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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 大蔵省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

消費税の課税仕入れに係る消費税額の計算に係る様式を改めることなどにより、適正な課税を図るよう改善させたもの


 消費税の課税仕入れに係る消費税額の計算に係る様式を改めることなどにより、適正な課税を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金  (款)歳入組入資金受入
  (項)各税受入金
部局等の名称 国税庁
課税の根拠 消費税法(昭和63年法律第108号)
消費税の納付の概要 消費税の納付税額は、課税資産の譲渡等の対価の額に対する消費税額から、課税仕入れに係る消費税額などを控除して算出する
納税者 27事業者
不足していた消費税の納付税額 1億1356万円(平成9年度〜11年度)

1 消費税の概要

(消費税及び地方消費税の概要)

 国税庁では、所得税、法人税、消費税等の賦課徴収の事務を担当しており、このうち消費税については、消費税法(昭和63年法律第108号)等に基づきその事務を行っている。
 そして、平成6年12月、同法の一部改正により9年4月1日から消費税の税率が3%から4%に変更されるとともに、併せて行われた地方税法(昭和25年法律第226号)の一部改正により地方消費税(消費税率1%相当)が創設された。地方消費税の賦課徴収の事務についても同庁において行っている。

(申告書及び添付書類)

 事業者は、消費税の納付税額と地方消費税の納付税額を併せて納付することとなっている。そして、事業者は、課税資産の譲渡等につき課税期間ごとに、当該課税期間の末日の翌日から2箇月以内に所定の事項を記載した「消費税及び地方消費税の確定申告書」(以下「申告書」という。)を税務署に提出することとなっている。申告書には、課税仕入れ等の税額の明細等を記載した書類として、「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」(以下「控除対象仕入税額等の計算表」という。)を添付することとなっている。

(課税仕入れに係る消費税額の計算)

 消費税の納付税額は、課税資産の譲渡等の対価の額(税抜き)に4%の税率を乗じて得られた消費税額から課税仕入れに係る消費税額などを控除することにより算出される。また、地方消費税の納付税額は上記の消費税の納付税額に25%(消費税率換算で1%)の税率を乗じることにより算出される。
 上記の課税仕入れに係る消費税額は、課税仕入れに係る支払対価の額(税込み。以下同じ。)に105分の4を乗じて算出することとなっている。これは、課税仕入れに係る支払対価の額には、消費税及び地方消費税に相当する額も含まれていることから、課税仕入れに係る支払対価の額に105分の100を乗じて課税仕入れに係る支払対価の税抜きの額を算出し、この額に4%を乗じることにより課税仕入れに係る消費税額を算出するものである。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 平成10年度決算検査報告に掲記した租税の徴収過不足の事態のなかに、地方消費税分を含めて課税仕入れに係る消費税額を過大に算出し、消費税の納付税額が徴収不足になっているものが見受けられた。
 そこで、課税仕入れに係る消費税額が適正に算定されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 東京国税局ほか11国税局(沖縄国税事務所を含む。)及び麹町税務署ほか213税務署において、法人の事業者1,600件について課税仕入れに係る消費税額の算出の適否を検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、東京国税局ほか8国税局(注1) の芝税務署ほか21税務署(注2) において、「控除対象仕入税額等の計算表」における「課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)」欄の金額に105分の4を乗じた金額と、「課税仕入れに係る消費税額」欄の金額とに開差を生じていて、課税仕入れに係る消費税額を過大に計上していたものが27件見受けられた。
 これは、地方消費税が創設された後の課税仕入れに係る消費税額の算定に当たっては、課税仕入れに係る支払対価の額に乗じる割合を、103分の3から105分の4(地方消費税分を除く。)として算出することとなったのに、この割合を105分の5、100分の5などとしていたものである(前掲「租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」の事例7 参照)。

(不足していた消費税の納付税額)

 上記のように、課税仕入れに係る消費税額の算出に当たり、控除する消費税額を適正に計算していなかったなどのため、消費税の納付税額1億1356万余円が不足していると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、国税局、税務署等で計算方法の周知を行ってきているものの、事業者において、課税仕入れに係る消費税額は地方消費税分(1%)を含まない消費税分(4%)のみであるということを十分に理解していないことにもよるが、次のことによると認められた。
(ア)「控除対象仕入税額等の計算表」にその計算式が記載されていないために、誤って地方消費税分(1%)を含めるなどして申告していたこと
(イ) 国税局、税務署等において、申告書及び「控除対象仕入税額等の計算表」における審査の際に、課税仕入れに係る消費税額には地方消費税分(1%)を含めないことなどの審査が十分なものとはなっていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国税庁では、12年10月に、消費税の適正な課税を図るため次のような処置を講じ、各国税局等に対してその旨の通知を発した。
(ア)「控除対象仕入税額等の計算表」の様式を定めている通達を同年12月までに改正し、課税仕入れに係る支払対価の額に105分の4を乗ずる旨の計算式を様式上に明示することとした。
(イ) 国税局、税務署等に対して、申告書の審査に当たっては、「課税仕入れに係る消費税額」欄に誤りがないかどうかなどを十分に審査するよう周知徹底を図る。

(注1) 東京国税局ほか8国税局 東京、関東信越、大阪、札幌、仙台、名古屋、金沢、福岡、熊本各国税局
(注2) 芝税務署ほか21税務署 芝、雪谷、蒲田、町田、神奈川、横須賀、小田原、行田、水戸、竜ヶ崎、長野、上京、札幌東、八雲、仙台中、秋田南、むつ、刈谷、豊田、魚津、久留米、鹿児島各税務署