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  • 平成18年10月

財投機関における財政投融資改革後の財務状況と特殊法人等改革に伴う財務処理の状況について


(2)特殊法人等改革による財投機関の財務への影響

 今回、検査対象とした法人のうち、旧法人の事業を承継した法人(以下「新規設立法人」という。)の勘定については、組織形態の変更等に伴って旧法人とは資産、負債及び資本の状況が変化することから、これら資産等の承継(以下「資産等承継」という。)の状況について検査した。また、16年度末までに廃止されるなどした事業(以下「廃止事業」という。)について、財投資金等の回収状況等を検査するとともに、16年度末時点で法令により廃止することが決定されている事業(以下「廃止予定事業」という。)について、財務の現状を検査した。なお、法人別の事業承継等の状況については、別添の「個別の財投機関の状況」において、その概要を記述した。

ア 新規設立法人への事業承継に伴う財務への影響

(ア)資産等承継の状況

a 資産等承継の概要

 旧法人は、新規設立法人の設立根拠法に基づき、新規設立法人の成立の時において解散するものとされ、旧法人の一切の権利及び義務は、国又は他の法人が承継することとされたものを除き、新規設立法人が承継することとされている。そして、承継する資産及び負債については、独立行政法人会計基準等に基づき開始貸借対照表に計上されている。
 新規設立法人が独立行政法人である場合、設立根拠法において、承継する資産の価額は、法人成立の日現在における時価を基準として評価委員が評価した価額とすることとされていることから、資産の評価に当たっては、評価要領を作成し、これにより評価を行っている。

b 旧法人の最終貸借対照表と新規設立法人の開始貸借対照表の状況

 旧法人から資産等承継を受けて設立された新規設立法人20法人の財投事業を経理する41勘定(注11) について、旧法人の最終貸借対照表と新規設立法人の開始貸借対照表の状況をみると、表7のとおり、承継前の資産の総額52兆5648億円及び負債の総額45兆7399億円は、承継後において、それぞれ49兆7614億円及び45兆9000億円となっていて、資産が2兆8034億円の減少、負債が1600億円の増加となっていて、資産の減少が著しい。
 また、承継前の資本の総額6兆8248億円、欠損金の総額1兆5292億円は、承継後において、それぞれ3兆8613億円、1兆0808億円となっていて、資本が2兆9634億円、欠損金が4484億円といずれも大きく減少している。

(注11)
 41勘定 別表2参照


表7 旧法人の最終貸借対照表と新規設立法人の開始貸借対照表の状況

(単位:億円)

区分
資産・負債・資本の状況
減少
増加
増減なし
資産の状況
19法人(36勘定)
4法人(4勘定)
1法人(1勘定)
20法人(41勘定)
 
資産の総額(a)
(旧法人・勘定の最終貸借対照表)
442,141
73,926
9,580
525,648
資産の総額(b)
(新規設立法人・勘定の開始貸借対照表)
413,637
74,396
9,580
497,614
資産の増減額((b)-(a))
△28,504
470
-
△28,034
負債の状況
12法人(20勘定)
11法人(19勘定)
2法人(2勘定)
20法人(41勘定)
 
負債の総額(c)
(旧法人・勘定の最終貸借対照表)
303,529
142,057
11,812
457,399
負債の総額(d)
(新規設立法人・勘定の開始貸借対照表)
300,797
146,390
11,812
459,000
負債の増減額((d)-(c))
△2,732
4,332
-
1,600
資本の状況
19法人(35勘定)
5法人(6勘定)
-
20法人(41勘定)
 
資本の総額(e)
(旧法人・勘定の最終貸借対照表)
67,032
1,215
-
68,248
 
上記のうち欠損金の額
△14,607
△684
-
△15,292
資本の総額(f)
(新規設立法人・勘定の開始貸借対照表)
36,734
1,878
-
38,613
 
上記のうち欠損金の額
△10,150
△657
-
△10,808
資本の増減額((f)-(e))
△30,297
662
-
△29,634
 
欠損金の減少額
4,457
27
-
4,484
注(1)
 減少した勘定と増加した勘定の両方がある法人が存在するため、法人数の計は一致しない。
注(2)
 単位未満切り捨てのため金額の計は一致しない。

