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国庫補助事業に係る事務費の執行に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理を行って物品の購入等に係る需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に賃金や旅費を支払ったりしていたもの


(804)−(815) 国庫補助事業に係る事務費の執行に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理を行って物品の購入等に係る需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に賃金や旅費を支払ったりしていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省 (項)住宅建設等事業費等
  道路整備特別会計 (項)道路事業費等
  平成20年度以降は、社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)
    (項)地域連携道路事業費等
  治水特別会計(治水勘定) (項)河川事業費等
  平成20年度以降は、社会資本整備事業特別会計(治水勘定)
    (項)河川整備事業費等
  港湾整備特別会計(港湾整備勘定) (項)港湾事業費等
  平成20年度以降は、社会資本整備事業特別会計(港湾勘定)
    (項)港湾事業費等
  空港整備特別会計 (項)空港整備事業費等
  平成20年度以降は、社会資本整備事業特別会計(空港整備勘定)
    (項)空港整備事業費等
部局等 国土交通本省、4地方整備局、12道府県
補助の根拠 公営住宅法(昭和26年法律第193号)、道路法(昭和27年法律第180号)、河川法(昭和39年法律第167号)、港湾法(昭和25年法律第218号)等、予算補助
補助事業者
(事業主体)
12道府県
補助事業 道路事業、河川事業、港湾事業等
国庫補助事業に係る事務費の概要 国庫補助事業の施行のために直接必要な需用費、賃金及び旅費に係る経費
不適正な経理処理等により支出された国庫補助事業に係る事務費の額
(1) 不適正な経理処理により支払われた需用費
  155,784,884円 (平成14年度〜18年度)
(2) 補助の対象とならない用途に支払われた賃金
  387,359,972円 (平成14年度〜18年度)
(3) 補助の対象とならない用途に支払われた旅費
  320,889,475円 (平成14年度〜18年度)
564,034,331円  
不当と認める国庫補助金相当額
(1) 64,767,101円 (平成14年度〜18年度)
(2) 47,589,368円 (平成14年度〜18年度)
(3) 178,343,431円 (平成14年度〜18年度)
290,699,900円  

1 事務費の概要

 国土交通省は、道路網の整備を図りもって交通の発達に寄与すること、河川を総合的に管理することにより国土の保全と開発に寄与すること、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図ることなどを目的として道路法(昭和27年法律第180号)、河川法(昭和39年法律第167号)、港湾法(昭和25年法律第218号)等に基づき、道路事業、河川事業、港湾事業等の公共事業を実施する都道府県に対して、事業に要する経費の一部について国庫補助金(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金適正化法」という。)第2条第1項に規定する「補助金等」。以下「補助金等」という。)を交付している。
 上記の補助金等の対象となる経費は、主に、道路整備等の公共事業の実施に要した工事費及び事務費(以下、国庫補助事業に係る事務費を「国庫補助事務費」という。)とされている。国庫補助事務費は、国庫補助事業の施行のために直接必要な事務に係る経費であり、国庫補助事業に直接従事する職員の人件費のほか、物品の購入等に係る需用費、国庫補助事業の事務補助を行わせるために雇用した臨時職員に支払う賃金、職員が国庫補助事業に係る用務で出張した場合に支払う旅費等の経費がある。そして、国庫補助事務費に係る補助金等の交付額は、補助金等の交付決定単位ごとに事業費を所定の額に区分して、事業費の額に区分ごとに定められた率を乗じて得た額を上限として算出することとされている。
 上記の国庫補助事務費を含めた補助金等の交付申請、交付決定等の手続は、補助金適正化法の定めるところにより行うこととされている。そして、補助金適正化法第3条等の規定によると、補助事業者は法令の定め及び補助金等の交付の目的に従って誠実に国庫補助事業を行うように努めるとともに、補助金等を他の用途に使用してはならないなどとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、12道府県において、これらの道府県が平成14年度から18年度までの間に実施した国土交通省所管の国庫補助事業について、合規性等の観点から、国庫補助事務費の経理が適正に行われているか、国庫補助事務費が国庫補助事業の目的に従って適正に使用されているかなどに着眼して、国庫補助事務費が支出される科目から支払われた需用費、賃金及び旅費を対象として、支出命令書等の書類により会計実地検査を行った。そして、不適正な経理処理等による支出があった場合には、更に当該道府県に事態の詳細について調査及び報告を求めて、その内容を確認するなどの方法により検査を行った。
 (なお、本件の検査の背景等については、後掲の「都道府県等における国庫補助事業に係る事務費等の経理等の状況について」 参照)

(2) 検査の結果

 検査したところ、12道府県において、14年度から18年度までの間に、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理を行って需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に賃金又は旅費を支払ったりしていたものが、計564,034,331円(国庫補助金相当額計290,699,900円)あった。
 これを需用費、賃金及び旅費ごとに示すと、次のとおりである。

