-
30
30
-
140
125
15
 (厚生年金会館等)
  厚生年金会館
  厚生年金休暇センター
  厚生年金健康福祉センター
11,787
3,841
5,865
2,080
-
-
-
-
5
5
-
-
11,793
3,847
5,865
2,080
 (国民年金健康保養センター等)
  国民年金健康保養センター
  国民年金会館
  国民年金健康センター
3,301
1,881
1,340
79
-
-
-
-
12
12
-
-
3,313
1,893
1,340
79
<郵政省>
  郵便貯金会館

-

-

-

-
<雇用促進事業団>
  勤労者職業福祉センター
  勤労者福祉センター
  勤労者野外活動施設B型
  勤労総合福祉センター
  全国勤労青少年会館
  中小企業レクリェーションセンター
-
-
-
-
-
-
-
215
-
-
-
24
125
65
428
81
263
30
53
-
-
643
81
263
30
77
125
65
<簡易保険福祉事業団>
  簡易保険保養センター
  簡易保険会館
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
<年金福祉事業団>
  大規模年金保養基地

201

669

-

871
【全施設計】 15,534 884 489 16,908
(備考)1. 設置者提出資料により作成。
2. この中には、雇用促進事業団、年金福祉事業団の支出を通じて、国の特別会計が間接的に負担しているものが含まれている。

 以上のほか、初度備品の整備に要する経費を国の特別会計が負担しているものがある。
 また、郵便貯金会館については、郵便貯金法に基づき、郵政大臣が施設に備える物品を運営受託者である郵便貯金振興会(以下「振興会」という。)に無償で貸し付けていて、8年度に貸し付けた物品の価額は21百万円となっている。

(イ)損益帰属者に対する委託費及び交付金の交付

<厚生省(社会保険庁)>

a 健康保険保養所等

 健康保険保養所等の経営に要する人件費・維持費・保養費の一部に充てるため、厚生省(社会保険庁)(厚生保険特別会計)から、運営受託者に対して委託費が表3-11のとおり交付されている。

b 船員保険保養所等

 船員保険保養所等の経営に要する経費のうち、収容定員1人1日につき830円(8年度)の維持費等に充てるため、厚生省(社会保険庁)(船員保険特別会計)から、運営受託者に対して委託費が表3-11のとおり交付されている。

(表3-11)施設運営者に対する委託費の交付額
(単位:百万円)

年度
施設種別
4 5 6 7 8 5カ年度計
健康保険保養所等 189 212 212 238 267 1,120
船員保険保養所等 577 565 566 519 556 2,785
(備考)設置者提出資料により作成。

<簡易保険福祉事業団>

 簡易保険保養センター等の運営に係る費用に充てるため、郵政省(簡易生命保険特別会計)から簡易保険福祉事業団に対して交付金が26,633百万円(8年度)交付されている。
 交付金の支給金額の決定については、国が直接施設を運営してきた経緯にかんがみ、事業団創設時から昭和45年度までは、事業団における運営に要する総費用(施設運営費+減価償却費)から事業収入を差し引いた額を交付していたが(収支差額方式)、46年度に、事業団に経営責任の明確化、営業意識の向上及び効率的な運営を求める見地から、それまでの収支差額方式に代えて、費目を限定して交付金を交付することとした(費目限定方式)。そして、60年度に、費目限定方式に一部交付率を設定するなどして、交付金の削減を図っている。