(イ)資産評価等に伴う評価等損益の発生状況

 前記のとおり、新規設立法人の資産については、承継時に2兆8034億円減少しているが、その増減の主な内訳は、表8のとおり、土地・建物等の事業用資産及び有形固定資産の評価等による減少額が1兆2496億円、国や国が出資する他の法人又は他の勘定が承継したことによる減少額が9044億円、貸倒引当金の積増しによる減少額が3592億円、他勘定への資金提供が3733億円、未収財源措置予定額の新規計上額が2073億円などとなっている。なお、未収財源措置予定額については、次項(ウ)において詳述する。
 また、資産の評価等損益の発生事由と事業類型の関係をみると、土地・建物等の事業用資産及び有形固定資産の評価等による減少は、主として社会資本整備法人で発生しており、貸倒引当金の積増しによる減少は、社会資本整備法人と政策金融法人で発生しており、出資先に対する出資(以下「出資先出資」という。)及び有価証券の評価による減少は、主として無償資金型法人で発生している。これは、社会資本整備法人は多くの固定資産を保有していること、社会資本整備法人の中にも割賦債権等を有する法人が多いこと、無償資金型法人は多くの出資及び有価証券を保有していることなど、それぞれの事業類型の特徴を反映したものである。なお、これらの事業類型別の特徴は、財投機関の抱える債務償還リスクの在り方にも関係するため、その状況については後記(4)において詳述する。
 一方、負債については、承継時に1600億円増加しているが、その増減の主な内訳は、退職給付会計の導入による退職給付引当金の増加額が2749億円、特別法上の引当金の減少額が881億円、補助金等資産見返負債の減少額が261億円などとなっている。このうち、補助金等資産見返負債の減少は、補助金等を財源として取得した資産が資産評価等により減価したことに対応したものである。

表8 資産及び負債の主な評価等損益の内訳

(単位:億円)

区分
項目
合計
左の内訳
社会資本整備法人(勘定)計
政策金融法人(勘定)計
無償資金型法人(勘定)計
資産の評価等損益
△28,034
△10,937
△16,181
△915
 
主な内訳
土地・建物等の事業用資産及び有形固定資産の評価等増/減(△)額
△12,496
△11,174
△1,289
△32
国や他法人・他勘定が承継したことによる減少(△)額
△9,044
△51
△8,861
△131
出資先出資及び有価証券の評価等の増/減(△)額
△794
△130
△37
△627
貸倒引当金の積増しによる減少(△)額
△3,592
△1,185
△2,386
△20
未収財源措置予定額の新規計上額
2,073
1,759
314
-
他勘定への資金提供(△)額
△3,733
-
△3,733
-
他勘定からの資金注入額
1,208
1,208
-
-
負債の評価等損益
1,600
1,404
188
7
 
主な内訳
負債のうち他法人・他勘定が承継したことによる減少(△)額
△187
△42
△145
-
特別法上の引当金の増/減(△)額
△881
△880
-
△1
退職給付引当金の増/減(△)額
2,749
885
1,852
11
補助金等資産見返負債の増/減(△)額
△261
△304
42
△0
(注)
 単位未満切り捨てのため合計額は一致しない。


(ウ)未収財源措置予定額の状況

 独立行政法人会計基準によると、前記のとおり、未収財源措置予定額を計上する場合、後年度において国等が財源措置することとされている特定の費用の範囲と財源措置の時期、方法等が、中期計画等で明らかにされていなければならないとされている。
 新規設立法人20法人41勘定のうち、5法人5勘定においては、資産等承継時の開始貸借対照表に、表9のとおり、貸倒引当金の繰入れに要する費用などのうち、将来、国から補助金等により財源措置されると見込まれる金額について、未収財源措置予定額2073億円が資産に計上されている。そして、法人設立時から16年度までに、補助金等により計198億円が財源措置されたが、新たに260億円が未収財源措置予定額として計上されたことから、16年度末の未収財源措置予定額は2134億円であり、当初の計上額に比べて61億円増加している。

表9 未収財源措置予定額の計上状況

(単位:億円)

