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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成19年9月

特殊法人等から移行した独立行政法人の業務運営の状況について


4 所見

 独立行政法人は、国から交付される多額の出資金、運営費交付金、補助金等を主要な財源として運営されており、明確な中期目標の下で、自主的・機動的な組織運営と弾力的な財務運営に努めることなどにより、国民のニーズに即応した効率的な行 政サービスを提供することが要請されており、事後的に厳格な評価を受けることも求められている。
 特に、特殊法人等から移行して設立された独立行政法人については、行政改革の重要方針(平成17年12月閣議決定)において、「官から民へ」の観点から事業・組織の必要性を厳しく検討し、その廃止・縮小・重点化等を図ることはもとより、法人の事業の裏付けとなる国の政策についてもその必要性にまでさかのぼった見直しを行うことにより、国の財政支出の縮減を図ることとされている。

(1) 検査の状況の概要

 今般、特殊法人等から移行した独立行政法人のうち、25法人の財務、業務実績等の業務運営の状況について横断的に検査したところ、以下のような事態が見受けられた。

ア 財務について

(ア) 独立行政法人化に伴い、旧法人が抱えていた繰越欠損金は政府出資金等を充てることにより解消されるなど財務基盤は改善したものの、その過程においては、15法人で5兆4679億円に上る政府出資金の償却が生じている。そして、独立行政法人移行後に事業が廃止された勘定においても、政府出資金が欠損金の清算処理に充てられたため、2法人2勘定で政府出資金の償却が71億円生じている。また、17年度の財務諸表において繰越欠損金を計上している勘定の中には、独立行政 法人化に伴う資産等の承継に際して繰越欠損金を政府出資金等により処理したものの、独立行政法人化後に再び繰越欠損金を計上しているものが6法人6勘定ある。さらに、検査の対象とした25法人の中には、独立行政法人移行後、財政負担等が増加した法人や予算措置により新たに財政負担等が生じた法人もある。
(イ) 法人によって運営費交付金債務の振替方法が区々となっており、運営費交付金の交付を受けている19法人のうち、14法人は基本とされる区分法を採用しているが、5法人は特段の理由がないまま合算法を採用しており、適切とはいえない。そして、後者の5法人では、前年度に交付を受けた運営費交付金に対応する執行残額について、原則として次年度にはその全額を振り替えており、運営費交付金の使用状況が交付年度ごとには明確になっていない。
(ウ) 区分法を採用している14法人のうち6法人は、精算予定額として計202億円の資金を有するとしている。また、5法人は、残る運営費交付金債務について中期目標最終年度末までに収益化等を行う予定であることから精算予定額はないとしている。一方、3法人は精算予定額が把握できないとしているが、これらの法人の中には、運営費交付金の交付額を算定する際に、過年度に交付を受けた運営費交付金に係る運営費交付金債務残高等を考慮してその全部又は一部に相当する額を控除 している法人がある。
(エ) 政府出資金見合いの資産を処分して得た資金については、5法人6勘定では資本金を減資して国庫に返納する規定がない。このため、これらの勘定では、当該資金のうち売却等益に相当する額については将来、国庫に納付される可能性もある が、簿価に相当する額などについては、現状では、法人内部に留保されたままとなる。

イ 業務実績について

(ア) 学校施設運営業務では、設置目的に合致しない就職先に就職した卒業生の割合が9割を超えるものがあるなど、財政負担の効果が十分に発現していないと思料されるものも見受けられる。
 居住等施設運営業務では、18年度の新規入居者のうち制度が当初予定していた者が1割に満たない一方で本来の設置目的に沿わない者が多数居住するなど、存在意義が希薄になっていたり、施設の譲渡等が進ちょくしておらず整理合理化計画で求められている施設の廃止に向けての取組が進んでいなかったりしている状況も見受けられる。
 大規模施設運営業務では、地方公共団体や民間で整備されている同種施設と一部競合が生じていることなどもあり、法人の目的に合致した利用以外の利用が増加し、その利用収入が全体の8割を超えているものなどが見受けられる。
(イ) 債務保証業務の中には、基本的な収入では代位弁済額の半分も賄えないものがある。また、海外開発資金債務保証等のように13年度以降新規引受けの実績がなく18年度末において保証債務残高がないものや、プログラム開発債務保証のように債務保証実績はあるが低調なものなどがあり、政府出資金が十分に活用されていないものが見受けられる。
(ウ) 研究助成業務を実施している法人の中には、研究業務の成果指標について、特定の事業に係る発表論文数しか把握していないものや、特許権の出願又は取得件数について把握していないものがある。

