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  • 平成18年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第3節 特定検査対象に関する検査状況

福島、和歌山、宮崎各県における国土交通省所管の国庫補助事業に係る入札・契約の状況について


第7 福島、和歌山、宮崎各県における国土交通省所管の国庫補助事業に係る入札・契約の状況について

検査対象
(1)
(2)
(3)
福島県
和歌山県
宮崎県
検査の対象とした公共工事等の概要
地方公共団体が国土交通省から国庫補助金の交付を受けて実施する道路、河川、下水道等の公共工事及びこれらに係る測量、設計等の業務
検査の対象とした契約年度
平成16年度〜18年度
上記の検査対象に係る公共工事等の件数
(1)
 
(2)
 
(3)
 
公共工事
業務
公共工事
業務
公共工事
業務
公共工事
業務
498件
605件
363件
576件
835件
723件
1,696件
1,904件
 
上記の契約に係る契約金額
(1)
 
(2)
 
(3)
 
公共工事
業務
公共工事
業務
公共工事
業務
公共工事
業務
694億円
64億円
578億円
63億円
851億円
68億円
2123億円
195億円
(国庫補助金相当額366億円)
(国庫補助金相当額35億円)
(国庫補助金相当額311億円)
(国庫補助金相当額31億円)
(国庫補助金相当額502億円)
(国庫補助金相当額35億円)
(国庫補助金相当額1181億円)
(国庫補助金相当額102億円)

1 検査の背景

(1) 地方公共団体の公共工事等に係る入札・契約制度を巡る状況

 地方公共団体では、毎年度、国から国庫補助金の交付を受け、道路、河川、下水道等の公共工事及びこれらに係る測量、設計等の業務を多数実施している(以下、公共工事及び公共工事に係る業務を合わせて「公共工事等」という。)。そして、公共工事等に係る入札・契約制度については、これまで、公共工事等の入札を巡る談合・贈収賄事件の発生や国際的な建設市場の開放等を背景として、その透明性、競争性等を高めるための様々な取組が実施されてきた。
 すなわち、地方公共団体のうち都道府県及び政令指定都市(以下「都道府県等」という。)が発注する公共工事の入札・契約制度については、「公共工事の入札・契約手続の改善に関する行動計画」(平成6年1月閣議了解。以下「行動計画」という。)、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号。以下「入札契約適正化法」という。)等に基づき、予定価格が「政府調達に関する協定」(平成7年条約第23号。以下「政府調達協定」という。)等で定められた基準額である1500万SDR(注1) 以上の工事に適用される一般競争入札等の導入、工事発注に関する情報公表の拡充等による透明性の向上等の入札・契約の適正化に資する措置が執られてきた。そして、国土交通省においては、入札契約適正化法及び同法に基づき策定された「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(平成13年3月閣議決定。以下「適正化指針」という。)に基づき、総務省と共同して地方公共団体における公共工事の入札・契約の適正化を図るための措置状況を調査するとともに、その結果を踏まえて各地方公共団体に対し必要な措置を講じるよう要請してきている。また、公共工事に係る業務の入札・契約制度については、行動計画等に基づき、都道府県等が発注する予定価格150万SDR(注1) 以上の設計・コンサルティング業務(単独で発注される定型的な単純業務を除く。以下同じ。)について公募型プロポーザル方式(注2) 等の透明性、競争性等の高い入札・契約方式で調達を行うことが勧奨されてきている。
 そして、公共工事の入札・契約を巡る最近の状況を踏まえ、平成18年5月に適正化指針が改正され、公共工事の入札に関する談合について、その再発防止を図るという点から、国、特殊法人等及び地方公共団体の公共工事の発注者は、談合があった場合における受注者の賠償金支払義務を請負契約締結時に併せて特約すること(違約金特約条項の設定)等により、その不正行為の結果として被った損害額の賠償の請求に努めるものとするとされている。

 1500万SDR、150万SDR  SDRはIMF(国際通貨基金)の特別引出権(Special Drawing Rights)であり、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの加重平均方式により決定されている。邦貨換算額は2年ごとに見直されていて、1500万SDRは、平成16年度及び17年度24.3億円、18年度及び19年度24.1億円となっており、150万SDRは、16年度及び17年度、18年度及び19年度ともに2.4億円となっている。
 公募型プロポーザル方式  プロポーザル方式とは、当該業務の内容が技術的に高度なもの又は専門的な技術が要求されるものについて、技術提案書(プロポーザル)の提出を求め、技術的に最適な者を特定する手続をいい、これを公募により行うものを公募型プロポーザル方式という。

(2) 福島、和歌山、宮崎各県における官製談合事件の概要

 上記のような状況にあって、福島、和歌山、宮崎の各県(以下、これらを合わせて「3県」という。)が発注した計8件の公共工事等の入札に関し、18年9月以降、次のとおり、当時の県知事等が特定の共同企業体又は建設コンサルタントに落札させるために業者等と共謀して談合を行ったなどとして、刑法(明治40年法律第45号)第96条の3第2項の規定による談合罪等で起訴されるなどの事件(いわゆる官製談合事件)が相次いで発生した。これら8件の公共工事等のうち、1件は県が費用の全額を負担している単独事業であり、残り7件はいずれも国土交通省所管の国庫補助事業である。また、談合罪に係るものが7件、収賄罪に係るものが1件となっており、各事件の概要は次のとおりである。

ア 福島県

 東京地方検察庁は、福島県が16年10月に発注した「流域下水道整備工事」の技術評価型意向確認方式指名競争入札において、特定の共同企業体に落札させるための談合を行ったとして、18年9月、同県の元土木部長を競売入札妨害(談合)の容疑で逮捕するとともに、同年同月及び10月、当該工事を受注した建設業者の役員等4名を刑法第96条の3第2項の規定による談合罪で東京地方裁判所に起訴した。また、同検察庁は、18年11月、同県が12年10月に発注した「木戸ダム建設(本体)工事」の一般競争入札を巡り、特定の共同企業体が落札できるよう便宜を図った見返りに、当該工事を下請受注した建設業者から利益供与を受けたとして、当時の福島県知事等2名を刑法第197条の規定による収賄罪で同裁判所に起訴した。
 なお、上記の元土木部長については、逮捕の翌月に処分保留のまま釈放されている。また、上記建設業者の役員等4名のうち2名については、19年2月、東京地方裁判所から有罪判決(懲役1年及び1年6月、執行猶予付き)が下され、刑が確定しており、残りの2名及び収賄罪で起訴された上記の県知事等2名については、19年7月末現在、同裁判所において訴訟が係属中である。