法人名
(勘定名)
計上額の内容
当初計上
当初計上日以降増加額(B)
16年度末までの財源措置済額 (C)
16年度末計上額
(D)
((A)+(B)-(C))
当初計上日から16年度末までの増減額
((D)-(A))
措置予定年数
計上年月日
当初計上額 (A)
補助金等による減少額
自己収入等による減少額
環境再生保全機構
(承継勘定)
承継業務に係る元本債権の貸倒引当金相当額等の解消に必要な補助金の見込額
16年4月1日
356
24
54
28
298
△57
10年間
都市再生機構
(都市再生勘定)
旧都市基盤整備公団が14年度末までに借り入れた借入金及び発行した債券等の利息並びに債券等に係る債券発行費及び債券発行差金償却で13年度及び14年度に支払ったもの又は償却したもの
16年7月1日
1,402
-
-
-
1,402
-
6年間
雇用・能力開発機構(一般勘定)
雇用促進融資の回収業務につき、財政融資資金へ支払った利息と債務者から回収した貸付金利息の差額(支払利息補填金)
16年3月1日
5
1
6
-
1
△4
毎年度
労働者健康福祉機構
融資資金貸付金の回収業務について、その債権の貸倒償却が行われた場合には償却した事業年度に償却相当額が補助金交付されることから貸倒引当金の額に相当する額を計上
16年4月1日
19
4
-
-
24
4
現段階で不明。最長平成33年度まで
日本学生支援機構
第一種学資金の返還免除損について、一般会計からの借入金が償還免除となる額
16年4月1日
82
72
82
-
72
△ 10
毎年度
第二種学資金の返還免除損について、発生した返還免除額の全額に相当する額
16年4月1日
13
3
1
-
15
2
毎年度
第二種学資金に係る受取利息と財源である財政融資資金及び財投機関債の支払利息の差額について年度末における未収利息と未払利息の差額に相当する額
16年4月1日
16
22
16
-
22
5
毎年度
法人化後新たに生じた学資金に係る貸倒損失について、回収目標率に基づき算出される予想貸倒引当金相当額を上限として当該学資金に係る貸倒引当金繰入額から受取利息等を控除した額
16年4月1日
-
131
-
-
131
131
20年間
旧日本育英会から承継した第二種学資金に係る貸倒引当金の額の範囲内で、文部科学大臣が決定した額(17,519,277,701円)から補助金により財源措置された額を控除した額
16年4月1日
175
-
9
-
166
△9
20年間
5法人5勘定計
2,073
260
170
28
2,134
61
198
(注)
 単位未満切り捨てのため合計額は一致しない。


 上記5法人のうち、雇用・能力開発機構においては、各年度に計上された未収財源措置予定額は、その翌年度に補助金等により全額が財源措置されている。また、都市再生機構においては、機構設立時に未収財源措置予定額として計上された1402億円について財源措置を行う期限等が法令上明確に定められている。しかし、他の3法人(注12) においては、未収財源措置予定額に対する財源措置は、いずれも計上後10年以上の長期にわたり毎年度の予算の範囲内で措置されるとされていることから、これが予定されたとおり措置されない場合、法人の財務に影響を及ぼすことも考えられる。したがって、これらの法人については、今後、未収財源措置予定額の計上の状況とこれに対する財源措置の状況を注視していくこととする。

(注12)
 3法人 環境再生保全機構、労働者健康福祉機構、日本学生支援機構 なお、未収財源措置予定額に対する財源措置に関連して、環境再生保全機構、労働者健康福祉機構、日本学生支援機構の財務等に関して留意すべき事項を87ページ103ページ 及び105ページ にそれぞれ記載している。


(エ)資本の増減状況

 新規設立法人の資本は、その設立根拠法等によって資本の構成や政府出資金の額の決定方法が規定されている。これらの資本の構成や政府出資金の額の決定方法については、主として以下の2つの類型に分けることができるが、いずれにしても、資産の評価等に伴い発生する損益は最終的には政府出資金の増減や積立金又は繰越欠損金として処理されることになる。
〔1〕 評価委員が評価した承継する資産の価額から負債の金額を差し引いた額を政府から出資されたものとするもの
〔2〕 旧法人への政府出資金は新規設立法人にそのまま承継されることとし、評価委員が評価した承継する資産の価額から負債の金額を差し引いた額が正の場合は積立金、負の場合は繰越欠損金として整理するもの
 なお、上記のそれぞれの類型には、特定の事業に充てるため法令により計上することとされた積立金等を、上記の資産・負債計算から除き、そのまま新規設立法人へ承継しているものがある。また、中小企業基盤整備機構(工業再配置等業務特別勘定)及び同機構(産炭地域経過業務特別勘定)における他勘定からの資金受入れなど、法令により資産の評価に係る損失等を減少させているものもある。
 資本の増減状況は表10のとおりとなっており、資本は2兆9634億円の減少、欠損金は4484億円の減少と、それぞれ大幅に減少しているが、これらの資本及び欠損金の減少は、政府出資金の減少3兆1976億円、政府出資金以外の出資金の減少1042億円などの処理により生じたものである。

表10 資本の増減状況

(単位:億円)

区分
項目
合計
左の内訳
社会資本整備法人(勘定)計
政策金融法人(勘定)計
無償資金型法人(勘定)計
資本の総額(a)
(最終貸借対照表)
68,248
35,534
30,458
2,256
承継後の資本の総額(b)
(開始貸借対照表)
38,613
23,191
14,088
1,333
資本の増/減(△)額
((b)-(a))
△29,634
△12,342
△16,369
△922
 
