財投機関の抱える債務償還リスクの性質は一律ではなく、有償資金を主たる財源とする社会資本整備法人及び政策金融法人の場合は基本的な償還システムに、また、無償資金を主たる財源とする無償資金型法人の場合は基本的な収支構造にそれぞれ関係している。12年度報告においては、これらに着目して財投機関を事業類型に分類し、その償還リスクの状況等を明らかにした。
そこで、12年度報告に掲記した主な課題、リスクについて、その後の財投改革及び特殊法人等改革に伴う財投機関の財務構造等の変化がどのような影響を与えたのか、また、改善の方向に向かっているのか、前記(2)及び(3)の分析を踏まえて、事業類型別に検査した。
社会資本整備法人については、資産の簿価と時価とがかい離するリスク及び特別法上の引当金等の状況について検査した。
12年度報告においては、社会資本整備法人の資産に係るリスクの状況として、資産価格(簿価)と時価とのかい離の状況について記述した。
前記のとおり、多くの社会資本整備法人は特殊法人等改革により独立行政法人化されており、新規設立法人が承継する資産の価額については、法令に基づき、時価を基準として評価委員が評価した価額としている。
そこで、独立行政法人化された社会資本整備法人7法人14勘定について、承継前後の資産の価額を比較することにより、資産の簿価と時価とのかい離の状況について検査した。
これらの社会資本整備法人において資産の中核を占める事業資産は、承継前の貸借対照表では「有形固定資産」とは区分して「事業資産」として計上されていたが、承継後の貸借対照表では、水資源機構を除いて事業資産を区分せずに「有形固定資産」等として計上されている。このため、承継前後の比較は、承継前の貸借対照表において「事業資産」及び「有形固定資産」等として計上されている額と、承継後の貸借対照表において「有形固定資産」等(水資源機構においては、「事業資産」及び「一般管理用固定資産の有形固定資産」等)として計上されている額とを比較することにより分析することとした。また、評価委員による事業資産の評価方法の主なものについても併せて検査した。なお、東京地下鉄株式会社及び成田国際空港株式会社は、旧法人においても企業会計原則等に従った会計処理を行っていたことなどから、資産等承継に伴う資産評価は行われていない。
社会資本整備法人7法人14勘定について、承継前後における事業資産等の増減額の状況をみると、表19のとおり、承継前の資産の価額は合計26兆7121億円であったのに対し、承継後に時価等を基準として評価した後の価額は合計25兆5947億円となっていて、承継前の価額と比較して1兆1174億円(4.2%)減少している。
これを勘定別にみると、中小企業基盤整備機構(工業再配置等業務特別勘定)及び同機構(産炭地域経過業務特別勘定)のように不動産の販売を行っている勘定においては、不動産を時価で評価した結果、減少率が大きくなっているが、水資源機構や石油天然ガス・金属鉱物資源機構(備蓄・探鉱融資等勘定)では、事業資産を簿価のまま承継していることから、減少率は小さくなっている。
表19 社会資本整備法人における事業資産及び有形固定資産等の増減額の状況並びに主な事業資産の評価方法
(単位:億円)
\
|
項目
|
事業資産の評価前価額
(A)
|
事業資産の評価後価額
(B)
|
増減額(E)
((B)-(A)
及び(D)-(C))
|
増減率(%)
((E)/(A)
及び(E)/(C))
|
(参考)
開始貸借対照表における欠損金の額
|
(主な事業資産)
評価委員による主な事業資産の評価方法
|
新規設立法人
(新勘定名)
|
旧法人(旧勘定名)
|
(事業資産及び有形固定資産等)の評価前価額(C)
|
有形固定資産等の評価後価額(D)
|
||||
独)緑資源機構(造林勘定)
|
緑資源公団(造林勘定)
|
9,958
|
8,455
|
△1,502
|
△15.1
|
-
|
(水源林)
〔1〕標準伐採期齢以上:正味売却価額
〔2〕標準伐採期齢未満:取得原価を基準とする正常原価
(建設仮勘定)
投資額累計
|
9,966
|
8,464
|
△1,501
|
△15.1
|
||||
独)緑資源機構(林道等勘定)
|
緑資源公団(林道勘定、特定地域整備勘定、農用地整備勘定)
|
4,242
|
4,242
|
-
|
-
|
-
|
|
4,253
|
4,262
|
9
|
0.2
|
||||
独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(建設勘定)
|
日本鉄道建設公団(一般勘定)
|
45,931
|
-
|
-
|
-
|
-
|
(建物(鉄道施設用建物等)、構築物、機械装置、共有船舶、土地(鉄道施設用地等)、建設仮勘定)
簿価評価(帳簿価額等)(土地(職員宿舎等))
時価評価(民間精通者価格)
|
46,005
|
45,580
|
△424
|
△0.9
|
||||
独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(船舶勘定)
|
運輸施設整備事業団(船舶勘定)
|
3,697
|
3,303
|
△394
|
△10.7
|
△444
|
|
3,698
|
3,303
|
△394
|
△10.7
|
||||
独)水資源機構
|
水資源開発公団
|
36,919
|
36,560
|
△358
|
△1.0
|
-
|
(土地)
〔1〕事業用土地については帳簿価額
〔2〕一般管理用土地については、不動産鑑定士鑑定額
|
36,991
|
36,697
|
△294
|
△0.8
|
||||
独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(金属鉱業備蓄・探鉱融資等勘定)ほか1勘定
|
金属鉱業事業団(一般勘定)
