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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成18年10月

中心市街地活性化プロジェクトの実施状況に関する会計検査の結果について


1 平成10年度以降の省庁別事業費、国費負担額及び実施状況

 プロジェクトに係る省庁別事業費、国費負担額等について、経済産業省では、中心市街地の活性化のための事業に対する支援策に係る年度別の国費負担額等を集計、整理しているが、それ以外の省庁では、そのような集計、整理をしていなかった。また、多くの市区町村等においても、中心市街地の活性化を図るための事業に係る事業費について集計、整理をしていなかった。
 そこで、会計検査院において、市区町村等から事業費等に関する各種資料の提出を受け、プロジェクトに係る省庁別事業費及び国費負担額を集計するとともに、事業の内容、実施状況を検査した。

(1)10年度以降の省庁別事業費及び国費負担額等

ア 10年度以降の省庁別事業費及び国費負担額

 10年度から16年度までのプロジェクトに係る省庁別事業費及び国費負担額は、表1−1−1のとおり、事業費5兆0183億0712万円、これに対する国費負担額2兆0028億2963万円となっている。
 なお、この事業費及び国費負担額は、次の〔1〕〜〔3〕の事業(ただし、〔1〕及び〔2〕については国庫補助金等を財源として実施したものに限る。以下、アにおいて同じ。)に係る事業費及び国費負担額を合計したものであり、(ア)〜(ウ)においてそれぞれの事業費等を示している。
〔1〕 基本計画に定められた事業(ただし、〔2〕のTMO構想に定められた事業に係るものについては除く。)
〔2〕 TMO構想に定められた事業
〔3〕 国において実施している委託事業等

表1−1−1 10年度以降の省庁別事業費及び国費負担額

上段:事業費

下段:国費負担額

(単位:千円、%)

省庁名
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
割合
内閣府
411,130
2,503,806
2,235,949
2,571,862
4,458,944
3,497,678
2,048,058
17,727,429
0.3
226,020
1,503,182
1,375,567
1,432,552
1,907,551
2,376,374
1,270,162
10,091,410
0.5
 
内閣本府
-
-
-
-
18,346
230,055
129
248,530
0.0
-
-
-
-
18,346
213,735
129
232,210
0.0
警察庁
-
244,676
224,349
212,442
175,833
169,518
115,312
1,142,130
0.0
-
122,338
112,174
106,221
87,916
84,823
57,720
571,194
0.0
防衛施設庁
 
411,130
2,259,130
2,011,600
2,359,420
4,264,765
3,098,105
1,932,617
16,336,769
0.3
226,020
1,380,844
1,263,393
1,326,331
1,801,289
2,077,816
1,212,313
9,288,006
0.4
総務省
3,742,892
7,887,583
13,448,460
8,406,291
5,145,638
1,780,971
6,169,579
46,581,416
0.9
2,630,222
4,734,955
4,897,141
3,372,154
1,855,422
662,684
567,562
18,720,143
0.9
法務省
 
2,435,984
824,113
-
-
-
-
-
3,260,098
0.0
2,435,984
824,113
-
-
-
-
-
3,260,098
0.1
文部科学省
995,835
6,201,416
2,589,660
7,491,460
11,480,137
14,709,702
7,822,540
51,290,752
1.0
604,305
1,833,796
1,288,861
4,651,110
3,055,607
3,594,059
2,283,754
17,311,493
0.8
厚生労働省
2,017,048
1,589,115
6,422,127
25,339,483
36,657,684
5,912,032
1,966,921
79,904,414
1.5
176,078
731,539
924,705
2,326,574
3,238,946
1,468,850
452,943
9,319,639
0.4
農林水産省
12,098,385
4,114,538
6,921,960
3,135,603
2,413,134
2,151,337
2,146,634
32,981,594
0.6
1,800,752
1,216,325
1,772,989
1,010,389
848,236
1,048,581
886,930
8,584,205
0.4
経済産業省
13,544,657
11,311,787
19,035,749
30,453,596
31,596,097
22,555,032
24,107,310
152,604,230
3.0
4,977,877
5,082,481
6,956,614
9,729,670
13,290,049
9,495,780
9,435,034
58,967,507
2.9
国土交通省
309,464,973
540,089,653
792,996,991
815,607,627
750,914,391
775,989,374
647,392,797
4,632,455,808
92.3
133,185,315
211,617,364
310,439,179
316,797,247
316,179,905
311,043,893
276,931,786
1,876,194,692
93.6
環境省
 
-
135,766
196,125
442,223
34,717
629,025
63,519
1,501,377
0.0
-
44,250
55,051
90,022
8,568
157,317
25,234
380,442
0.0
344,710,907
574,657,781
843,847,023
893,448,147
842,700,745
827,225,154
691,717,363
5,018,307,123
100.0
146,036,556
227,588,007
327,710,110
339,409,719
340,384,287
329,847,541
291,853,409
2,002,829,631
100.0
(注)
 ※印の8府省庁は、中心市街地の活性化の支援策として、国庫補助事業等を示している府省庁である。
また、防衛施設庁、法務省及び環境省の事業は、国の支援策として位置付けられているものではないが、市町村では、中心市街地の活性化を図るため、当該事業を基本計画に盛り込み実施している。
なお、省庁は平成13年1月6日以降の省庁で整理した。

(ア)基本計画に定められた事業に係る事業費及び国費負担額

 基本計画に定められた事業に係る事業費及び国費負担額は、表1−1−2のとおり、事業費4兆8008億8881万円、これに対する国費負担額1兆9103億3055万円となっている。

表1−1−2 基本計画に定められた事業に係る事業費及び国費負担額

上段:事業費

下段:国費負担額

(単位:千円、%)

省庁名
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
割合
内閣府
411,130
2,503,806
2,235,949
2,571,862
4,458,944
3,493,168
2,047,800
17,722,661
0.3
226,020
1,503,182
1,375,567
1,432,552
1,907,551
2,373,990
1,269,904
10,088,768
0.5
 
