会計名及び科目 | 一般会計 | 国税収納金整理資金 | (款)歳入組入資金受入 |
(項)各税受入金 | |||
部局等 | 国税庁 | ||
課税の根拠 | 租税特別措置法(昭和32年法律第26号) | ||
特別償却又は税額控除制度の概要 | 中小企業者等が取得して事業の用に供した一定の資産を対象として、その取得価額の一定額等を特別償却又は税額控除するもの | ||
上記制度の適用が適正でなかった納税者 | 38人 | ||
徴収不足となっていた税額 | 1億0460万円 | (平成15年度〜19年度) |
国税庁は、所得税、法人税、消費税等の国税の賦課徴収事務を法律の規定するところにより行っている。このうち、所得税及び法人税については、個人及び法人の所得に所得税法(昭和40年法律第33号)又は法人税法(昭和40年法律第34号)に定める税率を乗じて算定することとなっているが、租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下「措置法」という。)等において、特定の政策目的を達成するために税の軽減等を内容とする様々な特例が設けられている。
これらの特例のうち、中小企業者等(注1)
を対象としたものとして、中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却又は税額控除(以下「特別償却・税額控除制度」という。前掲の「租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」
参照)がある。この制度は、中小企業の設備投資を促進することを図るための措置として平成10年に設けられたもので、中小企業者等が、一定の資産を取得又は賃借して事業の用に供した場合には、取得価額の100分の30相当額の特別償却又は取得価額(若しくは賃借費用の総額の100分の60相当額)の100分の7相当額の税額控除の選択適用等を認めるというものである。
特別償却・税額控除制度の適用の対象となる資産(以下「適用対象資産」という。)の種類は、措置法において〔1〕 機械及び装置並びに器具及び備品、〔2〕 ソフトウエア、〔3〕 車両及び運搬具、〔4〕 政令で定める海上運送業の用に供される船舶の資産となっている。
このうち、〔1〕 の「機械及び装置並びに器具及び備品」は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号。以下「省令」という。)により「機械及び装置」と「器具及び備品」に区分されている。
そして、「器具及び備品」のうち、適用対象資産となるものは、事務処理の能率化等に資するものに限るとされており、租税特別措置法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号。以下「規則」という。)において、電子計算機及びインターネットに接続されたデジタル複合機(注2)
と規定されている。
特別償却・税額控除制度の適用を受けようとするとき、納税者は、所定の明細書に、適用対象資産の種類(以下、この種類を記載する欄を「種類欄」という。)、適用対象資産の具体的名称(以下、この具体的名称を記載する欄を「名称欄」という。)、特別償却額又は控除税額等を記載して申告書に添付しなければならないこととなっている。
そして、国税局等又は税務署(以下「税務署等」という。)は、提出された申告書及び明細書の記載内容が適正なものであるかを審査することになっている。
本院は、合規性等の観点から、特別償却・税額控除制度の適用は適正に行われているかなどに着眼して、17年12月から20年4月までの間に、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき本院に提出された証拠書類等により検査するとともに、12国税局等及び320税務署において会計実地検査を行った。その結果、適用対象資産に該当しないのに特別償却・税額控除制度を適用して、誤って税の軽減が行われている事態を決算検査報告に掲記している(平成18年度決算検査報告
及び前掲
を参照)。
そこで、上記のうち、適用対象資産に該当しない医療機器に特別償却・税額控除制度を適用していた32税務署(注3)
の納税者38人に係る徴収不足となっていた申告所得税額及び法人税額計104,600,400円を対象として、合規性等の観点から、明細書に適用対象資産の種類、名称等がどのように記載されているか、税務署等における明細書の審査状況は適切に行われているかなどに着眼して、上記の証拠書類等及び会計実地検査時に収集した関係書類により検査した。そして、適切でないと思われる事態については、更に国税庁に対して調査、報告及び関係資料の提出を求めるなどして検査した。
検査したところ、上記の納税者38人は、いずれも申告に当たり、医療機器は特別償却・税額控除制度の適用対象には該当しないのに、明細書の名称欄に医療機器と思料される資産の名称を記載して税の軽減を受けていた。また、明細書の種類欄には、医療機器は適用対象となる「機械及び装置」ではなく、「器具及び備品」に区分されるのに、誤って「機械及び装置」と記載したり、医療機器を適用対象となる事務処理の能率化等に資する電子計算機等に該当するとして「器具及び備品」と記載していたりして、明細書の記載内容は適切なものとはなっていなかった。
さらに、税務署等における審査状況について検査したところ、納税者が申告書を提出した際、税務署等において、医療機器が適用対象とならないことについて理解や認識が不足していたり、明細書に記載されている適用対象資産についての審査が十分に行われていなかったりして、誤ったままとしていた。
上記について、主な事例を示すと次のとおりである。
A税務署管内の医療法人Bは、平成17年4月から18年3月までの事業年度分の申告書において、中小企業者等が機械等を取得した場合等の税額控除の規定を適用して、種類欄に「医療機械」、名称欄に「血管造影X線診断装置」、「超音波診断装置」と記載した明細書を添付して、これらの賃借費用の総額の100分の60相当額の41,047,200円の100分の7相当額である2,873,304円を控除税額として法人税額(22,015,891円)から控除していた。これに対して、同税務署においては、明細書の種類欄に「医療機械」と記載されていたことから、「機械及び装置」に該当すると誤認して、上記規定の適用対象資産として法人税額2,873,300円を軽減していた。
しかし、当該税額控除の対象とした血管造影X線診断装置及び超音波診断装置は医療機器であり、省令によれば、その種類は「器具及び備品」であるものの、規則で定める事務処理の能率化等に資するものには該当しないことから上記の規定は適用できないものであった。
このように、税務署等において、特別償却・税額控除制度の適用対象資産についての審査が十分でないなどのため、誤って税の軽減が行われて前記の104,600,400円が徴収不足となっていた事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、納税者の特別償却・税額控除制度についての理解や認識が不足していたことにもよるが、税務署等において、医療機器が特別償却・税額控除制度の対象とならないことについて理解や認識が不足していたこと、名称欄等に記載された適用対象資産についての審査が十分に行われていなかったこと、また、国税庁及び税務署等において、適用対象資産について納税者等に対する周知が十分なものとなっていなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国税庁は、19年12月及び20年8月に、国税局等に通知を発するなどして、特別償却・税額控除制度の適用が適正なものとなるよう、次のような処置を講じた。
ア 税務署等に対して、超音波診断装置等の医療機器の名称を例示して、これらのものが特別償却・税額控除制度の対象とならないことについて、研修・会議等を通じて職員への周知徹底を図るとともに、適用対象資産について十分に審査を行うことの周知徹底を図った。
イ 医療機器は適用対象資産となる「機械及び装置」に該当しないこと、また「器具及び備品」のうち規則で定める事務処理の能率化等に資するものではないため、適用対象資産には該当しないことなどについて国税庁のホームページに掲載するとともに、税務署等において、説明会等を通して納税者等に対する周知を十分に図ることとした。