|
304
|
304
|
-
|
-
|
-
|
(希少金属鉱産物)
残存簿価
|
346
|
338
|
△8
|
△2.4
|
||||
独)環境再生保全機構(承継勘定)
|
環境事業団(一般業務勘定)
|
90
|
87
|
△3
|
△3.6
|
-
|
(未成工事支出金)
完成後販売見込み額-造成工事原価の発生見込額
|
91
|
88
|
△2
|
△3.3
|
||||
独)中小企業基盤整備機構(工業再配置等業務特別勘定)ほか2勘定
|
地域振興整備公団(工業再配置等事業勘定)
|
2,069
|
-
|
-
|
-
|
△264
|
(土地、建物、販売用不動産)
不動産鑑定士による鑑定評価額
|
2,090
|
489
|
△1,600
|
△76.6
|
||||
独)中小企業基盤整備機構(産炭地域経過業務特別勘定)
|
地域振興整備公団(産炭地域経過業務勘定)
|
854
|
-
|
-
|
-
|
△197
|
|
856
|
94
|
△761
|
△88.9
|
||||
独)都市再生機構(都市再生勘定)
|
都市基盤整備公団(都市基盤整備勘定)、地域振興整備公団(地方都市開発整備等事業勘定)
|
161,524
|
-
|
-
|
-
|
△7,011
|
(建物、土地、仕掛不動産勘定)
〔1〕時価評価(民間精通者価格)
〔2〕原価で譲渡することが確実なもの主体工事が完成していないもの等は取得原価。
〔3〕譲渡契約済のものは譲渡価額
|
162,630
|
156,432
|
△6,198
|
△3.8
|
||||
独)都市再生機構(鉄道勘定)
|
都市基盤整備公団(鉄道勘定)
|
191
|
-
|
-
|
-
|
△276
|
|
191
|
192
|
1
|
1.0
|
||||
合計
|
265,784
|
-
|
-
|
-
|
△8,194
|
/
|
|
267,121
|
255,947
|
△11,174
|
△4.2
|
前記(2)のとおり、これらの事業資産等の減少額については、政府出資金の償却等により処理された法人が多いが、欠損金として新規設立法人に承継されているものもあり、欠損金が承継されたことにより多額の累積欠損金を計上している法人については、今後累積欠損金が解消されていくか、収支状況を注視していく必要がある。また、今後の経済情勢の変化によっては、資産の簿価と時価に再び大きなかい離が生じることもあり得ることなどから、資産の簿価と時価のかい離については、今後も注視していくこととする。
12年度報告においては、長期にわたる事業期間中に起こりうる予想できない社会経済情勢の変化によって生じるリスクに対応するための特別法上の引当金等の状況について記述した。
12年度末の時点で特別法上の引当金等を計上していた社会資本整備法人8法人(注30)
のうち、16年度末までの間に特殊法人等改革により組織形態の変更が行われたのは5法人(注31)
である。そして、これら5法人のうち資産等承継前の最終貸借対照表において特別法上の引当金等を計上していたのは4法人であるが、これらの特別法上の引当金等の状況は、表20のとおりとなっている。
すなわち、これら4法人の業務を承継した新規設立法人4法人のうち2法人では、特別法上の引当金等を計上していない。これは、新規設立法人に適用されることとなった独立行政法人会計基準等では、従来計上されていた特別法上の引当金等のほとんどが利益留保的な性格のものとされ、引当金の要件を満たさないものとなったことなどによるものである。また、旧法人の最終貸借対照表では4法人で総額1511億円が計上されていたのに対し、新規設立法人の2法人では総額512億円に縮小し、引当金等の額は999億円減少している。
このように、旧法人において特別法上の引当金等で対応していたリスクは、新規設立法人においてはリスクが顕在化したときの各期の損益に反映されることとなった。
(注30)
|
8法人 日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、新東京国際空港公団、都市基盤整備公団、地域振興整備公団、日本鉄道建設公団、金属鉱業事業団
|
(注31)
|
5法人 新東京国際空港公団、都市基盤整備公団、地域振興整備公団、日本鉄道建設公団、金属鉱業事業団
|
表20 組織変更を行った法人における特別法上の引当金等の計上状況
(単位:億円)
法人名
(旧法人名)
|
旧法人の最終貸借対照表上の引当金等
|
16年度末の計上額(B)
|
差引((B)-(A))
|
|
名称
|
金額(A)
|
|||
成田国際空港株式会社
(新東京国際空港公団)
|
回収財源調整準備金
|
17
|
非計上
|
△17
|
成田新高速鉄道負担引当金
|
225
|
225
|
-
|
|
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(日本鉄道建設公団)
|
譲渡調整引当金
|
129
|
286
|
157
|
中小企業基盤整備機構
(地域振興整備公団)
|
譲渡価格調整準備金
|
186
|
非計上
|
△186
|
都市再生機構
(都市基盤整備公団)
|
分譲価格調整準備金
|
408
|
非計上
|
△408
|
公租公課準備金
|
214
|
非計上
|
△214
|
|
賃貸住宅居住性能保全準備金
|
330
|
非計上
|
△330
|
|
計
|
1,511
|
512
|
△999
|
注(1)
|
旧法人の最終貸借対照表上の金額が10億円以上のものを対象にした。
|
注(2)
|
成田国際空港株式会社の成田新高速鉄道負担引当金は平成15年度から計上されているが承継前は特別法上の引当金ではない。
|
注(3)
|
単位未満切り捨てのため合計額は一致しない。
|
