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  • 平成16年度|
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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの


(41)雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等の名称 厚生労働本省(平成15年度以降の支給庁)
  北海道労働局ほか12労働局(平成14年度以前の支給庁)
  札幌公共職業安定所ほか164公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 510人
失業等給付金の支給額の合計 求職者給付  
367,610,078円
(平成14年度〜17年度)
就職促進給付  
5,548,364円
(平成15、16両年度)
   
373,158,442円
不適正支給額 求職者給付  
116,202,911円
(平成14年度〜17年度)
  就職促進給付  
5,548,364円
(平成15、16両年度)
   
121,751,275円

1 保険給付の概要

(雇用保険)

 雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者とし、被保険者が失業した場合及び被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合などに、その生活及び雇用の安定を図るなどのため失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行う保険である。

(失業等給付金の種類)

 失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。
ア 求職者給付には7種の手当等があり、このうち、
(ア)基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めかつ失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注1) が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。
(イ)特例一時金は、被保険者であって季節的に雇用される者等が失業した場合に支給される。
イ 就職促進給付には5種の手当等があり、このうち再就職手当は、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上残して安定した職業に就いた場合に支給(注2) される。

(注1) 受給資格者 被保険者が、離職し労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者
(注2)  平成15年3月1日から17年3月31日までの間に所定給付日数の3分の2以上残して再就職した場合には、再就職手当に代えて財団法人高年齢者雇用開発協会から早期再就職支援金(「早期再就職者支援基金事業における早期再就職者支援金の支給が不当と認められるもの」 参照)が支給される。

(失業等給付金の支給)

 上記の手当等は、公共職業安定所が次のように支給を決定し、これに基づいて厚生労働本省(平成14年度以前は都道府県労働局)が支給することとなっている。
ア 基本手当及び特例一時金については、受給資格者等から提出された失業認定申告書等に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認の上、失業の認定を行って支給を決定する。
イ 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入年月日等について調査確認を行って支給を決定する。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道労働局ほか28労働局の札幌公共職業安定所ほか274公共職業安定所管内において、12年度から17年度までに失業等給付金の支給を受けた者のうち15,632人について、公共職業安定所における失業等給付金の支給決定の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、北海道労働局ほか26労働局の札幌公共職業安定所ほか164公共職業安定所管内において、14年度から17年度までに支給を受けた510人に対する失業等給付金(支給額373,158,442円)について、121,751,275円が適正に支給されていなかった。これを給付の種別に示すと次のとおりである。
ア 求職者給付
 札幌公共職業安定所ほか164公共職業安定所管内の509人に対する基本手当及び特例一時金(支給額367,610,078円)について、116,202,911円(基本手当115,530,911円、特例一時金672,000円)が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職していながらその事実を失業認定申告書等に記載していないなどのため、同申告書等の内容が事実と相違していたのに、上記の165公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことによると認められる。
イ 就職促進給付
 苫小牧公共職業安定所ほか35公共職業安定所管内の38人に対する再就職手当について、支給額5,548,364円全額が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入年月日を記載するなどしていたのに、上記の36公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことによると認められる。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都道府県労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 公共職業安定所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不適正失業等給付金
    千円 千円
北海道 札幌ほか7 598 23 16,414 5,123
  苫小牧 12 1 134 134
  小計     16,548 5,258
岩手 盛岡ほか1 175 3 1,891 1,024
   
  小計     1,891 1,024
秋田 秋田ほか5 332 9 6,960 989
   
  小計     6,960 989
福島 福島ほか1 169 11 6,818 5,053
   
  小計     6,818 5,053
茨城 水戸ほか5 281 12 8,340 2,177
  水戸ほか3 57 4 479 479
  小計     8,820 2,657
埼玉 川口ほか6 554 19 12,706 8,926
  所沢 25 1 218 218
  小計     12,925 9,145
千葉 千葉ほか3 362 11 5,349 3,178
   
  小計     5,349 3,178
東京 上野ほか12 853 36 25,957 8,286
  上野ほか6 124 9 1,471 1,471
  小計     27,428 9,757
神奈川 横浜ほか7 425 27 19,605 10,594
  大和 7 1 82 82
  小計     19,687 10,677
富山 富山ほか4 274 17 17,036 4,556
   
  小計     17,036 4,556
福井 福井ほか3 300 5 2,812 673
   
  小計     2,812 673
山梨 甲府ほか2 236 10 8,671 1,875
  甲府 26 1 237 237
  小計     8,909 2,112
長野 松本ほか9 406 28 28,474 4,569
  上田ほか3 27 4 528 528
  小計     29,003 5,097
愛知 名古屋中ほか4 207 9 10,323 1,246
  名古屋北ほか1 18 2 239 239
  小計     10,562 1,485
三重 四日市ほか6 461 21 19,008 5,341
  18 1 83 83
  小計     19,092 5,424
滋賀 大津ほか1 170 10 7,394 1,839
   
  小計     7,394 1,839
京都 京都西陣ほか6 444 22 13,050 4,466
  福知山 10 1 88 88
  小計     13,139 4,555
大阪 大阪東ほか11 797 31 23,420 6,330
   
  小計     23,420 6,330
兵庫 神戸ほか10 698 44 33,056 10,109
  神戸ほか1 30 2 374 374
  小計     33,430 10,483
奈良 奈良ほか4 359 9 5,113 2,012
   
  小計     5,113 2,012
鳥取 鳥取ほか4 389 22 10,575 5,093
  米子ほか2 60 3 465 465
  小計     11,040 5,558
岡山 岡山ほか3 334 11 9,674 1,706
  倉敷中央 7 1 92 92
  小計     9,766 1,799
広島 呉ほか2 90 5 5,761 1,041
   
  小計     5,761 1,041
愛媛 松山ほか6 511 20 14,746 3,661
  松山ほか2 48 3 438 438
  小計     15,184 4,100
熊本 熊本ほか5 512 30 16,170 3,620
  阿蘇 14 1 86 86
  小計     16,257 3,706
大分 大分ほか6 538 19 10,130 3,397
   
  小計     10,130 3,397
宮崎 宮崎ほか5 580 45 28,145 9,306
  宮崎ほか2 45 3 527 527
  小計     28,672 9,833
求職者給付計 165箇所 11,055 509 367,610 116,202
就職促進給付計 36箇所 528 38 5,548 5,548
合計       373,158 121,751

注(1)  上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
注(2)  公共職業安定所数及び不適正受給者数については、各給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ165箇所、510人である。