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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 文部科学省|
  • 平成17年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

国立大学法人の附属病院に係るセグメント情報について


国立大学法人の附属病院に係るセグメント情報について

(平成17年度決算検査報告参照)

1 本院が表示した意見

(検査結果の概要)

 国立大学法人の財務諸表のうち附属明細書に記載されているセグメント情報については、「国立大学法人会計基準及び国立大学法人会計基準注解に関する実務指針」(平成15年7月国立大学法人会計基準等検討会議。以下「実務指針」という。)において、附属病院を有するすべての国立大学法人において共通にセグメント情報を開示する取扱いとするとされており、附属病院の財務情報を正しく開示することは、附属病院のみならず各国立大学法人全体の運営を考慮したり、評価を行ったりする上でも重要なこととなっている。
 そこで、正確性等の観点から、附属病院に係るセグメント情報が統一的な方法で把握され表示されているかなどに着眼して検査したところ、セグメント情報として開示されている業務費用、業務収益及び帰属資産について、それぞれ次のように計上内容が区々となっている事態が見受けられた。

(1) 業務費用について

ア 教員人件費について

 教員人件費については、〔1〕附属病院に所属する教員に係る人件費のみを附属病院のセグメントに計上しているもの、〔2〕〔1〕に加え、医学部等所属教員が診療に従事した際の手当等一部の人件費を計上しているもの、〔3〕〔1〕に加え、医学部等所属教員のうち診療従事者の人件費をすべて計上しているものがあり、各法人によって計上内容が区々となっていた。

イ 職員人件費について

 職員人件費については、附属病院の業務に従事している事務職員の人件費を当該附属病院に所属している、いないにかかわらず附属病院のセグメントに職員人件費として計上していたり、事務職員のうち附属病院の業務に従事しているが附属病院に所属していない者の人件費を計上していなかったりしていて、各法人によって計上内容が区々となっていた。

ウ 徴収不能引当金繰入額について

 国から承継した平成15年度以前の診療報酬債権については、承継に当たって徴収不能引当金を設定することとなるが、その繰入額を附属病院のセグメントに計上していなかったり、計上していたりしていて、各法人によって計上内容が区々となっていた。

(2) 業務収益について

ア 運営費交付金収益について

 運営費交付金収益については、附属病院の事業に要する額として見積もった額を計上していたり、附属病院に所属している教職員の人件費等の額を計上していたりなどしていて、各法人によって計上方法が区々となっていた。

イ 附属病院収益について

 国から承継した15年度以前の診療報酬債権のうち、保険者等への請求又は再請求を保留していたもの等に係る附属病院収益については、〔1〕附属病院のセグメントに計上していないもの、〔2〕一部を計上しているもの、〔3〕すべてを計上しているものがあり、各法人によって計上内容が区々となっていた。

(3) 帰属資産について

ア 土地及び建物について

 土地及び建物については、附属病院の活動に係ると思料される施設の土地及び建物を附属病院のセグメントに計上していなかったり、附属病院以外の医学部等が恒常的に使用している施設の土地及び建物を計上していたりしていて、各法人によって計上内容が区々となっていた。

イ 預金について

 預金については、〔1〕預金は法人全体で管理しているとして、附属病院のセグメントに計上していないもの、〔2〕診療報酬の入金額を一時的に管理する口座の残高などを計上しているもの、〔3〕〔2〕に加え、法人本部で管理している附属病院に係る寄附金の残高についても計上しているものがあり、各法人によって計上内容が区々となっていた。

  このような事態が生じているのは、各国立大学法人において、16事業年度が初めての財務諸表の作成であったことにもよるが、文部科学省において、一定の事項については、財務情報の比較可能性の確保という視点から、各国立大学法人が会計経理を行うに際して、統一的な取扱いを行うための指針等の整備及び情報提供が必要であるのに、これらを十分に行っていなかったことなどによると認められた。

(検査結果により表示した意見)

 本院は、各国立大学法人における経年比較を可能とするほか、各国立大学法人間における財政状態及び運営状況の比較可能性を確保するとともに、今後の国立大学法人の適正かつ健全な会計経理を一層推進するよう、次のとおり、文部科学大臣に対し18年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
ア 実務指針をより明確なものとするよう実務指針等の整備を行うこと
イ 統一的な取扱い及び適切な処理を行うための情報提供を積極的に行うなどして、各国立大学法人がセグメント情報に実態を反映した額を計上すること

2 当局が講じた処置

 本院は、文部科学省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
 検査の結果、文部科学省では、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 19年3月に実務指針を改訂し、教員人件費及び職員人件費については勤務実態を反映した額を計上し、運営費交付金収益については附属病院において使用されると考えられるものに関する収益化額を計上するなど、セグメント情報の計上内容に関する統一的な取扱いをより明確なものとするなどし、また、改訂内容を補足する事務連絡を発出して、実務指針等の整備を図った。
イ 統一的な取扱い及び適切な処理を行うための実務指針改訂の趣旨等に関する説明会を開催するなどして情報提供を行い、各国立大学法人がセグメント情報に実態を反映した額を計上するよう周知徹底を図った。