 なお、施設運営に係る国の各特別会計からの支出科目等(上記(ア)及び(イ)に係るもの)は表3-12のとおりである(付表11 参照)。

(表3-12)施設種別ごとの運営に係る経費の特別会計からの支出(主なもの)
設置者 施設種別 特別会計
厚生省
(社会保険庁)
健康保険保養所等 厚生保険特別会計(業務勘定)
 (項)保健事業費
船員保険保養所等 船員保険特別会計
 (項)福祉事業費
郵政省 郵便貯金会館等 郵政事業特別会計
 (項)局舎其他施設費
  (目)機械器具整備費
雇用促進事業団 勤労者職業福祉センター等 労働保険特別会計(雇用勘定)
 (項)雇用安定等事業費
      ↓
 [雇用促進事業団]
一般会計
 (雇用保険勘定)
  業務取扱費
 (全国勤労青少年会館勘定)
  全国勤労青少年会館業務費
 (福祉施設勘定)
  福祉施設業務費
簡易保険福祉事業団 簡易保険保養センター等 簡易生命保険特別会計
 (項)簡易保険福祉事業団交付金
      ↓
 [簡易保険福祉事業団]
 (一般勘定)
  (項)業務費
  (項)退職手当
年金福祉事業団 大規模年金保養基地 厚生保険特別会計(業務勘定)
 (項)福祉施設事業費
国民年金特別会計(業務勘定)
 (項)福祉施設費
      ↓
 [年金福祉事業団]
 (一般事業勘定)
  管理事務費
  借入金利息
(備考)なお、財源については前掲(表2-7)と同様である。

(ウ)増改築費を負担しているもの

 既存施設の増改築は、いずれの施設種別においても、施設整備費により直接に、又は各事業団に対する出資金を通じて間接に、基本的に国の各特別会計の負担において実施されている(前掲表2-7 )。

(運営受託者が設置者に納付する受託料)
 なお、年金福祉事業団では、運営受託者から営業収入の一部(0.3%)を大規模年金保養基地の将来にわたる施設整備のために受託料として納付させている。この状況を示すと表3-13のとおりである。

(表3-13)年金福祉事業団に納付された受託料
(単位:百万円)

平成4年度 平成5年度 平成6年度 平成7年度 平成8年度 5ヵ年度計
31 34 34 33 34 167
(備考)設置者提出資料により作成。

(2)税制上の取扱い

 公的宿泊施設については、その土地や建物が国有財産であって、固定資産税が非課税であったり、施設を運営している法人が特殊法人や社団、財団であるため、株式会社等が経営している民間の旅館・ホテルと所得に対する法人税の税率が異なるなどの違いがある。
平成8年度における税制は、次のとおりである。

(ア)固定資産税

 固定資産税は、固定資産所在の市町村が固定資産に対し課する税であり、その納税義務者は原則として固定資産の所有者である。国、都道府県、市町村等に対しては、固定資産税が課されないことから、公的宿泊施設についても固定資産税が課税されない場合がある。公的宿泊施設の種別ごとに土地、家屋の所有者、課税の有無、固定資産税の負担者を示すと表3-14のとおりである。
ただし、公的宿泊施設の中には民有地や地方公共団体の土地に設置されているものがある。なかでも雇用促進事業団の施設は地方公共団体の土地に設置されているものが多い。また、勤労者職業福祉センター、勤労者福祉センター、勤労者野外活動施設(B型)及び勤労総合福祉センターについては、雇用促進事業団所有の当該家屋に対する固定資産税額は、運営受託者が雇用促進事業団に代わって負担しているものがある(注6)

(表3-14)公的宿泊施設と固定資産税
設置者 施設種別 土地 家屋
所有者 課税・非課税区分 所有者 課税・非課税区分
厚生省(社会保険庁) 健康保険保養所
健康保険保健福祉センター