イ 和歌山県

 大阪地方検察庁は、18年11月及び12月、和歌山県が16年12月に発注した「国道168号(仮称切畑1号トンネル)道路改築工事」等3件の公共工事の公募型指名競争入札において、特定の共同企業体に落札させるための談合を行ったとして、当時の同県知事及び同県出納長を刑法第96条の3第2項の規定による談合罪で大阪地方裁判所に起訴するとともに、当該工事を受注した建設業者の社員3名を含む関係者5名を同罪で起訴した。
 なお、上記の出納長及び当該工事を受注した建設業者の社員3名を含む関係者4名については、19年5月、大阪地方裁判所から有罪判決(懲役10月から2年、執行猶予付き)が下され、刑が確定している。また、上記の県知事及び残りの関係者1名については、19年7月末現在、同裁判所において訴訟が係属中である。

ウ 宮崎県

 宮崎地方検察庁は、18年12月、宮崎県が17年11月及び18年7月に発注した2件の橋りょう設計業務の従来型指名競争入札において、特定の建設コンサルタントに落札させるための談合を行ったとして、当時の同県知事及び当該業務を受注した建設コンサルタントの役員等計3名を刑法第96条の3第2項の規定による談合罪で宮崎地方裁判所に起訴した。また、同検察庁は、19年1月、同県が17年10月に発注した橋りょう設計業務(県単独事業)の従来型指名競争入札においても同様に談合を行ったとして、上記の同県知事及び建設コンサルタント役員を追起訴するとともに、同知事の起訴の対象となった17年10月及び11月に発注された2件の橋りょう設計業務の従来型指名競争入札において談合を行ったとして、当時の同県出納長を同罪で同裁判所に起訴した。
 なお、上記の県知事等4名については、19年7月末現在、宮崎地方裁判所において訴訟が係属中である。

(3) 入札談合等の不正行為に対する対応策

 3県では、表1のとおり、公共工事等の入札において談合等の不正行為の事実が確定した場合に、あらかじめ損害賠償の予約として、受注者に契約金額の一定割合を違約金として支払わせることとする違約金条項をそれぞれの契約書に設定している。

表1 違約金条項の導入状況
発注者
区分
導入時期
違約金の額
導入当初
現行
福島県
工事・業務
15年4月
契約金額の10%相当額
同20%相当額(19年2月〜)
和歌山県
工事・業務
14年5月
契約金額の10%相当額
同20%相当額(17年6月〜)
宮崎県
工事
15年4月
契約金額の10%相当額
同20%相当額(19年4月〜)
業務
18年7月

 今回の官製談合事件において談合罪に係る起訴の対象となった公共工事等は3県で計7件(公共工事4件、業務3件)あるが、このうち国土交通省所管の国庫補助事業は、表2に示した6件である。そして、宮崎県が業務に係る違約金条項を設定する以前の17年11月に契約した業務を除く5件については、それぞれの契約書において違約金条項が設定されており、談合罪で起訴された受注者(法人の場合はその役職員をいう。以下同じ。)の刑が確定すれば違約金を請求することが可能となる。

表2 談合罪に係る起訴の対象となった公共工事等の状況(国土交通省所管国庫補助事業分)
(金額:千円)
発注者
契約件名
入札・契約方式
契約日
最終契約金額(国庫補助金相当額)
契約の相手方
違約金条項
福島県
流域下水道整備工事
技術評価型意向確認方式指名競争
16.10.18
816,900
(408,450)
東急・佐藤特定建設工事共同企業体
和歌山県
国道371号(仮称平瀬トンネル)特殊改良一種工事
公募型指名競争
16.12.17
1,223,775
(611,887)
間・地崎・三友特定建設工事共同企業体
国道168号(仮称切畑1号トンネル)道路改築工事
公募型指名競争
16.12.17
1,237,740
(680,757)
東急・東亜・初島特定建設工事共同企業体
紀の川中流流域下水道(那賀処理区)那賀幹線管渠(シールド)工事
公募型指名競争
16.12.17
1,118,250
(559,125)
熊谷・日本国土・丸山特定建設工事共同企業体
宮崎県
平成17年度災害委託第1−AC号災害復旧事業(委託)
従来型指名競争
17.11.17
7,723
(3,622)
ヤマト設計(株)宮崎支店
平成17年度河川激特第2−L号麓川橋梁詳細設計業務
従来型指名競争
18.7.26
13,440
(7,392)
ヤマト設計(株)宮崎支店

 契約時に違約金条項が設定されていた5件の公共工事等のうち、19年7月末において談合罪で起訴された受注者の刑がすべて確定しているのは、前記のとおり、和歌山県が発注した3件の工事であり、これらの工事については違約金を請求することが可能であるが、福島、宮崎両県が発注した残り2件の公共工事等については受注者全員の刑が確定しておらず、まだ違約金を請求できる段階に至っていない。
 なお、和歌山県では、上記3件の公共工事について、違約金条項に基づく違約金の請求に代えて、受注者及びその他談合に関与した者も対象として、民法(明治29年法律第89号)に基づく損害賠償の請求を行うことも検討している。また、宮崎県においても、契約時に違約金条項が設定されていなかった業務1件について、談合罪で起訴されたすべての関係者の刑が確定するのを待って、民法に基づく損害賠償の請求を検討する予定であるとしている(以下、違約金条項に基づく違約金と損害賠償の請求に基づく損害金を合わせて「違約金等」という。)。

(4) 事件後の入札・契約における対応状況

 3県では、今回の事件の発生を受け、談合等不正行為の再発を防止するなどのため、職員に対する法令遵守の徹底等と併せて、入札・契約制度の公正性、透明性、競争性をより高いものとすることを目的として、それぞれ次のような入札・契約制度についての改善策を策定した。

