ページトップ
  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 農林水産省|
  • 平成17年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

土地改良負担金総合償還対策事業における土地改良負担金対策資金の資金規模について


土地改良負担金総合償還対策事業における土地改良負担金対策資金の資金規模について

(平成17年度決算検査報告参照) 

1 本院が要求した改善の処置

(検査結果の概要)

 農林水産省では、平成2年度から、国庫補助事業により、土地改良負担金総合償還対策事業(以下「総合償還対策事業」という。)を実施することとし、財団法人全国土地改良資金協会(以下「資金協会」という。)を事業主体として、資金協会に土地改良負担金対策資金(以下「対策資金」という。)を造成し、土地改良負担金に係る借入金の償還が困難な土地改良区を対象に、借換資金の利子補給を行うなどすることとした。
 そして、同年度以降、総合償還対策事業として、土地改良負担金償還平準化事業(以下「平準化事業」という。)等の5事業を実施してきている。
 そこで、有効性等の観点から対策資金の資金規模が将来の資金需要に対応したものとなっているかなどに着眼して検査したところ、国は、2年度から12年度までの間において、資金協会に対して計2000億円の国庫補助金を交付していて、資金協会では、このうち1999億5000万円については、これを対策資金に充当していた。一方、16年度までに対策資金から交付された利子補給金等は計841億余円、また、対策資金の運用益は500億余円に上っていた。この結果、16年度末における対策資金の資金残高は1658億余円となっていた。
 平準化事業は対象地区の認定期間が16年度で終了していることなど、5事業の今後の実施については、把握が可能なものとなっていた。そこで、17年度以降に資金協会から交付されることとなる利子補給金等について推計するなどしたところ、330億余円と推計された。
 また、平準化事業における17年度以降の利子補給金交付額は今後の借換資金の借入金利が上昇した場合上記の推計金額よりも増加することとなるが、一方で対策資金の運用金利も上昇して運用益も増加することとなることなどから、仮に対策資金の保有規模を相当程度縮小したとしても、今後の金利動向が資金協会の事業の遂行に大きな影響を及ぼすおそれは少ないものと見込まれた。
 したがって、資金協会において現行の規模の対策資金を今後とも保有することにより、対策資金に多額の余裕資金が継続して生じることが想定される事態は、対策資金が国庫補助金を原資としていることを考慮すると適切ではなく、改善の要があると認められた。

(検査結果により要求した改善の処置) 

 農林水産省において、対策資金の資金規模を資金需要に対応したものに改めるよう、次のとおり、農林水産大臣に対し18年7月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
ア 早急に今後の総合償還対策事業の実施に要する対策資金事業費について推計を行うなどして、資金需要に対応した対策資金の資金規模の把握を行うこと
イ 不測の冷災害、事業の見直し等に係る資金需要を勘案してもなお多額の余裕資金の発生が想定される場合には、対策資金の資金規模の縮小を図ること
ウ 事業実施期間が今後も長期に及ぶことから、事業実施要綱等に事業の途中における資金需要の見直しに関する規定を設けることとするなど、適時適切な資金規模の検討を行うために必要な体制の整備を図ること

2 当局が講じた処置

 本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
 検査の結果、農林水産省では、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 近年の農業・社会情勢等の変化を踏まえ事業内容を見直すなどして、19年度以降の総合償還対策事業に必要な資金規模を約1000億円と推計した。
イ 資金需要に対応した資金規模額約1000億円と18年度末の資金残高約1600億円の差額600億円については、21年度までの各年度に国庫へ返納して資金規模の縮小を図ることとした。そして、19年度返納分200億円については、19年9月25日までに国庫へ返納させた。
ウ 19年3月に事業実施要綱を改正し、事業の定期的な見直しや対策資金の使用見込みが低くなった場合の取扱いの検討等を内容とする指導監督基準を定め、適時適切な資金規模の検討を行うために必要な体制の整備を図った。