<厚生省(社会保険庁)>
非課税
<厚生省(社会保険庁)>
非課税
船員保険保養所
船員保険福祉センター

<厚生省(社会保険庁)>
(注1)
非課税
<厚生省(社会保険庁)>
非課税
厚生年金会館
厚生年金休暇センター
厚生年金健康福祉センター

<厚生省(社会保険庁)>
(注2)
非課税
<厚生省(社会保険庁)>
(注5)
非課税
国民年金健康保養センター
国民年金会館
国民年金健康センタ-

<厚生省(社会保険庁)>
非課税
<厚生省(社会保険庁)>
非課税
郵政省 郵便貯金会館 国(郵政省) 非課税 国(郵政省) 非課税
雇用促進事業団 勤労者職業福祉センター
勤労者福祉センター
勤労者野外活動施設
(B型)
勤労総合福祉センター
雇用促進事業団
(注3)
課税 雇用促進事業団
(注6)
課税
全国勤労青少年会館 雇用促進事業団 課税 雇用促進事業団 課税
中小企業レクリェーションセンター 雇用促進事業団
(注4)
課税 雇用促進事業団 課税
簡易保険福祉事業団 簡易保険保養センター
簡易保険会館
簡易保険福祉事業団 課税 簡易保険福祉事業団 課税
年金福祉事業団 大規模年金保養基地 年金福祉事業団 課税 年金福祉事業団
(注7)
課税
(注1)  大沢船員保険保養所の敷地には、運営受託者の(財)船員保険会の所有地が含まれており、当該土地には固定資産税が課税されている。
(注2)  東京、大阪、湯河原、青森、群馬、徳島、熊本及び宮崎の厚生年金会館並びに大阪及び佐世保の厚生年金健康福祉センターの敷地には、運営受託者の(財)厚生年金事業振興団の所有地(職員宿舎用地、駐車場等)が含まれており、当該土地には固定資産税が課税されている。
(注3)  宮城及び沖縄以外の勤労総合福祉センターの各施設並びに勤労者職業福祉センター、勤労者福祉センター及び勤労者野外活動施設(B型)の敷地は、地方公共団体の所有地であり、土地に係る固定資産税は非課税である。
(注4)  愛知レクリェーションセンターの敷地には、地方公共団体の所有地が含まれており、当該土地に係る固定資産税は非課税である。
(注5)  東京、大阪及び群馬の厚生年金会館並びに大阪の厚生年金健康福祉センターの敷地には、運営受託者の(財)厚生年金事業振興団が所有している家屋(職員宿舎)があり、当該家屋には固定資産税が課税されている。
(注6)  宮城、沖縄及び洲本以外の勤労総合福祉センター、勤労者職業福祉センター、勤労者福祉センター及び勤労者野外活動施設(B型)の家屋については、雇用促進事業団に代わって運営受託者が固定資産税を負担している。
(注7)  大沼、田老、津南、三木、紀南、安浦、八女、久木野及び指宿の大規模年金保養基地の敷地には、運営受託者たる公益法人や地方公共団体の所有家屋があるが、公益法人の所有家屋の固定資産税については課税され、地方公共団体の所有家屋については非課税である。

(イ)法人税

 経営している法人が株式会社等である民間の旅館・ホテルの場合の税率は、28%または37.5%となっている(詳細は付表12 参照)。
これに対して、公的宿泊施設の損益帰属者が雇用促進事業団、簡易保険福祉事業団及び地方公共団体の場合は、非課税であり、振興会、社団、財団等の公益法人等の場合は、27%の税率となっている(詳細は付表13 参照)。

[5]運営の収支

(1)運営収支状況

 施設種別ごとの運営に係る収入(収益)、支出(費用)、収支差(損益)、収支率及び赤字施設(注7) の割合を示すと、表3-15(詳細は付表14付表15 )のとおりである。
施設種別ごとに1施設当たりの収支差を見ると、郵便貯金会館のほかいくつかの施設種別で黒字となっている。
郵便貯金会館については、他の施設種別に比べて稼働率が高いなどのため、運営受託者である振興会において、運営業務により毎年度利益が生じており、8年度の会館関係業務では約3000万円の利益を計上している。その結果、振興会としての累積黒字額は約79億8000万円となっている(注8)
なお、施設運営に伴って発生する経費のうち、設置者が直接負担しているため上記の支出(費用)に含まれていないもの及び設置者が損益帰属者に交付する委託費で上記の収入(収益)に含まれていないものを施設種別ごとに示すと、表3-16のとおりである。

(注7)  赤字施設とは、収入(収益)が支出(費用)を下回る施設をいう。
(注8)  なお、郵便貯金振興会は、独立採算により経営を行っており、仮に赤字が発生した場合でも、積立金を取り崩して経営を継続することとされている。

 

(表3-15)施設種別ごとの収支等(1施設当たり)
(平成8年度)

