財投機関45法人の12年度の損益の状況をみると、表8のとおり、当期利益金を計上している法人は9法人計4705億余円、当期損失金を計上している法人は29法人計1兆7123億余円、損益を計上していない法人は7法人となっている。
損益を計上していない法人は、いずれも各種引当金の繰入前利益の全額を貸倒引当金、償還準備金等として繰り入れた結果、損益がゼロとなっている。また、当期損失金を計上している法人の中には、主たる事業では所定の引当金等の繰入れを行って基本的に損益がゼロとなっているが、付帯的な事業において当期損失金を計上しているものがある。
財投機関45法人のうち、各法人の設置法等において国庫納付を規定しているものは25法人となっている。このうち国際協力銀行が12年度に国庫納付を行っている。
表8 当期損益の状況(12年度) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注)★は、国庫納付規定が設けられている勘定を有する法人である。 |
財投機関には、補助金、交付金等、償還を要しない無償資金を主な財源として事業を実施するものがある。また、財政投融資資金等の有償資金を用いる法人の中にも、受益者負担だけで良質・低廉な財貨サービスを提供することが困難なため、一定の国の負担を必要としているものがある。
財投機関45法人に対して国から交付された12年度の補給金、交付金、補助金の総額は、表9のとおり、2兆9475億余円となっている。また、これに政府出資金、無利子貸付金を含めた財政負担の総額は、5兆0504億余円となっている。
表9 財政負担の状況(12年度決算額ベース) | (単位:百万円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注)
表9には委託費は含んでいない。また、特別会計の名称は一部省略している。
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「補給金」は、主として、長期低利融資を行う法人の逆ざやや収支差を国が補てんしたり、有償資金で社会資本整備を行う法人の建設コスト又は管理コストを抑制したりするものである。
「交付金」は、主に国に代わって一定の公共サービスを提供する法人に対して、発生する費用の一部を補てんするものである。
「補助金」は、運営経費や資本支出の一部を助成して原価を圧縮することにより、低廉な財貨サービス価格を可能にするものである。
財投機関は、将来の特定の費用又は損失に備えて、各種の引当金を設け、その繰入れを行っている。現行の特殊法人等会計処理基準によれば、特定の支出又は損失に備えるための引当金は、各事業年度の費用又は損失とすることを相当と認められる額について計上するものとされている。
財投機関の場合は、民間企業とは異なり、現金ベースの原則に立つ国の予算措置を前提として事業を行っており、法人内部に利益を蓄積することは予定されていない。
そのため、見込まれる損失に対して規定された限度額まで引当金等を計上することとしている法人が多い。
「貸倒引当金」については、おおむね、貸倒れによる回収不能額を見積もって計上するのではなく、期末貸付金残高の一定割合を限度として計上し、実際に貸倒損失が生じたときに予算措置される財源等で貸倒債権を償却する方法によることとされている。
「退職給与引当金」は、所要額の全額を計上している法人もあるが、所要額の一部を 計上している法人や計上していない法人もある。
「特別法上の引当金等」は、特別の法律又はこれに基づく主務大臣の命令等により、将来の特定の費用又は損失の発生等に備えるものである。その計上額は、将来の特定の費用又は損失の発生等のリスクを見積もるのではなく、あらかじめ定められた基準に基づき収支差額の範囲内で計上している法人が多い。
社会資本整備を行う法人に多く例がみられるが、政策金融を行う公庫にも例がある。