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雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったもの


(91) 雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)雇用安定等事業費
部局等 16労働局
支給の相手方 57事業主
不適正な支給となっていた特定求職者雇用開発助成金 特定就職困難者雇用開発助成金
特定就職困難者雇用開発助成金の支給額の合計 62,690,102円 (平成18年度〜20年度)
不適正支給額 39,651,451円 (平成18年度〜20年度)

1 保険給付の概要

(1) 特定求職者雇用開発助成金

 特定求職者雇用開発助成金は、雇用保険(前掲の「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」 参照)で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、特定求職者(60歳以上65歳未満の高年齢者等、就職が特に困難な者(以下「就職困難者」という。)及び雇用に関する状況が全国的に悪化した場合等に就職支援が必要な者)の雇用機会の増大を図るために、特定求職者を雇い入れた事業主に対して、当該雇用労働者の賃金の一部を助成するもので、特定就職困難者雇用開発助成金(以下「就職困難者助成金」という。)及び緊急就職支援者雇用開発助成金の二つがある。

(2) 就職困難者助成金の支給

 就職困難者助成金の支給要件は、事業主が就職困難者を公共職業安定所等の紹介により新たに常用労働者として雇い入れたことなどとなっている。そして、支給額は、支給対象期間(雇入れ後1年、重度身体障害者等については1年6か月)内に当該雇用労働者に支払った賃金に相当するものとして厚生労働大臣が定める方法により算定した額(注1) に所定の支給率(注2) を乗じて得た額となっている。
 就職困難者助成金の支給を受けようとする事業主は、当該助成金に係る支給申請書及び当該雇用労働者に係る出勤簿等の添付書類を都道府県労働局(以下「労働局」という。)に提出することとなっている。そして、労働局は、支給申請書等に記載されている当該雇用労働者の氏名、生年月日、雇用年月日、支払賃金額、事業主の過去の不正受給の有無等を審査した上、支給決定を行い、これに基づいて就職困難者助成金の支給を行うこととなっている。
 なお、労働局における就職困難者助成金の支給に係る審査については、当分の間、労働局は当該業務の一部を管内の公共職業安定所に行わせることができることとされている。

(注1)
 厚生労働大臣が定める方法により算定した額  当該事業主に係る労働保険の確定保険料算定の基礎となった賃金総額から計算される年間1人当たりの平均賃金額等に基づき算定される額
(注2)
 所定の支給率  支給率は、次のとおりである。

区分\企業区分 中小企業事業主以外の事業主 中小企業事業主
60歳以上65歳未満の高年齢者等 1/4 1/3
重度身体障害者等 1/3 1/2

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、全国47労働局のうち、18労働局において会計実地検査を行い、平成18年度から20年度までの間に就職困難者助成金の支給を受けた事業主のうち1,022事業主を選定して、合規性等の観点から、これらの事業主に対する就職困難者助成金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、事業主から提出された支給申請書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 不適正支給の事態

 検査の結果、16労働局管内における57事業主に対する就職困難者助成金の支給(支給額62,690,102円)のうち、39,651,451円が適正に支給されておらず、不当と認められる。
 上記の不適正支給の主な態様は、既に雇い入れている者又は事実上雇入れが決定している者に形式的に公共職業安定所の紹介を受けさせて、その紹介により雇い入れたこととして申請した事業主に対して、就職困難者助成金を支給していたものである。
 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 A労働局は、事業主Bから、就職困難者Cを平成18年4月にD公共職業安定所の紹介を受けてその2日後に雇い入れたとする支給申請書の提出を受けて、これに基づき、就職困難者助成金643,132円を支給していた。
 しかし、実際には、就職困難者Cは同年3月から勤務しており、事業主Bは既に雇い入れている同人に形式的にD公共職業安定所の紹介を受けさせていたことから、同人は就職困難者助成金の対象とならず、就職困難者助成金643,132円全額が適正に支給されていなかった。

 このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったなどのため支給申請書等の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、これに対する前記の16労働局又は管内の公共職業安定所による調査確認が十分でないまま、同労働局において支給決定を行っていたことによると認められる。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 本院の調査に係る事業主数 不適正受給事業主数 左の事業主に支給した就職困難者助成金 左のうち不適正就職困難者助成金
千円 千円
茨城 37 1 1,794 867
千葉 74 4 5,424 3,648
東京 139 6 4,289 3,285
神奈川 107 7 4,264 3,770
新潟 50 4 2,551 1,934
愛知 64 4 10,735 4,198
三重 56 4 4,133 3,447
京都 69 1 535 535
大阪 47 7 7,953 4,472
兵庫 41 1 2,222 1,111
鳥取 46 4 4,244 1,590
広島 66 3 2,428 1,892
徳島 17 2 1,414 1,414
愛媛 12 1 2,315 2,315
福岡 44 5 6,748 3,799
鹿児島 75 3 1,633 1,365
944 57 62,690 39,651

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、同省において、事業主に対する指導を強化するとともに事業主から提出された支給申請書等に係る調査確認の強化を図る必要があると認められる。