政策金融法人については、16年度末における検査対象17法人21勘定を対象として、貸倒リスク及び繰上償還リスクの状況について検査した。また、このうち貸倒リスクについては、政策金融法人と同様の貸倒リスクを有する社会資本整備法人もあることから、これらの状況についても併せて検査した。
なお、政策金融法人においては、45ページ
で記述したとおり、逆ざや等による収支差や貸倒償却による損失等を補てんするための補助金等を受け入れることとなっている法人があることから、上記のリスクが国の財政負担に及ぼす影響の違いにも着目し、上記17法人21勘定を補給金型法人と非補給金型法人(注32)
に分類して分析した。
商工組合中央金庫及び公営企業金融公庫を除く各法人は、12年度当時、大蔵省告示、内規等に基づき貸付金残高に対する一定比率又はその範囲内で貸倒引当金を計上していた。その比率は、公庫の場合、貸付受入金を除く期末貸付金残高の1000分の6、銀行の場合、1000分の3などとされていて、実際の信用リスクや回収見込の状況からみて限度率以上に引当金を積み増す必要がある場合でも、これを貸倒引当金の引当水準に反映させる仕組みとはなっていなかった。
その後、多くの財投機関の組織・事業を統廃合するなどして設立された各独立行政法人では、独立行政法人会計基準に基づき、債権を債務者の財政状態等に応じて一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等に区分し、債権の区分ごとに貸倒金額を見積もって、これにより貸倒引当金を計上することとなった。
そこで、貸倒引当金の計上方法の違いに着目して、独立行政法人会計基準を適用している政策金融法人8法人、同基準を適用している社会資本整備法人6法人、従来の基準のままの政策金融法人9法人に区分して分析した。
政策金融法人17法人のうち独立行政法人である7法人のほか、独立行政法人会計基準を適用している日本私立学校振興・共済事業団を加えた8法人10勘定(注33) について、独立行政法人への資産等承継前の最終貸借対照表と資産等承継後の開始貸借対照表等により貸倒引当金の増減の状況を示すと、表21のとおりである。
表21 独立行政法人化等に伴う貸倒引当金の評価増減の状況(政策金融法人)
(単位:億円)
法人名(勘定名)
|
開始貸借対照表貸付金等残高〔1〕
|
旧法人最終貸借対照表貸倒引当金(A)
|
開始貸借対照表貸倒引当金(B)
|
増減(B)-(A)
|
開始貸借対照表の欠損金等の状況
|
|||
金額〔2〕
|
引当率〔2〕/〔1〕
|
金額〔3〕
|
引当率〔3〕/〔1〕
|
金額
|
引当率
|
|||
政策金融法人8法人
(10勘定計)
|
78,522
|
543
|
1.0%
|
2,105
|
8.5%
|
1,562
|
7.5%
|
|
補給金型法人
(5勘定計)
|
51,903
|
58
|
0.4%
|
448
|
7.6%
|
390
|
7.1%
|
|
雇用・能力開発機構
(一般勘定)のうち雇用促進融資に係る債権管理事業の貸付金に係る分
|
285
|
4
|
1.7%
|
56
|
19.8%
|
51
|
18.0%
|
欠損金なし
|
労働者健康福祉機構のうち労働安全衛生融資に係る債権管理事業の貸付金に係る分
|
126
|
0
|
0.1%
|
19
|
15.8%
|
19
|
15.7%
|
欠損金なし、19億円について未収財源措置予定額を計上
|
日本学生支援機構のうち有利子貸与事業の貸付金に係る分
|
13,660
|
40
|
0.3%
|
266
|
2.0%
|
225
|
1.7%
|
欠損金なし、175億円について未収財源措置予定額を計上
|
福祉医療機構
(一般勘定)
|
29,796
|
4
|
0.0%
|
93
|
0.3%
|
89
|
0.3%
|
欠損金なし
|
雇用・能力開発機構
(財形勘定)
|
8,034
|
8
|
0.1%
|
12
|
0.2%
|
3
|
0.0%
|
欠損金417億円
|
非補給金型法人
(5勘定計)
|
26,619
|
484
|
1.7%
|
1,656
|
9.7%
|
1,172
|
8.0%
|
|
奄美群島振興開発基金
(うち出融資業務)注(3)
|
118
|
0
|
0.3%
|
20
|
17.1%
|
20
|
16.8%
|
欠損金23億円
|
中小企業基盤整備機構
(一般勘定)のうち高度化貸付金に係る分
|
7,590
|
379
|
5.0%
|
1,581
|
20.8%
|
1,202
|
15.8%
|
欠損金なし
|
福祉医療機構
(年金担保貸付勘定)
|
2,139
|
0
|
0.0%
|
1
|
0.1%
|
1
|
0.1%
|
欠損金1億円
|
日本私立学校振興・共済事業団
(助成勘定のうちの一般経理)注(4)
|
6,760
|
104
|
1.5%
|
52
|
0.8%
|
△51
|
△0.7%
|
15年度当期純損失なし
|
国立大学財務・経営センター
(施設整備勘定)
|
10,009
|
-
|
-
|
-
|
0%
|
-
|
-
|
国の機関から独立行政法人化
|
資産等承継前後で比較すると、上記8法人10勘定のうち、日本私立学校振興・共済事業団及び国立大学財務・経営センターを除く6法人8勘定において貸倒引当金の積増しが行われており、貸倒引当金計上額の総額は543億円から2105億円へと約4倍に増加し、貸付金等残高に対する貸倒引当金計上額の割合(以下「引当率」という。)は法人平均で1.0%から8.5%へと上昇している。これを法人別にみると、貸倒引当金の積増しが最も大きいのは中小企業基盤整備機構(一般勘定)の1202億円であり、引当率の上昇が最も大きいのは雇用・能力開発機構(一般勘定のうち雇用促進融資に係る債権管理事業)の18.0ポイントとなっている。
