防衛庁(平成19年1月9日以降は防衛省)は、防衛庁の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)に基づき、2年又は3年を任用期間として任用される自衛官(以下「任期制自衛官」という。)に対して、任用期間の満了時に退職手当を支給している。この退職手当は、退職時の俸給日額に任期ごとに定められた支給日数を乗じて得た額を支給するものであり、国家公務員退職手当法(昭和28年法律第182号)に基づく退職手当と同様に勤続に対する報償としての性格を基本的には有するものの、短期任用という極めて特殊な任期制自衛官の任用形態を考慮して任期満了時に所定の額を一律に支給するものとなっている。
国家公務員の育児休業等に関する法律(平成3年法律第109号)により、国家公務員には育児休業制度が設けられており、自衛官は、任命権者の承認を受けて、子が3歳に達する日まで育児休業をすることができることとなっている。また、任命権者は、自衛隊法(昭和29年法律第165号)により、心身の故障のため長期の休養を要する自衛官について、3年を超えない範囲において休職させることができることとなっている。そして、育児休業又は休職をしている自衛官は、いずれも自衛官としての身分を保有するが、職務に従事しないこととなっている。
そこで、経済性等の観点から、退職手当の支給を受けた任期制自衛官の職務への従事状況に着眼して検査したところ、任用期間中に育児休業等により職務に従事していない期間のあった者に対しても、退職手当が減額することなく支給されていた。しかし、このような事態は、任用期間の全期間にわたり職務に従事した任期制自衛官との間に不均衡を生じており、勤続に対する報償という任期制自衛官の退職手当の基本的性格に照らして適切でないと認められた。
このような事態が生じているのは、現行の任期制自衛官に係る退職手当制度では、育児休業等により職務に従事しない期間を退職手当の算定上考慮することとなっていないことによると認められた。
任期制自衛官に係る退職手当制度において、職務に従事しない期間を退職手当の算定上考慮するよう、防衛庁長官に対して18年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、防衛本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、防衛省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
すなわち、防衛省は、任期制自衛官の退職手当の算定に当たり、育児休業等により職務に従事しない期間の任用期間に占める割合を基に除算すべき日数を算出して支給日数から減ずることなどを内容とする「防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」を作成した。同法律案は第168回国会(臨時会)に提出された。
なお、防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第124号)は19年11月30日に公布されて、本件の除算に係る規定については20年1月1日に施行された。