国庫補助事業に係る事務費等の執行に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理を行って物品の購入等に係る需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に賃金や旅費を支払ったりしていたもの
(740)−(751) 国庫補助事業に係る事務費等の執行に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理を行って物品の購入等に係る需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に賃金や旅費を支払ったりしていたもの
会計名及び科目 |
一般会計 |
(組織)農林水産本省 |
(項)農村整備事業費等 |
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(組織)林野庁 |
(項)林業振興費等 |
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(項)治山事業費等 |
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平成17年度以前は、国有林野事業特別会計(治山勘定) |
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(項)治山事業費等 |
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(組織)水産庁 |
(項)水産基盤整備費等 |
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食糧管理特別会計(国内米管理勘定) |
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(項)国内米管理費 |
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平成19年度以降は、食料安定供給特別会計(米管理勘定) |
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(項)米管理費 |
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森林保険特別会計 |
(項)森林保険業務費 |
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農業経営基盤強化措置特別会計 |
(項)農地保有合理化促進対策費等 |
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平成19年度以降は、食料安定供給特別会計(農業経営基盤強化勘定) |
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(項)農地保有合理化促進対策費等 |
部局等 |
農林水産本省、林野庁、水産庁、5農政局、8道府県 |
補助の根拠 |
土地改良法(昭和24年法律第195号)、森林法(昭和26年法律第249号)、漁港漁場整備法(昭和25年法律第137号)等、予算補助 |
補助事業者 (事業主体) |
12道府県 |
補助事業 |
土地改良事業、治山事業、漁港漁場整備事業等 |
国庫補助事業に係る事務費等の概要 |
国庫補助事業の施行のために直接必要な需用費、賃金及び旅費に係る経費 |
不適正な経理処理等により支出された国庫補助事業に係る事務費等の額 |
(1) |
不適正な経理処理により支払われた需用費 |
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232,387,415円 |
(平成14年度〜18年度) |
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(2) |
補助の対象とならない用途に支払われた賃金 |
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165,780,126円 |
(平成14年度〜18年度) |
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(3) |
補助の対象とならない用途に支払われた旅費 |
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174,932,982円 |
(平成14年度〜18年度) |
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不当と認める国庫補助金相当額 |
(1) |
109,070,787円 |
(平成14年度〜18年度) |
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(2) |
75,273,268円 |
(平成14年度〜18年度) |
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(3) |
80,962,329円 |
(平成14年度〜18年度) |
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1 事務費の概要