ア 福島県

 福島県では、より公正で透明性の高い入札等制度を確立するため、18年10月に福島県行財政改革推進本部に入札等制度改革部会を設置するなどして検討を行い、同年12月、公共工事における指名競争入札の廃止と条件付一般競争入札の全面的導入を19年4月から順次実施していくことなどを内容とする「入札等制度改革に係る基本方針」を策定し、公表した。

イ 和歌山県

 和歌山県では、19年1月に学識経験者からなる「公共調達検討委員会」を設置し、同県の公共調達制度の検証及び談合防止と効率的かつ効果的な公共調達制度の構築について検討を依頼した。そして、同年5月に同委員会から報告書が提出されたことなどを受け、同年6月、20年6月以降、すべての公共工事において指名競争入札を原則廃止し、条件付一般競争入札を導入することなどを内容とする「公共調達制度改革について」を策定し、公表した。

ウ 宮崎県

 宮崎県では、より公正、透明で競争性の高い入札・契約制度を確立するため、19年2月に宮崎県行財政改革推進本部において「入札・契約制度改革に関する基本的考え方」を取りまとめるなどして検討を行い、同年3月、予定価格250万円以上の公共工事について段階的に指名競争入札を廃止し、19年度中に原則として条件付一般競争入札に移行することなどを内容とする「入札・契約制度改革に関する実施方針」を策定し、公表した。


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 3県の官製談合事件については、新聞等でたびたび取り上げられるなど、社会的な注目を集め、また、前記のとおり、3県では、今回の事件を契機として、それぞれ入札・契約制度の見直しを行い、公共工事における指名競争入札の廃止と条件付一般競争入札の全面的な導入を主な内容とする改善策を策定・公表した。
 このような状況を踏まえ、合規性、経済性等の観点から、3県においてこれまで公共工事等に係る入札・契約制度はどのように運用され、入札・契約の状況がどのように推移してきたかなどに着眼して検査を行った。

(2) 検査の対象及び方法

 本院は、19年次に、3県において会計実地検査を行った。検査においては、3県が16年度から18年度までの間に発注した国土交通省所管の国庫補助事業に係る公共工事等のうち、当初契約金額が5000万円以上の公共工事計1,696件、当初契約金額計2123億余円(国庫補助金相当額計1181億余円)及び当初契約金額が500万円以上の業務計1,904件、当初契約金額計195億余円(同102億余円)をその対象とした( 表3 及び 表4 参照)。そして、各入札方式の実施要領等の入札・契約制度に関する資料等を調査するとともに、入札・契約の実績等に係る調書の作成を依頼し、本院において、提出を受けた調書等の内容を確認するなどの方法により検査した。

表3 検査の対象とした公共工事
(単位:件、百万円)
発注者
16年度
17年度
18年度
合計
件数
契約金額
国庫補助金相当額
件数
契約金額
国庫補助金相当額
件数
契約金額
国庫補助金相当額
件数
契約金額
国庫補助金相当額
福島県
208
26,007
14,826
157
25,737
12,291
133
17,703
9,523
498
69,448
36,641
和歌山県
138
23,445
12,643
126
18,949
10,179
99
15,430
8,361
363
57,824
31,183
宮崎県
254
27,141
14,825
364
38,018
23,454
217
19,965
12,010
835
85,125
50,290
合計
600
76,594
42,295
647
82,705
45,925
449
53,099
29,894
1,696
212,399
118,115

表4 検査の対象とした業務
(単位:件、百万円)
発注者
16年度
17年度
18年度
合計
件数
契約金額
国庫補助金相当額
件数
契約金額
国庫補助金相当額
件数
契約金額
国庫補助金相当額
件数
契約金額
国庫補助金相当額
福島県
205
2,079
1,141
239
2,688
1,465
161
1,681
928
605
6,448
3,535
和歌山県
187
1,999
1,035
208
2,283
1,147
181
2,025
999
576
6,307
3,181
宮崎県
250
2,518
1,289
251
2,265
1,212
222
2,056
1,079
723
6,840
3,580
合計
642
6,597
3,466
698
7,237
3,825
564
5,762
3,006
1,904
19,597
10,298

3 検査の状況

(1) 公共工事に係る入札・契約の状況について

ア 入札・契約方式の推移

 3県が公共工事の発注に当たって適用している入札・契約方式の推移を示すと、表5のとおりであり、前記の改善策に基づき、福島、宮崎両県においては19年4月以降、和歌山県においては20年6月以降、条件付一般競争入札の適用範囲を大幅に拡大することとしている。

表5 公共工事(土木工事)の入札・契約方式の推移
表5−1 福島県
設計金額
〜15年4月
15年5月〜19年3月
19年4月〜
1500万SDR以上
一般競争
一般競争
一般競争
15億円以上
公募型指名競争
公募型指名競争
条件付一般競争(試行)
条件付一般競争
(19年10月以降250万円超に拡大)
1億円以上
技術評価型意向確認方式指名競争
技術評価型意向確認方式指名競争
5000万円以上
希望工種反映型指名競争
希望工種反映型指名競争
3000万円以上
従来型指名競争
従来型指名競争
3000万円未満
 
従来型指名競争

表5−2 和歌山県
予定価格
〜14年3月
14年4月〜17年5月
17年6月〜18年5月
18年6月〜
1500万SDR以上
一般競争
一般競争
一般競争
一般競争
5億円以上
公募型指名競争
公募型指名競争(注)
受注希望公募型競争(注)
条件付一般競争
(20年6月以降すべての工事に拡大)
1億円以上
従来型指名競争
従来型指名競争
従来型指名競争
条件付一般競争(試行)
5000万円以上
 
5000万円未満
従来型指名競争
 一部の工事については1億円以上に適用している。


表5−3 宮崎県
予定価格
〜15年3月
15年4月〜18年6月
18年7月〜19年3月
19年4月〜
1500万SDR以上
一般競争
一般競争
一般競争
一般競争
2億円以上
公募型指名競争
条件付一般競争
条件付一般競争(注)
条件付一般競争
(20年1月以降250万円以上に拡大)
1億円以上
従来型指名競争
従来型指名競争
4000万円以上
従来型指名競争
4000万円未満
従来型指名競争
 平成18年9月からは、予定価格5000万円以上1億円未満の工事についても試行的に実施している。