内閣本府
-
-
-
-
18,346
225,673
-
244,019
0.0
-
-
-
-
18,346
211,480
-
229,826
0.0
警察庁
-
244,676
224,349
212,442
175,833
169,389
115,183
1,141,872
0.0
-
122,338
112,174
106,221
87,916
84,694
57,591
570,936
0.0
防衛施設庁
411,130
2,259,130
2,011,600
2,359,420
4,264,765
3,098,105
1,932,617
16,336,769
0.3
226,020
1,380,844
1,263,393
1,326,331
1,801,289
2,077,816
1,212,313
9,288,006
0.4
総務省
3,742,892
7,887,583
11,319,576
6,280,644
5,128,143
1,734,624
5,976,164
42,069,630
0.8
2,630,222
4,734,955
2,768,257
1,246,508
1,840,422
638,418
555,694
14,414,479
0.7
法務省
2,435,984
824,113
-
-
-
-
-
3,260,098
0.0
2,435,984
824,113
-
-
-
-
-
3,260,098
0.1
文部科学省
995,835
6,201,416
2,509,655
7,391,441
11,367,122
14,548,229
7,714,556
50,728,257
1.0
604,305
1,833,796
1,248,861
4,601,110
2,999,221
3,537,726
2,229,740
17,054,759
0.8
厚生労働省
2,017,048
1,589,115
6,403,474
25,339,483
36,641,984
5,897,059
1,942,885
79,831,052
1.6
176,078
731,539
906,425
2,326,574
3,228,799
1,457,621
437,654
9,264,693
0.4
農林水産省
12,098,385
4,114,538
6,921,960
3,051,366
2,194,299
2,151,208
2,146,505
32,678,265
0.6
1,800,752
1,216,325
1,772,989
968,271
738,820
1,048,452
886,801
8,432,413
0.4
経済産業省
8,439,226
9,200,466
14,981,748
16,906,291
19,232,528
12,215,684
14,106,856
95,082,803
1.9
3,274,597
4,485,206
5,633,872
5,880,707
8,743,308
5,770,980
5,928,184
39,716,857
2.0
国土交通省
309,464,973
531,982,821
768,808,072
782,677,825
718,451,248
747,070,008
619,559,721
4,478,014,671
93.2
133,185,315
207,692,170
301,241,041
304,954,547
300,144,270
296,817,843
263,682,851
1,807,718,040
94.6
環境省
-
135,766
196,125
442,223
34,717
629,025
63,519
1,501,377
0.0
-
44,250
55,051
90,022
8,568
157,317
25,234
380,442
0.0
339,605,475
564,439,629
813,376,563
844,661,139
797,508,988
787,739,008
653,558,010
4,800,888,816
100.0
144,333,276
223,065,539
315,002,065
321,500,292
319,610,962
311,802,349
275,016,065
1,910,330,552
100.0
(注)
 基本計画に定められた事業のうち、TMO構想に定められた事業に係る事業費及び国費負担額については除いている。


(イ)TMO構想に定められた事業に係る事業費及び国費負担額

 TMO構想に定められた事業に係る事業費及び国費負担額は、表1−1−3のとおり、事業費2163億6707万円、これに対する国費負担額914億4784万円となっている。

表1−1−3 TMO構想に定められた事業に係る事業費及び国費負担額

上段:事業費

下段:国費負担額

(単位:千円、%)

省庁名
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
割合
内閣府
-
-
-
-
-
4,252
-
4,252
0.0
-
-
-
-
-
2,126
-
2,126
0.0
 
内閣本府
-
-
-
-
-
4,252
-
4,252
0.0
-
-
-
-
-
2,126
-
2,126
0.0
警察庁
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
防衛施設庁
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
総務省
-
-
2,128,883
2,125,646
17,494
45,314
192,382
4,509,722
2.0
-
-
2,128,883
2,125,646
15,000
23,234
10,836
4,303,600
4.7
法務省
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
文部科学省
-
-
80,004
100,018
113,015
161,343
107,855
562,237
0.2
-
-
40,000
50,000
56,386
56,204
53,885
256,475
0.2
厚生労働省
-
-
18,652
-
15,700
14,844
23,907
73,104
0.0
-
-
18,280
-
10,147
11,100
15,160
54,687
0.0
農林水産省
-
-
-
84,237
218,834
-
-
303,071
0.1
-
-
-
42,118
109,416
-
-
151,534
0.1
経済産業省
5,082,564
2,080,588
4,037,942
13,463,585
12,132,571
10,079,260
9,658,729
56,535,242
26.1
1,680,412
566,542
1,306,684
3,765,243
4,315,743
3,464,712
3,165,125
18,264,464
19.9
国土交通省
-
8,106,831
24,186,871
32,921,799
32,440,708
28,916,139
27,807,096
154,379,446
71.3
-
3,925,193
9,196,090
11,834,697
16,013,200
14,222,823
13,222,954
68,414,959
74.8
環境省
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
5,082,564
10,187,419
30,452,354
48,695,286
44,938,325
39,221,154
37,789,970
216,367,076
100.0
1,680,412
4,491,736
12,689,939
17,817,705
20,519,893
17,780,200
16,467,961
91,447,847
100.0

(ウ)国が実施している委託事業等に係る事業費及び国費負担額

 国が実施している委託事業等に係る事業費及び国費負担額は、表1−1−4のとおり、10億5123万円となっている。

表1−1−4 国が実施している委託事業等に係る事業費及び国費負担額

上段:事業費

下段:国費負担額

(単位:千円、%)

省庁名
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
割合
内閣府
-
-
-
-
-
258
258
516
0.0
-
-
-
-
-
258
258
516
0.0
 
内閣本府
-
-
-
-
-
129
129
258
0.0
-
-
-
-
-
129
129
258
0.0
警察庁
-
-
-
-
-
129
129
258
0.0
-
-
-
-
-
129
129
258
0.0
防衛施設庁
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
総務省
-
-
-
-
-
1,032
1,032
2,064
0.1
-
-
-
-
-
1,032
1,032
2,064
0.1
法務省
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
文部科学省
-
-
-
-
-
129
129
258
0.0
-
-
-
-
-
129
129
258
0.0
厚生労働省
-
-
-
-
-
129
129
258
0.0
-
-
-
-
-
129
129
258
0.0
農林水産省
-
-
-
-
-
129
129
258
0.0
-
-
-
-
-
129
129
258
0.0
経済産業省
22,867
30,732
16,057
83,718
230,996
260,087
341,724
986,185
93.8
22,867
30,732
16,057
83,718
230,996
260,087
341,724
986,185
93.8
国土交通省
-
-
2,047
8,002
22,435
3,226
25,980
61,691
5.8
-
-
2,047
8,002
22,435
3,226
25,980
61,691
5.8
環境省
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
22,867
30,732
18,105
91,721
253,431
264,991
369,381
1,051,230
100.0
22,867
30,732
18,105
91,721
253,431
264,991
369,381
1,051,230
100.0

