1 本院が要求した是正改善の処置
基本診療料、特掲診療料及び入院時食事療養費(以下「基本診療料等」という。)からなる診療報酬の中には、医療機関が、医師、看護師及び准看護師(以下、この両者を併せて「看護職員」という。)等の配置等について厚生労働大臣が定める基準に適合していることを地方社会保険事務局又は都道府県に届け出て、審査を経て受理された場合に初めて算定し請求することができるものがある。
そして、基本診療料等に係る届出に関する手続の取扱いを定めた通知(以下「取扱通知」という。)によると、医療機関は、届出を行う時点において、医師、看護職員等のいずれについても、その員数が医療法(昭和23年法律第205号)が定める医療機関に置くべき標準人員数の8割を超えていなければ新規又は上位の診療報酬算定項目への変更の届出は受理されないことなどとされている。
一方、基本診療料のうちの入院基本料については、その算定方法を定めた通知(以下「算定通知」という。)によって、医師の員数が標準人員数の8割以下であっても看護職員等の員数が標準人員数の8割を超えるなどしていれば、所定の減額をしない場合がある。
そこで、基本診療料等の届出が取扱通知に基づいて適切に受理され、基本診療料等が医療機関において適正に算定されているかについて検査したところ、医療機関では届出時に医師の員数が標準人員数の8割以下となっていたのに、看護職員等の員数が標準人員数の8割を超えていたなどの理由から、基本診療料等に関し新規等の届出を行い、地方社会保険事務局及び都道府県では医師の員数を確認できずにこれらをそのまま受理するなどしていた。このため医療機関において誤った基本診療料等を算定して請求していて、医療費の支払が不適切となっている事態が見受けられた。
このような事態が生じているのは、基本診療料等の届出についての医療機関の認識が十分でないことにもよるが、主として次のことによると認められた。
(ア)医師の員数が標準人員数の8割以下となっている医療機関について基本診療料等の届出の受理の制限を定めた取扱通知が、当該医療機関における入院基本料の減額を定めた算定通知と混同されやすいものとなっていること
(イ)医療機関が基本診療料等を届け出る際に、届出時の医師、看護職員等の員数及び標準人員数を確認できるようになっていないこと
(ウ)地方社会保険事務局及び都道府県において、取扱通知に対する認識・理解が十分でないこと
診療報酬における基本診療料等の届出の受理が適切に行われるよう、次のとおり、厚生労働大臣に対し平成15年11月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した。
(ア)取扱通知における届出の申請・受理に関する取扱いの記述を明確にすること
(イ)基本診療料等の届出に際し、届出時の医師、看護職員等の員数及び標準人員数を確認できるようにすること
(ウ)地方社会保険事務局及び都道府県に対し、本制度の周知徹底を図るとともに、医療機関への制度の周知徹底を図るよう指導すること
2 当局が講じた是正改善の処置
厚生労働省では、本院指摘の趣旨に沿い、16年2月から4月にかけて取扱通知等を改正するなどして、診療報酬における基本診療料等の届出の受理が適切に行われるよう、次のような処置を講じた。
(ア)基本診療料等に係る届出の取扱いを見直して、算定通知との整合を図るとともに、届出の申請・受理に関する取扱いの記述を明確にした。
(イ)届出書の様式を改正し、基本診療料等の届出時に、医師、看護職員等の員数が標準人員数に対して一定の基準を下回っていないことを医療機関に申告させるとともに、医師、看護職員等の員数及び標準人員数を確認するため、地方社会保険事務局及び都道府県において保有している資料を活用することを周知した。
(ウ)地方社会保険事務局及び都道府県に対し、上記の基本診療料等に係る届出の取扱いの見直しについて周知を図るとともに、医療機関への制度の周知徹底を図るよう指導を行った。