この機構は、預金者等の保護を図るため、次のような業務を行うことなどにより、もって信用秩序の維持に資することを目的として設置されているものである。
(ア) 金融機関が預金等の払戻しを停止した場合に必要な保険金等の支払等を行うとともに、破綻金融機関に係る合併等に対する適切な資金援助等を行う業務
(イ) 住宅金融専門会社から財産を譲り受けてその処理等を行う会社を設立し、当該設立された会社に対して資金援助等を行う業務
(ウ) 金融整理管財人の業務、及び金融整理管財人の管理に係る金融機関の業務を承継する銀行の設立、当該設立された銀行の経営管理、特別公的管理銀行の株式の取得、金融機関等の資産の買取り等を行う業務
(エ) 金融機関等が発行する株式等の引受け等を協定銀行に委託し、これに伴い必要となる財務上の支援を行う業務
その資本金は12事業年度末現在で54億5500万円(うち国の出資51億5000万円)となっている。
同機構の会計は、一般、特例業務、特定住宅金融専門会社債権債務処理、金融再生及び金融機能早期健全化の5勘定に区分して経理されており、その勘定別の12事業年度の収入支出決算、損益、借入金等及び主な業務実績は次のとおりである。
(一般勘定)
1 収入支出決算
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) |
千円 | 千円 | |
(収入) | ||
収入決定済額 | 3,672,813,038 | 2,667,758,180 |
(支出) | ||
支出予算現額 | 4,028,397,938 | 4,275,147,964 |
支出決定済額 | 3,672,787,638 | 2,667,853,873 |
不用額 | 355,610,299 | 1,607,294,090 |
不用額の主なものは、借入返済金(支出予算現額2兆5126億円)の2679億円、資金援助事業費(同1000億円)の761億2633万余円及び事業外費用(借入金の利息。同167億8685万余円)の111億9711万余円である。
2 損益
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) |
千円 | 千円 | |
経常収益 | 276,552,799 | 277,010,993 |
(うち保険料収入) | (275,907,291) | (274,706,718) |
経常費用 | 1,427,138,594 | 833,198,082 |
(うち他勘定へ繰入) | (1,394,801,032) | (823,970,134) |
特別損失 | − | 76,070 |
当期損失金 | 1,150,585,794 | 556,263,159 |
(損失金の処理) | ||
翌事業年度に繰越欠損金として整理 | 1,150,585,794 | 556,263,159 |
(繰越欠損金 | 1,314,224,876 | 757,961,716) |
3 借入金
区分 | 12事業年度末 | (11事業年度末) |
千円 | 千円 | |
借入金残高 | 2,464,200,000 | 1,312,900,000 |
(うち日本銀行) | (394,200,000) | (71,100,000) |
(うち市中金融機関) | (2,070,000,000) | (1,241,800,000) |
4 主な業務実績
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) | |
資金援助(金銭の贈与)の実施 | 件数 | 1 | − |
金額 | 23,872,197千円 | − |
(特例業務勘定)
1 収入支出決算
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) |
千円 | 千円 | |
(収入) | ||
収入決定済額 | 14,166,970,538 | 11,971,422,967 |
(支出) | ||
支出予算現額 | 25,904,474,117 | 22,130,609,656 |
支出決定済額 | 14,202,633,625 | 11,934,897,841 |
不用額 | 11,701,840,491 | 10,195,711,814 |
不用額の主なものは、協定銀行貸付金(支出予算現額9兆5099億円)の5兆4743億円、資金援助事業費(同9兆8151億4533万円)の4兆5447億6481万余円及び借入返済金(同6兆3958億円)の1兆6058億円である。
2 損益
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) |
千円 | 千円 | |
経常収益 | 5,323,231,298 | 4,763,891,230 |
(うち特例業務基金受入) | (3,640,683,524) | (3,645,679,610) |
(うち一般勘定より受入) | (1,394,801,032) | (823,970,134) |
経常費用 | 5,421,455,072 | 4,801,299,891 |
(うち資金援助事業費) | (5,267,994,383) | (4,684,570,091) |
特別損失 | − | 115,455,928 |
当期損失金 | 98,223,774 | 152,864,589 |
(損失金の処理) | ||
