個々の資金は設置目的、事業内容、利用対象者、資金規模等を異にするため、それぞれの事業実績や資金保有量を同一の尺度では比較検討しにくいという面はあるが、本報告において、各資金を統一的に比較するに当たっては、平成12年度決算検査報告の場合と同様、次の事業実績率及び資金保有倍率という指標を用いている。
〔1〕 事業実績率は、直近3年間の平均事業実績額を元年度以降におけるピーク時の事業実績額で除して得た率である。これは、資金事業に対する需要が現在どの程度の水準にあるかを表そうとするもので、この率が高い資金は、事業に対する近年の需要がピーク時に近いことを示している。
〔2〕 資金保有倍率は、直近の資金保有額を直近3年間の平均事業実績額で除して得た数値である。これは、事業実績からみて資金保有量がどの程度の水準にあるかを表そうとするもので、この数値が低い資金ほど、事業実績に対応した資金保有規模となっていると考えられる。
16年度末現在において設置されている116資金それぞれの事業実績率及び資金保有倍率は、巻末の別表
に記載のとおりである。このうち、事業実績率についてその状況をみると、表3-10のとおりとなっている。
116資金の中には、事業実績額が算定できないなどのため、事業実績率の比較になじまないものが9資金ある。そして、残りの107資金についてみると、事業実績率が30%未満と低くなっているものが31資金あり、このうち23資金は、設置後10年以上経過している。他方、80%以上の高い事業実績率となっているものは19資金あり、11資金は経過年数が10年未満となっている。
表3-10 16年度末における事業実績率の状況
(単位:件)
区分 | 取崩し型 | 回転型 | 保有型 | 運用型 | 合計 |
80%以上 | 13 | 2 | 2 | 2 | 19 |
50%以上80%未満 | 24 | 1 | 6 | 0 | 31 |
30%以上50%未満 | 13 | 1 | 7 | 5 | 26 |
10%以上30%未満 | 9 | 2 | 4 | 4 | 19 |
10%未満 | 5 | 2 | 4 | 1 | 12 |
事業実績率の比較になじまないもの | 4 | 1 | 4 | 0 | 9 |
合計 | 68 | 9 | 27 | 12 | 116 |
また、資金保有倍率についてその状況をみると、表3-11のとおりとなっている。
116資金のうち、事業実績額が算定できないなどのため資金保有倍率の比較になじまない9資金は、上記と同じ資金である。そして、残りの107資金についてみると、30資金が50倍以上と高くなっており、このうち保有資金の運用益の範囲で事業を実施することから資金保有倍率が高くなる傾向のある運用型資金を除いても21資金が50倍以上となっている。また、取崩し型資金については、10倍未満の資金が過半を占めている一方で、約2割の資金が50倍以上となっている。回転型資金、保有型資金については、いずれも10倍以上の資金が過半を占めており、このうち保有型資金については約3割の資金が50倍以上となっている。
表3-11 16年度末における資金保有倍率の状況
(単位:件)
区分 | 取崩し型 | 回転型 | 保有型 | 運用型 | 合計 |
資金保有倍率の比較になじまないもの | 4 | 1 | 4 | 0 | 9 |
100倍以上 | 11 | 1 | 3 | 5 | 20 |
50倍以上100倍未満 | 2 | 0 | 4 | 4 | 10 |
30倍以上50倍未満 | 1 | 1 | 2 | 2 | 6 |
10倍以上30倍未満 | 12 | 3 | 4 | 1 | 20 |
1倍以上10倍未満 | 31 | 3 | 7 | 0 | 41 |
1倍未満 | 7 | 0 | 3 | 0 | 10 |
合計 | 68 | 9 | 27 | 12 | 116 |
13年次検査資金のうち16年度末現在において設置されている72資金について、12年度末現在及び16年度末現在の直近3年間の平均事業実績額及び資金保有倍率の変化は、巻末の別表
の増減比に記載のとおりである。ここで116資金全体について用いた事業実績率ではなく平均事業実績額を使用しているのは、両年度末現在においてピーク時が異なっている資金があり、その場合事業実績率を比較することは適当ではないことによる。
このうち、平均事業実績額の比較については、表3-12のとおり、事業実績額の比較になじまない5資金を除いた67資金のうち、増加しているものが26資金(38.8%、)減少しているものが41資金(61.1%)となっている。そして、これらの資金について、前記2の13年次検査資金の見直し等の状況との関連をみると、見直し措置を講じた資金のうち平均事業実績額が減少しているものは59.0%となっているのに対し、見直し措置を講じていない資金のうち平均事業実績額が減少しているものは65.2%となっている。
表3-12 12年度末現在と16年度末現在における平均事業実績額の比較
