1 本院が要求した改善の処置
防衛庁海上自衛隊横須賀地方総監部ほか4地方総監部では、自衛艦の安全性等を確保するため、定期及び年次の検査・修理(以下「修理等」という。)を造船会社に請け負わせ実施している。
この修理等の契約に当たり、各地方総監部では、艦船本体の修理等は建造した造船所以外の造船所でも実施可能であることから、修理等を請け負わせるに足りる資力、技術力等の信用力がある造船所を対象に指名競争入札に付して契約を締結することとしている。
そこで、この契約に当たり、競争性が十分確保されているかなどについて検査したところ、すべての契約において、契約業者以外の指名業者はすべて入札を辞退していた。このため、本件契約に当たっては競争性が確保されず、国は競争による利益を得られない状況となっていた。また、入札に当たって必要となる予定価格の算定要領は、指名競争入札を行うための適切なものとはなっていなかった。
このような事態が生じているのは、契約業者以外の指名業者のすべてが入札を辞退する事態が長年にわたりすべての入札で生じているにもかかわらず、海上幕僚監部及び各地方総監部では、辞退原因を究明しその対策を講じるなど事態の改善に向けた有効な対応をとらずに来たことなどによるものと認められた。
自衛艦の修理等の契約に当たり、指名競争入札制度の機能が十分発揮されるよう、次のとおり、防衛庁長官に対し平成11年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
(ア) 契約業者以外の指名業者のすべてが入札を辞退する原因を究明するなどして、指名競争入札における競争性の確保を図るように事態打開の方策を検討し実行すること
(イ) 指名競争入札を前提とした予定価格の算定方法を明確にすること
2 当局が講じた改善の処置
防衛庁海上自衛隊では、本院指摘の趣旨に沿い、12年3月に通知を発するなどして、自衛艦の修理等の契約について指名競争入札制度の機能を十分発揮させるよう、次のような処置を講じた。
(ア) 指名競争入札における競争性の確保を図るため、以下の方策を執った。
〔1〕 造船所の能力を分析・評価するなどし、標準指名基準を定めて艦種ごと、修理等の区分ごとに指名可能な造船所を明確化した。
〔2〕 一定期間ごとに造船所に対し修理等予定時期の概要を通知するなどして、指名競争入札に参加しやすい環境の整備を図った。
〔3〕 造船所に対し、指名競争の趣旨を徹底させるとともに、入札前に辞退する場合は辞退理由を聴取するなどして指名競争入札が成立するよう適切な対応に努めることとした。
(イ) 予定価格算定要領を改正し、指名競争入札を前提とした予定価格の算定方法を明確化した。