会計名及び科目 | 一般会計 | (組織) | 都道府県労働局 | (項)都道府県労働局 | ||
平成11年度以前は、 | ||||||
(組織) | 職業安定官署 | (項)職業安定官署 | ||||
(組織) | 労働保護官署 | (項)労働保護官署 | ||||
平成12年度は、 | ||||||
(組織) | 都道府県労働局 | (項)都道府県労働局 | ||||
(項)労働官署 | ||||||
労働保険特別会計 | (労災勘定) | (項)業務取扱費 | ||||
(項)労働福祉事業費 | ||||||
(雇用勘定) | (項)業務取扱費 | |||||
(項)雇用安定等事業費 | ||||||
(項)雑収入 | ||||||
(徴収勘定) | (項)業務取扱費 |
不正に支出された経費の概要 | (1) | 物品の購入に係る庁費等 |
(2) | 相談員等に対する謝金等、職員等に対する旅費 | |
不正行為による損害金の種類 | (3) | 前渡資金、雇用保険の失業等給付金の不正受給に係る返納金等 |
亡失した物品の概要 | (4) | 公共職業安定所で使用するパーソナルコンピュータ等 |
不当と認められる金額 | (1) | 物品の購入に係る庁費等の不正支出額 | ||
14,127,843円 | (平成11、12、15各年度) | |||
(2) | 謝金等及び旅費の不正支払額 | |||
60,032,717円 | (平成11年度〜15年度) | |||
(3) | 国庫金の領得による損害額 | |||
1,799,470円 | (平成10、11、17各年度) | |||
(4) | 物品の亡失額 | |||
2,114,965円 | ||||
計 | 78,074,995円 |
1 業務の概要
都道府県労働局(平成11年度以前は都道府県、都道府県労働基準局。以下「労働局」という。)は、労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることなどを任務としており、その一環として、事業場に対する監督指導、職業紹介、職業訓練、高年齢者の雇用の確保等の業務を行っている。そして、所掌事務の一部については管下の公共職業安定所及び労働基準監督署に行わせている。
労働局では、上記業務の実施に当たり、一般会計並びに労働保険特別会計の労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定において毎年度多額の予算を執行している。このうち、物品の購入に係る経費については、庁費等の予算科目から支出している。また、職業相談員等の非常勤職員(以下「相談員等」という。)に対して支払う謝金・賃金(以下「謝金等」という。)については諸謝金等、職員・相談員等の出張に係る経費については職員旅費等の予算科目からそれぞれ支出している。
労働局管下の公共職業安定所等では、労働局から前渡資金の交付を受け、庁費、謝金、旅費等の支払を行っている。
2 検査の結果
本院では、北海道労働局ほか24労働局(管下の公共職業安定所等を含む。)が11年度から16年度までの間に支出した物品の購入に係る庁費等、相談員等に対する謝金等、職員・相談員等に対する旅費を対象に、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づいて提出された証拠書類等により在庁時に書面検査を実施したほか、上記の25労働局に対し会計実地検査を実施した。
(本件の検査の背景等については別掲特定検査対象に関する検査状況 参照)
検査したところ、北海道労働局ほか5労働局(管下の公共職業安定所を含む。)において、〔1〕物品の購入に係る庁費等を不正に支出していたり、〔2〕謝金等及び旅費を不正に支払っていたり、〔3〕職員が国庫金を領得していたり、〔4〕物品を亡失していたりしていて、会計法令等に違背し、著しく不当であると認められる事態が、次表のとおり見受けられた。
事態の態様
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労働局名 |
物品の購入に係る庁費等の不正支出 | 謝金等及び旅費の不正支払 | 職員による国庫金の領得(不正行為) | 物品の亡失 | 合計 | |
(31) | 北海道労働局 | 2,139,375 | — | 1,799,470 (4,065,550) |
2,114,965 | 6,053,810 (4,065,550) |
(32) | 青森労働局 | — | 31,783,390 | — | — | 31,783,390 |
(33) | 茨城労働局 | 467,610 | — | — | — | 467,610 |
