林野庁では、国有林野事業特別会計所属の行政財産である国有林野を国道(道路法(昭和27年法律第180号)に基づく一般国道をいう。以下同じ。)の道路敷として使用させる場合には、国道の管理を道路整備特別会計において行う国土交通省に対して、原則として所管換をすることとしている。また、同省の事務又は事業の遂行上、所管換の手続前に、又は臨時に一定期間に限って国有林野を使用させる必要がある場合には使用承認をすることとしている。
そして、所管換は、森林管理署が所管換を受けようとする部局等から所管換の協議を受け、森林管理局がこれを行うこととなっている。また、使用承認は、使用しようとする部局等から申請書を提出させ、森林管理署がこれを行うこととなっている。
異なる会計間において所管換又は使用承認をする場合には、国有財産法(昭和23年法律第73号。以下「法」という。)等の規定により、財産価額が3000万円以上のものは有償によることとなっている。また、財産価額が3000万円に達しないものについては、所管換又は使用承認を有償とするか無償とするかについて、それぞれの会計の長が決定することとなっている。
林野庁では、平成9年に、使用承認をしているすべての国道の道路敷について財産価額の調査を行い、財産価額が3000万円以上の36路線に係る国有林野及び財産価額が3000万円に達しない183路線に係る国有林野について、早期に有償により所管換をすることとし、所管換までの間は有償による使用承認とすることとしている。
そこで、合規性等の観点から、国道の道路敷となっている国有林野の所管換及び使用承認の取扱いについて、法の規定に基づき適切に所管換等がされているか、また、所管換等をする場合には、道路管理者と十分協議し、有償によることとして、国有林野事業特別会計の独立性に影響を及ぼすことがないよう取り扱われているかに着眼して9森林管理局管内の国有林野について検査した。
検査したところ、5森林管理局管内の財産価額が3000万円以上の路線に係る約558万m2
及び9森林管理局管内の財産価額が3000万円に達しない路線に係る約624万m2
について、有償による所管換がされていなかったり、これらの一部について無償のまま使用承認が継続されていたりしている事態が見受けられた。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められた。
ア 森林管理局及び森林管理署において、法の規定に関する認識が十分でなく、所管換までの期間中の使用承認の更新の際、使用承認を有償へ切り替える取扱いが十分徹底されていなかったこと
イ 使用承認をしている路線に関係する森林管理局と国土交通省の地方整備局(北海道開発局を含む。)との間及び森林管理署と道路管理者(指定区間内については国土交通大臣、指定区間外については都道府県等をいう。以下同じ。)との間において、計画的な所管換をするための定期的な連絡調整を行う場が設けられていなかったこと
林野庁では、本院の検査の進行に伴い、国道の道路敷として使用承認をしている国有林野の取扱いについて、国土交通省と協議し、森林管理署及び道路管理者間の定期的な連絡調整の場を設け、所管換に係る年次計画の策定等の措置を講ずることで同省と合意するなどした。
本院は、林野庁において、森林管理局及び森林管理署に対し、法の規定に基づく取扱いの徹底を図るなどし、更に次のような処置を講じて、有償による所管換の推進及び無償による使用承認の早期解消を図るよう、林野庁長官に対し15年11月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により改善の処置を要求した。
ア 森林管理署において、現に国道の道路敷として使用承認をしている国有林野であって財産価額が3000万円以上のものについて、道路管理者と引き続き協議して、法の規定により早期に有償により所管換をするよう年次計画を策定すること
イ 森林管理署において、現に国道の道路敷として使用承認をしている国有林野であって財産価額が3000万円に達しないものについて、道路管理者と引き続き協議して、国有林野事業特別会計の独立性に影響を及ぼすことなく早期に有償により所管換をするよう年次計画を策定すること
本院は、林野庁、森林管理局及び森林管理署において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、林野庁では、本院指摘の趣旨に沿い、国土交通省と引き続き協議してきた。また、森林管理署では、同省との合意に基づき、道路管理者との定期的な連絡調整の場において年次計画の策定に関し協議するなどしてきた。そして、19年8月末までに、すべての森林管理局管内の森林管理署において、次のような処置を講じていた。
ア 森林管理署では、道路管理者と協議を進めた結果、財産価額が3000万円以上の39路線(注)
に係る約691万m2
のすべてについて、21年度までに有償による所管換を行うなどとする年次計画を策定した。
イ 森林管理署では、道路管理者と協議を進めた結果、財産価額が3000万円に達しない195路線(注)
に係る約924万m2
のすべてについて、21年度までに有償による所管換を行うなどとする年次計画を策定した。