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国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの


(164)—(201)国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称 厚生労働本省(交付決定庁)(平成13年1月5日以前は厚生本省)
  北海道ほか18都府県(支出庁)
交付の根拠
国民健康保険法(昭和33年法律第192号)

交付先 市2 5、町12、村1、計38市町村(保険者)
財政調整交付金の概要 市町村の国民健康保険に係る財政力の不均衡を調整するために交付するもので、一定の基準により財政力を測定してその程度に応じて交付する普通調整交付金と、特別の事情を考慮して交付する特別調整交付金がある。
上記に対する交付金交付額の合計
20,920,761,000円
(平成12年度〜16年度)
不当と認める交付金交付額
195,213,000円
(平成12年度〜16年度)

1 交付金の概要

(国民健康保険の財政調整交付金)

 国民健康保険(「国民健康保険の療養給付費補助金の交付が不当と認められるもの」参照) については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険について財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するため、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づいて交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。

(普通調整交付金)

 普通調整交付金は、被保険者の所得等から一定の基準により算定される収入額(調整対象収入額)が、医療費、保健事業費等から一定の基準により算定される支出額(調整対象需要額)に満たない市町村に対し、その不足を公平に補うことを目途として交付するものである。そして、平成12年度からは、介護保険制度の導入に伴い、医療費等に係るもの(医療分)に介護納付金に係るもの(介護分)を加えて交付されている。
 普通調整交付金の交付額は、当該市町村の調整対象需要額から当該市町村の調整対象収入額を控除した額に基づいて算定することとなっている。
 そして、調整対象需要額及び調整対象収入額の算定は、次により行うこととなっている。

(1)調整対象需要額

 調整対象需要額は、本来保険料で賄うべきとされている額であり、医療分と介護分に係る需要額は次のとおりとなっている。

(ア)医療分に係る需要額は、一般被保険者(退職被保険者及びその被扶養者以外の被保険者をいう。以下同じ。)に係る医療給付費(注1) 、老人保健医療費拠出金及び保健事業費の合計額から療養給付費等負担金等の国庫補助金等を控除した額となっている。
 このうち、保健事業費は、健康相談、保健施設の運営等被保険者の健康の保持増進のために必要な事業(以下「保健事業」という。)に係る費用である。そして、その額は、〔1〕年間の保健事業費支出額から保健事業に係る国庫補助金、保健施設に係る利用料等の収入額を控除した額(以下「保健事業費対象額」という。)と、〔2〕当該市町村の年間平均被保険者数に700円を乗じて得た額(以下「保健事業費基準額」という。)のうちいずれか少ない方の額とすることとなっている。また、14年度からは、上記の保健事業のうち健康診査事業に係る経費は保健事業費支出額から除くこととなっている。

(イ)介護分に係る需要額は、介護納付金賦課被保険者(当該市町村の国民健康保険の被保険者のうち40歳以上65歳未満の被保険者をいう。以下同じ。)に係る介護納付金から介護納付金負担金等の国庫補助金等を控除した額となっている。

医療給付費 療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額

(2)調整対象収入額

 調整対象収入額は、医療分及び介護分それぞれについて、一般被保険者又は介護納付金賦課被保険者の数を基に算定される応益保険料額と、一般被保険者又は介護納付金賦課被保険者の所得を基に算定される応能保険料額とを合計した額となっており、本来徴収すべきとされている保険料の額である。
 このうち、医療分の応能保険料額は、一般被保険者の所得(以下「算定基礎所得金額」という。)に一定の方法により計算された率を乗じて算定される。
 そして、算定基礎所得金額は、保険料の賦課期日現在一般被保険者である者の前年における所得金額の合計額とすることとなっているが、同一世帯に属する被保険者の所得金額の合計額が別に計算される金額(以下「所得限度額」という。)を超えて高額である世帯(以下「所得限度額超過世帯」という。)がある場合には、当該世帯の所得金額のうち所得限度額を超える部分の額に一定の方法により計算した率を乗じて得た額を、上記一般被保険者の所得金額の合計額から控除して、算定基礎所得金額を算定することとなっている。
 そして、介護分の応能保険料額は、介護納付金賦課被保険者について、医療分と同様の方法で算定することとなっている。

(特別調整交付金)

 特別調整交付金は、市町村について特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付するものであり、次のような種類の交付金がある。

(1)医療費通知特別交付金

 この交付金は、国民健康保健事業に対する経営努力が顕著であるなど事業の適正な運営に積極的に取り組んでいる市町村において、1月から12月までの間に、請求月ごとのレセプトの全数について6回以上医療費通知を実施したなどの場合に交付するものである。
 そして、この交付額は、〔1〕医療費通知を実施した世帯数に50円又は55円を乗じて得た額及び〔2〕減額通知(被保険者の一部負担金等の過払い額を付記した医療費通知をいう。)の通知世帯数に60円を乗じて得た額の合算額(以下「医療費通知の調整基準額」という。)となっている。