翌事業年度に繰越欠損金として整理 | 98,223,774 | 152,864,589 |
(繰越欠損金 | 582,530,675 | 429,666,086) |
3 借入金
区分 | 12事業年度末 | (11事業年度末) |
千円 | 千円 | |
借入金残高 | 3,491,500,000 | 3,567,600,000 |
(市中金融機関) |
4 特例業務基金国庫債券
区分 | 12事業年度末 | (11事業年度末) |
千円 | 千円 | |
特例業務基金国庫債券償還累計額 | 8,416,610,373 | 4,790,098,432 |
同未償還額 | 4,583,389,627 | 2,209,901,568 |
特例業務基金国庫債券については、国から預金保険機構に対し9事業年度に7兆円が、さらに12事業年度に6兆円が交付された。
5 主な業務実績
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) | |
特別資金援助の実施 | 金額 | 6,086,834,999千円 | 5,951,243,085千円 |
(うち金銭の贈与) | 件数 | 19 | 19 |
金額 | (5,236,763,285千円) | (4,646,814,482千円) | |
(うち協定銀行へ資産の買取りの委託)(注1) | 件数 | 20 | 20 |
金額 | (850,071,714千円) | (1,304,428,603千円) | |
破綻した金融機関からの買取り資産(貸付金)の回収(注2) | 金額 | 17,197,669千円 | 27,157,680千円 |
事業年度末買取り資産残高 | 金額 | 107,370,891千円 | 124,568,561千円 |
上記のうち民間金融機関のリスク管理債権の開示基準を参考に機構において開示している債権(注3) | |||
破綻先債権 | 11,007,278千円 | 5,949,066千円 | |
延滞債権 | 55,818,506千円 | 69,479,595千円 | |
3ヵ月以上延滞債権 | 2,608,963千円 | 1,640,801千円 | |
貸出条件緩和債権 | 935,373千円 | 1,380,809千円 | |
計 | 70,370,121千円 | 78,450,272千円 | |
貸倒引当金(注) | 44,662,328千円 | 48,423,675千円 | |
貸倒引当金に計上する金額は、破綻先、実質破綻先の債務者に係る債権については、債権額から担保の処分可能見込額等を控除した額とされている。また、破綻懸念先の債務者に係る債権については、債権額から担保の処分可能見込額等を控除し、その残額のうち債務者の支払能力を総合的に判断して必要と認める額とされている。上記以外の債務者に係る債権については、過去の一定期間における貸倒実績に基づき算出した貸倒実績率を債権額に乗じた額とされている。 |
(注1) ペイオフコスト以内の資金援助(資産の買取りの委託)1件10,832,476千円を含む。
(注2) 10年2月の預金保険法の改正が行われる前までは、預金保険機構が株式会社整理回収銀行に対して破綻した金融機関の資産の買取りを委託できるのは、信用組合に限られていたため、同機構は10年1月に破綻した株式会社阪和銀行の貸付金等資産2086億余円を直接買い取っている。
(注3) 11事業年度と12事業年度では異なる基準によっているため、両事業年度間の比較はできない。
(特定住宅金融専門会社債権債務処理勘定)
1 収入支出決算
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) |
千円 | 千円 | |
(収入) | ||
収入決定済額 | 12,301,201 | 13,227,063 |
(支出) | ||
支出予算現額 | 12,631,217 | 21,318,002 |
支出決定済額 | 12,280,960 | 13,309,847 |
不用額 | 350,256 | 8,008,155 |
2 損益
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) |
千円 | 千円 | |
経常収益 | 22,760,499 | 20,590,898 |
(うち金融安定化拠出基金戻入) | (10,828,913) | (12,354,809) |
(うち資産運用収入) | (10,462,317) | (7,212,457) |
経常費用 | 56,199,371 | 43,599,669 |
(うち債権処理会社助成事業費) | (44,277,025) | (35,430,763) |
特別損失 | − | 61,868 |
当期損失金 | 33,438,871 | 23,070,640 |
(損失金の処理) | ||
翌事業年度に積立金を減額整理 | − | 2,762 |
翌事業年度に繰越欠損金として整理 | 33,438,871 | 23,070,640 |
(繰越欠損金 | 23,067,877 | −) |
3 金融安定化拠出基金
区分 | 12事業年度末 | (11事業年度末) |
千円 | 千円 | |
金融安定化拠出基金残高 | 908,695,244 | 909,061,840 |
4 主な業務実績
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) | |