施設種別 収入 支出 収支差 収支率 赤字施設割合
厚生省(社会保険庁) 百万円
439
百万円
447
百万円
△7
%
101
%
36
(健康保険保養所等)
健康保険保養所
健康保険福祉センター
(船員保険保養所等)
船員保険保養所
船員保険福祉センター
(厚生年金会館等)
厚生年金会館
厚生年金休暇センター
厚生年金健康福祉センター
(国民年金健康保養センター等)
国民年金健康保養センター
国民年金会館
国民年金健康センター
108
85
156
104
70
365
964
1,372
871
642
293
239
1,463
313
104
81
152
107
72
373
988
1,411
871
670
294
240
1,478
307
3
3
3
△2
△2
△8
△24
△39
0
△27
△0
△1
△14
5
96
95
97
102
103
102
102
102
100
104
100
100
101
98
14
17
9
54
54
50
45
42
31
59
29
32
50
0
郵政省
郵便貯金会館

2,237

2,187

49

97

40
雇用促進事業団 592 606 △13 102 53
 勤労者職業福祉センター
勤労者福祉センター
勤労者野外活動施設(B型)
勤労総合福祉センター
全国勤労青少年会館
中小企業レクリェーションセンター
2,521
1,457
351
358
4,720
589
2,511
1,554
358
373
5,044
569
9
△97
△7
△14
△324
20
99
106
102
104
106
96
0
100
53
56
100
50
簡易保険福祉事業団 533 582 △48 109 78
 簡易保険保養センター
簡易保険会館
468
3,000
509
3,354
△40
△354
108
111
77
100
年金福祉事業団
大規模年金保養基地

910

930

△19

102

69
<全施設計> 581 597 △15 102 50
(備考)1. 設置者提出資料により作成。
2. 収支率は、該当施設の支出計/該当施設の収入計又は該当施設の費用計/該当施設の収益計(以下同じ)。
3. 郵便貯金会館の収支は、1施設ごとに経理することになっていないため、本表は現金ベースで取りまとめたものであり、必ずしも1施設当たりの経営状況を表したものではない。
4. 船員保険保養所等は、1施設ごとに経理することになっていないため、必ずしも1施設当たりの経理状況を表したものではない。
5. 簡易保険保養センター等については、交付金が運営収入に計上されていない。
6. 施設種別ごとの収支には公的宿泊施設の減価償却費が含まれていない(減価償却費は付表16 参照)。

 

(表3-16)損益帰属者の収支には含まれない費用等
設置者 損益帰属者の支出には含まれない費用(主なもの) 設置者が交付し、損益帰属者が運営収入として計上している委託費・交付金
維持
修繕費
固定
資産税
土地
借上料
物品
購入費
森林維
持費等
社会保険庁 健康保険 (注1) - (注3) -
船員保健 (注1) - (注3) -
厚生年金 (注1) - (注3) - -
国民年金 (注1) - (注3) - -
郵政省 ×(注2) - - (注4) - -
雇用促進事業団 × ×(注9) (注5) × - (注7)
簡易保険福祉事業団 × × × × - (注8)
年金福祉事業団 (注1) (注6) - (注3) (注6) -
(備考) 1. 設置者提出資料及び設置者からの説明により作成。
2. ○:損益帰属者が負担しておらず、運営費用に含まれない
  ×:損益帰属者が負担していて、運営費用に含まれている
  ●:運営収入に含まれる
  ▲:運営収入に含まれない
  -:費目の該当がない
(注1)  損益帰属者は軽微な維持修繕の経費を負担している。
(注2)  資産価値が増加しない工事については国が負担することとなっていない。
(注3)  初度備品の整備に要する経費を設置者が負担している。
(注4)  国は当該施設に備え付ける物品を委託先に無償で貸し付け、又は譲与することができることとされており、施設に備え付ける大型機器を貸与し、初度備品を譲与している。
(注5)  一部の施設は土地借料を支払っていない。
(注6)  固定資産税、森林維持費等の支払いのため政府交付金が交付されており、国(特別会計)が実質的に負担している。
(注7)  全国勤労青少年会館等10施設の運営受託者に事業団が交付している委託費については、運営受託者の収入に計上されているが、一方見合いの事業収入については事業団に帰属されることとなるので、本表には含めていない。
(注8)  簡易生命保険特別会計から簡易保険福祉事業団に交付金が交付されているが、運営収入には計上していない(交付金を含めずに収支を計算している)。
(注9)  全国勤労青少年会館等10施設については雇用促進事業団が負担している。