農林水産省は、食料の安定供給の確保、農林水産業の発展、農林漁業者の福祉の増進、農山漁村及び中山間地域等の振興、農業の多面にわたる機能の発揮、森林の保続培養及び森林生産力の増進並びに水産資源の適切な保存及び管理を図ることなどを目的として、土地改良法(昭和24年法律第195号)、森林法(昭和26年法律第249号)、漁港漁場整備法(昭和25年法律第137号)等に基づき、土地改良事業、治山事業、漁港漁場整備事業等の公共事業等を実施する都道府県に対して、事業に要する経費の一部について国庫補助金(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金適正化法」という。)第2条第1項に規定する「補助金等」。以下「補助金等」という。)を交付している。
上記の補助金等の対象となる経費は、主に、土地改良等の公共事業の実施に要した工事費及び事務費(以下、国庫補助事業に係る事務費を「国庫補助事務費」という。)とされている。国庫補助事務費は、国庫補助事業の施行のために直接必要な事務に係る経費であり、国庫補助事業に直接従事する職員の人件費のほか、物品の購入等に係る需用費、国庫補助事業の事務補助を行わせるために雇用した臨時職員に支払う賃金、職員が国庫補助事業に係る用務で出張した場合に支払う旅費等の経費がある。そして、国庫補助事務費に係る補助金等の交付額は、補助金等の交付決定単位ごとに事業費を所定の額に区分して、事業費の額に区分ごとに定められた率を乗じて得た額を上限として算出することとされている。
また、非公共事業の実施に要した経費についても、農林水産省から補助金等や交付金が交付されており、これらの経費の中にも需用費、賃金、旅費等が補助対象経費として含まれている(以下、非公共事業における需用費等の経費と上記の国庫補助事務費を合わせて「国庫補助事務費等」という。)。
上記の国庫補助事務費等を含めた補助金等の交付申請、交付決定等の手続は、補助金適正化法の定めるところにより行うこととされている。そして、補助金適正化法第3条等の規定によると、補助事業者は法令の定め及び補助金等の交付の目的に従って誠実に国庫補助事業を行うように努めるとともに、補助金等を他の用途に使用してはならないなどとされている。
2 検査の結果
(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法
本院は、12道府県において、これらの道府県が平成14年度から18年度までの間に実施した農林水産省所管の国庫補助事業について、合規性等の観点から、国庫補助事務費等の経理が適正に行われているか、国庫補助事務費等が国庫補助事業の目的に従って適正に使用されているかなどに着眼して、国庫補助事務費等が支出される科目から支払われた需用費、賃金及び旅費を対象として、支出命令書等の書類により会計実地検査を行った。そして、不適正な経理処理等による支出があった場合には、更に当該道府県に事態の詳細について調査及び報告を求めて、その内容を確認するなどの方法により検査を行った。 (なお、本件の検査の背景等については、後掲の「都道府県等における国庫補助事業に係る事務費等の経理等の状況について」
参照)
(2) 検査の結果
検査したところ、12道府県において、14年度から18年度までの間に、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理を行って需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に賃金又は旅費を支払ったりしていたものが、計573,100,523円(国庫補助金相当額計265,306,384円)あった。
これを需用費、賃金及び旅費ごとに示すと、次のとおりである。
ア 需用費の支払
12道府県は、国庫補助事業の施行のために必要となる物品の購入等に当たっては、業者から見積書を徴するなどして契約業者、購入価額等を決定して、支出負担行為等の経理処理を行って、契約した物品が納入されたことを確認(以下「検収」という。)した上で、業者からの請求に基づき購入代金を支払うこととしている。
しかし、12道府県は、14年度から18年度までの間に、不適正な経理処理を行って需用費計232,387,415円(国庫補助金相当額109,070,787円)を支払っていた。
これを態様別に示すと、次のとおりである(表参照)
。
(ア) 預け金
業者に架空取引を指示するなどして、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を支払い、当該支払金を業者に預け金として保有させて、後日、これを利用して契約した物品とは異なる物品を納入させていたもの
5府県、支払額23,607,893円(国庫補助金相当額11,290,484円)
<事例>
岩手県A部署は、平成16年度に、事務用品販売業者2社からリサイクルトナー等を購入して、これらの検収を行ったとして、国庫補助事務費等が支出される漁港漁場整備費等から需用費計13,735,033円(国庫補助金相当額7,026,807円)を支払っていた。
しかし、同部署は、実際には、業者に架空取引を指示して請求書等を提出させて、上記のリサイクルトナー等が納入されていないのに納入されたこととする虚偽の内容の関係書類を作成して当該需用費を支払っていた。
そして、当該支払金を業者に預け金として保有させ、これを利用して契約した物品とは異なる物品を納入させていた。
(イ) 一括払
支出負担行為等の正規の経理処理を行わないまま、随時、業者に物品を納入させた上で、後日、納入された物品とは異なる物品の請求書等を提出させて、これらの物品が納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を一括して支払うなどしていたもの
3県、支払額43,695,241円(国庫補助金相当額21,646,005円)
(ウ) 差替え