債権処理会社への業務推進助成金の交付 | 金額 | 10,828,913千円 | 12,354,809千円 |
債権処理会社からの納付金の収納 | 金額 | 462,063千円 | 747千円 |
(金融再生勘定)
1 収入支出決算
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) |
千円 | 千円 | |
(収入) | ||
収入決定済額 | 8,884,583,758 | 16,697,193,092 |
(支出) | ||
支出予算現額 | 9,401,740,032 | 20,065,225,831 |
支出決定済額 | 8,884,140,162 | 16,696,956,268 |
不用額 | 517,599,869 | 3,368,269,562 |
不用額の主なものは、特定協定銀行貸付金(支出予算現額3090億円)の2740億円、借入返済金(同5兆3834億円)の1715億円及び協定銀行貸付金(同2兆3156億円)の306億円である。
2 損益
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) |
千円 | 千円 | |
経常収益 | 32,845,876 | 31,484,476 |
(うち資産買取事業収入) | (25,131,874) | (10,743,314) |
経常費用 | 219,351,867 | 483,624,938 |
(うち特別公的管理銀行損失補填金) | (101,144,052) | (348,900,922) |
当期損失金 | 186,505,990 | 452,140,462 |
(損失金の処理) | ||
翌事業年度に繰越欠損金として整理 | 186,505,990 | 452,140,462 |
(繰越欠損金 | 452,231,091 | 90,628) |
3 借入金
区分 | 12事業年度末 | (11事業年度末) |
千円 | 千円 | |
借入金残高 | 5,118,300,000 | 3,924,300,000 |
(市中金融機関) |
4 主な業務実績
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) | |
特定協定銀行への一般金融機関からの資産の買取りの委託 | 延金融機関数 | 141行 | 116行 |
金額 | 12,627,256千円 | 21,690,049千円 |
(金融機能早期健全化勘定)
1 収入支出決算
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) |
千円 | 千円 | |
(収入) | ||
収入決定済額 | 17,751,560,844 | 17,174,792,181 |
(支出) | ||
支出予算現額 | 25,947,812,058 | 17,799,187,539 |
支出決定済額 | 17,751,095,473 | 17,174,727,676 |
不用額 | 8,196,716,584 | 624,459,862 |
不用額の主なものは、協定銀行貸付金(支出予算現額13兆2688億円)の4兆3494億4490万円、借入返済金(同12兆6014億円)の3兆7982億円及び事業外費用(借入金の利息。同774億4341万余円)の490億5495万余円である。
2 損益
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) |
千円 | 千円 | |
経常収益 | 58,911,260 | 24,149,634 |
(うち協定銀行貸付金利息収入) | (32,854,901) | (24,142,511) |
(うち協定銀行納付金収入) | (26,027,713) | (−) |
経常費用 | 34,430,146 | 24,278,558 |
(うち事業外費用) | (34,278,147) | (24,166,723) |
当期利益金(△当期損失金) | 24,481,113 | △128,924 |
(利益金又は損失金の処理) | ||
翌事業年度に繰越欠損金の補てんに充当 | 175,306 | − |
翌事業年度に繰越欠損金として整理 | − | 128,924 |
翌事業年度に積立金として整理 | 24,305,807 | − |
(繰越欠損金 | 175,306 | 46,382) |
3 借入金等
区分 | 12事業年度末 | (11事業年度末) |
千円 | 千円 | |
借入金残高 | 6,304,600,000 | 7,440,200,000 |
(うち日本銀行) | (−) | (197,800,000) |
(うち市中金融機関) | (6,304,600,000) | (7,242,400,000) |
預金保険機構債券発行残高 | 1,800,000,000 | 600,000,000 |
4 主な業務実績
区分 | 12事業年度 | (11事業年度) | |
協定銀行への資本増強の委託 | 金融機関数 | 5行 | 7行 |
金額 | 387,025,100千円 | 575,030,000千円 |
なお、この機構について検査した結果、「第4章 特定検査対象に関する検査状況」に「金融システムの安定化のための緊急対策の実施状況について」 を掲記した。