1 本院が要求した是正改善の処置
社会保険庁では、健康保険法(大正11年法律第70号)に基づき、疾病の予防、早期発見及び早期治療を図ることを目的として、政府管掌健康保険生活習慣病予防健診(以下「健診」という。)事業を実施している。
この健診事業の実施に当たっては、事務の一部を都道府県に委任するとともに、財団法人社会保険健康事業財団(以下「財団」という。)と委託契約を締結し事務の一部を行わせている。そして、都道府県は、健康保険病院等及び都道府県の選定した医療機関(以下「実施機関」という。)と健診委託契約を締結し、被保険者等の健診を行わせ、国の負担額を健診事業の委託費として支払っている。
健診事業の実施について検査したところ、国の委託費を、会計年度を違えて支払っていたり、実施機関から不適正な請求がなされていたのに審査確認を十分行わずに支払っていたり、健診事業の実施要綱に違反して同11年度に受診者1人につき2回以上支払っていたりしている事態が多数見受けられた。
このような事態が生じているのは、都道府県において、年度途中における健診実績等を適時適切に把握しないまま、実施機関に年度を違えた請求を行わせたり、財団において、健診申込書等の人数と請求書の人数とを対比していなかったり、都道府県及び財団において、国の負担は同一年度に受診者1人につき1回に限ることを実施機関等に周知徹底していなかったりしていることなどによると認められた。
健診事業の実施において、前記の事態が再発することのないよう、次のとおり、社会保険庁長官に対し平成10年12月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した。
(ア) 都道府県に対し、健診事業の実施に当たって、健診の実績及び申込状況を毎月把握し、 予算執行残額を確認した上で健診の勧奨や受付を行うなどさせて、会計法令に従った適切な事務処理が行われるよう指導すること
(イ) 財団に対し、実施機関から不適正な請求がなされないよう、健診結果通知票の人数と実施機関からの請求書の人数とを対比させたり、受診者ごとに健診申込書と健診結果通知票を突き合わせて確認させたりすることについて財団との事務の委託契約書に明記すること
(ウ) 都道府県及び財団に対し、国の負担は同一年度において受診者1人につき1回に限ることを実施機関、事業主及び受診者に周知徹底させるとともに、健診申込書に前回の受診年月日を記載させ、財団及び実施機関に確認させること
2 当局が講じた是正改善の処置
社会保険庁では、本院指摘の趣旨に沿い、11年7月までに都道府県等に対して通知を発するなどして、前記の事態が再発することのないよう、次のような処置を講じた。
(ア) 都道府県に対し、会計法令に従った適正な事務処理が行われるよう、健診の実績及び申込状況を毎月把握させることなどについて、新たに事務処理要領を定めるなどして指導した。
(イ) 財団に対し、実施機関から不適正な請求がなされないよう、健診結果通知票の人数と請求書の人数が相違していないか確認させたり、健診結果通知票があるのに健診申込書がない者について調査させたりすることについて事務の委託契約書に明記した。
(ウ) 都道府県及び財団に対し、国の負担は同一年度において受診者1人につき1回に限ることについて健診申込書に明記して、実施機関、事業主及び受診者に周知徹底させることとした。また、健診申込書に前回受診年月の記載欄を設け、財団及び実施機関に確認させることとした。