ア 需用費の支払

 12道府県は、国庫補助事業の施行のために必要となる物品の購入等に当たっては、業者から見積書を徴するなどして契約業者、購入価額等を決定して、支出負担行為等の経理処理を行って、契約した物品が納入されたことを確認(以下「検収」という。)した上で、業者からの請求に基づき購入代金を支払うこととしている。
 しかし、12道府県は、14年度から18年度までの間に、不適正な経理処理を行って需用費計155,784,884円(国庫補助金相当額64,767,101円)を支払っていた。
 これを態様別に示すと、次のとおりである(表参照)。

(ア) 預け金

 業者に架空取引を指示するなどして、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を支払い、当該支払金を業者に預け金として保有させて、後日、これを利用して契約した物品とは異なる物品を納入させるなどしていたもの

5府県、支払額80,746,490円(国庫補助金相当額27,802,565円)

<事例>

 愛知県A建設事務所は、平成17、18両年度に、事務用品販売業者1社からパイプ式ファイル等を購入して、これらの検収を行ったとして、国庫補助事務費等が支出される道路新設改良費等から需用費計3,057,576円(国庫補助金相当額1,151,948円)を支払っていた。
 しかし、同事務所は、実際には、業者に架空取引を指示して請求書等を提出させて、上記のパイプ式ファイル等が納入されていないのに納入されたこととする虚偽の内容の関係書類を作成して当該需用費を支払っていた。
 そして、当該支払金を業者に預け金として保有させ、これを利用して契約した物品とは異なる物品を納入させるなどしていた。

(イ) 一括払

 支出負担行為等の正規の経理処理を行わないまま、随時、業者に物品を納入させた上で、後日、納入された物品とは異なる物品の請求書等を提出させて、これらの物品が納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を一括して支払うなどしていたもの

4道県、支払額9,612,110円(国庫補助金相当額4,588,373円)

(ウ) 差替え

 業者に虚偽の請求書等を提出させて、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を支払い、実際には契約した物品とは異なる物品に差し替えて納入させていたもの

9道府県、支払額14,347,838円(国庫補助金相当額7,257,591円)

(エ) 翌年度納入

 物品が翌年度以降に納入されていたのに、支出命令書等の書類に実際の納品日より前の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして需用費を支払っていたもの

12道府県、支払額47,361,220円(国庫補助金相当額23,134,056円)

(オ) 前年度納入

 物品が前年度以前に納入されていたのに、支出命令書等の書類に実際の納品日より後の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして需用費を支払っていたもの

9府県、支払額3,717,226円(国庫補助金相当額1,984,516円)

表 不適正な経理処理により支払われた需用費の額の道府県別・態様別内訳

(単位:円)

道府県名 (ア)預け金 (イ)一括払 (ウ)差替え (エ)翌年度納入 (オ)前年度納入
北海道
(−)
732,824
(408,494)
14,441
(8,048)
1,592,061
(859,389)
(−)
2,339,326
(1,275,931)
青森県
(−)
(−)
3,903,979
(2,098,170)
2,026,055
(1,093,185)
1,160,054
(660,000)
7,090,088
(3,851,355)
岩手県
17,687,139
(9,471,384)

4,002,278

(2,200,620)
7,039,404
(3,716,536)
3,521,171
(2,020,946)
15,750
(6,809)
32,265,742
(17,416,295)
福島県
(−)
(−)
(−)
1,067,417
(529,799)
218,748
(109,514)
1,286,165
(639,313)
栃木県
277,253
(148,440)
285,160
(155,440)
827,087
(438,183)
763,916
(475,182)
182,218
(112,819)
2,335,634
(1,330,064)
群馬県
(−)
(−)
75,451
(14,308)
5,175,750
(2,652,133)
692,764
(405,147)
5,943,995
(3,071,568)
長野県
(−)
(−)
185,092
(98,715)
1,966,993
(1,001,494)
348,872
(183,121)
2,500,957
(1,283,330)
岐阜県
(−)
(−)
(−)
71,527
(38,357)
(−)
71,527
(38,357)
愛知県
61,334,964
(17,258,450)
4,591,848
(1,823,819)
1940,537
(707,530)
11,380,407
(3,730,195)
990,858
(435,185)
80,238,614
(23,955,179)
京都府
89,156
(34,687)
(−)
58,208
(37,497)
5,272,555
(3,145,236)
71,749
(39,038)
5,491,668
(3,256,458)
和歌山県
1,357,978
(889,604)
(−)
303,639
(138,604)
6,733,078
(4,282,506)
36,183
(32,883)
8,430,878
(5,343,597)
大分県
(−)
(−)
(−)
7,790,290
(3,305,654)
(−)
7,790,290
(3,305,654)
80,746,490
(27,802,565)
9,612,110
(4,588,373)
14,347,838
(7,257,591)
47,361,220
(23,134,056)
3,717,226
(1,984,516)
155,784,884
(64,767,101)
(注)
 括弧書きは国庫補助金相当額