イ 中小機構による出資等

 中小機構は、中心市街地における商業の活性化等のため、商業基盤施設等の整備及び管理の事業を行う者に対し、事業に必要な資金の出資を行い、又は出資を行った当該者の委託を受けて商業基盤施設等の整備等を行っており、10年度から16年度までの出資額及び商業基盤施設等の整備等に要した事業費は、表1−2のとおり、258億6426万円となっている。

表1−2 10年度から16年度までの出資額及び商業基盤施設等の整備等に要した事業費

(単位:千円)

年度
区分
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
出資
4,100,000
5,700,000
4,200,000
5,300,000
2,200,000
-
-
21,500,000
事業費
1,024,654
939,699
1,052,147
1,133,240
91,113
77,866
45,539
4,364,260
5,124,654
6,639,699
5,252,147
6,433,240
2,291,113
77,866
45,539
25,864,260

 また、中小企業金融公庫、日本政策投資銀行及び中小機構は、中心市街地において店舗等の商業・サービス施設の整備等を行う民間企業等に対し、その整備等に充てるための資金の貸付けを行っており、その10年度から16年度までの実績は、表1−3のとおり、576億4803万円となっている。

表1−3 中小企業金融公庫、日本政策投資銀行及び中小機構の貸付実績

(単位:千円)

政府関係機関等名
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
中小企業金融公庫
-
-
-
-
7,389,360
7,765,000
6,151,160
21,305,520
日本政策投資銀行
3,000,000
1,600,000
4,170,000
7,590,000
2,715,000
9,625,000
4,550,000
33,250,000
独立行政法人
中小企業基盤整備機構
-
66,750
269,043
586,225
1,038,302
97,788
1,034,411
3,092,519
3,000,000
1,666,750
4,439,043
8,176,225
11,142,662
17,487,788
11,735,571
57,648,039
(注)
 中小企業金融公庫の10〜13年度の貸付額及び国民生活金融公庫の貸付額については、中心市街地の活性化を図るための事業以外のものに対する貸付けと区別して整理されていないため、記載していない。


ウ 基本計画及びTMO構想に定められた事業に係る総事業費

 基本計画又はTMO構想に定められた事業には、都道府県、市区町村及びTMO等の民間事業者が国庫補助金等を財源としないで実施した事業(以下「単独事業」という。)がある。この単独事業のうち市区町村が把握しているものに係る事業費は、表1−4のとおり、1兆9788億1287万円となっており、これを基本計画に定められた事業に係る事業費4兆8008億8881万円(表1−1−2)、及びTMO構想に定められた事業に係る事業費2163億6707万円(表1−1−3)と合計すると、基本計画及びTMO構想に定められた事業に係る総事業費は6兆9960億6876万円となっている。

表1−4 基本計画及びTMO構想に定められた事業に係る総事業費

(単位:千円、%)

区分
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
割合
基本計画に定められた事業に係る事業費
(表1-1-2より再掲)
339,605,475
564,439,629
813,376,563
844,661,139
797,508,988
787,739,008
653,558,010
4,800,888,816
68.6
TMO構想に定められた事業に係る事業費
(表1-1-3より再掲)
5,082,564
10,187,419
30,452,354
48,695,286
44,938,325
39,221,154
37,789,970
216,367,076
3.0
基本計画又はTMO構想に定められた事業のうち単独事業に係る事業費
105,015,472
235,800,860
341,645,353
399,524,962
319,047,342
348,575,207
229,203,675
1,978,812,876
28.2
総事業費
449,703,512
810,427,910
1,185,474,272
1,292,881,389
1,161,494,656
1,175,535,371
920,551,657
6,996,068,769
100.0

(2)基本計画の作成、内容及び実施状況等

ア 基本計画の作成状況等

(ア)基本計画の作成状況

 法第6条に基づく基本計画は、表1−5のとおり、17年度末までに47都道府県の676市区町村(基本計画作成時の数)が687地区について作成している。このうち66.2%にあたる455地区については、10年度から12年度までに作成されている。

表1−5 基本計画作成状況

(単位:地区)