(2)保健事業費多額特別交付金

 この交付金は、保健事業費対象額が保健事業費基準額を超える場合に交付するものである。
 そして、この交付額は、保健事業費対象額から保健事業費基準額を控除して得た額の4分の1(16年度は2分の1)の額となっている。

(3)医療費適正化特別対策事業特別交付金

 この交付金は、国民健康保険の運営のために実施する通例の事業に加えて、より一層の医療費適正化事業(以下「医療費適正化特別対策事業」という。)に取り組んだ場合に交付するものである。
 そして、この交付額は、市町村の被保険者規模に応じて定められている交付上限額を限度として、他の特別調整交付金で助成を受ける分を除いた対象経費に所定の率を乗じて算定することとなっている。

(交付手続)

 財政調整交付金の交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書及び実績報告書を提出し、これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、これを厚生労働省に提出し、厚生労働省はこれに基づき交付決定及び交付額の確定を行うこととなっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 財政調整交付金の制度は、前記のように複雑であり、同交付金の交付申請額等の計算に当たってはその正確な事務処理が不可欠である。
 そこで、普通調整交付金については調整対象需要額の医療給付費、保健事業費及び調整対象収入額の算定基礎所得金額の計算は適正か、また、特別調整交付金については交付の対象とならないものを含めていないかなどに着眼して、北海道ほか29都府県の304市区町村における財政調整交付金の交付の適否を検査した。

(検査の結果)

 検査の結果、北海道ほか18都府県の38市町村において、交付金交付額計20,920,761,000円のうち計195,213,000円が過大に交付されていたり交付の要がなかったりしていて不当と認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

(1) 調整対象需要額を過大に算定しているもの

25市町村(注2)  116,368,000円

(2) 調整対象収入額を過小に算定しているもの

1市 3,868,000円

(3) 医療費通知の調整基準額を過大に算定しているもの

2市町 9,516,000円

(4) 保健事業費対象額を過大に算定しているもの

11市町村(注2)  58,523,000円

(5) 医療費適正化特別対策事業の対象経費を過大に算定しているもの

1市(注2)  6,938,000円

(1)のうちの1村と(4)のうちの1村、及び、(1)のうちの1市と(5)の1市は重複している。

 このような事態が生じていたのは、上記の38市町村において制度の理解が十分でなかったり、事務処理が適切でなかったりなどしたため適正な交付申請等を行っていなかったこと、また、これに対する北海道ほか18都府県の審査が十分でなかったことによると認められる。
 前記の事態を都道府県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

 

 
都道府県名
交付先
(保険者)
年度
交付金交付額 左のうち不当と認める額 摘要
       
千円
千円
 

(1)調整対象需要額を過大に算定しているもの

(164)
北海道
岩見沢市
16
678,315
3,780
保健事業費を過大にしていたもの
(165)
根室市
15、16
906,004
2,307
(166)
恵庭市
15
384,429
2,208
(167)
千葉県
千葉市
15
2,002,224
6,581
医療給付費を過大にしていたもの
(168)
君津市
14
305,042
1,780
保健事業費を過大にしていたもの
(169)
東京都
西東京市
14、15
248,236
6,382
保健事業費を過大にしていたもの
(170)
神奈川県
相模原市
15
301,855
2,289
(171)
富山県
高岡市
14、15
1,885,853
7,345
(172)
愛知県
西尾市
15
130,661
3,073
(173)
海部郡
甚目寺町
14、15
188,385
2,693
(174)
幡豆郡
一色町
15、16
106,855
3,331
(175)
三重県
四日市市
14
763,861
2,099
(176)
鈴鹿市
14
499,754
11,576
(177)
上野市
14
347,091
4,680
(178)
大阪府
岸和田市
14
1,528,525
2,667
(179)
兵庫県
明石市
14
1,447,036
3,594
(180)
三田市
15、16
655,309
5,105
(181)
鳥取県
米子市
15
645,725
5,402
(182)
広島県
三原市
15
455,153
1,669
(183)
山口県
防府市
15
514,801
19,855
医療給付費を過大にしていたもの
(184)
福岡県
浮羽郡
田主丸町
12〜14
798,303
3,042
保健事業費を過大にしていたもの
(185)
筑紫野市
14
369,585
1,158
(186)
大分県
佐伯市
14、15
965,493
2,227
(187)
沖縄県
名護市
15
927,086
1,851
(188)
中頭郡
読谷村
12〜16
2,677,241
9,674
 
(1)の計
19,732,822
116,368
 
(注3) 平成16年11月1日以降は伊賀市
(注4) 平成17年2月5日以降は久留米市

 上記の25市町村では、普通調整交付金の交付申請等に当たり、保健事業費を過大に算定したり、医療給付費を過大に算定したりしていたため、調整対象需要額が過大に算定されていた。
 上記の事態について一例を示すと次のとおりである。