イ 賃金の支払

 12道府県は、公共事業等の事務補助を行わせるために臨時職員を雇用して、当該臨時職員の配属された部署が国庫補助事業を実施している場合には、当該事業に係る国庫補助事務費の支出科目から賃金を支払うこととしている。
 しかし、5道県(注1) は、14年度から18年度までの間に、国庫補助事業を行っていない部署に配属された臨時職員に対して、国庫補助事務費が支出される科目から賃金計28,888,611円を支払っており、これに係る国庫補助金相当額計16,629,014円を補助の対象とならない用途に使用していた。
 また、6県(注2) は、14年度から18年度までの間に、臨時職員の配属された部署が所掌する国庫補助事業とは異なる事業に係る国庫補助事務費の支出科目から賃金計58,471,361円を支払っており、これに係る国庫補助金相当額30,960,354円を当該補助の対象とならない用途に使用していた。

ウ 旅費の支払

 12道府県は、職員が設計審査、工法協議等の国庫補助事業に係る用務で出張した場合には、当該事業に係る国庫補助事務費の支出科目から旅費を支払うこととしている。
 しかし、12道府県は、14年度から18年度までの間に、あいさつ回り、辞令交付、県単独事業、記念式典への参加、視察随行、各種任意団体の総会への出席、内部研修への参加等国庫補助事業とは直接関係のない用務で出張した職員に対して、国庫補助事務費が支出される科目から旅費計320,889,475円を支払っており、これに係る国庫補助金相当額178,343,431円を補助の対象とならない用途に使用していた。
 これらのアからウの事態は、12道府県において、契約した物品が納入されていないのに納入されたこととして虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理を行って需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に賃金又は旅費を支払ったりしていたもので、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、12道府県において、国庫補助事務費の適正な会計経理に関する認識が十分でなかったこと、国庫補助事務費は当該年度の国庫補助事業の施行に当たり直接必要な経費に限られることの認識が十分でなかったことなどによると認められる。
 前記のアからウをまとめて道府県別に示すと次のとおりである。

  道府県名 区分 年度 不適正な経理処理等により支出された国庫補助事務費の額 不当と認める国庫補助金相当額 摘要
         
(804) 北海道 需用費 14〜18 2,339,326 1,275,931 不適正な経理処理
    賃金 14〜18 8,649,530 6,037,283 補助の対象外
    旅費 14〜18 61,518,647 36,694,834
    小計   72,507,503 44,008,048  
(805) 青森県 需用費 14〜18 7,090,088 3,851,355 不適正な経理処理
    賃金 14、16〜18 9,562,406 5,092,865 補助の対象外
    旅費 14〜18 21,259,100 11,398,859
    小計   37,911,594 20,343,079  
(806) 岩手県 需用費 14〜18 32,265,742 17,416,295 不適正な経理処理
    賃金 14、15、17、18 2,073,130 1,330,590 補助の対象外
    旅費 14〜18 28,250,127 14,537,904
    小計   62,588,999 33,284,789  
(807) 福島県 需用費 14〜17 1,286,165 639,313 不適正な経理処理
    賃金 14〜18 23,556,008 12,256,245 補助の対象外
    旅費 14〜18 9,757,633 5,032,030
    小計   34,599,806 17,927,588  
(808) 栃木県 需用費 14〜18 2,335,634 1,330,064 不適正な経理処理
    旅費 14〜18 11,245,508 3,893,432 補助の対象外
    小計   13,581,142 5,223,496  
(809) 群馬県 需用費 14〜18 5,943,995 3,071,568 不適正な経理処理
    旅費 14〜18 3,286,889 1,813,158 補助の対象外
    小計   9,230,884 4,884,726  
(810) 長野県 需用費 14〜18 2,500,957 1,283,330 不適正な経理処理
    賃金 14〜18 4,215,317 2,356,882 補助の対象外
    旅費 14〜18 12,200,886 6,151,476
    小計   18,917,160 9,791,688  
(811) 岐阜県 需用費 14 71,527 38,357 不適正な経理処理
    賃金 14〜18 14,951,350 8,317,793 補助の対象外
    旅費 14〜18 16,648,989 9,966,335
    小計   31,671,866 18,322,485  
(812) 愛知県 需用費 14〜18 80,238,614 23,955,179 不適正な経理処理
    賃金 14〜18 24,035,960 12,043,148 補助の対象外
    旅費 14〜18 75,433,847 42,610,790
    小計   179,708,421 78,609,117  
(813) 京都府 需用費 14〜18 5,491,668 3,256,458 不適正な経理処理
    旅費 14〜18 61,270,904 32,994,486 補助の対象外
    小計   66,762,572 36,250,944  
(814) 和歌山県 需用費 14、16〜18 8,430,878 5,343,597 不適正な経理処理
    旅費 16〜18 7,876,688 5,467,292 補助の対象外
    小計   16,307,566 10,810,889  
(815) 大分県 需用費 14〜16、18 7,790,290 3,305,654 不適正な経理処理
    賃金 17、18 316,271 154,562 補助の対象外
    旅費 14〜18 12,140,257 7,782,835
    小計   20,246,818 11,243,051  
  需用費 14〜18 155,784,884 64,767,101 不適正な経理処理
    賃金 14〜18 87,359,972 47,589,368 補助の対象外
    旅費 14〜18 320,889,475 178,343,431
(804)−(815)の合計 564,034,331 290,699,900  
 5道県  北海道、岩手、長野、愛知、大分各県

 6県  青森、岩手、福島、長野、岐阜、愛知各県