都道府県名
基本計画作成時の市区町村数
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
17年度
北海道
42
2
10
4
7
5
7
2
5
42
青森県
8
2
2
3
2
0
0
0
0
9
岩手県
25
2
7
7
1
3
4
1
0
25
宮城県
15
5
3
3
2
0
1
1
0
15
秋田県
12
5
3
0
2
2
0
0
0
12
山形県
15
4
2
2
3
1
2
1
0
15
福島県
26
9
2
3
1
4
2
4
1
26
茨城県
17
3
2
8
1
1
0
2
0
17
栃木県
21
6
3
3
2
2
3
1
1
21
群馬県
9
1
1
1
1
2
2
1
0
9
埼玉県
34
2
5
11
8
3
2
3
0
34
千葉県
20
0
8
6
2
2
1
1
0
20
東京都
16
5
4
2
1
2
2
1
0
17
神奈川県
16
5
4
1
4
0
1
1
0
16
新潟県
20
3
9
4
3
1
0
0
1
21
富山県
19
4
8
2
3
0
1
2
0
20
石川県
12
2
4
4
0
1
1
0
0
12
福井県
7
3
2
0
0
2
0
0
0
7
山梨県
6
1
2
1
1
1
0
0
0
6
長野県
26
3
8
9
3
2
1
1
0
27
岐阜県
11
5
3
2
1
0
0
0
0
11
静岡県
21
7
6
0
3
3
3
0
0
22
愛知県
26
2
10
8
5
1
0
0
0
26
三重県
11
3
3
1
3
0
1
0
0
11
滋賀県
16
3
0
2
1
3
4
3
0
16
京都府
6
0
2
0
3
1
1
0
0
7
大阪府
9
1
2
2
1
1
0
2
0
9
兵庫県
24
8
6
3
2
1
2
2
0
24
奈良県
6
1
2
3
0
0
0
0
0
6
和歌山県
8
3
0
3
2
0
0
0
0
8
鳥取県
4
4
0
0
0
0
0
0
0
4
島根県
12
2
2
3
0
2
3
0
0
12
岡山県
6
2
1
1
1
0
0
0
1
6
広島県
16
5
9
0
0
2
0
0
0
16
山口県
8
1
5
1
1
0
0
0
0
8
徳島県
4
1
2
0
0
1
0
0
0
4
香川県
6
2
2
1
1
0
0
0
0
6
愛媛県
13
4
4
3
2
0
0
0
0
13
高知県
5
1
2
1
1
0
0
0
0
5
福岡県
18
3
5
6
5
1
1
0
0
21
佐賀県
7
5
1
1
0
0
0
0
0
7
長崎県
9
1
5
2
1
0
0
0
0
9
熊本県
24
8
6
4
2
2
0
2
0
24
大分県
11
0
5
1
3
0
2
0
0
11
宮崎県
10
4
1
2
2
1
0
0
0
10
鹿児島県
9
3
4
2
0
1
0
0
0
10
沖縄県
10
2
4
0
0
2
2
0
0
10
676
148
181
126
87
56
49
31
9
687
(注)
 市区町村数は基本計画作成時のものであり、また、同一市で複数の基本計画を作成している市があるため、地区数と一致しない。


(イ)基本計画を作成した市区町村の人口規模

 市町村の人口規模については、法及び基本方針において中心市街地の要件とされていないが、17年度末までに作成された687地区の基本計画を当該市区町村の人口規模別に分類すると、図1−1のとおり、1万人以上5万人未満の地区が291地区と最も多く、全体の42.3%となっている。

図1−1 人口規模別地区数

図1−1人口規模別地区数

(注)
 ( )内は各人口規模別のそれぞれの地区数の全地区数687地区に対する割合である。


(ウ)中心市街地の面積

 基本方針では、中心市街地が備えるべき小売商業者及び都市機能の集積の程度は、相当数の小売商業者が集積し、各種事業所、公益施設等が密度高く集積することによって様々な都市活動が展開され、それを核として一定の商圏や通勤圏が形成されていることなど、当該市街地の経済的、社会的な役割に着目して判断することが重要であるとされている。そして、中心市街地の規模は、一体性があり、集中的、効果的な取組が可能な適切な広さになるように定めることが必要であるとされている。
 そこで、基本計画において中心市街地とされた687地区の面積についてみたところ、最も小さいものは8ha、最も大きいものは900haとなっており、規模別に分類すると、図1−2のとおり、50ha以上100ha未満の地区が220地区と最も多く、全体の32.0%となっている。

図1−2 面積規模別地区数

図1−2面積規模別地区数

(注)
 ( )内は各面積規模別のそれぞれの地区数の全地区数687地区に対する割合である。


 上記のように、基本方針では、中心市街地の規模は、想定される事業の実施範囲等からみて一体性があり、集中的、効果的な取組が可能な適切な広さになるよう定めることが必要であるとされている。そして、このような区域において一体的、集中的な取組を行うことにより、事業の効果的かつ効率的な投資が期待できるものと思料される。しかし、中心市街地の区域を比較的広く設定している地区の中には、その形状が一体的、一団的であるとはいえない地区が見受けられた。

<事例1> 中心市街地の区域の形状が一体的、一団的であるとはいえない地区A市は、鉄道駅の周辺を中心地としており、その区域には市街地が形成され商業機能等が集積している。しかし、近年のモータリゼーションの進展、人口の減少・郊外への流出、大規模小売店舗の郊外・沿道部への立地等のため、中心地の人口の減少、商店数・従業員数・年間商品販売額等の減少、歩行者通行量の減少、空き店舗・空き地の増加などにより当該中心地において空洞化が進んでいるとして、中心市街地の活性化に取り組むこととし、基本計画を作成している。
 同市では、中心市街地の区域を、上記の鉄道駅周辺の商業機能等が集積している区域を中心に、駅の北部地区で道路整備事業を実施する区域から南部地区の土地区画整理事業区域までを南北軸として、また、西部地区の緑化重点地区整備事業区域から東部地区の公園整備事業区域までを東西軸として定めており、その面積は、二つの軸線を包含した南北約5.7km、東西約6.7kmにわたり約900haとなっている。そして、その形状についてみると、南北約5.7km、東西約5.1kmにわたる商業機能、居住機能、公共公益機能等がある程度連担している十文字形の区域に当該区域から東へ約0.8km離れた位置にある道路で結ばれた東部地区の公園整備事業区域を含めており、区域の形状が一体的、一団的であるとはいえないものとなっている。

 また、中心市街地の面積規模及び市区町村の人口規模により基本計画の作成された地区を分類すると、表1−6のとおり、50ha以上100ha未満の面積規模で、人口規模が1万人以上5万人未満の地区が108地区と最も多くなっている。

表1−6 面積規模別人口規模別地区数

(単位:地区)

人口
面積
1万人未満
1万人以上
5万人未満
5万人以上
10万人未満
10万人以上
20万人未満
20万人以上
30万人未満
30万人以上
40万人未満
40万人以上
50万未満
50万人以上
400ha以上
0
0
0
4
0
3
5
6
18
300ha以上
400ha未満
0
3
3
6
3
2
2
2
21
200ha以上
300ha未満
0
24
19
12
8
10
2
3
78
150ha以上
200ha未満
4
33
27
20
6
1
2
6
99
100ha以上
150ha未満
10
69
35
27
13
1
3
7
165
50ha以上
100ha未満
27
108
48
19
8
4
3
3
220
50ha未満
15
54
11
1
1
2
0
2
86
56
291
143
89
39
23
17
29
687

イ 基本計画の内容及び基本計画に定められた事業の実施状況

 基本計画に定められた事業の実施状況を検討するには基本計画の作成からある程度の期間が経過していることが必要であることから、10年度から12年度までに基本計画が作成された455地区について、その基本計画の内容及び基本計画に定められた事業の実施状況について検査したところ、次のようになっていた。