 表5に記載の入札・契約方式の内容は、それぞれ次のとおりである。

(ア) 一般競争入札は、入札参加希望者を公募し、会社の経営状況、同種工事の施工実績等契約の履行能力に関する入札参加資格を満たす者すべてが入札に参加できる入札・契約方式であり、都道府県等の場合、政府調達協定等に基づき予定価格等が1500万SDR以上の工事に適用されている。
(イ) 条件付一般競争入札は、(ア)の入札参加資格に更に事業所の所在地等に関する要件を設定したものである。
(ウ) 受注希望公募型競争入札は、入札参加希望者を公募し、(イ)と同様の入札参加資格を満たす者のうち共同企業体のみが入札に参加できる入札・契約方式である。
(エ) 公募型指名競争入札は、入札参加希望者を公募し、その応募者から提出された技術資料に基づき当該工事の施工に必要な技術力等を審査して入札参加業者を指名する入札・契約方式である。
(オ) 技術評価型意向確認方式指名競争入札は、あらかじめ25者程度の入札参加業者を発注者が選定し、受注の意向の確認と併せて簡易な技術資料の提出を求め、この内容を評価の上、設計金額に応じて11者又は15者を指名する入札・契約方式である。
(カ) 希望工種反映型指名競争入札は、あらかじめ入札参加希望者に自らが得意とする希望工種、過去の施工実績、技術力等を記載した申告書等を毎年度提出させ、その中から発注者が希望工種等を考慮して入札参加業者を指名する入札・契約方式である。
(キ) 従来型指名競争入札は、あらかじめ入札参加資格の認定を受けた者の中から、発注者が一定数の入札参加業者を指名する入札・契約方式である。

 上記のほか、特定の者と契約を締結しなければ契約の目的を達成することができない特殊な工事等の場合に限り、競争入札の例外として随意契約が適用されている。

イ 入札・契約方式の適用状況

 3県が発注した公共工事について、適用した入札・契約方式ごと、年度ごとに件数及び金額を示すと、表6のとおりであり、このうち、条件付一般競争入札の件数は、各県において増加傾向にあり、18年度では全体計449件に対し計223件と約半数を占めている。

表6 公共工事の入札・契約方式の適用状況
(単位:件、百万円)
発注者
入札・契約方式
16年度
17年度
18年度
合計
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
福島県
一般競争
条件付一般競争
17
2,484
35
11,644
78
13,506
130
27,635
公募型指名競争
技術評価型意向確認方式指名競争
(1)
47
(816)
10,984
 
28
 
4,931
 
7
 
781
(1)
82
(816)
16,696
希望工種反映型指名競争
122
8,904
80
5,994
42
2,920
244
17,820
従来型指名競争
12
1,639
10
1,075
6
494
28
3,209
随意契約
10
1,996
4
2,090
14
4,086
(1)
208
(816)
26,007
 
157
 
25,737
 
133
 
17,703
(1)
498
(816)
69,448
和歌山県
一般競争
条件付一般競争
13
2,688
83
14,322
96
17,010
受注希望公募型競争
22
8,331
22
8,331
公募型指名競争
(3)
24
(3,579)
12,608
 
1
 
1,176
 
 
(3)
25
(3,579)
13,784
従来型指名競争
114
10,837
90
6,753
16
1,108
220
18,698
随意契約
(3)
138
(3,579)
23,445
 
126
 
18,949
 
99
 
15,430
(3)
363
(3,579)
57,824
宮崎県
一般競争
条件付一般競争
16
7,428
13
7,710
62
8,412
91
23,551
従来型指名競争
238
19,712
349
30,150
155
11,552
742
61,416
随意契約
2
157
2
157
254
27,141
364
38,018
217
19,965
835
85,125
合計
一般競争
条件付一般競争
33
9,913
61
22,042
223
36,241
317
68,197
受注希望公募型競争
22
8,331
22
8,331
公募型指名競争
(3)
24
(3,579)
12,608
 
1
 
1,176
 
 
(3)
25
(3,579)
13,784
技術評価型意向確認方式指名競争
(1)
47
(816)
10,984
 
28
 
4,931
 
7
 
781
(1)
82
(816)
16,696
希望工種反映型指名競争
122
8,904
80
5,994
42
2,920
244
17,820
従来型指名競争
364
32,188
449
37,980
177
13,155
990
83,324
随意契約
10
1,996
6
2,248
16
4,244
(4)
600
(4,396)
76,594
 
647
 
82,705
 
449
 
53,099
(4)
1,696
(4,396)
212,399
(注)
 ( )書きは、談合罪に係る起訴の対象となった公共工事で内書きである(前記表2 参照)。


ウ 入札への参加状況

 検査の対象とした16年度から18年度までの間の1,696件の公共工事のうち、競争入札が行われた1,680件の工事について、入札・契約方式ごと、年度ごとの平均入札者数についてみると、表7のとおり、年度により10者を下回る場合があるものの、全体としては、おおむね10者以上となっていた。また、条件付一般競争入札における各年度合計の平均入札者数については、福島、和歌山両県ではそれぞれ9.9者、11.2者であり、宮崎県では18.0者となっていた。

表7 公共工事の入札者数の実績
(単位:件、者)
発注者
入札・契約方式
16年度
17年度
18年度
合計
件数
平均入札者数
件数
平均入札者数
件数
平均入札者数
件数
平均入札者数
福島県
一般競争
条件付一般競争
17
13.0
35
10.6
78
9.0
130
9.9
公募型指名競争
技術評価型意向確認方式指名競争
(1)
47
(15.0)
13.6
 
28
 
12.7
 
7
 
13.2
(1)
82
(15.0)
13.3
希望工種反映型指名競争
122
10.9
80
10.6
42
11.2
244
10.8
従来型指名競争
12
11.2
10
9.0
6
8.5
28
9.8
(1)
198
(15.0)
11.7
 
153
 
10.9
 
133
 
9.9
(1)
484
(15.0)
10.9
和歌山県
一般競争
条件付一般競争
13
4.7
83
12.2
96
11.2
受注希望公募型競争
22
10.3
22
10.3
公募型指名競争
(3)
24
(7.3)
10.4
 