(34) | 東京労働局 | 11,270,858 | — | — | — | 11,270,858 |
(35) | 京都労働局 | — | 28,249,327 | — | — | 28,249,327 |
(36) | 徳島労働局 | 250,000 | — | — | — | 250,000 |
合計 | 14,127,843 | 60,032,717 | 1,799,470 (4,065,550) |
2,114,965 | 78,074,995 (4,065,550) |
このような事態が生じていたのは、厚生労働本省(13年1月5日以前は労働本省)の各労働局に対する会計経理の適正化、倫理の徹底及び綱紀の粛正についての指導監督が著しく欠如していたこと、また、上記の労働局において会計法令等を遵守するよう職員に対して徹底していないなどのため、労働局職員の公金に対する認識が著しく欠如していたこと、公共職業安定所に対する労働局の統制が十分に機能していなかったことなどによると認められる。
これを労働局ごとに示すと次のとおりである。
ア 物品の購入に係る庁費等の不正支出
北海道労働局では、事務用品販売業者であるA社及びB社からリサイクルトナー等の消耗品を購入し、納入された物品を検査(以下「検収」という。)したとして、16年4月に8件、計2,139,375円を支出していた。
しかし、これらは、同労働局において、A社及びB社に架空取引のための虚偽の見積書を作成させ、上記の契約物品が実際には納入されていないにもかかわらず納入されたこととして関係書類を偽造するなどして支出したものであった。
そして、上記の8件のうち、A社への支出2件、計753,375円は、実際は同労働局職員の引越に伴う職員宿舎用のカーペットや暖房器具等の購入費用等に充てられており、また、B社への支出6件、計1,386,000円は、実際は国が負担する必要のない印刷機のリース契約に係る中途解約精算金に充てられていた。
イ 職員が国庫金を領得していたもの
同労働局管下の札幌東公共職業安定所(以下「東所」という。)では、12年3月27日に事務用品販売業者であるC社から上質紙を購入したとして、その代金499,800円を同社の預金口座あてに振り込んでいるとしていたが、同社の関係帳簿では入金の事実が確認できなかった。
そのため、東所が保管している10年度以降の国庫金振込明細票の控えと、これに対応する日本銀行の代理店が保管している国庫金振込明細票を突合したところ、同社に対する上記の支払を含め、10業者に対する支払16件、計5,769,280円(10年度10件3,212,194円、11年度6件2,557,086円)は、東所において当時経理係主任であった中村某名義の預金口座に振り込まれていた。
これらは、同人が取引先業者あての国庫金振込明細票を破棄し、自ら不正に作成した同人名義の預金口座あての国庫金振込明細票と差し替えて上記の代理店に持ち込み、当該預金口座に振り込ませていたものであり、同人は、上記16件のうち、発覚前に補てんしていた13件、計4,065,550円を除く、3件、計1,703,730円(10年度1件639,450円、11年度2件1,064,280円)を領得していた。
また、同人は、17年7月25日、14年度以降在籍している同労働局管下の札幌公共職業安定所(以下「札幌所」という。)において、金庫の施錠が徹底されていなかったことから、雇用保険の失業等給付金の不正受給に係る返納金等95,740円を領得していた。
上記の事態が判明したことから、同人が庶務係長として物品の管理等を行っている札幌所において、物品管理簿等に記載されている物品が現存しているかについて現物確認を行ったところ、物品管理簿等と現物の照合確認が形式的なものとなっているなど購入後の管理が不徹底であったため、15年度に購入又は管理換を受けたパーソナルコンピュータ計62台のうち、11台(購入価格相当額1,924,965円)を亡失していた。
なお、札幌所内の同人の机の中から亡失したパーソナルコンピュータの物品表示票等が見つかっているが、17年9月末現在において亡失に至った経緯の詳細は確認できていない。
また、14年度から会計実地検査当時(17年9月)までの間に札幌市内の交通機関で使用できるプリペイドカード19枚(購入価格相当額190,000円)を亡失していた。
青森労働局及び管下の7公共職業安定所(注1)
では、相談員等を雇用したり、出張させたりしたとして、謝金支給調書、旅費請求書等に基づき、11年度から15年度までの間に、謝金等分計380件、30,498,105円、旅費分計643件、1,285,285円、合計31,783,390円を支払っていた。
