会計名及び科目 | 電源開発促進対策特別会計(電源立地勘定) (項)電源立地対策費 |
部局等の名称 | 通商産業省東北通商産業局(平成13年1月6日以降は経済産業省東北経済産業局) |
交付の根拠 | 発電用施設周辺地域整備法(昭和49年法律第78号) |
補助事業者 (事業主体) |
新潟県刈羽郡刈羽村 |
交付金 | 電源立地促進対策交付金 |
交付金の概要 | 発電用施設の周辺地域における公共施設の整備を促進することにより、地域住民の福祉の向上を図り、もって発電用施設の設置の円滑化に資することを目的に、発電用施設が設置される市町村等に対して交付されるもの |
交付対象事業 | (1) | 生涯学習センター「ラピカ」建設工事 |
(2) | 生涯学習センター「ラピカ」建設工事に係る施工管理業務 | |
事業の概要 | (1) | 学習室、図書館、文化ホール等を有する2階建て本館、陶芸工房、茶道館等の建築工事 |
(2) | 上記建築工事の施工監理業務委託を行うもの |
交付対象事業費 | (1) | 4,714,107,300円 |
(2) | 78,015,000円 | |
計 | 4,792,122,300円 | (平成9、10両年度) |
上記に対する交付金の交付額 | (1) | 4,475,900,000円 |
(2) | 66,000,000円 | |
計 | 4,541,900,000円 | |
不当と認める事業費 | (1) | 204,898,665円 |
(2) | 78,015,000円 | |
計 | 282,913,665円 | (平成9、10両年度) |
不当と認める交付金の交付額 | (1) | 194,544,985円 |
(2) | 66,000,000円 | |
計 | 260,544,985円 |
1 事業の概要
電源立地促進対策交付金は、発電用施設周辺地域整備法(昭和49年法律第78号)及び「原子力発電施設等に係る電源立地促進対策交付金交付規則」(昭和49年科学技術庁、通商産業省告示第2号)の規定に基づき、発電用施設の周辺地域における公共用施設の整備を促進することにより、地域住民の福祉の向上を図り、もって発電用施設の設置の円滑化に資することを目的に、発電用施設が設置される市町村等に対して交付するものである。
本件事業は、新潟県刈羽郡刈羽村が、平成9、10両年度に、電源立地促進対策交付金の交付を受け、刈羽村生涯学習センター「ラピカ」建設工事(以下「ラピカ建設工事」という。)及び本件建設工事の施工監理業務の委託を、事業費4,792,122,300円(交付金4,541,900,000円)で行ったものである。
(1)ラピカ建設工事について
ラピカ建設工事は、学習室、図書館、文化ホール、プール、アリーナ等を有する鉄骨鉄筋コンクリート造等の2階建ての本館(延べ面積7,893m2 )、工房、陶芸窯室等を有する木造平屋建ての陶芸工房(同138m2 )及び茶室、水屋等を有する木造平屋建ての茶道館(同85m2 )等の建築工事を工事費4,714,107,300円(交付金4,475,900,000円)で実施したものである。同村では、11年3月にしゅん功検査を了し、施設の引渡しを受けている。
(2)施工監理業務について
ラピカ建設工事に係る施工監理業務は、本館等の建築工事の適正な履行を確保するため専門的な知識を有する者に委託することとしていた。そして、現場状況や施設の配置計画等を把握していて適切な施工監理が行えることを理由にして、同工事の設計会社に随意契約により契約額78,015,000円(交付金66,000,000円)で委託したものである。同村では、11年3月の本館等の建築工事終了に伴い、契約どおり施工監理業務が履行されたとして完了検査を了している。
2 検査の結果
検査したところ、上記のラピカ建設工事及び施工監理業務の実施が次のとおり不適切なものとなっていた。
(1)ラピカ建設工事について
本館等の建築工事において、しゅん功に当たって最終的な出来形を示すものとされた設計図面(以下「しゅん功図」という。)と出来形との間などに152項目に上る相違箇所が生じるなどしていた。これらを茶道館と本館及び陶芸工房とに分けて示すと次のとおりである。
(ア)茶道館について
茶道館に係る交付申請時の設計図書には、木造建築に不可欠な軸組図や詳細図がないなど必要な情報が網羅されていなかったり、設計図面間に不整合があったりしているため内容が読み取れないなどの問題点が多数あった。さらに、設計図面又は仕様書と工事費の積算とが異なっていて、整合性が取れていないものも多数あった。
例えば、畳については、設計書では、畳1畳当たり128,000円と高級品に相当する経費が計上されているのに、特記仕様書においては普及品であるJIS規格品が示されていた。また、建物の構造材である柱についても、設計書では、1m3
当たり686,000円と相当高品質の材料に相当する経費が計上されているのに、設計図面では杉の無垢材と指定していて、一般住宅で使用される程度の仕様となっていた。
そして、実際の出来形においては、これらの畳及び柱を含めて、特記仕様書、設計図面及び設計書と合わない品質又は質感の劣る材料によって施工されているほか、設計図書上の意図が明確なものについても質感に劣る安価な材料に変更されているものなどが計46項目あった。
したがって、茶道館(これに係る直接工事費63,802,698円)は、事業の実施が不適切であり交付金の交付目的に沿った施設となっていないと認められた。
(イ)本館、陶芸工房について
本館、陶芸工房については、窓のペアガラスの厚さを8mmから6mmに変更したものや、フローリングの材質をナラからカバザクラに変更したものなど、106項目の出来形がしゅん功図等と相違していた。
そして、このうち102項目(これらに係る直接工事費84,025,219円)については、設計変更することにより機能が向上するなど、その内容及び理由は妥当であるが、工事費を精査の上、変更契約により減額すべきものであったと認められた。
また、4項目(これらに係る直接工事費13,423,590円)については、機能・品質が低下するなど設計を変更する妥当性がないものと認められた。
したがって、本館、陶芸工房については、一部の施工がしゅん功図等と相違した安価なものや低品質なものとなっているなどしており、その施工が不適切と認められる。
上記(ア)、(イ)の結果、ラピカ建設工事のうち茶道館等事業費204,898,665円(交付金相当額194,544,985円)については事業の施行が不適切と認められる。
(2)施工監理業務委託について
施工監理業務の受託者は、対象工事の適正な履行を確保するため、発注者の指示により施工監理を行う必要があり、また、建築工事の施工過程において各種の設計変更を行う必要が生じた場合には、発注者との間において相互の意思を書面により確認しながら施工監理を行う方法を採るべきである。
しかし、本件契約の特記仕様書は、同村と施工監理業者との間の具体的な指示方法、報告の手段や報告事項の処理について、明確に取り決められていないものとなっていた。このため、実際の施工監理においても、施工監理業者が相当の部分について同村に無断で設計を変更した上その内容を報告していなかったり、同村が、その内容を承知していたもののその後の指示又は設計変更等の処理を怠っていたりしていたものが多数見受けられる状況となっている。
したがって、前記(1)のとおり本館等の建築工事において、しゅん功図等と出来形との間に多数の相違箇所が生じているなどしており、本件施工監理業務契約額78,015,000円(交付金66,000,000円)は、その目的を達していないと認められる。
このような事態が生じていたのは、同村において、本件のような大規模な事業を実施するには、事業実施体制がぜい弱であったことに加え、施工監理業務に対する認識及び監督が十分でなかったこと、また、東北通商産業局において、事業の執行に関する指導監督が十分行われていなかったことなどによると認められる。
したがって、本件ラピカ建設工事及び施工監理業務に係る交付金相当額260,544,985円が不当と認められる。