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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

調剤報酬における調剤基本料が処方せんの受付回数等の実績に基づいて適正に請求されるよう改善させたもの


調剤報酬における調剤基本料が処方せんの受付回数等の実績に基づいて適正に請求されるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計(組織)厚生労働本省 (項)精神保健費
(項)生活保護費
(項)身体障害者保護費
(項)老人医療・介護保険給付諸費
(項)児童保護費
(項)国民健康保険助成費
厚生保険特別会計(健康勘定) (項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
船員保険特別会計 (項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
部局等の名称 社会保険庁、北海道ほか12府県
国の負担の根拠 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)等
医療給付の種類 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、老人保健法、生活保護法等に基づく医療
薬局 45薬局
不適切に支払われた医療費に係る調剤報酬 調剤技術料のうちの調剤基本料
不適切に支払われた医療費の額 6414万円(平成12、13両年度)
上記に対する国の負担額 3932万円

1 制度の概要

(薬剤の支給等)

 健康保険法等に基づいて保険者等が行う医療給付(前掲「医療費に係る国の負担が不当と認められるもの」 参照)には、医療機関が行う診察、治療等の診療及び薬局が行う薬剤の支給等がある。そして、外来患者に対する薬剤の支給等には、診療を担当した医療機関が当該医療機関内で調剤を行い患者に必要な薬剤の支給等を行う院内処方と、診療を担当した医療機関が患者に必要な薬剤について処方せんを発行し、患者がそれを当該医療機関外の薬局に提出して薬剤の支給等を受ける院外処方とがある。
 厚生労働省では、院外処方によって医師と薬剤師が診療と薬剤の支給等をそれぞれ分担することにより、薬剤師による患者の薬歴管理や服薬指導が徹底し、医療の質の向上を図ることができるとして、このいわゆる医薬分業を推進している。

(調剤報酬の算定方法)

 医療給付において、薬局は、被保険者等に薬剤の支給等を行った場合、これに要した費用を調剤報酬として請求している。
 この調剤報酬は、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号)等(以下「算定基準」という。)に基づいて算定することとされている。
 算定基準によると、調剤報酬は、調剤技術料、指導管理料、薬剤料等からなっている。そして、調剤技術料のうち調剤基本料は、患者等が提出する処方せんの枚数に関係なく処方せんの受付1回当たりの所定の点数(以下「基本点数」という。)に単価(10円)を乗じて算定することとされている。
 この調剤基本料については、平成8年4月に特定の薬局が特定の医療機関の発行した処方せんを集中的に扱うことを抑制するなど適正な医薬分業を推進する観点から見直しが行われたその結果、それまで原則一律であった基本点数を、1箇月当たりの処方せんの受付回数(以下「月当たり受付回数」という。)と当該薬局における受付回数に占める特定の医療機関に係る処方せんの受付回数の割合(以下「集中率」という。)の組み合わせによって、下表のとおり4つに区分し、それにより算定することとされた。

調剤基本料の区分 月当たり受付回数 集中率 基本点数
調剤基本料(I)a 4,000回以下 70%以下 49点
調剤基本料(I)b 4,000回超 70%以下 44点
調剤基本料(II)a 4,000回以下 70%超 39点
600回以下(注) 44点
調剤基本料(II)b 4,000回超 70%超 21点
この区分は、立地環境などの理由により集中率は高いが、月当たり受付回数が少ない小規模薬局のために設けられたものである。

 いずれの調剤基本料の区分に該当するかの判定等については、「新診療報酬点数表の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(平成12年保険発第28号厚生省保険局医療課長、歯科医療管理官連名通知)に示されている。すなわち、薬局が開設直後で受付実績のない時期等を除き、過去1年間の処方せん受付回数の実績を薬局が自ら把握し、これを基に月当たり受付回数及び集中率を算出し、その結果によって上記区分のいずれに該当するかを判定することとされている。そして、その後の1年間は当該区分により調剤基本料の請求を行うこととされていて、以降毎年4月に同様の方法で算定の区分の見直しをすることとされている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、医薬分業の進展等に伴い、薬局数、薬局が受け付ける処方せん枚数及び調剤報酬の額は増加している。そして、調剤報酬のうち調剤基本料は、上記のとおり、適正な医薬分業を推進する観点から、月当たり受付回数と集中率の組み合わせにより4つに区分されており、薬局が調剤基本料の請求を行うに当たっては、自ら月当たり受付回数等の実績を把握し、これにより該当すると判断した区分の基本点数により請求することとされている。
 そこで、調剤基本料が、薬局において月当たり受付回数等の実績の把握が適正に行われ、これに基づいた基本点数を用いて適正に請求されているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 検査に当たっては、北海道ほか16都府県(注1) において、比較的高い基本点数により調剤基本料を算定していて月当たり受付回数が多く見込まれるなどしている薬局の中から159薬局を選定し、12、13両年度の調剤基本料の請求について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、北海道ほか12府県(注2) に所在する45薬局では、所定の期間における月当たり受付回数及び集中率の実績を把握していなかったなどのため、調剤基本料を過大に算定して請求しており、その結果、12、13両年度における医療費が492,828件、64,141,923円(これに対する国の負担額39,328,770円)過大に支払われていた。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

(1) 月当たり受付回数の区分を誤っていたもの

北海道ほか3府県 8薬局  
過大に支払われた医療費 254,478件 32,374,221円
(上記に対する国の負担額   20,130,923円)

 上記の薬局では、実際には月当たり受付回数が4,000回を超えるなどしているのに、月当たり受付回数を把握しておらず、これによる調剤基本料の区分を見直すことなく、より高い区分の基本点数を用いて調剤基本料を算定していた。

(2) 集中率の区分を誤っていたもの

北海道ほか11府県 37薬局  
過大に支払われた医療費 238,350件 31,767,702円
(上記に対する国の負担額   19,197,847円)

 上記の薬局では、実際には集中率が70%を超えているのに、集中率の実績を把握しておらず、これによる調剤基本料の区分を見直すことなく、より高い区分の基本点数を用いて調剤基本料を算定していた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、薬局において自ら受付回数等の実績を把握し、これに基づいて適正な請求を行うという基本的な認識・理解が十分でなかったことにもよるが、主として厚生労働省において調剤基本料の区分に関する取扱いについての周知及び指導が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省では、15年1月及び3月に、地方社会保険事務局及び都道府県に対して通知を発し、月当たり受付回数及び集中率を正確に把握し、調剤基本料がこれらの実績に基づいて適正に請求されるよう、薬局に対する指導を強化するとともに、関係団体と連携を図り調剤基本料の区分に関する取扱いについて周知徹底を図る処置を講じた。
 なお、前記の過大に支払われた医療費については、返還の措置が講じられた。

(注1) 北海道ほか16都府県 北海道、東京都、京都、大阪両府、埼玉、千葉、神奈川、石川、長野、愛知、岡山、徳島、香川、高知、長崎、大分、鹿児島各県
(注2) 北海道ほか12府県 北海道、京都、大阪両府、埼玉、千葉、神奈川、石川、愛知、岡山、徳島、高知、大分、鹿児島各県