(ア)基本計画の内容

a 基本計画における指標の記載及びその動向

 基本方針では、中心市街地の要件となっている「機能的な都市活動の確保又は経済活力の維持に支障を生じ、又は生ずるおそれがあると認められる市街地」について、低・未利用地の状況、小売商業の店舗数や販売額、その他の都市活動に係る事業者数や従業者等当該市街地の土地利用・商業活動等の状況・動向を参考に判断することが適当であるとされている。
 そこで、455地区の基本計画における中心市街地の状況又は経済活力等の動向を把握するための指標の記載状況についてみたところ、表1−7のとおり、半数以上の地区において中心市街地に係る指標として、人口、商店数及び年間商品販売額を取り上げ、その状況や動向について記載していた。これは、市区町村において、都市を構成する要素である居住機能、公共公益機能、商業機能等のうち、特に人口の減少や商業機能の衰退が深刻であると考えていることなどによると思料される。

表1−7 基本計画に記載されている指標
指標の種類
記載されている地区数
人口
350地区(76.9%)
商店数
285地区(62.6%)
年間商品販売額
258地区(56.7%)
低・未利用地の状況
203地区(44.6%)
高齢化比率
157地区(34.5%)
歩行者通行量
136地区(29.8%)
事業所数
51地区(11.2%)
従業者数
43地区(9.4%)

 また、上記の指標に関し、人口、商店数及び年間商品販売額の推移を記載しているものについてその動向をみたところ、表1−8のとおり、基本計画作成時において、その作成前と比べ指標の数値が減少している状況にあるとしている地区が大多数となっていた。

表1−8 指標の動向
指標の種類
指標の推移を記載している地区数
左のうち指標の数値が減少している地区
人口
301地区
253地区(84.0%)
商店数
198地区
182地区(91.9%)
年間商品販売額
191地区
141地区(73.8%)
(注)
 比較対象年は地区によって区々となっている。


b 地域住民等の意向の把握状況

 基本方針では、市街地の整備改善のための事業に係る具体的な事業の選択に当たっては、関係権利者や地域住民の意向等地域の実情を踏まえるなどしつつ、市街地の整備改善の目標に沿って最も適切かつ実現性の高い事業手法を選択することが重要であるとされている。また、商業の活性化のための事業等に係る具体的な事業の選択に当たっては、関係事業者や地域住民の意思を尊重しつつ、商業の活性化等の目標に沿って最も適切かつ実現性の高い事業を地域の実情に合わせて選択することが重要であるとされている。
 そこで、各市区町村における住民等の意向の把握状況についてみたところ、商業関係者又は地域住民等にアンケート等の調査を行っていたのは455地区のうち318地区となっており、残りの137地区では、地域住民等の意向を把握していなかった。

c 中心市街地における土地利用の状況等

 都市計画法第5条では、都道府県は、市町村の中心の市街地を含み、かつ、自然的及び社会的条件等を勘案して、一体の都市として総合的に整備等する必要がある区域を都市計画区域として指定するものとされている。そして、同法第8条及び15条の規定により、都道府県が都市計画区域を指定した場合には、市町村は、都市計画区域内の用途地域等を必要に応じて定めることとなっている。
 一方、基本方針では、中心市街地の区域は、各種の土地利用計画との整合性にも配慮することが必要であり、特に都市計画が定められている場合には、都市計画法に定められている用途地域のうち、商業等の利便を増進するための商業地域又は近隣商業地域(以下、これらの地域を「商業系用途地域」という。)を含むように調整を図ることが必要であるとされている。
 そこで、455地区の中心市街地における土地利用の状況等についてみたところ、基本計画作成時に、都市計画区域が指定されているのは435地区、都市計画区域が指定されていないのは20地区となっていた。そして、都市計画区域が指定されている435地区のうち用途地域が定められている地区は418地区となっていた。
 そして、この418地区について、中心市街地の区域に占める商業系用途地域の面積の割合をみたところ、図1−3のとおり、25%未満の地区が64地区、25%以上50%未満の地区が116地区、50%以上75%未満の地区が128地区、75%以上100%の地区が110地区となっており、418地区全体の商業系用途地域の面積の割合の平均は52.6%となっていた。

図1−3 中心市街地の区域の面積に占める商業系用途地域の面積の割合

図1−3中心市街地の区域の面積に占める商業系用途地域の面積の割合

 このうち、商業系用途地域の面積の割合が25%未満となっている64地区の中には、中心市街地の区域内に商業系用途地域が全く含まれていない地区が1地区見受けられた。

<事例2> 商業系用途地域が全く含まれていない地区

 B市は、国道及び鉄道駅がないなど、交通の利便性に欠ける状況となっている。このため、同市周辺の複数の鉄道駅から同市内に向け宅地化が進展し、また、市の中央部には従来からの住居系の地域があるが、商業系用途地域はなく、農用地も残されている状況となっている。一方、同市では、市内における購買力が周辺の市に流出しているなどのため、商店数が減少し、商業について衰退の危惧があるとして、中心市街地の活性化に取り組むこととし、基本計画を作成している。
 そして、同市では、市の中央部に市庁舎を移転し、また、基本計画において、市の顔づくり、市民交流の広場づくり等を重要なテーマとして、市の中央部約225haを中心市街地の区域と定めている。この中心市街地の区域を定めるに当たっては、市の中央部に新たな中心市街地の創出を図ることとしたため、市北部の小規模な商店が点在する近隣商業地域約6haは中心市街地の区域外となり、商業系用途地域が全く含まれていなかった。そして、中心市街地の区域では、2つの土地区画整理事業を実施し、中核的商業施設を整備するとしている。

 また、商業系用途地域の面積の割合が50%未満となっている180地区の中には、市街化を抑制すべき区域(20ha未満の開発行為は原則として許可を受けることができない区域)とされている市街化調整区域が含まれている地区が22地区、非線引き都市計画区域等の白地地域(用途地域が定められていない地域)が含まれている地区が39地区、工業の利便を増進するための工業専用地域(共同住宅、図書館、病院、店舗・飲食店等の建築が禁止されている地域)が含まれている地区が2地区見受けられた。