貸倒引当金の積増しに伴う損失等に対応した財務処理についてみると、6法人8勘定のうち5法人5勘定(注34)
においては、前記の(2)で記述したように、独立行政法人への資産等承継に際して、政府出資金の償却など資本の処理を行ったり、未収財源措置予定額を計上したり、他の勘定から資金を受け入れたりしていて、これらにより貸倒引当金の積増しに伴う損失等を解消している。なお、将来において財政負担が予定されている未収財源措置予定額として計上された額の総額は195億円である。
社会資本整備法人のうち、土地、施設、船舶等の固定資産を有償資金により取得し、これを購入者等に譲渡したり、受益者等から負担金等を徴収したりするなどして資金を回収する事業スキームとしている法人については、前記のとおり、その譲渡収入に係る割賦債権等について貸倒れが発生するおそれがあり、政策金融法人と同様の貸倒リスクを抱えている。
そこで、社会資本整備法人のうち上記の事業スキームを採っている独立行政法人6法人10勘定(注35)
について、独立行政法人への資産等承継前の最終貸借対照表と資産等承継後の開始貸借対照表により割賦債権等に係る貸倒引当金の増減の状況を示すと、表22のとおりである。
表22 独立行政法人化に伴う貸倒引当金の評価増減の状況(社会資本整備法人)
(単位:億円)
法人名(勘定名)
|
開始貸借対照表貸付金等残高〔1〕
|
旧法人最終貸借対照表貸倒引当金(A)
|
開始貸借対照表貸倒引当金(B)
|
増減(B-A)
|
開始貸借対照表の欠損金等の状況
|
|||
金額〔2〕
|
引当率
〔2〕/〔1〕
|
金額〔3〕
|
引当率
〔3〕/〔1〕
|
金額
|
引当率
|
|||
社会資本整備法人6法人
(10勘定計)
|
109,613
|
51
|
0.2%
|
1,255
|
9.1%
|
1,203
|
8.9%
|
|
鉄道建設・運輸施設整備支援機構(船舶勘定)のうち船舶未収金及び貸付金
|
916
|
-
|
0%
|
272
|
29.7%
|
272
|
29.7%
|
欠損金444億円
|
中小企業基盤整備機構
(産炭地域経過業務特別勘定)のうち割賦売掛金及び事業貸付金
|
157
|
1
|
0.9%
|
40
|
25.5%
|
38
|
24.7%
|
欠損金197億円
|
環境再生保全機構
(承継勘定)のうち割賦譲渡元金及び貸付金
|
2,628
|
-
|
0%
|
346
|
13.2%
|
346
|
13.2%
|
欠損金なし、346億円については未収財源措置予定額を計上 注(4)
|
中小企業基盤整備機構
(施設整備等勘定)のうち割賦売掛金及び事業貸付金
|
185
|
1
|
0.4%
|
21
|
11.3%
|
22
|
9.1%
|
欠損金221億円
|
中小企業基盤整備機構
(工業再配置等業務特別勘定)のうちの割賦売掛金
|
62
|
2
|
4.2%
|
欠損金43億円
|
||||
都市再生機構
(都市再生勘定)のうち割賦等譲渡債権等 注(3)
|
14,836
|
49
〔2〕
|
0.3%
|
571
|
3.9%
|
522
|
3.5%
|
欠損金7011億円
|
緑資源機構
(林道等勘定)のうち長期貸付金及び割賦売掛金
|
1,415
|
-
|
0%
|
1
|
0.1%
|
1
|
0.1%
|
欠損金なし
|
水資源機構のうち割賦元金
|
9,865
|
-
|
0%
|
-
|
0%
|
-
|
0%
|
欠損金なし
|
鉄道建設・運輸施設整備支援機構(建設勘定)のうち割賦債権
|
14,077
|
-
|
0%
|
-
|
0%
|
-
|
0%
|
欠損金なし
|
鉄道建設・運輸施設整備支援機構(助成勘定)のうち割賦債権及び貸付金
|
65,468
|
-
|
0%
|
-
|
0%
|
-
|
0%
|
欠損金なし
|
資産等承継前後で比較すると、貸倒引当金計上額の総額は51億円から1255億円へと約24倍に増加し、引当率は法人平均で0.2%から9.1%へ上昇している。これを法人別にみると、貸倒引当金の積増しが最も大きいのは都市再生機構(都市再生勘定)の522億円であり、引当率の上昇が最も大きいのは鉄道建設・運輸施設整備支援機構(船舶勘定)の29.7ポイントとなっている。
なお、環境再生保全機構では、開始貸借対照表において貸倒引当金の積増しにより生じた損失等に対応した財務処理として、未収財源措置予定額356億円を計上している。
以上のように、政策金融法人8法人10勘定及び社会資本整備法人6法人10勘定においては、独立行政法人会計基準の適用により、将来の貸倒見積高を反映した貸倒引当金が計上されることとなった。しかし、これに伴い、貸倒引当金の積増しにより生じた損失等を解消できずに欠損金を計上していたり、未収財源措置予定額を計上したりしている法人も見受けられることから、今後の決算及び財政負担の推移について注視していくこととする。
12年度以降、組織形態に変更がない政策金融法人9法人(注36)
のうち、商工組合中央金庫は従前から企業会計原則に基づいて貸倒引当金を算定しており、残る8法人においては、12年度決算から企業会計原則に準拠した会計処理を適用した行政コスト計算財務書類を作成するなど、説明責任の確保と透明性の向上のための取組がなされているものの、法定財務諸表における貸倒引当金の算定は、従来の基準のままである。
これらの9法人については、前記のとおり、住宅金融公庫については特殊法人等整理合理化計画に基づいて19年4月に独立行政法人化が予定されており、それ以外の国民生活金融公庫ほか7公庫等についても、現在政策金融改革が進められている。
また、行政改革推進法においては、商工組合中央金庫及び日本政策投資銀行について完全民営化、公営企業金融公庫は廃止、その他の法人は特別の法律により特別の設立行為をもって設立される株式会社又は独立行政法人等の組織形態を採る一の政策金融機関に統合するなどの措置を、20年度より順次講ずることとされている。