内訳
政府出資金の増/(△)減
△31,976
△4,118
△27,726
△131
 
上記の内訳
一般会計政府出資金の増/減(△)額
△4,671
△1,617
△3,053
-
産投特会政府出資金の増/減(△)額
△180
△48
-
△131
その他の特別会計政府出資金の増/減(△)額
△27,124
△2,452
△24,672
-
民間出えん金等政府出資金以外の出資金の増/減(△)額
△1,042
-
△1,017
△24
資本剰余金の増/減(△)額
826
838
△13
2
利益剰余金の増/減(△)額
△1,927
△1,512
△410
△4
欠損金の増(△)/減額
4,484
△7,549
12,798
△764
 
(参考)
承継前の欠損金額
△15,292
△645
△13,216
△1,430
承継後の欠損金額
△10,808
△8,194
△418
△2,195
(注)
 単位未満切り捨てのため合計額は一致しない。


(オ)財政負担の状況

 新規設立法人の資本のうち政府出資金及び一部の資本剰余金は、国有財産法(昭和23年法律第73号)により国有財産とされており、国有財産台帳に「政府出資等」として記載されている。したがって、政府出資金等の増減は国有財産台帳の記載価格(以下「台帳価格」という。)の変更を伴うことになる。
 前記(エ)において記述した政府出資金の減少3兆1976億円の中には、旧法人の資産及び負債を国が承継したり、国が出資する他の法人や他の勘定が承継したりする場合、また、政府出資金を国からの長期借入金に振り替え、これを国に返済させる場合による減少が含まれているが、これらは、政府出資金に係る台帳価格は減少するものの、実質的には財政負担とはならない。しかし、政府出資金が回収されることなく台帳価格が減少している場合には、財政支出は伴わないものの、国有財産の減少という形で財政負担が生じることになる。
 このように実質的には財政負担とはならないものを除いた政府出資金の減少(以下「政府出資金の償却」という。)の状況は、表11のとおりとなっており、政府出資金の償却額が生じているのは、9法人13勘定(注13) で合計2兆1106億円となっている。
 このほか、国の債権は、国有財産法上、国有財産として取り扱われていないが、国の債権を免除したものとして、日本学生支援機構が受けた一般会計からの借入金641億円の償還免除があり、国の債権の減額による財政負担が生じている。また、前記の16年度末における未収財源措置予定額2134億円についても、将来的には補助金等による補てん措置という形での財政負担が予定されているものである。
 以上のように、特殊法人等改革を契機に財投機関のうち一部の法人については財務基盤は改善されたものの、その過程においては多額の財政負担が発生している。

(注13)
 9法人13勘定 別表2参照


表11 政府出資金の償却

(単位:億円)

区分
項目
合計
左の内訳
社会資本整備法人(勘定)計
政策金融法人(勘定)計
無償資金型法人(勘定)計
資産の評価等損益(表8参照)
△28,034
△10,937
△16,181
△915
 
資産のうち国が承継したことによる減少(△)額(a)
△482
△3
△347
△131
資産のうち他法人・他勘定が承継したことによる減少(△)額(b)
△8,561
△48
△8,513
△0
負債の評価等損益(表8参照)
1,600
1,404
188
7
 
負債のうち他法人・他勘定が承継したことによる減少(△)額(c)
△187
△42
△145
-
負債増のうち政府出資金からの振替額(d)
1,496
1,496
-
-
((a)+(b)-(c)-(d))=〔1〕+〔2〕+〔3〕+〔4〕+〔5〕
△10,353
△1,506
△8,716
△131
承継前政府出資金 (e)
67,834
22,955
41,385
3,493
承継後政府出資金 (f)
35,858
18,837
13,659
3,362
 
政府出資金の増/減(△)額 ((f)-(e))=(g)
△31,976
△4,118
△27,726
△131
 
内訳
一般会計政府出資金の増/減(△)額
△4,671
△1,617
△3,053
-
産投特会政府出資金の増/減(△)額
△180
△48
-
△131
その他の特別会計政府出資金の増/減(△)額
△27,124
△2,452
△24,672
-
政府出資金の増減のうち国や他法人・他勘定の承継等に対応する分の額 〔1〕 (h)
△10,869
△2,025
△8,712
△131
 
内訳
一般会計対応分の額
△215
△208
△7
-
産投特会対応分の額
△133
△2
-
△131
その他の特別会計対応分の額
△10,520
△1,815
△8,705
-
政府出資金の償却(△)/増加(国の財政負担) ((g)-(h))
△21,106
△2,093
△19,013
-
 
内訳
一般会計政府出資金の償却(△)/増加額
△4,455
△1,409
△3,046
-
産投特会政府出資金の償却(△)/増加額
△46
△46
-
-
その他の特別会計政府出資金の償却(△)/増加額
△16,604
△636
△15,967
-
民間出えん金等〔1〕以外の出資金の増/減(△)額 (i)
△1,042
-
△1,017
△24
 