<事例3> 市街化調整区域が含まれている地区

 C市は、鉄道、道路の整備が進み、住宅等が建設されたことにより、人口が増加しており、鉄道駅の東側に市街地が形成されている。しかし、従来からの商店街や個店が駅からやや離れた場所に点在しており、にぎわいが形成されていない状況であるとして、中心市街地の活性化に取り組むこととし、基本計画を作成している。
 そして、同市では、魅力ある地区の形成、安全・快適なネットワークの形成等を中心市街地におけるまちづくりの方針として、鉄道駅を中心に東側の市街地から、駅西側の市街化を抑制すべき市街化調整区域約26ha(中心市街地の面積の約29%)の農用地を含めた約90haを中心市街地の区域と定めている。同市では、駅東側においては、道路・歩行者空間の整備、公園の整備、空き店舗の活用により、街のにぎわいを形成し、また、上記の駅西側の農用地を含めた市街化調整区域においては、土地区画整理事業により商業施設や居住環境を整備するとしている。

<事例4> 非線引き都市計画区域の白地地域が含まれている地区

 D市は、鉄道駅の南東部に、8つの商店街を含む既成市街地が形成されており、これらの商店街に空き店舗が増加し、大規模小売店舗の閉店により商業機能の空洞化が進みつつあるとして、中心市街地の活性化に取り組むこととし、基本計画を作成している。
 そして、同市では、上記の鉄道駅周辺地区と隣接する古い町並み地区、さらに、非線引き都市計画区域の白地地域である農用地約20ha(中心市街地の面積の約20%)を含めた約100haを中心市街地の区域に設定している。
 同市では、上記の白地地域において、土地区画整理事業、道の駅整備事業、農業公園整備事業、商業施設整備事業等を行い、車での来訪者に対する市の新たな玄関口・都市と農村の交流の場となる広域観光商業の拠点を整備するとしている。

d 基本計画における目標の設定状況

 基本方針では、基本計画にはできる限り具体的かつ明確な目標を設定することが重要であるとされている。そして、各市区町村が作成した基本計画には、都市基盤施設の充実、商業振興、地域の顔づくり、高齢化への対応、にぎわいの創出等、まちづくりという幅広い観点から、地域の実情に合わせた様々な目標が定められている。しかし、455地区の基本計画についてみたところ、「にぎわいと回遊性のあるまちづくり」などの定性的な目標を定めている地区が大多数となっており、年間商品販売額や歩行者通行量等の具体的な数値目標を設定している地区は、わずか25地区(5.4%)となっていた。

<事例5> 具体的な数値目標を設定している地区

 E市は、少子・高齢化に伴う人口の減少、既存産業の成熟化、地域間競争の激化などの、新たな時代の潮流を踏まえたまちづくりのあり方が問われている中で、人々の交流を通じて商業等の活性化を図ることを重要課題と位置付けて、中心市街地の活性化に取り組むこととし、基本計画を作成している。
 そして、同市では、4指標について、次のとおり具体的な数値目標を設定している。
〔1〕 人口については、民間による住宅開発の促進支援等を進めることにより、5年後13,000人、10年後14,000人、20年後17,000人(作成時12,000人)としている。
〔2〕 歩行者通行量については、多様な生活・文化の交流機会や商業施設の充実等により集客性の向上と回遊性を実現することにより、駅前通りの通行量(休日)を5年後7,000人、10年後20,000人、20年後30,000人(作成時2,000人)としている。
〔3〕 商業販売額については、商業集積の拡大や既存商業の事業革新などにより、5年後1800億円、10年後2200億円、20年後3300億円(作成時1641億円)としている。
〔4〕 事業所従業者数については、交流活動拠点の整備や交流に関わる企業・団体の誘致・導入により、5年後12,000人、10年後13,500人、20年後16,500人(作成時11,404人)としている。

e 基本計画に定められた事項の内容

 前記第13(3)ウ のとおり、法第6条では、基本計画は、次の〔4〕から〔6〕の必須の計画事項について定めるものとされている。
〔1〕 中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する基本的な方針
〔2〕 中心市街地の位置及び区域
〔3〕 中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進の目標
〔4〕 市街地の整備改善に関する事項
〔5〕 商業の活性化に関する事項
〔6〕 一体的推進に関する事項
 そこで、455地区の基本計画についてみたところ、上記の必須の計画事項のうち、〔1〕、〔2〕及び〔3〕についてはすべての地区において定められていた。
 また、必須の計画事項であり、基本計画の中心となる〔4〕(市街地の整備改善に関する事項)と〔5〕(商業の活性化に関する事項)の両事項について定めている地区は436地区となっている一方で、両事項について定めていない地区は19地区となっており、これらの地区の中には「にぎわいを感じさせる街」として商店街の活性化のための事業等、「歴史を感じさせる街」として城址公園の整備事業等、「文化を感じさせる街」として伝統的イベントの開催事業等のように、中心市街地の活性化を図るための事業を独自に分類して定めている地区も見受けられた。
 次に、基本方針では、基本計画には〔4〕(市街地の整備改善に関する事項)について、原則として、現在施行中又はおおむね5年以内に着手できると考えられる事業の種類、実施予定者、おおむねの位置又は区域、おおよその実施時期等を記載するものとされている。また、〔5〕(商業の活性化に関する事項)について、市街地の整備改善のための事業と同様、原則として、当該事業の種類、実施予定者、おおむねの位置又は区域、おおよその実施時期等を記載するものとされている。
 そこで、〔4〕及び〔5〕の両事項について定めている436地区の基本計画をみたところ、434地区では土地区画整理事業、市街地再開発事業、都市計画道路事業、商業・サービス業集積関連施設整備事業等の具体的な事業が記載されているものの、地区によっては、基本計画作成時において事業が構想段階にあり、その内容が具体化されていないものも含まれていた。一方、2地区では、「回遊性ネットワーク形成事業」、「コンセンサス形成事業」など抽象的な内容となっており、具体的な事業内容が定められていなかった。そして、事業の実施時期については、具体的な事業が記載されている434地区のうち410地区では各事業の実施時期が記載されているが、18地区では「短期・中期・長期」とのみ記載されており、6地区では実施時期が全く記載されていなかった。このように、基本計画に定められた事業の中には、その内容、実施時期について、具体性に欠けるものが見受けられた。
 さらに、基本方針では、基本計画に定められた各種の事業を円滑かつ効果的に実施するためには、市町村における関係部局間の連絡調整を行う会議、中心市街地に関する一元的な組織の設置、商工会、民間組織等との連携を円滑にするための協議会の設置等についての体制の整備に努めることが必要とされており、これについて〔6〕(一体的推進に関する事項)に記述することとされている。
 そこで、455地区の基本計画についてみたところ、この記述をしていた地区は445地区となっており、記述をしていない地区は10地区となっていた。