<事例>  保健事業費を過大にしていたもの

 鈴鹿市では、普通調整交付金の交付申請等に当たり、保健事業費対象額が保健事業費基準額より少ないことから、保健事業費対象額を保健事業費として調整対象需要額に算入していた。
 しかし、同市では、保健事業費対象額の算定に当たり、平成14年度からは、保健事業費支出額から除くこととなっている健康診査事業に係る経費を含めていたため、保健事業費対象額を過大に算定していた。
 したがって、適正な保健事業費及びこれを基に算出した調整対象需要額に基づいて普通調整交付金の交付額を算定すると、488,178,000円となり、11,576,000円が過大に交付されていた。

(2)調整対象収入額を過小に算定しているもの

(189)
京都府
八幡市
13〜15
1,055,812
3,868
所得金額の計算上控除される金額を過大にしていたもの

 八幡市では、普通調整交付金の交付申請等に当たり、所得限度額超過世帯の所得金額のうち所得限度額を超える部分の額を過大に算定していた。その結果、算定基礎所得金額が過小に算定されていた。
 したがって、適正な算定基礎所得金額及びこれを基に算出した調整対象収入額に基づいて普通調整交付金の交付額を算定すると、計1,051,944,000円となり、計3,868,000円が過大に交付されていた。

(3)医療費通知の調整基準額を過大に算定しているもの

(190)
北海道
紋別郡
遠軽町
12〜16
7,720
4,966
レセプトの全数を通知していなかったもの
(191)
埼玉県
鳩ヶ谷市
14、15
14,539
4,550
減額通知の通知世帯数を誤っていたもの
 
(3)の計
22,259
9,516
 

 上記の2市町では、医療費通知特別交付金の交付申請等に当たり、減額通知の通知世帯数を誤るなどしていて、医療費通知の調整基準額が過大に算定されていた。
 上記の事態について一例を示すと次のとおりである。

<事例>  減額通知の通知世帯数を誤っていたもの

 鳩ヶ谷市では、医療費通知の調整基準額の算定に当たり、60円に、減額通知を実施した世帯数ではなく医療費通知に係るレセプトの総数を乗じていたため、医療費通知の調整基準額が過大に算定されていた。
 したがって、減額通知の通知世帯数に基づいて医療費通知特別交付金の交付額を算定すると、計4,341,000円となり、これに伴って調整対象需要額が増額となることによる普通調整交付金の増額分を考慮しても、計4,550,000円が過大に交付されていた。

(4)保健事業費対象額を過大に算定しているもの

(192)
北海道
上磯郡
木古内町
14〜16
15,102
15,102
保健事業費支出額を過大にしていたもの
(193)
青森県
南津軽郡
大鰐町
15
3,077
2,064
(194)
三戸郡
三戸町
15
6,114
6,114
(195)
千葉県
長生郡
長南町
15
1,654
1,188
(196)
三重県
鳥羽市
14
2,654
2,323
(197)
鳥取県
八頭郡
八頭町
15、16
5,271
3,264
(198)
西伯郡
南部町
12〜16
17,307
2,419
(199)
佐賀県
杵島郡
白石町
14、15
14,526
8,521
(200)
大分県
津久見市
14、15
12,792
11,043
(201)
玖珠郡
九重町
14、15
4,231
2,128
(188)
沖縄県
中頭郡
読谷村
12〜15
4,357
4,357
(4)の計
87,085
58,523
 

 上記の11市町村では、保健事業費多額特別交付金の交付申請等に当たり、保健事業費支出額から除くこととなっている健康診査事業に係る経費を含めるなどしていたため、保健事業費対象額が過大に算定されていた。
 上記の事態について一例を示すと次のとおりである。

<事例>  健康診査事業に係る経費を含めていたもの

 津久見市では、保健事業費対象額の算定に当たり、健康診査事業に係る経費を保健事業費支出額に含めていたなどのため、保健事業費対象額を過大に算定していた。
 したがって、適正な保健事業費対象額に基づき保健事業費多額特別交付金の交付額を算定すると、計1,749,000円となり、計11,043,000円が過大に交付されていた。

(5)医療費適正化特別対策事業の対象経費を過大に算定しているもの

(185)
福岡県
筑紫野市
14〜16
22,783
6,938
対象経費を過大にしていたもの

 筑紫野市では、医療費適正化特別対策事業特別交付金の交付申請等に当たり、別途交付を受けている他の特別調整交付金の助成対象となっている被保険者指導に係る経費を除かなかったため、医療費適正化特別対策事業の対象経費が過大に算定されていた。
 したがって、適正な医療費適正化特別対策事業の対象経費に基づいて医療費適正化特別対策事業特別交付金の交付額を算定すると、計15,845,000円となり、計6,938,000円が過大に交付されていた。

(1)〜(5)の合計
20,920,761
195,213