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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 厚生労働省|
  • 平成17年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構に出資された物品の時価評価額の算定について


独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構に出資された物品の時価評価額の算定について

(平成17年度決算検査報告参照)

1 本院が求めた是正改善の処置

(検査結果の概要)

 社会保険庁では、年金の福祉施設及び政府管掌健康保険の保健・福祉施設(以下「年金・健康保険福祉施設」という。)を多数設置・運営してきたが、これらの年金・健康保険福祉施設については、近年の年金制度等を取り巻く厳しい財政状況等にかんがみ整理合理化を行うこととされ、平成17年10月に設立された独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(以下「機構」という。)において譲渡等を行うため、機構に出資することとされた。そして、機構成立時において政府から出資される政府出資金の額は、機構の成立の日現在の時価評価額とするとされていた。
 このうち、国有の物品(電話加入権等の無形固定資産を含む。以下「国有物品」という。)の時価評価額については、物品管理簿上の取得価格を基に税法上の減価償却を適用するなどして算定することとしており、各地方社会保険事務局では、物品管理簿と現有の国有物品を突合・確認の上、社会保険庁が表計算ソフトにより作成した「物品減価償却試算表」(以下「試算表」という。)に、対象となる国有物品のデータを入力して、国有物品ごとに時価評価額を算定することとされていた。
 そこで、正確性等の観点から、機構に出資された国有物品の時価評価額が適正に算定されているかなどに着眼して検査したところ、社会保険庁では、国有物品のうち美術品等については減価償却を行わない資産に該当するものとしていることから、美術品等の時価評価額を算定するに当たっては、試算表において、減価償却の計算を行わない計算式とすべきであるのに、既に耐用年数が経過したものとして減価償却の計算を行う計算式を設定していた。このため美術品等の時価評価額は残存価格である取得価格の10%となり、減価償却の計算を行わない場合と比べて過小となっていた。
 また、国有物品の時価評価額を算定するに当たり、室内装飾品等としていたものの中には、取得価格が高額な絵画、彫刻等が相当数見受けられ、これらの中には、美術品等として減価償却の計算を行う必要のないものがあると認められた。したがって、室内装飾品等とされた絵画、彫刻等については、美術品等に該当するかどうかを確認し、時価評価額について必要な修正を行う要があると認められた。
 このような事態が生じているのは、主として、社会保険庁において試算表を作成して各地方社会保険事務局に送付する際に、十分確認していなかったことなどによると認められた。

(検査結果により求めた是正改善の処置)

 社会保険庁においては、機構に対して今後も年金・健康保険福祉施設及び厚生年金病院の追加出資を予定しており、国有物品の時価評価額を正しく算定することが求められることから、社会保険庁において政府出資金の額を適切なものとするよう、次のとおり、社会保険庁長官に対し18年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
ア 本院の指摘により判明した時価評価額に係る誤りを修正して適正なものにすること
イ 修正した時価評価額を基に評価委員による再評価を受けるなどして政府出資金の額等を適切なものに改めること、及び、これに基づき修正した政府出資金の額を機構に通知すること
ウ 今後機構に追加出資する年金・健康保険福祉施設等の国有物品の時価評価額の算定に当たり、同様の事態が生じないよう、算定方法を改善するとともに美術品等の適切な評価について周知徹底を図ること

2 当局が講じた処置

 本院は、社会保険庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
 検査の結果、社会保険庁では、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 出資した国有物品について、各地方社会保険事務局を通じて再確認を行い、美術品等の対象となる物品を特定した上で、時価評価額の見直しを行った。
イ 資産評価委員会において見直し後の時価評価額を確定し、その結果を機構に通知するとともに、18年度決算において政府出資金等の修正処理を行った。
ウ 今後の機構への追加出資において同様の事態が生じないよう、美術品等の評価基準等について事務連絡を発し周知徹底した。