そこで、商工組合中央金庫を除く8法人における貸倒リスクの状況をみるため、法定貸借対照表と行政コスト計算財務書類の民間企業仮定貸借対照表のそれぞれに計上されている16年度末の貸倒引当金の額を比較すると、表23のとおりとなっている。
表23 平成16年度の法定貸借対照表と民間企業仮定貸借対照表に計上された貸倒引当金の比較
(単位:億円)
法人名(勘定名)
|
16年度法定貸借対照表貸付金残高〔1〕
|
16年度法定貸借対照表貸倒引当金(A)
|
16年度民間企業仮定貸借対照表貸倒引当金(B)
|
増減(B-A)
|
16年度民間企業仮定貸借対照表における利益金、損失金の状況
|
|||
金額〔2〕
|
引当率
〔2〕/〔1〕
|
金額
|
引当率注(3)
|
金額
|
引当率
|
|||
補給金型(6勘定計)
|
881,850
|
4,481
|
0.8%
|
15,866
|
2.5%
|
11,385
|
1.8%
|
|
中小企業金融公庫
(融資勘定)
|
74,341
|
181
|
0.2%
|
4,186
|
5.6%
|
4,004
|
5.3%
|
欠損金4331億円
|
国民生活金融公庫
|
95,500
|
271
|
0.3%
|
3,979
|
4.2%
|
3,708
|
3.9%
|
欠損金4897億円
|
沖縄振興開発金融公庫
|
13,726
|
48
|
0.3%
|
249
|
1.8%
|
201
|
1.4%
|
欠損金223億円
|
住宅金融公庫
|
553,039
|
123
|
0.0%
|
5,249
|
0.9%
|
5,126
|
0.9%
|
欠損金5372億円
|
農林漁業金融公庫 注(4)
|
31,838
|
190
|
0.6%
|
376
|
1.1%
|
185
|
0.5%
|
欠損金371億円
|
国際協力銀行
(海外経済協力勘定)
|
113,404
|
3,666
|
3.2%
|
1,825
|
1.7%
|
△1,841
|
△1.5%
|
欠損金3152億円
|
非補給金型(4勘定計)
|
571,848
|
4,393
|
1.1%
|
9,244
|
2.1%
|
4,851
|
1.0%
|
|
日本政策投資銀行 注(4)
|
139,655
|
418
|
0.3%
|
3,851
|
2.7%
|
3,432
|
2.4%
|
利益剰余金6529億円
|
国際協力銀行 注(4)
(国際金融等勘定)
|
84,997
|
460
|
0.5%
|
1,879
|
2.0%
|
1,419
|
1.4%
|
利益剰余金6138億円
|
公営企業金融公庫
|
250,240
|
-
|
0%
|
-
|
0%
|
-
|
0%
|
利益剰余金2兆4536億円
|
商工組合中央金庫 注(5)
|
96,954
|
3,513
|
3.6%
|
3,513
|
3.6%
|
-
|
0%
|
|
商工組合中央金庫を除く計8法人(9勘定計)
|
1,356,744
|
5,360
|
0.6%
|
21,597
|
2.2%
|
16,236
|
1.6%
|
|
総計9法人(10勘定計)
|
1,453,698
|
8,874
|
0.9%
|
25,111
|
2.4%
|
16,236
|
1.4%
|
9法人の貸倒引当率をみると、国際協力銀行(海外経済協力勘定)は、法定貸借対照表の方が高く、公営企業金融公庫、商工組合中央金庫は同率であるが、これ以外はいずれも法定貸借対照表の方が低くなっており、引当率は全体では1.4ポイントも低水準である。そして、上記8法人の貸倒引当金計上額の総額は、法定貸借対照表では5360億円であるのに対し、民間企業仮定貸借対照表では2兆1597億円となっていて、法定貸借対照表の金額を1兆6236億円上回る額となっている。
したがって、これら8法人が、今後の政策金融改革等により民間会計基準等に移行する場合には、前記の独立行政法人に移行した政策金融法人等の場合と同様に、会計基準の変更に伴う貸倒引当金の積増しに対応した財務処理が必要になることが予測されることから、今後、これに伴う財政負担の発生の有無についても注視していくこととする。
12年度報告において、繰上償還による貸付金回収額(以下「繰上償還回収額」という。)の増加が政策金融法人の財務に及ぼす影響について記述した。
繰上償還が発生すると、資金の運用期間は短期化するとともに、貸付金の満期までに得られるはずの利息収入が得られなくなる。また、繰上償還により回収された資金は、当該資金の貸付時点より市中金利が低下している場合、当初の貸付金利より低い金利による新規貸付けの財源となるが、既往の調達金利は高いままであることから、金利の逆ざやによる損失が将来にわたって発生することになる。
このため、政策金融法人では、繰上償還に伴う金利リスクを回避するため、9法人(注37)
において、借受者が任意の繰上償還を行う場合はこれにより逸失した金利収入の全部又は一部を補う補償金(以下「繰上弁済補償金」という。)を徴収する制度を導入するなどの措置を13年度までに講じている。
一方、12年度報告においても記述したとおり、9年度から順次、補償金を支払うことを条件に、財政融資資金特別会計(12年度以前は資金運用部。以下、本項において「国」という。)に財政融資資金を任意に繰上償還をすることが可能となっており、11年度以降、借受者からの繰上償還によって生じた手元資金等を原資として、国に繰上償還(任意の繰上償還。以下同じ。)が行われている。
そこで、12年度から16年度までの間において財政融資資金に係る借入残高(政府引受債によるものを除く。)を有する12法人13勘定(注38)
について、当該期間の繰上償還回収額と財政融資資金の繰上償還額との関係を示すと、表24のとおりとなっている。