しかし、これらは、同労働局及び管下の7公共職業安定所において、謝金支給調書、旅費請求書等の関係書類を偽造するなどの方法により、相談員等を雇用した事実がないのに雇用したこととしたり、雇用していない相談員等を出張させたこととしたりして不正に支払ったものであった。
そして、同労働局及び管下の7公共職業安定所では、上記の31,783,390円のうち、謝金等に係る源泉徴収額分等605,186円を除く31,178,204円を別途に経理していた。
このほかに、10年度以前から同様の方法により謝金等や旅費から不正に支払い、別途経理していた資金の残額が11年度当初で14,938,218円あったことが判明している。この結果、別途経理資金に係る預金利息15,586円と合わせ、計46,132,008円を別途に経理していた。このうち、36,377,745円を業務の目的外の用途に使用し、会計実地検査当時(17年5月及び8月)、残額計9,754,263円を銀行預金や現金等で保有していた。
(3)茨城労働局
茨城労働局では、D組合からコピー用紙を購入し、検収したとして、11年8月から12年3月までの間に計4件、510,930円を支出していた。
しかし、これらは、同労働局において、あらかじめ同組合から受領していた組合印等の押印された白紙の見積書、請求書等に品名、金額を記入し、上記のコピー用紙が実際には納入されていないにもかかわらず納入されたこととして関係書類を偽造するなどして支出したものであった。
そして、本件支出のうち467,610円が、実際は嗜好飲料等の購入や歓迎会の費用等に充てられていた。
(4)東京労働局
東京労働局では、事務用品販売業者であるE社からトナーカートリッジ、ファイル等の物品を購入し、検収したとして、11、12両年度に計65件、12,221,841円を支出していた。
しかし、これらは、同労働局において、同社に別の物品を納入させるために虚偽の見積書を作成させ、契約した物品が実際には納入されていないにもかかわらず納入されたこととして関係書類を偽造するなどして支出したものであった。
そして、本件支出のうち11,144,026円が、実際は上記の契約物品とは異なるパーソナルコンピュータ及びその周辺機器等の購入に充てられていた。
これらの物品のうちパーソナルコンピュータ等(購入価格相当額10,175,037円)については、同労働局が使用している機種ではなく、また、髭剃り、電動歯ブラシ等(購入価格相当額968,989円)については、同労働局の業務では使用しないものであった。そして、これらは17年9月末現在、その所在が確認できていない。
このほか、本件支出計12,221,841円に対し、実際に納入された物品の価額は上記のパーソナルコンピュータ等を含め計12,095,009円となっているが、差額126,832円は使途等が不明となっている。
京都労働局及び管下の8公共職業安定所(注2)
では、職員・相談員等を出張させたり、また、相談員等を雇用したりしたとして、旅費請求書、謝金支給調書等に基づき、11年度から15年度までの間に、旅費分計2,050件、26,587,027円、謝金分計90件、1,662,300円、合計28,249,327円を支払っていた。
しかし、これらは、同労働局及び管下の8公共職業安定所において、旅費請求書、謝金支給調書等の関係書類を偽造するなどの方法により、出張の事実がないにもかかわらず出張させたこととしたり、相談員等の勤務時間数を水増ししたりなどして不正に支払ったものであった。
そして、同労働局及び管下の8公共職業安定所では、上記の28,249,327円を別途に経理していた。
このほかに、10年度以前から同様の方法により旅費や謝金から不正に支払い、別途に経理していた資金の残額が11年度当初で25,350,000円あったことが判明している。この結果、別途経理資金に係る預金利息3,909円と合わせ、計53,603,236円を別途に経理していた。このうち、36,347,015円を業務の目的外に使用し、会計実地検査当時(17年7月及び8月)、残額計17,256,221円を現金や銀行預金で保有していた。
(6)徳島労働局
徳島労働局では、事務用品販売業者であるF社からチューブファイル等の消耗品を購入し、検収したとして、12年4月に3件、計304,500円を支出していた。
しかし、これらは、同労働局において、同社に架空取引のための虚偽の見積書を作成させ、上記のチューブファイル等の契約物品が実際には納入されていないにもかかわらず納入されたこととして関係書類を偽造するなどして支出したものであった。
そして、本件支出のうち250,000円が、現金で同労働局に返金され、同労働局職員の懇親会の費用に充てられていた。