(単位:件、%)
区分
\
事業実績額の増減 |
全体 | うち見直し措置を講じたもの | うち見直し措置を講じていないもの | |||
構成比 | 構成比 | 構成比 | ||||
平均事業実績額が増加しているもの | 26 | 38.8 | 18 | 40.9 | 8 | 34.7 |
平均事業実績額が減少しているもの | 41 | 61.1 | 26 | 59.0 | 15 | 65.2 |
小計 | 67 | 100 | 44 | 100 | 23 | 100 |
事業実績額の比較になじまないもの | 5 | 5 | 0 | |||
合計 | 72 | 49 | 23 |
また、資金保有倍率の比較については、表3-13のとおり、資金保有倍率の比較になじまない5資金を除いた67資金のうち、減少しているものが30資金(44.7%)、増加しているものが37資金(55.2%)となっている。そして、見直し等の状況との関連をみると、見直し措置を講じた資金のうち資金保有倍率が増加しているものは52.2%となっているのに対し、見直し措置を講じていない資金のうち資金保有倍率が増加しているものは60.8%となっている。
なお、比較になじまない5資金は上記と同じ資金である。
表3-13 12年度末現在と16年度末現在における資金保有倍率の比較
(単位:件、%)
区分
\
事業実績額の増減 |
全体 | うち見直し措置を講じたもの | うち見直し措置を講じていないもの | |||
構成比 | 構成比 | 構成比 | ||||
資金保有倍率が減少しているもの | 30 | 44.7 | 21 | 47.7 | 9 | 39.1 |
資金保有倍率が増加しているもの | 37 | 55.2 | 23 | 52.2 | 14 | 60.8 |
小計 | 67 | 100 | 44 | 100 | 23 | 100 |
資金保有倍率の比較になじまないもの | 5 | 5 | 0 | |||
合計 | 72 | 49 | 23 |
このうち、見直し措置を講じた後に運営状況が好転した事例を示すと、次のとおりである。
所管 省名 |
法人名 | 資金(事業)名 16年度末保有額(国庫補助金相当額) |
設置 年度 |
使途別分類 運営形態別分類 |
農林水産省 | 財団法人魚価安定基金 | 損失及び買取資金貸付事業資金 6,292,711(4,600,000)千円
|
昭和 51 |
貸付け 回転型 |
本資金による事業は、主要水産物の調整保管事業(漁業者団体が、漁獲時期に対象水産物を漁業者から一定価格水準で買い取り、漁獲時期以外の時期に売り払うことにより、水産物価格の安定を図る事業)の円滑な運営に資するため、売払価格が買取価格を下回ることによって漁業者団体に損失が生じた場合及び特に必要があるとして水産物の買取りを行う場合に、損失額又は買取額を対象として無利子融資を行うものである。 この事業について平成12年度決算検査報告で、損失額の貸付け及び買取額の貸付けの実績が計画に対して約9%と少ない旨を掲記したところ、農林水産省(水産庁)及び本法人では、14年4月に、買取資金の貸付けに当たって、従来、事業主体が買取りを行う都度、申請することとしていたものを月に2回程度にまとめて申請することができることとするなどの見直しを行った。 この結果、買取額の貸付けは、13年度3億0699万円であったものが、14年度には47億9550万円と大幅に増加し、その後15年度44億0762万円、16年度33億3438万円と推移している。 |
所管 省名 |
法人名 | 資金(事業)名 16年度末保有額(国庫補助金相当額) |
設置 年度 |
使途別分類 運営形態別分類 |
農林水産省 | 財団法人農林水産長期金融協会 | 農山漁村振興基金 98,704,554(同額)千円
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平成 元 |
利子助成 取崩し型 |
本資金による事業は、構造政策の推進及び中山間地域の活性化を図ることを目的として、農林漁業の経営改善や地域活性化に取り組む事業者の借入金の金利負担を軽減するための利子助成等を行うものである。 この事業について平成12年度決算検査報告で、本法人は毎年度追加造成しているが、各年度とも新規貸付分の実績が計画どおりに伸びていないことなどから、毎年度多額の使用残額を保有する結果になっている旨を掲記したところ、農林水産省及び本法人では、過去の使用残見込額を活用することとして、以下のとおり見直しを行った。 〔1〕 14年度は大幅に追加造成を減額し、15、16両年度は、追加造成を行っていない。 〔2〕 15年度から、農業経営負担軽減支援資金等に係る都道府県への利子助成等補助金を交付対象に追加した。 この結果、毎年度増加してきて13年度には1094億円となった資金保有額は、14年度1058億円、15年度1020億円、16年度987億円と減少している。 |