(注37)
|
9法人 別表1参照
。なお、このほかに奄美群島振興開発基金が平成17年度より導入している。
|
(注38)
|
12法人13勘定 別表2参照
|
表24 各法人の繰上償還回収額と財政融資資金の繰上償還額の状況
(単位:億円)
法人名(勘定名)
|
12年度
|
16年度
|
12〜16年度合計
|
比率(B)/(A)
|
|||
借受者からの繰上償還回収額
|
国への繰上償還額
|
借受者からの繰上償還回収額
|
国への繰上償還額
|
借受者からの繰上償還回収額(A)
|
国への繰上償還額(B)
|
||
補給金型法人 10勘定
|
|||||||
住宅金融公庫
|
55,997
|
-
|
48,814
|
8,775
|
310,603
|
37,304
|
12.0%
|
国民生活金融公庫
|
7,744
|
-
|
8,266
|
-
|
41,690
|
-
|
0%
|
中小企業金融公庫(融資勘定)
|
3,607
|
-
|
2,746
|
-
|
16,301
|
-
|
0%
|
農林漁業金融公庫 注(1)
|
2,079
|
-
|
2,265
|
420
|
11,953
|
420
|
3.5%
|
沖縄振興開発金融公庫
|
1,057
|
-
|
770
|
-
|
4,417
|
-
|
0%
|
福祉医療機構(一般勘定)
|
604
|
9
|
788
|
60
|
4,069
|
155
|
3.8%
|
国際協力銀行(海外経済協力勘定)
|
184
|
-
|
976
|
-
|
3,933
|
-
|
0%
|
日本学生支援機構のうち有利子貸与事業
|
158
|
-
|
247
|
-
|
1,176
|
-
|
0%
|
雇用・能力開発機構(一般勘定)のうち雇用促進融資に係る債権管理事業
|
33
|
-
|
27
|
-
|
175
|
-
|
0%
|
労働者健康福祉機構のうち労働安全衛生融資に係る債権管理事業
|
22
|
-
|
13
|
-
|
83
|
-
|
0%
|
非補給金型法人 3勘定
|
|||||||
国際協力銀行(国際金融等勘定)
|
5,107
|
-
|
2,915
|
2,215
|
19,427
|
4,081
|
21.0%
|
日本政策投資銀行
|
3,005
|
1,000
|
3,064
|
1,700
|
14,760
|
8,800
|
59.6%
|
日本私立学校振興・共済事業団(助成勘定のうちの一般経理)
|
148
|
-
|
83
|
3
|
683
|
3
|
0.5%
|
(参考)
|
|||||||
商工組合中央金庫
|
1,730
|
/
|
1,987
|
/
|
9,457
|
/
|
/
|
公営企業金融公庫 注(1)
|
1,574
|
/
|
1,334
|
/
|
5,275
|
/
|
/
|
雇用・能力開発機構(財形勘定)
|
285
|
/
|
452
|
/
|
1,981
|
/
|
/
|
奄美群島振興開発基金(うち出融資業務)
|
6
|
/
|
5
|
/
|
29
|
/
|
/
|
注(1)
|
借換えによる回収を含む。
|
注(2)
|
〔12〜16年度合計〕(A)欄の金額の大きい法人順に記載した。
|
注(3)
|
参考とした法人は財政融資資金の借入れがない。
|
補給金型法人と非補給金型法人を比較すると、繰上償還回収額に対する国への繰上償還額の比率は、補給金型法人10勘定は0%から12.0%となっていて、このうち7法人については繰上償還の実績がないのに対して、非補給金型法人3勘定は0.5%から59.6%と相対的に高くなっている。
これは、財政融資資金の繰上償還を行うことができるのは、補償金の支払が繰上償還と同時に確実に行われる見込みがあると認められる場合に限られているため、収支差の補助金等を受け入れている補給金型法人については、国への補償金支払額に見合う繰上弁済補償金等の収入がなければ、繰上償還を行うことが困難であることなどによる。ただし、前記のとおり、財政融資資金の繰上償還は上記のとおり補償金の支払が前提であるが、住宅金融公庫及び都市再生機構については、17年6月に、両法人の経営基盤を強化するため、例外的に補償金の支払なしに繰上償還を行うこととする立法措置がなされている。
なお、繰上償還回収金を含む貸付金回収額が借入金、債券等の償還額を上回った場合などに生じる手元資金については、財政融資資金の繰上償還を行うほか、外部調達資金の借入れを減少させるなど新規貸付金の財源としての活用が図られている。しかし、新規の貸出業務を廃止した場合、新規貸付金の財源としては活用ができず、繰上償還を行うことができなければ、手元資金が滞留するとともに、現状では、手元資金に係る金利の逆ざやによって財務状況の悪化を招くおそれがある。なお、これに関連して、雇用・能力開発機構の財務等に関して留意すべき事項を101ページ
に記載している。
無償資金型法人については、16年度末における検査対象8法人16勘定(注39) を対象として、出資事業資産のリスクの状況を検査するとともに、16年度末までに廃止された6勘定(注40) も含めて、欠損金の状況について検査した。
(注39)
|
8法人16勘定 別表2参照
|
(注40)
|
6勘定 基盤技術研究促進センター(うち他法人に承継した事業を除く)、国際協力事業団(うち海外移住事業)、中小企業総合事業団信用保険部門(中小企業信用保険事業・融資事業のうち融資事業)、情報処理振興事業協会(技術事業勘定)、通信・放送機構(衛星所有勘定)、情報処理推進機構(地域ソフトウェア教材開発承継勘定)
|