1
 
8.0
 
 
(3)
25
(7.3)
10.3
従来型指名競争
114
14.3
90
14.2
16
13.8
220
14.2
(3)
138
(7.3)
13.6
 
126
 
12.5
 
99
 
12.4
(3)
363
(7.3)
12.9
宮崎県
一般競争
条件付一般競争
16
16.1
13
15.5
62
19.0
91
18.0
従来型指名競争
238
8.1
349
11.9
155
11.9
742
10.7
254
8.6
362
12.0
217
14.0
833
11.5
合計
一般競争
条件付一般競争
33
14.5
61
10.4
223
13.0
317
12.6
受注希望公募型競争
22
10.3
22
10.3
公募型指名競争
(3)
24
(7.3)
10.4
 
1
 
8.0
 
 
(3)
25
(7.3)
10.3
技術評価型意向確認方式指名競争
(1)
47
(15.0)
13.6
 
28
 
12.7
 
7
 
13.2
(1)
82
(15.0)
13.3
希望工種反映型指名競争
122
10.9
80
10.6
42
11.2
244
10.8
従来型指名競争
364
10.2
449
12.3
177
12.0
990
11.5
(4)
590
(9.2)
10.8
 
641
 
11.8
 
449
 
12.4
(4)
1,680
(9.2)
11.6

 

(注)
 ( )書きは、談合罪に係る起訴の対象となった公共工事で内書きである(前記表2 参照)。


 一般に、指名競争入札においては、発注者が一定数の入札参加業者を確保できるように指名して入札が行われるため、実際の入札者数もほぼ一定していることが予想されるが、条件付一般競争入札のように入札参加希望者を公募する方式においては、当該工事の入札参加資格や建設業者の受注意欲等によって実際の入札者数が区々となることが予想される。
 そこで、条件付一般競争入札により入札が行われた317件の公共工事について、その入札者数をみたところ、表8のとおり、入札者数が20者以上となっている工事が65件ある一方で、4者以下となっている工事が50件見受けられた。

表8 応札者数の状況
(単位:件)
発注者
契約件数
入札者数の区分
1〜4者
5〜9者
10〜14者
15〜19者
20者〜39者
福島県
130件
21件
49件
33件
15件
12件
和歌山県
96件
26件
24件
14件
16件
16件
宮崎県
91件
3件
8件
22件
21件
37件
合計
317件
50件
81件
69件
52件
65件
(注)
 和歌山県において、入札者が1者の工事が2件ある。


 そして、入札者数が4者以下となっている工事における入札参加業者の状況について検査したところ、一部の工事種別において入札に参加する業者が固定的となっていて、競争性が十分に確保されていないと認められるものが見受けられた。

<事例>

 A県B事務所では、平成18年8月から同年12月までの間に、条件付一般競争入札により実施した下水処理施設に係る電気設備工事の入札において、入札者数が2者から4者となっているものが6件となっていた。そして、これらの工事の入札公告についてみると、高い品質と高度な施工精度を確保するためとして、「受変電設備等の主要機器を自ら製作・据付した工事の施工実績を有すること」を入札参加資格の要件として定めていた。このため、当該入札に参加可能な業者の数は限られることとなり、その結果として、6件の入札に参加した業者は延べ16業者となるものの、その実数は6業者で、固定的な状況となっていた。

 3県では、条件付一般競争入札の入札参加資格として、当該工事の規模や技術的難易度等に応じて、業者の施工実績、配置予定技術者の工事経験等の技術的な要件を定めたり、地元業者の受注機会の確保等に配慮して、事業所の所在地を一定の地域内に限定するいわゆる地域要件を定めたりしている。そして、今後の条件付一般競争入札の実施について、福島県では、前記の「入札等制度改革に係る基本方針」に基づき、同種・同類工事の施工実績や配置予定技術者の資格等に関する要件を原則として設定しないこととしており、また、入札参加資格者をおおむね50者程度確保できるように配慮して地域要件を設定することとしている。この地域要件については、和歌山、宮崎両県においても、それぞれの改善策に基づき、工事の規模等に応じて限定する地域の範囲を従来より拡大することとしている。
 これら要件の設定の仕方によっては、入札に参加可能な業者の数が著しく制限されたり、入札に参加する業者が固定的になったりなどして競争性の低下を招くおそれがあることから、条件付一般競争入札の適用を拡大するに当たっては、工事の適正な施工の確保にも十分配慮しつつ、多くの入札者の参加により競争性の高い入札となることを指向して適切な入札参加資格の設定に努めていくことが重要である。

エ 落札率の状況

 競争入札が行われた1,680件の工事について、入札・契約方式ごと、年度ごとの平均落札率(注3) をみると、表9のとおり、3県とも、ほぼすべての入札・契約方式において平均落札率が低下する傾向が見受けられた。特に、18年度における全体(449件)の平均落札率は88.2%と17年度の95.6%に比べて7.4ポイント低下しており、その傾向がより顕著となっている。これは、18年度における発注件数の約半分を占めている条件付一般競争入札の平均落札率が83.2%と他の入札・契約方式に比べて低くなっていることによるものである。

 落札率 落札価格の予定価格に対する割合


表9 システムの更新前後における契約相手方の異同状況(大規模システム)
(単位:件)
発注者
入札・契約方式
16年度
17年度
18年度
合計
件数
平均落札率
件数
平均落札率
件数
平均落札率
件数
平均落札率
福島県
一般競争
条件付一般競争
17
93.4%
35
91.9%
78
88.1%
130
89.8%
公募型指名競争
技術評価型意向確認方式指名競争
(1)
47
(94.6%)
94.7%
 
28
 
94.4%
 
7
 
90.5%
(1)
82
(94.6%)
94.2%
希望工種反映型指名競争
122
95.3%
80
95.2%
42
92.4%
244
94.8%
従来型指名競争
12
95.5%
10
90.8%
6
86.3%
28
91.8%
(1)
198
(94.6%)
95.0%
 
153
 
94.0%
 
133
 
89.5%
(1)
484
(94.6%)
93.2%
和歌山県
一般競争
条件付一般競争
13
82.5%
83
79.4%
96
79.8%
受注希望公募型競争
22
92.8%
22
92.8%
公募型指名競争
(3)
24
(98.1%)
94.6%
 