(2)収支が良くない施設

 8年度の運営に係る収支率(支出/収入または費用/収益)が100%を超える施設は180施設(50%)あり、このうち81施設(22%)が110%を、39施設(10%)が120%を超える状況となっていた。
これを施設種別ごとに見ると(表3-17 )、船員保険保養所等、勤労者福祉センター等、簡易保険保養センター等及び大規模年金保養基地で収支率が100%を超える施設が半数以上となっていて、船員保険保養所及び簡易保険保養センターでは、収支率が150%以上となっている施設が見受けられる。このうち、船員保険保養所では稼働率が低いことなどに起因していると考えられるが、他方、簡易保険保養センターにおいては稼働率が高くても収支率が高いという施設も見受けられた。これは、表3-18のとおり、比較的小規模な施設において、施設規模に対して相対的に職員が多く配置されているためなど、高い稼働率による収入によっても人件費等の固定的経費を賄えないことなどによるものと考えられる。
なお、委託契約上運営に係る収支を運営受託者に帰属させている施設においては、損失はそれ自体では、国や各事業団の財政に直接影響するものではない。これに対して直営方式の簡易保険保養センター等及び雇用促進事業団の設置施設の一部では損益(収支)が各事業団に帰属しているため、損失は重要な指標である。

(表3-17)収支率の分布(8年度)
収支率(%) 健康保険
保養所等
船員保険
保養所等
厚生年金
会館等
100超 180(50%) 5(14%) 19(54%) 27(45%)
 150超 5( 1%) 0( 0%) 1( 2%) 0( 0%)
 120超 150以下 34( 9%) 0( 0%) 6(17%) 3( 5%)
 110超 120以下 42(11%) 0( 0%) 1( 3%) 7(11%)
 100超 110以下 99(27%) 5(14%) 11(31%) 17(28%)
100以下 179(49%) 29(85%) 16(45%) 32(54%)
359(100%) 34(100%) 35(100%) 59(100%)

収支率(%) 国民年金健康保養センター等 郵便貯金会館 勤労者職業福祉センター等 簡易保険保養センター等 大規模年金保養基地
100超 16( 29%) 6( 40%) 37( 52%) 61( 78%) 9( 69%)
 150超 0(  0%) 0(  0%) 0(  0%) 4(  5%) 0(  0%)
 120超 150以下 2(  3%) 1(  6%) 4(  5%) 17( 21%) 1(  7%)
 110超 120以下 2(  3%) 1(  6%) 11( 15%) 20( 25%) 0(  0%)
 100超 110以下 12( 21%) 4( 26%) 22( 31%) 20( 25%) 8( 61%)
100以下 39( 70%) 9( 60%) 33( 47%) 17( 21%) 4( 30%)
55(100%) 15(100%) 70(100%) 78(100%) 13(100%)
(備考) 1. 設置者提出資料により作成。
2. 8年度中を通じて休館していた7施設については、集計から除外した。
3. 収支率が100%を超える施設の中には、建替工事等に伴い休館期間のある施設を含む。
4. 簡易保険保養センター等については、交付金が運営収入に計上されていない。

 

(表3-18)簡易保険保養センターの客室規模別の平均職員数等(8年度)
施設数 平均専任職員 1室当たりの職員数 平均客室稼働率 平均定員稼働率
 
20室未満

3 17.0人 1.00人 84.9% 69.3%
20室以上
30室未満

13 20.0人 0.76人 85.2% 73.0%
30室以上
40室未満

24 22.2人 0.63人 85.3% 71.6%
40室以上
50室未満

22 23.8人 0.57人 87.4% 74.6%
50室以上
 

12 32.8人 0.60人 91.5% 79.4%
(備考)
簡易保険保養センター79箇所のうち、8年度中増改築などのため休業している5施設を除いた。