無償資金型法人の中には、国から受け入れた産投特会政府出資金等を主な財源として、研究開発等を行う事業会社、高度な研究開発のための研究施設の整備や開発技術の実践指導を行う施設の運営等を行う第3セクター等に対して出資を行う事業スキームの法人がある。そして、12年度報告では、このような事業スキームの法人においては、出資先会社の事業が収益に結びつかない場合、出資先会社に欠損金が累積するが、出資先会社が清算されるまでは法人の出資金は資産計上されたままとなり、出資先会社が清算されて初めて法人に損失金が発生する可能性があることを記述した。
その後、特殊法人等改革により独立行政法人化された無償資金型法人においては、資産等承継に際して、出資先会社への出資により取得した関係会社株式(注41)
、投資有価証券等の価額について、独立行政法人会計基準に基づく資産評価が行われた。そして、関係会社株式の評価については、出資先会社の財務諸表を基礎とした純資産額に持分割合を乗じて算定した実質価額と出資時の株式取得価額のいずれか低い方を貸借対照表価額とすることとされたことから、関係会社株式の実質価額が下落した場合には、当該出資に係る資産の額が減少することとなった。
そこで、前記の8法人16勘定のうち、独立行政法人化に伴う資産等承継に際して、関係会社株式の資産評価が行われた無償資金型法人6法人7勘定(注42)
について、旧法人の最終貸借対照表と新規設立法人である独立行政法人の開始貸借対照表により、法人の主たる事業資産である関係会社株式に係る価額の増減状況を示すと、表25のとおりである。
(注41)
|
関係会社株式 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号)に定める関係会社に該当する会社の株式
|
(注42)
|
6法人7勘定 別表2参照
|
表25 独立行政法人化に伴う関係会社株式の価額の増減の状況(無償資金型法人)
(単位:億円)
法人名(勘定名)
|
関係会社株式
|
最終貸借対照表産投特会政府出資金残高
<16年度末産投特会政府出資金残高>
|
16年度末資本金
<16年度末剰余金、△欠損金>
|
|||
最終貸借対照表計上額(A)
|
開始貸借対照表計上額(B)
|
開差額(B)-(A)
|
比率(B)/(A)
|
|||
新エネルギー・産業技術総合開発機構(鉱工業承継勘定)
|
8
|
1
|
△6
|
21.4%
|
183
<183>
|
183
<△7>
|
新エネルギー・産業技術総合開発機構(研究基盤出資経過勘定)
|
61
|
20
|
△40
|
32.8%
|
95
<95>
|
95
<△65>
|
情報通信研究機構
(出資勘定)
|
27
|
14
|
△12
|
52.3%
|
53
<53>
|
53
<△24>
|
医薬品医療機器総合機構(承継勘定)
|
284
|
8
|
△275
|
3.0%
|
306
<306>
|
306
<△254>
|
農業・生物系特定産業技術研究機構(民間研究促進業務勘定)
|
278
|
22
|
△256
|
7.9%
|
320
<322>
|
362
<△268>
|
情報処理推進機構(地域事業出資業務勘定)
|
69
|
56
|
△13
|
80.9%
|
40
<40>
|
90
<△19>
|
中小企業基盤整備機構
(出資承継勘定)
|
24
|
11
|
△12
|
49.7%
|
210
<78>
|
88
<△10>
|
合計
|
753
|
134
|
△618
|
17.9%
|
1,208
<1,078>
|
1,170
<△649>
|
関係会社株式の承継前価額753億円は、実質価額の下落により、承継後には134億円となっていて、承継前価額の17.9%にまで減少している。これを法人(勘定)別にみると、承継後価額が最も減少しているのは、医薬品医療機器総合機構(承継勘定)の275億円であり、出資先会社が多額の累積欠損金を抱えていたことから、純資産額の減少が著しく、承継前価額の3.0%と大幅に減少している。
これらの評価損等により生じた損失は欠損金として承継され、承継法人の財務に大きな影響を与えている。
すなわち、6法人7勘定は、16年度決算においていずれも欠損金を計上しており、資本金総額1170億円の55.5%に相当する649億円となっていることから、今後の収支の動向について注視していくこととする。特に、このうち法令により勘定を廃止することが決定されている3法人4勘定(注43)
については、勘定廃止に際して、産投特会政府出資金の回収状況を注視していくこととする。
なお、このほかに、社会資本整備法人に分類されている石油天然ガス・金属鉱物資源機構(金属鉱業備蓄・探鉱融資等勘定)においても、産投特会政府出資金を財源とした関係会社株式を有するため、上記無償資金型法人と同様のリスクを抱えている。同機構の資産等承継時における関係会社株式の価額の増減の状況を示すと、表26のとおり、承継前価額の2.4%へと大幅に減少しており、評価損55億円等により生じた損失は、産投特会政府出資金の償却(46億円)などにより処理されている。
表26 独立行政法人化に伴う関係会社株式の価額の増減の状況(社会資本整備法人)
(単位:億円)
法人名(勘定名)
|
関係会社株式
|
最終貸借対照表産投特会政府出資金残高
<16年度末産投特会政府出資金残高>
|
16年度末資本金
<16年度末剰余金、△欠損金>
|
|||
最終貸借対照表形上額(A)
|
開始貸借対照表形上額(B)
|
開差
(B)-(A)
|
比率
(B)/(A)
|
|||
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(金属鉱業備蓄・探鉱融資等勘定)
|
56
|
1
|
△55
|
2.4%
|
229
<182>
|
182
<4>
|
また、出資先会社の決算状況によっては、再び関係会社株式に係る評価損が生じることなどもあり得ることから、出資事業資産のリスクについては、今後も注視していくこととする。
