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  • 平成10年度|
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  • 保険給付

厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの


(40) 厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(年金勘定)
国民年金特別会計(基礎年金勘定)
(項)保険給付費
(項)基礎年金給付費
部局等の名称 社会保険庁
支給の相手方 (1) 厚生年金保険
(2) 国民年金
   計
1,304人
38人
1,341人

(重複者1人)
老齢厚生年金等
の支給額の合計
(1) 厚生年金保険
(2) 国民年金
   計
2,354,007,393円
16,623,246円
2,370,630,639円
不適正支給額 (1) 厚生年金保険
(2) 国民年金
   計
1,093,498,544円
16,623,246円
1,110,121,790円

1 保険給付の概要

(1) 厚生年金保険及び国民年金の給付

 厚生年金保険(前掲「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」 参照)において行う給付には、老齢厚生年金などがある。また、国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者等を被保険者として、老齢、死亡等に関し年金等の給付を行うものであり、この給付には、老齢基礎年金などがある。

(2) 老齢厚生年金

(老齢厚生年金の支給の原則)

 老齢厚生年金は、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号。以下「法」という。)第42条の 規定により、厚生年金保険の適用事業所に使用された期間(以下「被保険者期間」という。)を1月以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳に達したときに受給権者となる。

(特別支給の老齢厚生年金)

 特別支給の老齢厚生年金は、昭和60年の法改正により、当分の間の特例として65歳未満であっても支給されることとなったものである。そして、平成6年の法改正により、60歳(女子、坑内員及び船員については55歳から60歳までの一定の年齢)に達していて被保険者期間を1年以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などが受給権者となっている。

(特別支給の老齢厚生年金の給付額)

 特別支給の老齢厚生年金の給付額は、〔1〕 受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と〔2〕 配偶者等について加算される額との合計額となっている。

(特別支給の老齢厚生年金の支給の停止)

(ア) 特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、厚生年金保険の適用事業所に新たに使用されて被保険者となったときなどには、次のとおり、年金の支給を停止することとなっている。

〔1〕  標準報酬月額と基本月額(基本年金額の100分の80に相当する額を12で除して得た額)との合計額が220,000円以下のときは基本年金額の100分の20に相当する額の支給停止

〔2〕  上記の合計額が220,000円を超えるときは、標準報酬月額と基本月額とを用いて、一定の方式により算定した額に応じ、基本年金額の一部又は年金の額の全部の支給停止

(イ) この場合の支給停止の手続は次のとおりである。

〔1〕  厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに使用した者などが受給権者であるときは、その者の生年月日、基礎年金番号、資格取得年月日、報酬月額などを記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳を添えて都道府県の社会保険事務所等に提出する。

〔2〕  社会保険事務所等は、これを調査確認の上、届出内容を社会保険庁にオンラインで伝送し、同庁は、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定の上、支給額を決定する。

(3) 国民年金の老齢基礎年金

 国民年金の老齢基礎年金は、保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳に達したとき、又は65歳に達する前に繰上げ支給の請求をしたときは、そのときから受給権者となる。そして、繰上げ支給の請求をした者が、その後、厚生年金保険の被保険者となったときは、年金の額の全部が支給停止されることになっていて、その手続は特別支給の老齢厚生年金の場合とほぼ同様である。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道ほか28都府県の198社会保険事務所において、8年に特別支給の老齢厚生年金の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者等365,014人のうち、厚生年金保険の適用事業所からの給与収入が確認され調査の要があると認められた者が3,092人見受けられた。そこで、上記の社会保険事務所において、これらの受給権者を使用している2,494事業所について、厚生年金保険の被保険者資格取得届の提出の必要性の有無並びに厚生年金保険の特別支給の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、上記の29都道府県の191社会保険事務所管内における975事業所の1,341人については当該事業所において常用的に使用されていて、年金の額の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに被保険者資格取得届が提出されなかったなどのため、年金の支給停止の手続が執られていなかった。このため、厚生年金保険の特別支給の老齢厚生年金の受給権者1,304人に対する支給(支給額2,354,007,393円)について1,093,498,544円、国民年金の老齢基礎年金の受給権者38人(注) に対する支給(支給額16,623,246円)について16,623,246円、計1,110,121,790円が不適正に支給されていた。
 これは、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、事業主が前記の届出を怠るなどしていたのに、上記の191社会保険事務所において、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、社会保険庁で年金の支給停止をしていなかったことによるものである。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

(注)  38人の中には特別支給の老齢厚生年金も不適正に受給している者が1人含まれている。

 これらの不適正支給額を都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 社会保険事務所 本院が調査した受給権者数 不適正受給権者数 左の受給権者に支給した年金の額 左のうち不適正支給額

北海道

札幌東ほか13

246

86
千円
106,600
千円
48,625
宮城県 仙台東ほか4 78 26 39,568 17,339
秋田県 秋田ほか2 31 14 23,782 7,903
茨城県 水戸南ほか4 85 31 54,134 25,603
群馬県 前橋ほか4 95 36 36,020 16,313
埼玉県 浦和ほか6 182 96 203,459 108,065
千葉県 千葉ほか5 139 61 118,071 55,312
東京都 麹町ほか13 158 59 116,188 63,271
神奈川県 鶴見ほか12 182 83 174,642 95,068
富山県 富山ほか3 91 30 35,527 14,829
福井県 福井ほか2 39 10 7,230 2,234
山梨県 甲府 45 21 30,246 11,817
岐阜県 岐阜南ほか5 47 27 43,425 19,262
愛知県 大曽根ほか13 270 118 223,412 111,073
三重県 津ほか4 84 31 35,302 14,577
京都府 上京ほか5 86 27 44,155 19,534
大阪府 天満ほか19 284 150 305,514 132,744
兵庫県 三宮ほか9 273 156 331,752 146,220
奈良県 奈良ほか2 25 15 28,854 17,921
和歌山県 和歌山東ほか1 29 10 12,626 5,010
鳥取県 鳥取ほか1 32 11 18,658 8,557
島根県 松江ほか2 35 16 31,504 13,092
広島県 広島東ほか7 124 52 111,058 55,814
愛媛県 松山東ほか4 85 45 63,520 29,448
高知県 高知東ほか3 68 27 45,105 17,781
福岡県 東福岡ほか10 119 49 80,336 37,832
佐賀県 佐賀ほか2 36 10 8,282 1,992
大分県 大分ほか2 34 11 6,795 3,023
沖縄県 那覇ほか5 50 33 34,852 9,846
 計 191箇所 3,052 1,341 2,370,630 1,110,121