1
 
96.7%
 
 
(3)
25
(98.1%)
94.7%
従来型指名競争
114
95.8%
90
94.1%
16
92.7%
220
94.8%
(3)
138
(98.1%)
95.6%
 
126
 
92.7%
 
99
 
81.6%
(3)
363
(98.1%)
90.7%
宮崎県
一般競争
条件付一般競争
16
96.8%
13
94.9%
62
82.0%
91
86.4%
従来型指名競争
238
97.8%
349
97.3%
155
93.7%
742
96.7%
254
97.8%
362
97.2%
217
90.3%
833
95.6%
合計
一般競争
条件付一般競争
33
95.1%
61
90.5%
223
83.2%
317
85.8%
受注希望公募型競争
22
92.8%
22
92.8%
公募型指名競争
(3)
24
(98.1%)
94.6%
 
1
 
96.7%
 
 
(3)
25
(98.1%)
94.7%
技術評価型意向確認方式指名競争
(1)
47
(94.6%)
94.7%
 
28
 
94.4%
 
7
 
90.5%
(1)
82
(94.6%)
94.2%
希望工種反映型指名競争
122
95.3%
80
95.2%
42
92.4%
244
94.8%
従来型指名競争
364
97.1%
449
96.5%
177
93.3%
990
96.2%
(4)
590
(97.2%)
96.3%
 
641
 
95.6%
 
449
 
88.2%
(4)
1,680
(97.2%)
93.9%

(注)
 ( )書きは、談合罪に係る起訴の対象となった公共工事で内書きである(前記表2 参照)。


オ 低価格入札への対応状況

 3県では、今回の官製談合事件を契機として、より競争性が高い条件付一般競争入札の適用を更に拡大していくこととしているが、それに伴って業者間における価格競争が激化し、契約の適正な履行が確保できないおそれがあると認められるような著しい低価格での入札が生じることも予想される。
 このような著しい低価格での入札に対応するため、地方公共団体においては、地方自治法(昭和22年法律第67号)等に基づき、最低制限価格制度及び低入札価格調査制度を採用することができることとなっている。最低制限価格制度は、契約の適正な履行を確保するため、あらかじめ落札価格の下限となる価格(以下「最低制限価格」という。)を設定し、これを下回る価格で入札した者を一律に排除する制度であり、低入札価格調査制度は、あらかじめ調査の対象とする基準価格(以下「調査基準価格」という。)を設定し、入札価格がこれを下回った場合に、契約の適正な履行が確保されるかどうかを調査した上で落札者を決定する制度である。なお、低入札価格調査制度は、国の会計法令においても規定があるが、最低制限価格制度は国にはない。
 3県のうち、福島、宮崎両県では、主に最低制限価格制度を採用し、低入札価格調査制度は、一般競争入札、VE方式(注4) 等の適用案件など一部の採用となっている。一方、和歌山県では、予定価格が5000万円未満の工事に最低制限価格制度を採用し、5000万円以上の工事については、原則として低入札価格調査制度を採用している。
 検査の対象とした1,696件の工事のうち競争入札が行われた1,680件について両制度の実施状況を調査したところ、表10のとおり、18年度における落札率の低下状況を反映して、最低制限価格を下回る入札者を排除した件数及び調査基準価格を下回る入札者に対して低入札価格調査を実施した件数は、いずれも18年度が最も多くなっており、それぞれ17年度の7倍、4倍に増加していた。

 VE方式 VE(Value Engineering)とは、工事目的物の機能を低下させずにコストを縮減する、又は同等のコストで機能を向上させるための技術をいい、入札価格又は請負額を低減させるため、入札参加者又は受注者から施工方法等についてのVE提案を受け付ける方式をVE方式という。


表10 最低制限価格制度及び低入札価格調査制度の実施状況
発注者
競争入札が行われた公共工事の件数
最低制限価格制度
低入札価格調査制度
最低制限価格を設定したもの
左のうち最低制限価格を下回った者を排除したもの
調査基準価格を設定したもの
左のうち調査基準価格を下回った者の低入札価格調査を実施したもの
福島県
16年度
198件
188件
1件
9件
0件
17年度
153件
142件
4件
11件
2件
18年度
133件
126件
9件
7件
3件
484件
456件
14件
27件
5件
和歌山県
16年度
138件
137件
4件
17年度
126件
126件
9件
18年度
99件
99件
39件
363件
362件
52件
宮崎県
16年度
254件
254件
5件
17年度
362件
362件
1件
18年度
217件
215件
26件
2件
2件
833件
831件
32件
2件
2件
合計
16年度
590件
442件
6件
146件
4件
17年度
641件
504件
5件
137件
11件
18年度
449件
341件
35件
108件
44件
1,680件
1,287件
46件
391件
59件
(注)
 競争入札が行われた公共工事のうち、最低制限価格及び調査基準価格のいずれも設定されていない工事が、福島、和歌山両県でそれぞれ1件ずつある。


 そして、最低制限価格が設定されている1,287件及び調査基準価格が設定されている391件について、予定価格に対する最低制限価格及び調査基準価格の割合を調査したところ、それぞれ、66.6%から87.9%(平均76.5%)、69.7%から85.0%(平均79.2%)となっていた。
 また、調査基準価格を下回った者の低入札価格調査を実施した59件のうち、入札価格の積算根拠が明確でないなどにより、契約の適正な履行が確保できないおそれがあるとして最低の価格で入札した者等を排除したものは和歌山県の5件(16年度1件、18年度4件)となっていた。そして、残り54件は、契約の適正な履行が確保できるとして、最低の価格で入札した者を落札者としていて、その落札率は48.2%から84.3%(平均67.2%)となっていた。なお、福島、和歌山両県では、調査基準価格を下回る入札者と契約した工事については、契約後の適正な施工を確保するため、監督業務に従事する職員の数を増やしたり、施工状況を確認する頻度を増やしたりするなどして、監督体制を強化するなどの対策を講じている。また、国土交通省においても、近年、同省が発注する公共工事において調査基準価格を下回る入札が行われる工事が増加する傾向が見受けられる状況を踏まえ、18年4月から、調査基準価格を下回る入札者と契約した工事のうち、一定規模以上の工事について、モニターカメラを工事現場に設置し、工事全体の施工状況を把握することとするなど、監督体制を強化するなどの対策を講じている。
 条件付一般競争入札の適用拡大に伴い、今後も低価格での入札が見込まれるが、3県においては、競争性と工事の品質の双方を確保するために、最低制限価格の設定の必要性や最低制限価格及び調査基準価格の設定金額について十分検討するとともに、調査基準価格を下回る入札者が契約者となった場合には、施工状況に対する十分な監督業務等の実施に努めていくことが重要である。