業者に虚偽の請求書等を提出させて、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を支払い、実際には契約した物品とは異なる物品に差し替えて納入させていたもの
6府県、支払額50,825,516円(国庫補助金相当額22,052,495円)
(エ) 翌年度納入
物品が翌年度以降に納入されていたのに、支出命令書等の書類に実際の納品日より前の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして需用費を支払っていたもの
12道府県、支払額100,642,646円(国庫補助金相当額48,284,968円)
(オ) 前年度納入
物品が前年度以前に納入されていたのに、支出命令書等の書類に実際の納品日より後の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして需用費を支払っていたもの
8道府県、支払額13,616,119円(国庫補助金相当額5,796,835円)
表 不適正な経理処理により支払われた需用費の額の道府県別・態様別内訳
(単位:円)
道府県名 |
(ア)預け金 |
(イ)一括払 |
(ウ)差替え |
(エ)翌年度納入 |
(オ)前年度納入 |
計 |
北海道 |
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青森県 |
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岩手県 |
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福島県 |
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栃木県 |
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群馬県 |
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長野県 |
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岐阜県 |
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愛知県 |
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京都府 |
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和歌山県 |
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大分県 |
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計 |
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232,387,415 |
(109,070,787) |
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(注)
イ 賃金の支払
12道府県は、公共事業等の事務補助を行わせるために臨時職員を雇用して、当該臨時職員が国庫補助事業の用務を行っている場合には、当該事業に係る国庫補助事務費等の支出科目から賃金を支払うこととしている。 しかし、長野県は、14、15両年度に、国庫補助事業に係る用務を行っていない臨時職員に対して、国庫補助事務費等が支出される科目から賃金計886,260円を支払っており、これに係る国庫補助金相当額計347,289円を補助の対象とならない用途に使用していた。 また、7道県は、14年度から18年度までの間に、臨時職員の配属された部署が所掌する国庫補助事業とは異なる事業に係る国庫補助事務費等の支出科目から賃金計164,893,866円を支払っており、これに係る国庫補助金相当額74,925,979円を当該補助の対象とならない用途に使用していた。
ウ 旅費の支払
12道府県は、職員が設計審査、工法協議等の国庫補助事業に係る用務で出張した場合には、当該事業に係る国庫補助事務費等の支出科目から旅費を支払うこととしている。
しかし、12道府県は、14年度から18年度までの間に、あいさつ回り、辞令交付、県単独事業、記念式典への参加、視察随行、各種任意団体の総会への出席、内部研修への参加等国庫補助事業とは直接関係のない用務で出張した職員に対して、国庫補助事務費等が支出される科目から旅費計174,932,982円を支払っており、これに係る国庫補助金相当額80,962,329円を補助の対象とならない用途に使用していた。
これらのアからウの事態は、12道府県において、契約した物品が納入されていないのに納入されたこととして虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理を行って需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に賃金又は旅費を支払ったりしていたもので、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、12道府県において、国庫補助事務費等の適正な会計経理に関する認識が十分でなかったこと、国庫補助事務費等は当該年度の国庫補助事業の施行に当たり直接必要な経費に限られることの認識が十分でなかったことなどによると認められる。
前記のアからウをまとめて道府県別に示すと次のとおりである。
|
道府県名 |
区分 |
年度 |
不適正な経理処理等により支出された国庫補助事務費等の額 |