上記のうち国や他法人・他勘定の承継等に対応する分の額 〔2〕
△6
-
△6
-
資本剰余金の増/減(△)額 (j)
826
838
△13
2
 
上記のうち国や他法人・他勘定の承継等に対応する分の額 〔3〕
526
520
6
-
利益剰余金の増/減(△)額 (k)
△1,927
△1,512
△410
△4
 
上記のうち国や他法人・他勘定の承継等に対応する分の額 〔4〕
△1
△1
-
-
欠損金の増(△)/減額 (l)
4,484
△7,549
12,798
△764
 
上記のうち国や他法人・他勘定の承継等に対応する分の額 〔5〕
△3
-
△3
△0
資本の増減額(表10参照)  (g)+(i)+(j)+(k)+(l)
△29,634
△12,342
△16,369
△922
(注)
 単位未満切り捨てのため合計額は一致しない。


イ 廃止事業及び廃止予定事業に係る勘定の状況

 廃止事業及び廃止予定事業に係る勘定(以下、それぞれ「廃止事業勘定」及び「廃止予定事業勘定」という。)の状況は、表12のとおりであり、前者は8勘定、後者は12勘定、計20勘定となっている。

表12 廃止事業勘定及び廃止予定事業勘定の状況(平成16年度末現在)
法人名(勘定名)
廃止又は
廃止予定年度
社会資本整備法人(5勘定)
 
 
廃止(2勘定)
日本下水道事業団(建設業務勘定)
16年3月
都市再生機構(鉄道勘定)
16年9月
廃止予定(3勘定)
環境再生保全機構(承継勘定)
(予定)業務終了時
中小企業基盤整備機構(工業再配置等業務特別勘定)
(予定)25年度
中小企業基盤整備機構(産炭地域経過業務特別勘定)
(予定)25年度
政策金融法人(2勘定)
 
 
廃止予定(2勘定)
雇用・能力開発機構(一般勘定のうち雇用促進融資に係る債権管理事業)
(予定)貸付金回収業務終了時
労働者健康福祉機構(うち労働安全衛生融資に係る債権管理事業)
(予定)貸付金回収業務終了時
無償資金型法人(13勘定)
 
 
廃止(6勘定)
基盤技術研究促進センター(うち他法人に承継した事業を除く。)
15年4月
国際協力事業団(うち海外移住事業) 注(1)
15年10月
中小企業総合事業団信用保険部門(中小企業信用保険事業・融資事業のうち融資事業) 注(2)
16年7月
情報処理振興事業協会(技術事業勘定)
16年1月
情報処理推進機構(地域ソフトウェア教材開発承継勘定)
16年3月
通信・放送機構(衛星所有勘定)
16年4月
廃止予定(7勘定)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(研究基盤出資経過勘定)
(予定)18年度注(3)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(鉱工業承継勘定)
(予定)25年度
新エネルギー・産業技術総合開発機構(特定事業活動等促進経過勘定)
(予定)業務終了時
情報処理推進機構(特定プログラム開発承継勘定)
(予定)19年度
情報通信研究機構(通信・放送承継勘定)
(予定)24年度
医薬品医療機器総合機構(承継勘定)
(予定)35年度
中小企業基盤整備機構(出資承継勘定)
(予定)株式処分終了時
注(1)
 国際協力事業団の海外移住事業を承継した国際協力機構では、同事業に係る貸付金等の回収業務を行っている。
注(2)
 中小企業金融公庫に事業承継された。
注(3)
 平成18年4月に廃止された。

 廃止事業勘定及び廃止予定事業勘定20勘定のうち、事業類型別で最も多いのは、無償資金型法人で13勘定となっており、特に廃止事業勘定8勘定のうち6勘定は無償資金型法人となっている。
 無償資金型法人については、12年度報告において、法人の出資先会社における多額の欠損金の発生及びこれに伴う回収リスクの現況や法人が多額の累積欠損金を抱えている状況について記述しているが、今回、他の事業類型の法人に係る勘定も含め、廃止事業勘定については財投資金等の回収及び損失処理の状況について、また、廃止予定事業勘定についてはその財務状況について、それぞれ検査した。

(ア)廃止事業勘定に係る財投資金等の回収及び損失処理の状況

 廃止事業勘定8勘定に係る財投資金等の回収及び損失処理の状況を示すと、表13のとおりである。

表13 廃止事業勘定における財投資金等の回収及び損失処理の状況

(単位:億円)