12年度報告では、科学技術・情報通信関係の基盤整備や基礎研究の振興などの研究開発等の事業を実施している法人において多額の欠損金が累積している状況について記述した。これは、無償資金型法人の事業スキームが、研究開発等の事業に限らず、重要な意義、高い公共性を有する一方で、リスクも大きく事業収益の確保が厳しい事業を対象としていることによるものである。
その後、12年度における無償資金型法人16勘定(注44)
は、特殊法人等改革等による事業の改廃により、前記(2)のとおり、16年度末までに6勘定が既に廃止される一方、勘定の分割や新規事業の開始による勘定の新設が行われ、16年度においても同数の16勘定となっている。
そこで、無償資金型法人に係る欠損金の状況には、12年度から16年度までの間に、財投事業の改廃によりどのような変化が生じているか検査した。
まず、上記16勘定の12年度と16年度の損益の状況を示すと、表27のとおりであり、当期利益金を計上した勘定は、12年度6勘定、16年度5勘定で、共に全勘定の3分の1程度となっている。ただし、これらの勘定が当期利益金を計上しているのは、両年度共に、主に有価証券利息等の事業外収益によるものである。
区分
|
12年度
|
16年度
|
検査対象勘定数
|
16勘定
|
16勘定
|
当期利益金計上勘定数
|
6勘定 注(1)
|
5勘定 注(3)
|
当期損失金計上勘定数
|
9勘定 注(2)
|
11勘定 注(4)
|
次に、これら16勘定の12年度から16年度までの間の累積欠損金の総額の推移を示すと、表28のとおりとなっていて、累積欠損金の総額は12年度から14年度にかけて約3倍に増加し、15年度には半分以下に減少したものの、16年度には再び増加している。
表28 累積欠損金の推移
(単位:億円)
区分
|
12年度末
|
13年度末
|
14年度末
|
15年度末
|
16年度末
|
|
対象勘定数
|
16勘定
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18勘定
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18勘定
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18勘定
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16勘定
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累積欠損金 注(2)
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1,327
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2,380
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4,271
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1,981
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2,511
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うち委託事業に係る累積欠損金 注(3)
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-
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37
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209
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469
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696
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累積欠損金の増減の大きな要因となっているのは、基盤技術研究促進センターに係る累積欠損金であり、12年度247億円、13年度1112億円、14年度2774億円と大幅に増加した後、15年4月に、同センターが廃止されたことから、15年度の累積欠損金の総額は大幅に減少している。
また、もう一つの増加要因は、13年度以降、新たな事業スキームとして、民間企業等による基盤技術の研究を支援するための委託事業が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(基盤技術研究促進勘定)及び情報通信研究機構(基盤技術研究促進勘定)においては13年度から、ベンチャー企業等による実用化段階の研究を支援するための委託事業が、医薬品医療機器総合機構(研究振興勘定)においては16年度から、それぞれ開始されたことによるものである。
この研究開発に係る委託事業は、上記の研究に対する委託費として企業等に研究資金を供給し、研究終了後に研究成果により収益又は売上が生じたときに、その一部を納付させて資金回収を行う事業スキームとなっている。このため、費用計上から収益又は売上が生じるまでの期間は資金回収が行われない収支構造であることから、事業開始当初は、欠損金が発生し、委託事業に係る累積欠損金は、上記表28のとおり、13年度以降毎年度増加する状況となっている。
このように、無償資金型法人においても、関係会社株式や委託事業に起因する固有のリスクを抱えていることから、今後、上記の委託事業に係る収支の推移については注視していくこととする。