不当と認める国庫補助金相当額 |
摘要 |
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|
円 |
円 |
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(740)
|
北海道
|
需用費 |
14〜18 |
1,577,267 |
791,965 |
不適正な経理処理 |
|
|
賃金 |
14、18 |
1,487,626 |
1,235,922 |
補助の対象外 |
|
|
旅費 |
14〜18 |
21,551,175 |
14,258,548 |
補助の対象外 |
|
|
小計 |
|
24,616,068 |
16,286,435 |
|
(741)
|
青森県
|
需用費 |
14〜17 |
2,302,237 |
696,218 |
不適正な経理処理 |
|
|
旅費 |
14〜18 |
10,736,608 |
4,081,779 |
補助の対象外 |
|
|
小計 |
|
13,038,845 |
4,777,997 |
|
(742)
|
岩手県
|
需用費 |
14〜18 |
80,922,633 |
46,478,884 |
不適正な経理処理 |
|
|
賃金 |
14〜18 |
41,850,147 |
19,960,656 |
補助の対象外 |
|
|
旅費 |
14〜18 |
18,382,504 |
8,023,201 |
同 |
|
|
小計 |
|
141,155,284 |
74,462,741 |
|
(743)
|
福島県
|
需用費 |
14〜18 |
1,861,615 |
790,530 |
不適正な経理処理 |
|
|
賃金 |
14〜18 |
7,817,119 |
3,335,730 |
補助の対象外 |
|
|
旅費 |
14〜18 |
28,537,500 |
10,951,944 |
同 |
|
|
小計 |
|
38,216,234 |
15,078,204 |
|
(744)
|
栃木県
|
需用費 |
17、18 |
9,692,706 |
4,345,631 |
不適正な経理処理 |
|
|
旅費 |
17、18 |
732,280 |
270,252 |
補助の対象外 |
|
|
小計 |
|
10,424,986 |
4,615,883 |
|
(745)
|
群馬県
|
需用費 |
14〜18 |
6,661,520 |
2,978,360 |
不適正な経理処理 |
|
|
旅費 |
14〜18 |
3,846,526 |
2,055,967 |
補助の対象外 |
|
|
小計 |
|
10,508,046 |
5,034,327 |
|
(746)
|
長野県
|
需用費 |
14〜18 |
21,863,055 |
10,092,261 |
不適正な経理処理 |
|
|
賃金 |
14〜18 |
50,833,010 |
25,544,447 |
補助の対象外 |
|
|
旅費 |
14〜18 |
14,115,392 |
5,814,512 |
同 |
|
|
小計 |
|
86,811,457 |
41,451,220 |
|
(747)
|
岐阜県
|
需用費 |
14〜17 |
312,555 |
165,944 |
不適正な経理処理 |
|
|
賃金 |
14〜18 |
6,767,999 |
3,411,505 |
補助の対象外 |
|
|
旅費 |
14〜18 |
16,566,734 |
9,935,017 |
同 |
|
|
小計 |
|
23,647,288 |
13,512,466 |
|
(748)
|
愛知県
|
需用費 |
14〜18 |
92,104,685 |
37,422,115 |
不適正な経理処理 |
|
|
賃金 |
14〜18 |
2,315,875 |
862,856 |
補助の対象外 |
|
|
旅費 |
14〜18 |
36,337,935 |
13,176,387 |
同 |
|
|
小計 |
|
130,758,495 |
51,461,358 |
|
(749)
|
京都府
|
需用費 |
14〜18 |
13,618,860 |
4,565,371 |
不適正な経理処理 |
|
|
旅費 |
14〜18 |
17,027,926 |
8,439,906 |
補助の対象外 |
|
|
小計 |
|
30,646,786 |
13,005,277 |
|
(750)
|
和歌山県
|
需用費 |
16〜18 |
1,277,660 |
557,657 |
不適正な経理処理 |
|
|
賃金 |
14〜18 |
54,708,350 |
20,922,152 |
補助の対象外 |
|
|
旅費 |
16〜18 |
7,092,302 |
3,951,619 |
同 |
|
|
小計 |
|
63,078,312 |
25,431,428 |
|
(751)
|
大分県
|
需用費 |
18 |
192,622 |
185,851 |
不適正な経理処理 |
|
|
旅費 |
14 |
6,100 |
3,197 |
補助の対象外 |
|
|
小計 |
|
198,722 |
189,048 |
|
|
計 |
需用費 |
14〜18 |
232,387,415 |
109,070,787 |
不適正な経理処理 |
|
|
賃金 |
14〜18 |
165,780,126 |
75,273,268 |
補助の対象外 |
|
|
旅費 |
14〜18 |
174,932,982 |
80,962,329 |
同 |
|
|
|
|
|
|
|
(740)−(751)の合計 |
|
573,100,523 |
265,306,384 |
|