法人名(勘定名)
廃止事業終了年月
最終決算時の資本金
最終決算時の欠損金
左の欠損金の処理
最終決算時の資本金のうち国庫納付額
政府出資金の減少(一般会計)
政府出勤の減少(産投特会)
政府出資金以外の出資金の減少
他勘定等への欠損金を承継
政府出資金
うち産投特会政府出資金
一般会計政府出資金
産投特会政府出資金
社会資本整備法人(2勘定)(A)
 
29
427
0
-
29
389
-
-
0
-
 
日本下水道事業団(建設業務勘定)
16年3月
-
148
-
-
-
140
-
-
-
-
都市再生機構(鉄道勘定)
16年9月
29
278
0
-
29
248
-
-
0
-
無償資金型法人(6勘定)(B)
 
11,114
3,133
72
2,915
135
9
18
785
10,967
4,073
 
基盤技術研究促進センター
15年4月
3,148
2,774
-
2,684
81
9
-
-
3,055
3,055
国際協力事業団
(うち海外移住事業)
15年10月
208
107
72
35
-
-
18
18
208
54
中小企業総合事業団信用保険部門
(中小企業信用保険事業・融資事業のうち融資事業)
16年7月
7,467
1
0
1
-
-
-
726
7,467
728
情報処理振興事業協会
(技術事業勘定)
16年1月
197
196
-
142
54
-
-
0
142
142
情報処理推進機構
(地域ソフトウェア教材開発承継勘定)
16年3月
17
9
-
9
-
-
-
7
17
17
通信・放送機構
(衛星所有勘定)
16年4月
75
43
-
43
-
-
-
31
75
75
合計(A+B)
 
11,144
3,560
2,988
165
398
803
10,967
4,073
72
2,915
18
785
注(1)
 事業を地方公共団体に移管。最終決算時(14年度)の欠損金との差額7億円は、地方公共団体移管時(平成16年3月)までの利益金で減額。
注(2)
 他勘定が承継した額は7175億円
注(3)
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(鉱工業承継勘定)に産投特会政府出資金183億円、通信・放送機構(通信・放送承継勘定)に産投特会政府出資金188億円がそれぞれ承継されている。
注(4)
 国際協力機構への一般会計政府出資金承継額は63億円
注(5)
 中小企業金融公庫への一般会計政府出資金承継額は6739億円
注(6)
 法人名(勘定名)は、原則として、各事業類型における廃止事業終了年月順に記載した。
注(7)
 単位未満切り捨てのため合計額は一致しないことがある。

 上記の8勘定における最終決算の状況をみると、いずれも欠損金を計上しており、その総額は3560億円となっている。
 このうち社会資本整備法人2勘定における財投資金等の回収及び損失処理の状況は次のとおりである。

〔1〕 日本下水道事業団(建設業務勘定)は、同勘定の資産538億円、負債660億円及び欠損金148億円のうち既存の下水汚泥広域処理施設に係る分(財政融資資金借入金残高354億円及び欠損金140億円を含む。)を15年度に地元地方公共団体へ移管し、16年3月に廃止された。なお、残余の資産15億円及び負債15億円は、一般業務勘定へ振り替えられた後、精算された。
〔2〕 都市再生機構(鉄道勘定)は、16年7月に鉄道事業を民間鉄道事業者に譲渡して鉄道業務を終了した後、同年9月に廃止された。そして、勘定廃止時の資産188億円、負債437億円、資本金29億円及び欠損金278億円は、そのうち資産、負債の全額と欠損金248億円が都市再生勘定に承継され、残余の資本金29億円のうち一般会計政府出資金500万円は、同勘定廃止時の欠損金の処理に充てられたため、回収不能となっている。

 また、無償資金型法人6勘定においても、損失処理のために政府出資金の償却等を行っており、6勘定に係る政府出資金1兆0967億円のうち他勘定が承継した7175億円を除く3792億円については、産投特会政府出資金785億円、一般会計政府出資金18億円、計803億円が国庫納付されたものの、産投特会政府出資金2915億円、一般会計政府出資金72億円、計2988億円が欠損金の処理に充てられたため、回収不能となっている。
 上記について、勘定別に、財投資金等の回収及び損失処理の状況をみると、次のとおりとなっている。なお、以下のうち〔1〕から〔3〕については、勘定廃止時に事業を他勘定又は他法人に承継し、〔4〕から〔6〕については、勘定廃止時に事業を終了している。