ウ 関係法人との契約について

(ア) 関係法人との契約は全体としては減少傾向にあるものの、そのほとんどは、契約の性質又は目的が競争を許さないことなどを理由とする随意契約となっている。そして、契約方法を見直して新たに企画競争を実施しているものもあるが、この 場合も提案者が1者しかなかったものが見受けられる。また、18年度契約に係る支払額に占める継続契約の割合は7割を超えており、その大半は競争性のない随意契約となっていて契約相手方が固定している。
(イ) 予定価格の作成については、作成することとされている予定価格を作成していないものや、公益法人と随意契約をする際の予定価格は設定を省略することができるとしている会計規程等に基づき省略しているものが見受けられる。
(ウ) 再委託を行っている契約は、「性質又は目的が競争を許さない」として関係法人と随意契約をしている契約に係るものが大半であり、また、契約上「再委託する場合でも、特に発注者の承諾を必要としない」としているものが件数で約3割を 占めている。

(2) 所見

 検査の対象とした法人のうち24法人の中期目標の期間は、20年3月で終了することとなっており、今後、その業務実績等の評価を踏まえて、各法人の組織・業務の全般にわたる見直しが行われるとともに、次期の中期目標を作成するなどすることになる。
 したがって、以上の検査結果を踏まえ、各法人においては、独立行政法人化の所期の目的を果たすよう、次の点に留意することが必要である。

ア 財務について

(ア) 繰越欠損金を計上している法人、勘定については、その解消等に向けて計画的に取り組んでいく必要がある。特に、独立行政法人化後に再び繰越欠損金を計上している法人や国の財政負担等が増加している法人にあっては、将来更なる財政負担等が生じないよう、より効率的な業務運営に努める
(イ) 各年度に交付された運営費交付金に係る債務の振替状況は、各法人の評価上重要な情報であることにかんがみ、合算法を採用している法人においては運営費交付金債務の年度別の帰属が明らかになる区分法の採用を検討する
(ウ) 精算予定額を有するとしている法人においては、(1)ア(ウ) で示した法人のように、運営費交付金の算定に当たり、運営費交付金債務残高の発生理由や今後の収益化等の計画も踏まえて、その全部又は一部に相当する額を控除することを検討する
(エ) 政府出資金見合いの資産を処分して発生した資金のうち法人内部に留保されたままとなっている資金については、必要に応じて国庫に返納することが可能となるよう、減資に関する立法措置の必要性を検討する

イ 業務実績について

(ア) 学校施設運営業務については、求められている業務成果の達成、効率化による経費の節減に引き続き努めるとともに、今後の業務の見直しに当たり、社会的ニーズ等を十分考慮して学校施設の規模等その在り方を検討する
 居住等施設運営業務については、一層効率的な業務運営に努めるとともに、施設の譲渡等については、定められた方針に基づき、市況にも留意しながら早期に、また、できる限り有利な条件で計画的に行う
 大規模施設運営業務については、今後の業務の見直しに当たり、法人の設立目的に合致した利用以外の利用の割合が高いことなども考慮しながら、通則法に規定する独立行政法人設立の趣旨等を踏まえて、大規模施設の在り方について検討する
(イ) 研究助成業務の実施に当たり、発表論文数や特許権の出願、取得件数を適切に把握するとともに、これらの指標を今後の業務実施に有効に活用する

ウ 関係法人との契約について

(ア) 競争契約の導入を進めることなどにより契約方法の適正化を図るとともに、随意契約による場合の理由の妥当性について十分検討し、随意契約によらざるを得ない場合には企画競争等を活用するなどして、契約の競争性、透明性を高め、より経済的、効率的な業務運営を確保する
(イ) 契約手続については会計規程等に基づいて適正に行う。予定価格の設定を省略しているものについては、当該契約額の適正性確保のため十分な検証を行うとともに、予定価格の設定を省略することの妥当性についても検討する
(ウ) 再委託を行っている契約については、その締結に当たり随意契約とする理由の妥当性を検討するとともに、適正な契約の履行を確保するために再委託の状況について適切に把握する

 さらに、各法人の中期目標の中には、業務実績等について数値目標が設定されていないものが見受けられたことから、次期の中期目標の作成に当たっては、業務の性質を考慮の上、法人の設立目的等を踏まえるなどして適切な数値目標を設定する必要がある。
 また、会計検査院としては、特に次の点について、今後とも注視していくこととする。

(ア) 運営費交付金債務の振替方法として区分法を採用している法人のうち、精算予定額がないとしている法人における運営費交付金債務の収益化等はどのようになされるか
(イ) 減資のための規定が設けられていない法人において、資産売却等に伴って発生し留保されたままとなっている資金の管理はどのようになされるか
(ウ) 債務保証業務のうち、新規引受けの実績や保証債務残高がなく、あるいは、債務保証実績が低調な業務はどのように運営されるか

 政府は、現在、101独立行政法人のすべてを対象に見直しを行い、年内を目途に新たに独立行政法人整理合理化計画を策定することとしている。また、会計検査院は、19年6月に行われた国会からの検査要請に基づき、全独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況について会計検査を行い、その結果を報告することとしている。
 したがって、会計検査院としては、上記のことも踏まえ、各独立行政法人の財務、業務実績等の業務運営の状況について引き続き検査していくこととする。