カ 総合評価方式の導入状況

 総合評価方式は、価格だけでなく性能、機能等その他の要素を総合的に評価して、落札者を決定する方式である。そして、17年4月に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(平成17年法律第18号。以下「品確法」という。)等において、公共工事等の品質は、総合評価方式を適用することなどにより価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされることによって確保されなければならないとされており、また、同方式の適用等により、価格以外の多様な要素が考慮された競争が行われることで、談合等の不正行為が行われにくい環境が整備されることも期待されるとされている。
 3県では、それぞれ18年度から総合評価方式を試行的に実施しているが、今回の検査の対象とした工事における実績をみると、福島県で1件、宮崎県で3件実施した事例があるのみで、和歌山県では実績がなかった。
 総合評価方式については、3県の改善策において、今後更に実績の拡大を図っていくなどとしているが、その実施に当たっては、品確法等の趣旨に沿った適切な運用がなされるよう、性能、機能等についての客観的な評価基準、評価方法等の確立に努めていくことが重要である。

(2) 業務に係る入札・契約の状況について

ア 入札・契約方式の適用状況

 公共工事に係る測量、設計等の業務の入札・契約制度については、前記のとおり、行動計画等に基づき、都道府県等が発注する150万SDR以上の設計・コンサルティング業務について公募型プロポーザル方式等の導入が勧奨されているものの、入札契約適正化法の対象とされていないなど、公共工事と比較すると、これまで入札・契約の適正化のための措置は十分に講じられてきていない。
 3県では、公共工事に係る業務を発注するに当たっては、主に従来型指名競争入札又は随意契約によることとしており、これまで大幅な入札・契約制度改革の取組は行われてこなかった。そして、検査の対象とした1,904件の業務に適用した入札・契約方式をみると、表11のとおり、従来型指名競争入札が1,804件と全件数の約95%を占めていた。
 公共工事に係る業務の談合事件は、今回の宮崎県だけでなく、これまで他の地方公共団体においても発生している状況であることから、業務についても、談合等の不正行為が行われにくい環境を整備するため、当該業務の内容や特性を踏まえつつ、より透明性、競争性等の高い一般競争入札、公募型プロポーザル方式等の導入・拡大を検討する必要がある。
 なお、宮崎県では、前記の「入札・契約制度改革に関する実施方針」に基づき、公共工事に係る業務のうち測量及び補償コンサルタント業務について、19年10月から条件付一般競争入札を導入することとしている。

表11 公共工事に係る業務の入札・契約方式の適用状況
(単位:件、百万円)
発注者
入札・契約方式
16年度
17年度
18年度
合計
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
福島県
条件付一般競争
1
12
1
12
従来型指名競争
182
1,816
218
2,487
149
1,541
549
5,844
随意契約(指名型プロポーザル方式)
1
7
2
13
2
23
5
44
随意契約
22
255
18
174
10
116
50
546
205
2,079
239
2,688
161
1,681
605
6,448
和歌山県
従来型指名競争
183
1,963
200
2,202
174
1,874
557
6,039
随意契約(指名型プロポーザル方式)
5
45
4
86
9
131
随意契約
4
36
3
35
3
64
10
136
187
1,999
208
2,283
181
2,025
576
6,307
宮崎県
従来型指名競争
 
237
 
2,340
(1)
240
(7)
2,173
(1)
221
(13)
2,050
(2)
698
(20)
6,564
随意契約(指名型プロポーザル方式)
2
70
2
70
随意契約
11
107
11
92
1
5
23
206
 
250
 
2,518
(1)
251
(7)
2,265
(1)
222
(13)
2,056
(2)
723
(20)
6,840
合計
条件付一般競争
1
12
1
12
従来型指名競争
 
602
 
6,120
(1)
658
(7)
6,863
(1)
544
(13)
5,466
(2)
1,804
(20)
18,449
随意契約(指名型プロポーザル方式)
3
77
7
58
6
110
16
246
随意契約
37
399
32
302
14
185
83
888
 
642
 
6,597
(1)
698
(7)
7,237
(1)
564
(13)
5,762
(2)
1,904
(20)
19,597
注(1)
 ( )書きは、談合罪に係る起訴の対象となった業務で内書きである(前記表2 参照)。
注(2)
 予定価格を下回る応札がなかったために競争入札から随意契約に移行したもの(13件)については、当初の入札・契約方式により分類している。
注(3)
 福島県の条件付一般競争入札は、土砂災害の防止対策に係る基礎調査の業務を発注する場合にのみ適用されている。
注(4)
 宮崎県の随意契約(指名型プロポーザル方式:発注者が指名した業者により行う方式)には、通常のプロポーザル方式より簡易な書類審査を行って委託先を選定したもの(1件)を含む。

イ 入札者数及び落札率の状況

 検査の対象とした1,904件の業務のうち随意契約99件(指名型プロポーザル方式を含む。)及び予定価格を下回る応札がなかったために競争入札から随意契約に移行したもの13件を除く1,792件について、平均の入札者数及び落札率を調査したところ、表12のとおり、各年度とも、和歌山県では平均入札者数が13者以上となっていて平均落札率が90%を下回っているが、福島、宮崎両県では平均入札者数は10者を下回っており、平均落札率は92.8%から96.4%と和歌山県に比べて高くなっていた。