〔1〕 基盤技術研究促進センターは15年4月に廃止された。そして、同センターの資産525億円、負債151億円、資本金3148億円及び欠損金2774億円は、資産、負債の全額と資本金383億円、欠損金9億円が、通信・放送基盤技術に係るものは通信・放送機構に、鉱工業基盤技術に係るものは新エネルギー・産業技術総合開発機構にそれぞれ承継され、残余の資本金2765億円のうち産投特会政府出資金2684億円は、同センター廃止時の欠損金の処理に充てられたため、回収不能となっている。
〔2〕 国際協力事業団の海外移住事業は15年10月に廃止された。そして、同事業に係る資産100億円、資本金208億円及び欠損金107億円は、資産63億円及び一般会計政府出資金63億円が国際協力機構に承継され、残余の資本金(産投特会政府出資金54億円及び一般会計政府出資金90億円)については、産投特会政府出資金では産投特会に納付された18億円を除いた35億円、一般会計政府出資金では一般会計へ納付された18億円を除いた72億円、計107億円が、同勘定廃止時の欠損金の処理に充てられたため、回収不能となっている。
 なお、国際協力機構は、上記のとおり、国際協力事業団の海外移住事業に係る資産を承継したが、産投特会政府出資金がなくなったため財投機関には該当しないこととなった。
〔3〕 中小企業総合事業団信用保険部門(中小企業信用保険事業・融資事業のうち融資事業)は、16年7月に廃止された。そして、同部門の融資事業に係る資本金(産投特会政府出資金728億円及び一般会計政府出資金6739億円)については、一般会計政府出資金では中小企業金融公庫の融資基金に承継された6739億円を除いた2482万円、産投特会政府出資金では産投特会に納付された726億円を除いた1億円、計1億円が、同部門廃止時の欠損金の処理に充てられたため、回収不能となっている。なお、中小企業金融公庫は、中小企業総合事業団信用保険部門の融資事業を承継したが、産投特会政府出資金がなくなったため当該融資事業は財投事業には該当しないこととなった。
〔4〕 情報処理振興事業協会(技術事業勘定)は、16年1月に廃止された。そして、同勘定の産投特会政府出資金142億円は、産投特会に納付された8332万円を除いた142億円が、同勘定廃止時の欠損金の処理に充てられたため、回収不能となっている。
〔5〕 情報処理推進機構(地域ソフトウェア教材開発承継勘定)は、16年3月に廃止された。そして、同勘定の産投特会政府出資金17億円は、産投特会に納付された7億円を除いた9億円が、同勘定廃止時の欠損金の処理に充てられたため、回収不能となっている。
〔6〕 通信・放送機構(衛星所有勘定)は、16年4月に廃止された。そして、同勘定の産投特会政府出資金75億円は、産投特会に納付された31億円を除いた43億円が、同勘定廃止時の欠損金の処理に充てられたため、回収不能となっている。

 以上のように、廃止事業勘定8勘定のうち7勘定では、財投事業の廃止に伴い、産投特会政府出資金2915億円及び一般会計政府出資金72億円、計2988億円が欠損金の処理に充てられたため、回収不能となっている。

(イ)廃止予定事業勘定の財務状況

 廃止予定事業勘定12勘定の16年度決算の状況、廃止予定年度並びに事業廃止の根拠法令及び勘定廃止時における財産等の処理の概要について整理すると、表14のとおりである。なお、社会資本整備法人3勘定及び無償資金型法人7勘定は、当該廃止予定事業について設けられた特別の勘定であり、政策金融法人2勘定は、廃止予定事業のほか他の事業も併せて経理している。

表14 廃止予定事業勘定の状況(平成16年度末現在)

(単位:億円)