f 市街地の整備改善に関する事項として面整備の事業を計画している地区

 基本方針では、中心市街地は、他の地域に比べて相対的に高い地価や輻輳した権利関係を背景として、計画的な都市基盤施設の整備や建築物の更新が遅れ、モータリゼーションの進展に伴う道路、駐車場等の整備、住宅の供給等の要請に十分な対応ができていないため、商業、居住、公共公益等の都市機能の集積及び再配置を進める土地区画整理事業、市街地再開発事業等の面整備の事業、様々な都市機能・都市活動の基盤となる道路、公園、駐車場等公共の用に供する施設の整備事業を適切に組み合わせ、積極的かつ強力に進めることが重要であるとされている。
 そこで、455地区の基本計画についてみたところ、面整備の事業として土地区画整理事業又は市街地再開発事業を計画している地区は309地区となっており、うち土地区画整理事業を計画している地区は220地区、市街地再開発事業を計画している地区は212地区となっていた。また、同一地区において土地区画整理事業又は市街地再開発事業を複数箇所で計画している地区は123地区となっていた。

(イ)基本計画に定められた事業の実施状況

a 基本計画作成年度別の事業費

 プロジェクトに係る16年度末までの事業費(10年度から12年度までに基本計画が作成された455地区に係るもの。以下同じ。)を基本計画の作成年度別に示すと表1−9のとおりであり、1地区当たりの平均事業費は141億8583万円となっている。また、基本計画の作成年度別に地区別の事業費の状況を示すと、図1−4のとおりである。

表1−9 プロジェクトに係る16年度末までの事業費

(単位:地区、千円)

基本計画の作成年度
地区数(A)
事業費(B)
国費負担額
 
単独事業に係る事業費(C)
事業費計
(D)=(B)+(C)
 
1地区当たりの平均事業費
1地区当たりの平均国費負担額
 
単独事業の1地区当たりの平均事業費
 
平均事業費
(D)/(A)
10年度
148
2,455,862,305
999,822,674
913,947,647
3,369,809,953
16,593,664
6,755,558
6,175,321
22,768,986
11年度
181
1,595,543,009
642,443,369
617,080,232
2,212,623,241
8,815,154
3,549,410
3,409,283
12,224,437
12年度
126
566,427,582
202,615,948
305,691,952
872,119,535
4,495,457
1,608,063
2,426,126
6,921,583
455
4,617,832,897
1,844,881,992
1,836,719,832
6,454,552,730
10,149,083
4,054,685
4,036,746
14,185,830

図1−4 基本計画作成年度別の事業費の状況

14,185,830

b 事項別・例示事業別の事業の実施状況

 前記イ(ア)e のとおり、436地区の基本計画において、市街地の整備改善に関する事項と商業の活性化に関する事項の両事項が定められている。そして、基本方針においては、前記第1 3(3)エ のとおり、土地区画整理事業、商業施設・商業基盤施設整備事業などの想定される事業が具体的に例示されている(以下、基本方針において具体的に例示されている事業を「例示事業」という。)。
 そこで、436地区における事項別・例示事業別の事業の実施状況をみたところ、表1−10のとおりとなっていた。
 このうち市街地の整備改善に関する事項の例示事業である道路事業、市街地再開発事業及び土地区画整理事業は、計1,968件、事業費計3兆5818億5246万円となっており、件数は全体の40.8%、事業費は全体の66.2%を占めている。
 また、商業の活性化に関する事項の例示事業である商業施設・商業基盤施設整備事業、空き店舗活用事業、商店街の情報化事業及び情報交流施設事業は、計1,073件、事業費計1798億1878万円となっており、件数は全体の28.4%、事業費は全体の29.9%となっている。
 なお、基本方針には想定される主な事業が例示されているもので、実際には、各地区の状況に応じて事業が実施されていることから、例示事業以外の事業が多数実施されたり、複数の例示事業を組み合わせて一事業として実施されたりしている。

表1−10 事項別・例示事業別の地区数、件数、事業費及び国費負担額
〔1〕 市街地の整備改善に関する事項
(単位:地区、件、千円、%)
例示事業
地区数
件数
件数の割合
 
事業費(A)
国費負担額
 
単独事業に係る事業費(B)
 
事業費計
(A)+(B)
事業費の割合
道路事業
342
1,438
29.8
1,353,993,175
793,304,631
291,496,836
1,645,490,011
30.4
市街地再開発事業
126
289
6.0
981,932,962
190,441,381
188,783,309
1,170,716,271
21.6
土地区画整理事業
162
241
5.0
638,939,632
259,613,555
126,706,546
765,646,179
14.1
小計
1,968
40.8
2,974,865,770
1,243,359,568
606,986,692
3,581,852,462
66.2
その他
399
2,848
59.1
1,117,606,581
465,053,661
711,189,104
1,828,795,685
33.7
4,816
100.0
4,092,472,351
1,708,413,230
1,318,175,796
5,410,648,148
100.0

〔2〕 商業の活性化に関する事項
(単位:地区、件、千円、%)

例示事業
地区数
件数
件数の割合
 
事業費(A)
国費負担額
 
単独事業に係る事業費(B)
 