表12 公共工事に係る業務の入札者数及び落札率の状況
(単位:件、者、%)
発注者
入札・契約方式
16年度
17年度
18年度
件数
平均入札者
平均落札率
件数
平均入札者数
平均落札率
件数
平均入札者数
平均落札率
件数
平均入札者数
平均落札率
福島県
条件付一般競争
1
18.0
93.7
1
18.0
93.7
従来型指名競争
181
9.2
96.3
217
9.3
95.9
146
9.3
95.1
544
9.3
95.8
181
9.2
96.3
218
9.4
95.9
146
9.3
95.1
545
9.3
95.8
和歌山県
従来型指名競争
183
13.1
89.8
200
13.6
89.1
174
15.3
85.9
557
14.0
88.3
宮崎県
従来型指名競争
 
230
 
5.1
 
96.3
(1)
239
(5.0)
5.0
(94.1)
96.4
(1)
221
(5.0)
5.0
(96.6)
92.8
(2)
690
(5.0)
5.0
(95.3)
95.2
合計
条件付一般競争
1
18.0
93.7
1
18.0
93.7
従来型指名競争
 
594
 
8.8
 
94.3
(1)
656
(5.0)
9.0
(94.1)
94.0
(1)
541
(5.0)
9.5
(96.6)
91.2
(2)
1,791
(5.0)
9.1
(95.3)
93.3
 
594
 
8.8
 
94.3
(1)
657
(5.0)
9.1
(94.1)
94.0
(1)
541
(5.0)
9.5
(96.6)
91.2
(2)
1,792
(5.0)
9.1
(95.3)
93.3
(注)
 ( )書きは、談合罪に係る起訴の対象となった業務で内書きである(前記表2 参照)。


 3県では、公共工事を発注する場合と異なり、測量、設計等の業務については最低制限価格や調査基準価格を設定していないが、上記1,792件の業務のうち落札率が50%を下回っているものが15件(和歌山県14件、宮崎県1件)見受けられた。
 公共工事に係る業務についても、公共工事と同様に、品確法等において、その品質が確保されなければならないとされていることを踏まえ、今後、3県において最低制限価格又は調査基準価格を設定する場合には、競争性と品質の双方の確保に努めることが重要である。

4 本院の所見

ア 公共工事等の入札を巡る官製談合事件は、今回検査の対象とした3県に限らず国や政府出資法人、他の地方公共団体の発注者においても発生している状況であり、公共工事等を発注するすべての発注者は、今後の入札・契約制度について更に透明性、競争性等を確保することにより、談合の発生の防止に努めていくことが求められている。また、特に都道府県については、18年12月に、全国知事会において、一般競争入札の拡大と指名競争入札の原則廃止、総合評価方式の拡充等を主な内容とする「都道府県の公共調達改革に関する指針(緊急報告)」が取りまとめられたところであり、今後の入札・契約制度改革への取組の促進が期待されている。
 このような状況の中で、前記のとおり、3県においても、それぞれ入札・契約制度を見直し、今後取り組んでいく改善策を策定・公表したところであるが、今回、16年度から18年度までの間に3県が発注した公共工事等における入札・契約状況について検査したところ、次のような状況が見受けられた。

(ア) 公共工事について

a 条件付一般競争入札が行われた工事のうち入札者数が少ない工事において、入札に参加する業者が固定的となっているものが見受けられた。
b ほぼすべての入札・契約方式において落札率が低下する傾向が見受けられ、これを反映して、最低制限価格の設定により入札者を排除した件数及び調査基準価格を下回った者の低入札価格調査を実施した件数も多くなっていた。
c 総合評価方式については、3県とも18年度から試行を開始しており、まだ実績は少ない状況であった。

(イ) 業務について

a 入札・契約方式において、従来型指名競争入札が主に適用されていて、一般競争入札、公募型プロポーザル方式等の導入が進んでいない状況となっていた。
b 一部の契約において落札率が50%を下回るものが見受けられた。

イ 今後、3県においては、それぞれが策定した入札・契約制度に係る改善策の内容を確実に実施していくとともに、今回の検査結果を踏まえ、次のような点に配慮して、公共工事等に係る入札・契約制度の更なる改善を図っていくことが望まれる。

(ア) 公共工事について

a 条件付一般競争入札の適用を拡大するに当たっては、工事の適正な施工の確保にも十分配慮しつつ、多くの入札者の参加により競争性の高い入札となることを指向して適切な入札参加資格の設定に努めること
b 最低制限価格制度及び低入札価格調査制度の実施に当たっては、競争性と品質の双方の確保のために、制度適用の必要性や価格の設定について十分検討するとともに、施工状況に対する十分な監督業務等の実施に努めること
c 総合評価方式の実施に当たっては、品確法等の趣旨に沿った適切な運用がなされるよう性能、機能等についての客観的な評価基準、評価方法等の確立に努めること

(イ) 業務について

a 公共工事に係る業務の発注に当たっては、当該業務の内容や特性を踏まえつつ、より透明性、競争性等の高い一般競争入札、公募型プロポーザル方式等の導入・拡大を検討すること
b 一般競争入札の導入・拡大に当たり、最低制限価格又は調査基準価格を設定する場合には、競争性と品質の双方の確保に努めること

 また、3県においては、すべての関係者について談合罪の刑が確定するなどした場合には、適時に違約金等の請求を行い、談合により被ったと認められる損害の回復に努めるとともに、受注者等から違約金等が収納された場合には、本院の指摘に基づき19年8月に国土交通省が定めた当該違約金等に係る国庫補助金相当額の返還についての取扱いに従い、これを速やかに国に返還する必要がある(国土交通省が講じた処置の内容については、前掲「地方公共団体における国土交通省所管の国庫補助事業について、談合等があった場合の違約金等に係る国庫補助金相当額の国への返還に係る取扱いを定め、周知徹底を図るよう改善させたもの」 参照)。
 そして、国土交通省においては、入札契約適正化法等に基づき、引き続き各地方公共団体に対して、公共工事における一般競争入札の拡大等を図るほか、多様な発注方式の適切な活用による入札・契約のより一層の適正化を求めていくことが望まれる。
 本院としては、今後とも3県の入札・契約制度に係る改善策の実施状況、談合により被ったと認められる損害の回復状況等について検査していくこととする。また、今回の官製談合事件等を受け、今後、他の都道府県においても、入札・契約制度の適正化のための取組が実施されることが見込まれることから、その実施状況についても引き続き注視していくこととする。