法人名(勘定名)
16年度決算
廃止予定年度
事業廃止の根拠法令及び勘定廃止時における財産等の処理の概要
利益剰余金
又は
△累積欠損金
当期利益
又は
△損失
社会資本整備法人(3勘定)
環境再生保全機構
(承継勘定)
6
6
業務終了時
独立行政法人環境再生保全機構法(平成15年法律第43号)
 廃止の際、残余財産があるときは、国庫(一般会計)に納付
中小企業基盤整備機構(工業再配置等業務特別勘定)
△28
14
25年度
独立行政法人中小企業基盤整備機構法(平成14年法律第147号)
 勘定廃止時の権利及び義務を一般勘定に帰属させる。
 ただし、資産価額が負債金額を上回る場合は、経済産業大臣と財務大臣が協議した額を、工業再配置等業務特別勘定は産投特会に、産炭地域経過業務特別勘定は一般会計又は石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計にそれぞれ納付
中小企業基盤整備機構(産炭地域経過業務特別勘定)
△184
12
25年度
政策金融法人(2勘定)
雇用・能力開発機構
(一般勘定のうち雇用促進融資に係る債権管理事業)
貸付金回収業務終了時
独立行政法人雇用・能力開発機構法
(平成14年法律第170号) 注(2)
労働者健康福祉機構
(うち労働安全衛生融資に係る債権管理事業)
貸付金回収業務終了時
独立行政法人労働者健康福祉機構法
(平成14年法律第171号) 注(2)
無償資金型法人(7勘定)
新エネルギー・産業技術総合開発機構
(研究基盤出資経過勘定)
△65
△5
18年度
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法(平成14年法律第145号)
 廃止の際、残余財産があるときは、産投特会に納付
新エネルギー・産業技術総合開発機構
(鉱工業承継勘定)
△7
0
25年度
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法
 廃止の際、残余財産があるときは、産投特会に納付
新エネルギー・産業技術総合開発機構
(特定事業活動等促進経過勘定)
1
2
業務終了時
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法
 廃止の際、残余財産があるときは、産投特会に納付
情報処理推進機構
(特定プログラム開発承継勘定)
△379
1
19年度
情報処理の促進に関する法律(昭和45年法律第90号)
 廃止の際、残余財産があるときは、産投特会に納付
情報通信研究機構
(通信・放送承継勘定)
△14
1
24年度
独立行政法人情報通信研究機構法(平成11年法律第162号)
 廃止の際、残余財産があるときは、産投特会に納付
医薬品医療機器総合機構(承継勘定)
△254
△1
35年度
独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平成14年法律第192号)
 廃止の際、残余財産があるときは、産投特会に納付
中小企業基盤整備機構(出資承継勘定)
△10
3
株式処分終了時
独立行政法人中小企業基盤整備機構法
 廃止の際、残余財産があるときは、産投特会に納付
利益剰余金を計上している勘定数(金額)
2勘定
(8)
当期利益を計上している勘定数
8勘定
累積欠損金を計上している勘定数(金額)
8勘定
(△945)
当期損失を計上している勘定数
2勘定
注(1)
 労働者健康福祉機構及び雇用・能力開発機構の2勘定は、他の10勘定と異なり、他の事業と併せて経理している勘定であるため「利益剰余金又は△累積欠損金「当期利益又は△損失」は表示していない。
注(2)
 労働者健康福祉機構及び雇用・能力開発機構の2勘定は、法令により廃止することとされているが、勘定廃止時の財産等の処理方法については、法令の定めがないため、表示していない。
注(3)
 新エネルギー・産業技術総合開発機構の研究基盤出資経過勘定は、平成18年4月に廃止された。

 勘定廃止時の財産等の処理方法は、政策金融法人の2勘定を除いて、法令により、定められており、残余財産が生じた場合、無償資金型法人の7勘定は産投特会に社会資本整備法人の環境再生保全機構は国庫(一般会計)にそれぞれ納付することとされている。また、社会資本整備法人の中小企業基盤整備機構の2勘定においては、勘定に属する権利及び義務を当該法人の他の勘定に帰属させるとともに、資産価額が負債金額を上回る場合は、経済産業大臣が財務大臣と協議して定めた金額を産投特会、一般会計又は石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計に納付することなどとされている。
 また、16年度決算の状況についてみると、政策金融法人の2勘定を除いた10勘定のうち8勘定において累積欠損金945億円を計上しており、このうち無償資金型法人の6勘定については、今後の収支が改善されない場合、出資金の全額回収は困難である。
 各法人の収支構造についてみると、環境再生保全機構及び政策金融法人の2勘定では、借入金等に見合う主な資産が割賦譲渡元金又は貸付金であるが、政策金融法人の2勘定においては、貸付金については利子補給を受けており、また、これら3勘定では貸倒れが生じた場合に備えて貸倒引当金を計上している。これに対して、社会資本整備法人における中小企業基盤整備機構の2勘定では、主な資産が販売用不動産であることから、その譲渡価格が貸借対照表に計上した当該資産の価格を下回ったり譲渡等が予定どおり進まなかったりして、勘定廃止時に欠損金が生じた場合には、工業再配置等業務特別勘定においては、欠損金処理のため同勘定の出資金を減少させることとなるほか、当該2勘定の権利及び義務を一般勘定に承継する際に、一般勘定に欠損金を承継するなどの処理を行うことになる。なお、これに関連して、中小企業基盤整備機構の財務等に関して留意すべき事項を90ページ に記載している。
 また、社会資本整備法人3勘定及び政策金融法人2勘定では、借入金の償還時期に応じて売却等による資金の回収ができなかったり、貸付金の回収時期より借入金の償還時期が早い場合には、現預金の保有状況によっては、資金不足を生じたりするおそれがある。
 したがって、これらの廃止予定事業勘定については、廃止事業勘定と同様に、財投資金等の回収ができなかったり、廃止後に損失を他の勘定が承継したりなどする場合もあることから、今後の収支等の推移等について注視していくこととする。