事業費計
(A)+(B)
事業費の割合
商業施設・商業基盤施設整備事業
160
467
12.3
68,357,075
23,239,501
65,270,277
133,627,352
22.2
空き店舗活用事業
249
439
11.6
7,100,166
2,399,812
8,239,481
15,339,647
2.5
商店街の情報化事業
90
135
3.5
871,901
337,446
983,924
1,855,825
0.3
情報交流施設事業
28
32
0.8
2,913,284
1,183,017
26,082,672
28,995,957
4.8
小計
1,073
28.4
79,242,427
27,159,778
100,576,355
179,818,782
29.9
その他
392
2,704
71.5
181,780,014
57,594,061
239,679,355
421,459,370
70.0
3,777
100.0
261,022,442
84,753,840
340,255,710
601,278,153
100.0

c 事業主体別の実施状況

 基本方針では、基本計画に定められている事業を実施する事業主体に関し、中心市街地に対する取組は、地域の特性を十分に把握しており、地域に最も身近な行政主体である市町村が中心となって推進することが重要であるとされ、また、民間活力を最大限に活用するため、市町村は、民間活動の前提条件となる基盤の整備を積極的に行うことが重要であるとされている。
 そこで、市区町村、国、都道府県及び民間事業者等の事業主体別にプロジェクトに係る16年度末までの事業費をみたところ、表1−11のとおり、市区町村が事業主体となっている事業に係る事業費は3兆4921億7537万円と最も多くなっており、事業費の54.1%を占めていた。また、TMO、商工会・商工会議所、商店街振興組合等の民間事業者が事業主体となっている事業に係る事業費は1兆5065億7944万円(23.3%)となっており、市区町村に次いで多かった。

表1−11 事業主体別の事業費

(単位:千円、%)

事業主体
事業費(A)
国費負担額
 
単独事業に係る事業費(B)
 
事業費計
(A)+(B)
事業費の割合
392,844,951
358,172,417
-
392,844,951
6.0
都道府県
807,544,900
396,498,213
255,408,059
1,062,952,960
16.4
市区町村
2,428,418,400
893,294,623
1,063,756,973
3,492,175,374
54.1
民間事業者等
989,024,643
196,916,736
517,554,798
1,506,579,443
23.3
4,617,832,897
1,844,881,992
1,836,719,832
6,454,552,730
100.0
注(1)
 国が事業主体となっているのは、国の直轄事業を基本計画に中心市街地の活性化を図るための事業として定めていることによる。
注(2)
 民間事業者等は、民間企業、TMO、商工会・商工会議所、商店街振興組合、市街地再開発組合、財団法人等である。

d 事業の着手の状況

 前記イ(ア)e のとおり、基本方針では、基本計画には市街地の整備改善に関する事項について、原則として、おおむね5年以内に着手できると考えられる事業の種類、実施予定者、おおむねの位置又は区域、おおよその実施時期等を記載するものとされている。また、商業の活性化に関する事項について、市街地の整備改善のための事業と同様、原則として、当該事業の種類、実施予定者、おおむねの位置又は区域、おおよその実施時期等を記載するものとされている。
 そこで、10、11両年度に基本計画が作成され、16年度末までに基本計画作成から5年が経過した329地区のうち、市街地の整備改善に関する事項及び商業の活性化に関する事項に、基本計画の作成から5年以内に着手できるとした事業が定められている294地区について、その事業の着手の状況をみたところ、282地区において5年を経過しても着手していない事業が見受けられた。そして、プロジェクトの実施主体において事業に着手していない理由としているものを地区別に分類すると表1−12のとおりとなっており、地権者、関係者の合意形成が図られていないため事業に着手していないとされている地区が最も多くなっていた。

表1−12 事業に着手していない理由
理由
地区数
地権者、関係者の合意形成が図られていないこと
180
事業主体において事業に要する資金が不足していること
152
市町村等において事業の実施のため適切な人材が確保されていないこと
48
当該事業の実施の前提となる他の事業が完了していないこと
97
(注)
 事業によって理由が異なる地区があり、この場合には、理由ごとに地区数を計上している。


<事例6> 5年を経過しても着手していない事業がある地区

 F市では、市内最大の商業・公共公益機能等が集積し、都心型の高度な商業集積拠点に位置付けられている鉄道駅の周辺地区が、近年、大規模小売店舗の撤退や郊外における進出等により、商品販売額及び従事者が著しく減少するとともに、人口の減少も続き、市街地の空洞化が進んでいる状況にあるとして、この地域の30haを中心市街地として活性化に取り組むこととし、10年度に基本計画を作成した。
 基本計画では、市街地の整備改善に関する事項については、複合商業施設を整備する市街地再開発事業、特色を持った商業施設を設置する商店街パティオ事業、駅舎、商店街、市庁舎等相互間の移動を円滑にするためのペデストリアンデッキの整備事業、行政中枢機能の強化を図るための市庁舎第2期整備事業及び国の庁舎である合同庁舎の整備事業、都心居住の促進と住環境の向上を図るための優良建築物等整備事業、大型空き店舗活用事業など9事業を定め、このうち市街地再開発事業、商店街パティオ事業、ペデストリアンデッキの整備事業、市庁舎第2期整備事業、合同庁舎整備事業、大型空き店舗活用事業等の7事業について5年以内に着手するとしている。また、商業の活性化に関する事項について、中心市街地の集客力を高め、商業機能を強化するために、TMO構想策定事業、テナントミックスの導入を支援する魅力拠点整備推進支援事業、共同イベント事業、空き店舗の活用促進事業、共同駐車場整備事業など12事業を定め、このすべてを5年以内に着手するとしている。
 しかし、市街地の整備改善に関する事項では、市庁舎第2期整備事業が16年度に完了し、合同庁舎整備事業が16年度に着手されたものの、他の5事業は未着手となっている。また、商業の活性化に関する事項では、TMO構想策定事業、共同イベント事業等の6事業は5年以内に着手されたものの、他の6事業は未着手となっている。
 そして、未着手となっている事業のうち、市街地再開発事業及び商店街パティオ事業並びにこれらの事業により整備する商業施設に異なる業種、業態の個店を配置するテナントミックスを支援する魅力拠点整備推進支援事業は一体として展開することとしていたが、地権者、関係者の合意形成が図られなかったことにより、5年を経過しても着手されていなかった。また、ペデストリアンデッキの整備事業は、実施の前提となる市街地再開発事業が実施されていないことにより、5年を経過しても着手されていなかった。